更新日:2026.09.24

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原価計算とは、商品や製品、サービスにどの程度のコストがかかっているかを計算することです。
適切に原価を把握することで、販売価格の設定やコスト管理、経営判断などに役立てられます。
本記事では、原価計算の目的や原価を構成する要素、主な種類をわかりやすく解説します。基本的な計算の流れや原価率の求め方、効率化する方法も紹介するので、原価計算の基礎を理解したい方はぜひ参考にしてください。
原価計算とは、商品や製品、サービスを提供するためにかかった原価を計算することです。材料の購入費だけでなく、製造に携わる従業員の賃金や設備の減価償却費など、事業活動で発生した費用を一定の基準で分類・集計します。
たとえば、製品を製造する企業では、原材料費や製造担当者の人件費、工場の水道光熱費などを集計し、製品ごとの原価を算出します。
原価を正確に把握することで、商品・製品ごとの採算性を確認し、販売価格の設定やコスト管理などに役立てることが可能です。
また、原価計算は社内の経営管理だけでなく、棚卸資産の評価や売上原価の算定など、適切な財務諸表を作成するうえでも重要です。
関連記事:【原価とは?】分類ルールと判断軸をわかりやすく解説|原価・販管費・非原価の違い
原価計算を行う主な目的は、以下のとおりです。
原価を正確に把握できなければ、売上が伸びていても十分な利益を確保できていない可能性があります。それぞれの目的について詳しく解説します。
原価計算は、必要な利益を確保できる販売価格を検討するために役立ちます。商品や製品にいくらかかっているのか把握できなければ、販売価格を決めても十分な利益が残るか判断できないためです。
たとえば、製品1個あたりの原価が3,000円とわかれば、確保したい利益や市場価格などを考慮して販売価格を検討できます。
また、原材料費や人件費が上昇して原価が増えた場合には、現在の販売価格で利益を確保できるか確認することも可能です。
原価計算は、売上原価や棚卸資産の金額を適切に算定し、財務諸表を作成するために必要です。
製造業では、当期に製造した製品のすべてが当期中に販売されるとは限らず、売れ残った製品や仕掛品などは棚卸資産として貸借対照表に計上します。一方、販売した製品に対応する原価は売上原価となり、損益計算書に反映されます。
そのため、製品の製造にかかった原価を適切に集計・配分しなければ、棚卸資産や売上原価、最終的な利益の金額にも影響する可能性があるため注意が必要です。
関連記事:貸借対照表とは?見方・作り方・決算チェックのポイントまでわかりやすく解説
原価計算は、原価の内訳を把握し、コストを適切に管理・削減するために役立ちます。材料費や労務費、経費などを項目別に集計することで、どの費用が原価を押し上げているのかを確認できるためです。
たとえば、材料費が増加している場合は、仕入価格の上昇や材料の使用量を確認します。労務費が想定を上回っている場合は、作業時間や製造工程に改善できる部分がないか分析できます。
また、実際に発生した原価と予算や標準原価を比較すれば、想定との差異と原因の把握が可能です。原価計算の結果を継続的に分析し、仕入方法や生産工程、作業方法などを見直すことで、無駄なコストの削減につなげられます。
原価計算によって得られた情報は、予算管理や経営判断にも活用できます。商品・製品ごとにどの程度のコストがかかっているかを把握することで、利益を圧迫している要因や改善すべき費用を見つけやすくなるためです。
たとえば、実際に発生した原価と予算や標準原価を比較すれば、材料費や人件費など、どの費用に差が生じているかを分析できます。また、製品ごとの採算性を比較し、生産量の調整やコスト削減、商品構成の見直しなどを検討する際の判断材料にもなります。
原価を把握・分析することで、感覚だけに頼らず、数値にもとづいて経営上の意思決定を行いやすくなるでしょう。
原価を構成する3つの要素は、以下のとおりです。
何に対して発生した費用なのかを整理することで、原価の内訳やコストがかかっている部分を把握しやすくなります。それぞれに含まれる費用について詳しく解説します。
材料費とは、製品を製造するために消費した物品の原価です。製品そのものを構成する原材料だけでなく、製造工程で使用する補助材料や消耗品なども含まれます。
たとえば、家具を製造する場合、木材や金属など製品の主要部分となる材料のほか、塗料や接着剤なども材料費に該当します。
材料費を把握することで、製品の製造にどの程度の物品を消費しているのかを確認することが可能です。
関連記事:【材料費とは?】仕入との違い・直接/間接の分類・仕訳を経理目線で解説
労務費とは、製品の製造などに携わる従業員の労働に対して発生する原価です。賃金や給料のほか、賞与、法定福利費など、製造に関連して発生する人件費が含まれます。
適切に集計することで、製造に必要な人的コストを把握できます。
関連記事:【労務費とは?】人件費との違い・直接/間接の分け方や仕訳を解説|実務で役立つ原価管理ガイド
経費とは、製造原価のうち、材料費と労務費以外に該当する費用です。製品を製造するために必要となる幅広い費用が含まれます。
たとえば、工場で使用する電気・ガス・水道などの費用、製造設備の減価償却費、設備の修繕費、外部へ加工を依頼した場合の外注加工費などが代表例です。
複数製品に共通する経費は、一定の基準を用いて各製品へ配分し、製品ごとの原価を算出します。
関連記事:経費とは?税金との関係や精算するときの注意点をわかりやすく解説
原価の主な分類は、以下のとおりです。
前述した材料費・労務費・経費も、それぞれ製品との結びつきに応じて直接費と間接費に分けられます。両者の違いを詳しく見ていきましょう。
直接費とは、特定の製品を製造するために発生したことを直接把握できる原価です。どの製品にいくらかかったのかを明確にできるため、その製品の原価として直接集計することが可能です。
たとえば、特定の製品に使用した原材料は直接材料費、製品の加工や組み立てに直接携わった従業員の賃金は直接労務費に該当します。また、特定の製品について外部へ加工を依頼した費用などは直接経費として扱われます。
直接費を製品ごとに適切に集計することで、それぞれの製品に直接かかったコストを把握することが可能です。
間接費とは、複数の製品に共通して発生するなど、特定の製品にかかった金額を直接把握することが難しい原価です。どの製品のために発生したかを直接特定できないため、一定の基準を用いて各製品へ配分します。
たとえば、複数の製品に使用する消耗品費は間接材料費、工場全体を管理する従業員の賃金は間接労務費に該当します。また、工場全体の水道光熱費や設備の減価償却費などは間接経費の代表例です。
間接費は、作業時間や生産量など合理的な基準を設定して各製品へ配分することで、製品ごとの原価に反映します。
原価計算には複数の方法があり、主な分類は以下の3つです。
それぞれ「原価に含める範囲」「計算に使用する金額」「製品の生産形態」という異なる観点から分類したものです。
違いを理解し、自社の目的や生産方法に適した原価計算を選びましょう。
全部原価計算と直接原価計算は、製品原価に含める費用の範囲が異なります。
全部原価計算は、製造にかかった変動費と固定費の両方を製品原価に含める方法です。材料費などに加え、工場の減価償却費や賃借料など、生産量にかかわらず発生する固定製造原価も製品に配分します。
一方、直接原価計算では、原価を変動費と固定費に分け、変動製造原価のみを製品原価として計算します。固定製造原価は期間費用として扱うため、限界利益を把握しやすく、利益計画や採算性の分析などに活用することが可能です。
関連記事:【図解入り】直接原価計算とは?全部原価計算との違い・CVP分析で利益構造がわかる
実際原価計算と標準原価計算は、実際の消費量をもとに計算するか、あらかじめ設定した標準をもとに計算するかが異なります。
実際原価計算は、実際に消費した材料の数量や作業時間などをもとに原価を計算する方法です。価格には実際の取得価格だけでなく、あらかじめ設定した予定価格を用いる場合もあります。実際にどの程度の材料や労働時間を消費したのかを原価に反映できる点が特徴です。
一方、標準原価計算では、製品の製造に必要な材料の数量や作業時間、価格などに標準を設定し、原価を計算します。実際原価と標準原価を比較することで、材料の使用量や価格、作業時間などに生じた差異を把握し、原価管理に活用できます。
総合原価計算と個別原価計算は、製品の生産形態に応じて使い分ける方法です。
総合原価計算は、同じ種類の製品を継続的に生産する場合に適しています。一定期間に発生した製造原価をまとめて集計し、生産量などをもとに製品の原価を算出します。食品や飲料など、同一規格の製品を大量に生産する場合に用いられるのが一般的です。
一方、個別原価計算は、注文などに応じて異なる製品を個別に製造する場合に適した方法です。製品や案件ごとに材料費や労務費などを集計するため、それぞれの原価や採算性を把握できます。
関連記事:【個別原価計算とは?】受注生産の「案件別利益を正しく把握する」基本と種類・仕訳
原価計算は、発生した原価を整理し、最終的に製品ごとの原価を算出する流れで進めます。製造業における一般的な原価計算の手順は、以下の3段階です。
まずは費用の種類ごとに整理し、必要に応じて部門別に集計したうえで、最終的に各製品へ原価を振り分けます。それぞれのやり方について詳しく見ていきましょう。
最初に、製品の製造にかかった原価を、材料費・労務費・経費などの費目別に分類して集計します。どのような費用が、いくら発生したのかを整理する段階です。
たとえば、製造に使用した原材料は材料費、製造に携わる従業員の賃金は労務費、工場の水道光熱費や設備の減価償却費などは経費として分類します。さらに、それぞれを特定の製品に直接結び付けられる直接費と、複数の製品に共通して発生する間接費に分けます。
費目別に整理することで、部門別・製品別の計算に必要な原価を把握することが可能です。
次に、費目別に集計した原価のうち、必要なものを製造部門や補助部門などの部門ごとに集計します。どの部門で、どの程度の原価が発生しているのかを把握するためです。
たとえば、複数の製品を製造している工場では、加工部門や組立部門など、それぞれの部門で人件費や水道光熱費などが発生します。また、修繕や動力の供給など、製造部門を支援する部門で発生した原価もあるでしょう。
こうした原価を適切な基準で各部門へ集計・配分することで、部門ごとの原価を明確にし、製品別の計算につなげます。
最後に、集計した原価を製品ごとに振り分け、それぞれの製造原価を算出します。製品別に原価を把握することで、販売価格の設定や採算性の確認などに活用することが可能です。
製品別計算の方法は、生産形態によって異なります。たとえば、同じ種類の製品を継続的に生産する場合は、一定期間の原価をまとめて集計する総合原価計算が適しています。一方、注文ごとに仕様が異なる製品などを製造する場合は、製品や案件ごとに原価を集計する個別原価計算を用いるのが一般的です。
自社の生産形態に合った方法で製品別の原価を算出することが重要です。
原価率とは、売上高に占める売上原価の割合を示す指標です。以下の計算式で求めます。
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原価率(%)=売上原価÷売上高×100 |
たとえば、10万円で販売した商品の原価が6万円だった場合、原価率は「6万円÷10万円×100=60%」です。売上高の60%を原価が占めていることを意味し、残りの40%が売上総利益(粗利益)に相当します。
原価率を確認することで、商品や製品がどの程度の利益を生み出しているのかを把握しやすくなります。ただし、適切な原価率は業種や商品によって異なるため、数値の高低だけで判断せず、過去の実績や同業他社などとの比較が重要です。
正確な原価を把握し、継続的な原価管理に活用するため、以下のポイントを押さえましょう。
それぞれ詳しく解説します。
原価計算では、どの費用を原価に含めるのか、あらかじめ範囲を明確にしましょう。集計する費用が担当者や時期によって異なると、製品ごとの原価を適切に比較できません。
たとえば、製造業では原材料費や製造担当者の人件費、工場設備の減価償却費などを製造原価として集計します。費用の分類基準を定めて社内で共有し、一貫した方法で計算することが重要です。
間接費は、費用の発生状況に合った基準で各製品へ配賦しましょう。工場の水道光熱費や設備の減価償却費などは、特定の製品に直接結び付けることが難しいためです。
配賦基準には、作業時間や機械の稼働時間、生産数量などを使用できます。実態に合わない基準では製品ごとの原価に偏りが生じる可能性があるため、費用が発生する要因を踏まえて設定することが重要です。
関連記事:配賦とは?費用の正しい割り振り方と配賦基準の決め方を解説
原価の変化を正しく把握するには、原則として同じ基準で継続して計算しましょう。集計範囲や配賦基準を頻繁に変えると、原価の増減が実際のコスト変化によるものか、計算方法によるものか判断しにくくなります。
原価に含める費用や配賦方法などを社内で統一し、変更する場合は理由や変更内容を記録しておきましょう。過去の数値と比較しやすい状態を保つことが大切です。
実際に発生した原価は、予算や標準原価と比較して差が生じた原因を確認しましょう。想定よりコストが増えた項目を把握することで、改善策を検討しやすくなります。
たとえば、材料費が想定を上回った場合は、仕入価格の上昇や材料の使用量などを確認します。
差額だけを見るのではなく、その原因まで分析し、仕入方法や製造工程などの見直しにつなげることが重要です。
原価計算では、材料費や労務費など多くのデータを集計するため、手作業が多いと入力や計算に時間がかかります。効率化するには、以下の方法があります。
自社の原価計算の複雑さや処理するデータ量に応じて、適した方法を選びましょう。
原価計算を手軽に効率化するなら、Excelやスプレッドシートを活用する方法があります。計算式やテンプレートを設定しておけば、材料費や労務費、経費などを入力するだけで、製品ごとの原価を自動計算することが可能です。
また、月ごとの原価を同じ形式で記録すれば、推移の確認や比較もしやすくなります。比較的低コストで導入できるため、製品数や処理するデータが少ない場合に取り入れやすい方法です。
原価計算のデータ量や作業工程が多い場合は、原価計算に対応したシステムの活用を検討しましょう。材料費や労務費、経費などのデータを取り込み、原価の集計や配賦などの作業を効率化できます。
会計・販売管理・生産管理などのシステムと連携できれば、同じデータを何度も入力する手間や転記ミスの削減にもつながります。
導入時は、必要な原価計算に対応しているかだけでなく、既存システムとの連携や操作性、導入・運用コストも確認しましょう。
原価計算に関するよくある質問に回答します。
原価率は、「売上原価÷売上高×100」で計算します。たとえば、売上高が100万円、売上原価が60万円の場合、原価率は60%です。
原価率を確認すると、売上高に対してどの程度の原価がかかっているかを把握できます。適切な水準は業種や商品によって異なるため、過去の実績や同業種の水準と比較しましょう。
原価計算は、製造業以外でも商品やサービスにかかったコストを把握するために活用できます。たとえば、飲食業では食材費や人件費、建設業では工事ごとの材料費や労務費などを集計できます。
原価を把握することで、商品・サービスごとの採算性を確認し、価格設定やコスト管理に役立てることが可能です。
原価計算表とは、製品やサービスなどにかかった原価を項目別に集計・計算するための表です。材料費・労務費・経費などを整理し、製品ごとの原価を把握するために使用します。
原価計算表の形式や記載項目は、企業の業種や採用している原価計算の方法などによって異なります。
原価計算は、商品や製品、サービスにかかった原価を把握するための重要な取り組みです。適切に原価を計算することで、販売価格の設定や財務諸表の作成、予算管理などに役立てられます。
原価計算には、全部原価計算・直接原価計算や、総合原価計算・個別原価計算など複数の方法があります。自社の目的や生産形態に合った方法を選び、継続して原価を把握することが大切です。
原価計算によって商品や製品にかかるコストを把握した後は、費用の内訳を分析し、改善できる部分がないか検討することも重要です。
経理部門におけるコスト削減の実態や課題を詳しく知りたい方は、以下の資料もあわせてご覧ください。