更新日:2026.08.31

ー 目次 ー
請求書を内税で作るとき、インボイス制度の要件を満たせているか判断に迷うことがあります。
結論から言えば、インボイス制度で請求書を作成する場合、内税でも外税でも問題ありません。ただし、税率ごとに区分した消費税額を記載すること、端数処理は税率ごとに1回までとすることが求められます。
本記事では、内税の請求書の記載例、計算方法、端数処理のルール、そして端数処理の方法が納税額に影響するしくみまで解説します。
適格請求書(インボイス)の記載要件に、内税・外税の指定はありません。どちらの表記でも要件を満たせます。ただし、次の3点は表記方法にかかわらず必ず満たす必要があります。
| 満たすべき条件 | 内容 |
|---|---|
| 税率ごとに区分する | 税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率、税率ごとに区分した消費税額等を記載する |
| 端数処理は税率ごとに1回 | 1枚の適格請求書につき、税率ごとに1回だけ端数処理を行う。明細行ごとに端数処理をして合計する方法は認められない |
| 軽減税率の対象を明示する | 軽減税率の対象品目である旨を、記号などを用いて明らかにする |
この3点さえ押さえていれば、内税で請求書を作っても問題はありません。
内税で請求書を作成する場合の記載例は次のとおりです。
| 品目 | 単価 | 数量 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 花 | 220円 | 100 | 22,000円 |
| トマト ※ | 108円 | 150 | 16,200円 |
| 小計 | 38,200円 | ||
| 消費税8%(内消費税) | (1,200円) | ||
| 消費税10%(内消費税) | (2,000円) | ||
| 合計 | 38,200円 | ||
※印は軽減税率の対象品目であることを示しています。
内税の消費税額は、税込金額から逆算します。
| 税率 | 計算 | 消費税額 |
|---|---|---|
| 8%(軽減税率) | 16,200円×8/108 | 1,200円 |
| 10%(標準税率) | 22,000円×10/110 | 2,000円 |
| 項目 | ルール |
|---|---|
| 単価と金額 | 消費税込みの金額を記載する |
| 消費税欄 | 標準税率(10%対象)と軽減税率(8%対象)に分けて記載する |
| 軽減税率の表示 | 対象品目に※や☆などの記号を付け、記号の意味を欄外に記載する |
| 小計と合計 | 内税の場合、小計と合計は一致する(消費税額は金額に含まれているため) |
国税庁の記載例では、内税の消費税額を(1,200円)のようにカッコ書きで示しています。金額に含まれている消費税額であることが読み手に伝わるための工夫で、適格請求書の記載要件としてカッコ書きが求められているわけではありません。
内税と外税の違いは、消費税額を価格に含めて表示するか、分けて表示するかという点にあります。
内税は、商品価格に消費税を含めて表示する方法です。請求書を内税にすると、明細ごとに消費税を計算する手間が省けます。一方で、価格にどれだけの消費税が含まれているかがひと目では分かりにくくなります。
外税は、税抜の本体価格を記載し、消費税額を別に表示する方法です。本体価格がひと目で分かるため、企業間の取引では外税表記が一般的です。ただし、取引ごとに本体価格と消費税額を区分する必要があります。
| 項目 | 内税 | 外税 |
|---|---|---|
| 単価・金額の記載 | 消費税込みの金額 | 税抜の本体価格 |
| 消費税額 | 金額に含まれる(税率ごとに区分して別途記載) | 本体価格とは別に記載 |
| 小計と合計 | 一致する | 合計=小計+消費税額 |
| 向いている場面 | 消費者向けの取引、明細の点数が多い取引 | 企業間取引 |
| インボイスの要件 | 満たせる | 満たせる |
「総額表示」という言葉を目にすることがありますが、これは請求書のルールではありません。
総額表示義務は、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合に、税込価格の表示を義務付けるものです。値札、店内表示、チラシ、広告などが対象になります。
一方、見積書や契約書、決済段階で作成される請求書や領収書における価格表示は、総額表示義務の対象になりません。請求書を内税にするか外税にするかは、総額表示のルールとは切り離して考えて問題ありません。
請求書を作るときに使う計算式は次の4つです。
| 求めたいもの | 計算式 |
|---|---|
| 税抜価格から消費税額 | 消費税額=税抜価格×消費税率 |
| 税抜価格から税込価格 | 税込価格=税抜価格×(1+消費税率) |
| 税込価格から消費税額 | 消費税額=税込価格×10/110(軽減税率は8/108) |
| 税込価格から税抜価格 | 税抜価格=税込価格÷(1+消費税率) |
具体的な数値を当てはめると次のようになります。
| 前提 | 税率 | 消費税額 | 税抜価格 | 税込価格 |
|---|---|---|---|---|
| 税抜10,000円 | 10% | 1,000円 | 10,000円 | 11,000円 |
| 税抜10,000円 | 8% | 800円 | 10,000円 | 10,800円 |
| 税込11,880円 | 10% | 1,080円 | 10,800円 | 11,880円 |
| 税込11,880円 | 8% | 880円 | 11,000円 | 11,880円 |
外税で請求書を作る場合は、税抜の本体価格を起点に消費税額を加算します。内税で作る場合は、税込金額から10/110(軽減税率は8/108)を掛けて消費税額を逆算します。
消費税額を計算すると1円未満の端数が生じることがあります。適格請求書では、この端数処理のしかたにルールがあります。
切上げ、切捨て、四捨五入のいずれを選ぶかは事業者の任意です。法令で特定の方法が定められているわけではありません。
税込金額10,000円、消費税率10%の場合で比べると次のようになります。消費税額は10,000円×10/110=909.09...円です。
| 端数処理の方法 | 消費税額 | 税抜価格 |
|---|---|---|
| 切捨て | 909円 | 9,091円 |
| 切上げ | 910円 | 9,090円 |
| 四捨五入 | 909円 | 9,091円 |
端数処理は、一の適格請求書につき、税率ごとに1回行います。明細行ごとに消費税額を計算して端数処理し、それを合計する方法は認められていません。
| 処理のしかた | 可否 |
|---|---|
| 税率ごとに対価の額を合計してから、消費税額を計算して1回だけ端数処理する | 認められる |
| 明細行ごとに消費税額を計算して端数処理し、その合計を消費税額として記載する | 認められない |
| 税率ごとに合計してから端数処理し、参考として明細行ごとの消費税相当額も併記する | 認められる(併記自体は差し支えない) |
端数処理は請求書の書き方の問題にとどまりません。消費税の申告で使う計算方法によっては、納税額そのものに影響します。
売上にかかる消費税額の計算方法には2種類あります。
| 計算方法 | 内容 | 扱い |
|---|---|---|
| 割戻し計算 | 税率ごとの課税売上高の合計額から消費税額を計算する | 原則 |
| 積上げ計算 | 交付した適格請求書の写しに記載した消費税額等を積み上げて計算する | 特例(写しの保存が必要) |
端数処理で切捨てを選んでいる場合、請求書1枚ごとに1円未満が切り捨てられます。積上げ計算では、その切り捨てられた後の金額を合計するため、割戻し計算よりも売上税額が小さくなることがあります。発行する請求書やレシートの枚数が多い事業ほど、差は大きくなります。
売上税額を積上げ計算にした場合、仕入税額も積上げ計算にしなければなりません。仕入税額については割戻し計算を選べなくなります。
| 売上税額の計算方法 | 選べる仕入税額の計算方法 |
|---|---|
| 割戻し計算(原則) | 積上げ計算・割戻し計算のどちらも選べる |
| 積上げ計算(特例) | 積上げ計算のみ |
売上と仕入のどちらで有利になるかは事業の形態によって変わります。どの組み合わせを選ぶかは申告方式に関わる判断になるため、税理士に相談したうえで決めてください。
端数処理の方法は事業者ごとに選べるため、自社と取引先で異なる方法を採用していると、請求額と支払額に差が生じます。1件あたりは1円程度でも、取引件数が多いと消込作業の手間になります。請求書のやり取りを始める前に、端数処理の方法をそろえておいてください。
請求書では内税・外税どちらの表記でも構いませんが、1枚の請求書の中で混在させると内容が不明瞭になり、誤解を招きます。どちらかに統一してください。
適格請求書として認められるためには、次の6項目をすべて記載する必要があります。
| # | 記載事項 |
|---|---|
| 1 | 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号 |
| 2 | 課税資産の譲渡等を行った年月日 |
| 3 | 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容(軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、その旨) |
| 4 | 税率ごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の税抜価額または税込価額の合計額および適用税率 |
| 5 | 税率ごとに区分した消費税額等 |
| 6 | 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 |
どちらでも要件は満たせます。企業間取引では本体価格が分かりやすい外税が一般的ですが、消費者向けの取引や明細の点数が多い取引では内税のほうが扱いやすいことがあります。取引先の慣習に合わせるのが現実的です。
必須ではありません。適格請求書の記載要件は「税率ごとに区分した消費税額等」を記載することであり、表記のしかたまでは定められていません。国税庁の記載例ではカッコ書きが使われているため、それに倣うと読み手に伝わりやすくなります。
請求時点で値引きを反映させる場合は、値引き後の金額をもとに税率ごとに区分して消費税額を計算します。複数の税率の商品にまたがる一括値引きの場合は、税率ごとに合理的に按分してください。
すでに交付した請求書の後で返品や値引きが生じた場合は、返還インボイス(適格返還請求書)の交付が必要になりますが、税込1万円未満であれば交付義務は免除されます。
問題ありません。適格請求書に様式の定めはなく、6つの記載事項が満たされていれば手書きでも認められます。ただし手計算では端数処理のミスが起きやすいため、税率ごとに1回だけ処理しているかを確認してください。
インボイス制度では、請求書を内税・外税のどちらで作成しても要件を満たせます。内税の場合は、単価と金額を税込で記載し、消費税額を税率ごとに区分して別途示します。
内税の消費税額は、税込金額に10/110(軽減税率は8/108)を掛けて逆算します。端数処理の方法は事業者が選べますが、1枚の請求書につき税率ごとに1回までというルールがあります。
端数処理で切り捨てた分は、積上げ計算を選んだ場合に売上税額へ反映されます。請求書の書き方が納税額につながる部分なので、社内のルールを決めたうえで運用してください。