更新日:2026.10.23

ー 目次 ー
過入金とは、取引先や顧客から請求額を超える金額が入金された状態です。過入金が発生した場合は、入金内容を確認したうえで、返金や次回請求との相殺などによって精算します。
対応を誤ると帳簿残高が実態と合わなくなるほか、取引先との信頼関係にも影響するため、速やかな確認と処理が必要です。
本記事では、過入金が起こる原因や返金・相殺による対応方法、勘定科目と仕訳例、返金しない場合のリスクを解説します。取引先へ連絡する際の例文も紹介するため、過入金が発生した際の対応にお役立てください。
過入金とは、取引先や顧客から請求額を超える金額が入金された状態のことです。たとえば、110,000円の請求に対して121,000円が振り込まれ、11,000円分多く受け取ってしまった場合などが該当します。
過入金の差額は、受け取る根拠のないお金であり、原則として返還しなければなりません。民法でも、法律上の原因なく他人の財産によって利益を受けた者は、その利益を返還する義務を負うと定められています(不当利得)。そのため、差額を売上として計上したり、自社の資金として使ったりすることは基本的にできません。
過入金の疑いが生じた場合は、まず社内で入金内容を確認し、本当に過入金かどうかを見極めることが重要です。そのうえで原因を特定し、今後の処理方針を先方の担当者と相談しましょう。
過入金が起こる主な原因は、以下のとおりです。
|
原因の所在 |
主な例 |
|
支払側(取引先) |
・振込金額の入力ミス ・同じ請求書への二重払い ・複数の請求書を合算する際の計算誤り ・合意した値引きの反映漏れ |
|
請求側(自社) |
・本来よりも多い金額での請求 ・同じ請求書の送付(二重請求) ・請求書の再発行に関する伝達漏れ |
過入金は、支払う側の振込操作や支払管理のミスによって起こることが多いとされています。支払側のミスであれば、返金や相殺の方法を決めて精算するケースが一般的です。
ただし、請求する側の誤請求や請求書の重複発行が原因になる場合もあります。自社の誤請求などが原因の場合は、差額の精算に加えて請求書の訂正も必要です。
また、誤った金額で売上を計上していた場合は、売上高や仮受消費税等の訂正仕訳も忘れないようにしましょう。
関連記事:請求書の訂正、まず何をする?|ミス発覚から処理完了までの流れを解説
過入金への対応方法には、主に以下の2種類があります。
|
対応方法 |
向いているケース |
注意点 |
|
返金 |
・単発取引・次回取引の予定がない ・取引先が早期の精算を希望している |
返金先、金額、振込手数料を確認する |
|
次回請求・相殺 |
継続取引があり、次回請求が予定されている |
取引先と合意し、請求書上で過入金分を明示する |
取引先と相談したうえで、適切な対応方法を選択しましょう。
過入金のシンプルな対応方法は、過剰分を返金することです。取引が単発で次回の請求予定がない場合や、取引先が早期の精算を希望する場合に適しています。
返金前には、振込先口座・返金額・返金予定日などを取引先と確認しましょう。入金元の口座が返金先として正しいとは限らないため、メールや書面で確認しておくと誤送金を防げます。
返金時の振込手数料については、事前に取引先と負担方法を確認しておきましょう。民法では、別段の取り決めがない場合、弁済にかかる費用は原則として債務者が負担するとされています。取引先の誤振込が原因の場合は、取引先の了承を得たうえで、振込手数料を差し引いて返金することも考えられます。
なお、自社の誤請求が原因の場合は、返金とあわせて修正した請求書を交付しましょう。適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書(インボイス)に誤りがあった場合、修正した適格請求書を交付する義務があります。
関連記事:請求書にミスがあったら?インボイス制度下の請求書ミス、修正インボイスの対応方法と注意点
相殺は、過入金の差額を次回以降の請求額から差し引いて精算する方法です。継続的な取引がある場合に向いており、返金の振込手続きや振込手数料が不要になる点がメリットといえます。
相殺する場合も、事前に取引先の同意を得ることが重要です。取引先が過入金に気づかないまま請求額が減ると、相手側の買掛金の残高と合わず、確認の手間が増えてしまいます。また、相殺を反映させた請求書を送付する際は、「前回過入金分 △11,000円」のように、当月の取引金額とは区別して記載しておくのがよいでしょう。
なお、過入金分の相殺は代金の値引きではありません。そのため、インボイスに記載する「税率ごとに区分した対価の額」や消費税額は、原則として過入金分を差し引く前の当月の取引金額で計算します。
関連記事:相殺とは?意味・仕組みとメリット・デメリット、請求書での処理方法をわかりやすく解説
次に、過入金の対応方法ごとに勘定科目と仕訳例を解説します。以下の3つのケースについて、具体的な処理内容をみていきましょう。
なお、本記事の仕訳例は税抜経理方式を前提としています。
返金する場合は、入金時に計上した仮受金を返金した時点で取り崩します。
たとえば、本体100,000円・消費税10,000円の掛け売上で、請求額110,000円に対して121,000円が入金されたとします。この場合、入金時の仕訳は以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
普通預金 |
121,000円 |
売掛金 |
110,000円 |
|
|
|
仮受金 |
11,000円 |
差額11,000円を返金し、振込手数料330円(税込)を自社で負担した場合は、以下のように仕訳します。
|
借方 |
貸方 |
||
|
仮受金 |
11,000円 |
普通預金 |
11,330円 |
|
支払手数料 |
300円 |
|
|
|
仮払消費税等 |
30円 |
|
|
なお、取引先の了承を得て振込手数料330円を差し引き、10,670円を返金した場合は、手数料を取引先が実質的に負担していることになります。そのため、仕訳では以下のように仮受金の全額を取り崩します。
|
借方 |
貸方 |
||
|
仮受金 |
11,000円 |
普通預金 |
11,000円 |
相殺する場合は、次回の売上を本来の金額で計上し、仮受金を売掛金の回収に充てます。
たとえば、前述の過入金額11,000円を、翌月の請求額220,000円(本体200,000円・消費税20,000円)から差し引いたとします。この場合、売上計上時の仕訳は以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
売掛金 |
220,000円 |
売上高 |
200,000円 |
|
|
|
仮受消費税等 |
20,000円 |
差し引き後の209,000円が入金された時点で、以下のように仮受金とあわせて売掛金を消し込みます。
|
借方 |
貸方 |
||
|
普通預金 |
209,000円 |
売掛金 |
220,000円 |
|
仮受金 |
11,000円 |
|
|
過入金分を売上高から差し引いて計上すると、売上高と消費税額が過少になるため注意しましょう。
取引先との合意で返金不要となった場合は、仮受金を雑収入などに振り替えます。
過入金が少額の場合は、返金にかかる振込手数料や事務負担を考慮し、取引先との合意によって返金不要とするケースもあります。
たとえば、過入金額300円について返金が不要になった場合の仕訳は以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
仮受金 |
300円 |
雑収入 |
300円 |
返金不要となった金額は、商品やサービスの対価として受け取るものではないため、原則として消費税の課税対象外です。また、法人税では、返還義務がなくなり収益として確定した時点で、原則として益金に算入します。
関連記事:非課税と不課税の違いとは?免税との区別と具体例をわかりやすく解説
過入金に気づきながら返金せずに保持し続けると、次のようなリスクが生じます。
過入金であると知りながら保持した場合は、民法上、利息を付けて返還する義務を負う場合があります。2026年4月1日から2029年3月31日までの法定利率は年3%です。
過入金に気づいたら、入金日・入金額・請求額・差額や希望する対応方法などを整理して、速やかに取引先へ連絡します。
取引先へのお知らせに記載する主な項目は、以下のとおりです。
|
項目 |
主な記載内容 |
|
件名 |
過入金のお知らせであることがわかる件名 |
|
請求書の情報 |
請求書番号・請求日 |
|
入金内容 |
入金日・入金額・請求額・差額 |
|
対応方法 |
返金または次回請求での相殺の提案 |
|
確認事項 |
返金先口座・振込手数料の負担・回答期限 |
|
連絡先 |
担当部署・担当者名・電話番号・メールアドレス |
メールで連絡する場合の例文は、以下のとおりです。
|
件名:【ご確認のお願い】○月○日ご入金分の過入金について 株式会社○○ いつもお世話になっております。株式会社△△経理部の□□です。 ○年○月○日にご入金いただいた代金について、ご請求額を超える金額をお振り込みいただいていたため、ご連絡いたしました。 ・対象請求書:請求書番号○○○(○年○月○日発行) 差額につきましては、以下のいずれかの方法で精算させていただきたく存じます。
返金時の振込手数料の取り扱いについても、あわせてご確認いただけますと幸いです。 ○月○日までに、ご希望の方法をお知らせいただけますでしょうか。返金をご希望の場合は、振込先口座もあわせてお知らせください。 ご不明な点がございましたら、□□までお問い合わせください。引き続きよろしくお願いいたします。 |
※取引先の誤入金が原因で、手数料を差し引いて返金したい場合は、その旨を具体的に記載し、事前に了承を得ます。
振込手数料を差し引く一文は、取引先の誤入金が原因の場合に、必要に応じて加えましょう。自社の誤請求が原因の場合は、お詫びの一文を添え、訂正した請求書の送付予定もあわせて伝えてください。
最後に、過入金に関するよくある質問に回答します。
自社が取引先に多く支払ってしまった場合は、差額を仮払金や未収入金などの資産の勘定科目で処理するのが一般的です。
たとえば、買掛金110,000円の支払いで、121,000円を振り込んでしまった場合の仕訳は以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
買掛金 |
110,000円 |
普通預金 |
121,000円 |
|
仮払金 |
11,000円 |
|
|
取引先から差額の返金を受けたときは、以下のように仮払金を取り崩します。
|
借方 |
貸方 |
||
|
普通預金 |
11,000円 |
仮払金 |
11,000円 |
次回の支払額から差し引く場合は、支払時に仮払金を買掛金と相殺して処理しましょう。
過入金を返金しないまま放置すると、取引先から不当利得として返還を求められる可能性があります。過入金と知りながら保持していた場合は、利息を付けて返還する義務も生じます。
返金しない対応がとれるのは、基本的に取引先と合意した場合のみです。過入金に気づいた時点で、速やかに連絡しましょう。
過入金は、取引先や顧客から請求額を超える金額が入金された状態であり、差額は原則として返す必要があります。連絡しないまま保持し続けると、返還を求められるだけでなく、取引先との信頼関係も損ないかねません。過入金に気づいた時点で、速やかな連絡と正確な処理を心がけましょう。
会計処理では、入金時の差額を仮受金で処理し、返金した時点で取り崩すケースが一般的です。相殺する場合は、売上高を本来の金額で計上したうえで、仮受金を次回の請求額に充てます。取引先との合意で返金不要となった場合は、仮受金を雑収入などに振り替えましょう。
過入金の処理では、状況に応じて勘定科目を使い分ける必要があります。 勘定科目の使い分けや仕訳方法をまとめて確認したい方は、以下の資料もぜひご活用ください。