更新日:2026.10.27

ー 目次 ー
社会保険料の勘定科目は、会社負担分が「法定福利費」、給与から控除した従業員負担分が「預り金」です。会社が負担する費用と、従業員から預かって納付するお金を分けて処理します。
ただし、会社負担分を未払計上する場合や、納付前に従業員負担分を立て替える場合は、未払金や立替金なども使います。負担者だけでなく、控除・計上・納付のタイミングを確認することが大切です。
本記事では、社会保険料の勘定科目と仕訳例を紹介し、決算時の未払計上や延滞金・還付金の処理も解説します。個人事業主本人の保険料の扱いも整理しているため、日々の記帳や決算時の確認にお役立てください。
会社は従業員の給与から天引きした保険料と会社負担分を、まとめて納付します。負担者によってお金の性質が異なるため、以下のように勘定科目を分けて処理しましょう。
|
区分 |
勘定科目(原則) |
|
会社負担分 |
法定福利費 |
|
従業員負担分 |
預り金(簡便法では法定福利費のマイナス) |
|
納付前の会社負担分 |
未払金(未払費用とする場合もある) |
会社負担分は、法令や健康保険組合の規約などにもとづいて会社が負担する費用のため、法定福利費に計上します。一方、従業員負担分は、従業員に代わって納付するために一時的に預かっているお金です。会社の費用にはならないため、負債である預り金で処理するのが原則です。
なお、従業員負担分を預り金ではなく、法定福利費のマイナスとして処理する簡便法もあります。いずれの方法でも、最終的に費用として残るのは会社負担分だけです。
納付前の会社負担分は、月末に法定福利費を計上する際に未払金で処理します。また、納付時にまとめて法定福利費とする方法もあり、その場合は未払金を使いません。
関連記事:法定福利費とは?仕訳・計算方法・福利厚生費との違いを図解で解説
一般に「社会保険料」と呼ばれる保険料には、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料などのほか、広い意味では雇用保険料・労災保険料(労働保険料)も含まれます。それぞれの負担者を以下の表にまとめました。
|
種類 |
負担者 |
補足 |
|
健康保険料 |
原則として労使折半 |
健康保険組合では事業主負担を多くしている場合がある |
|
介護保険料 |
原則として労使折半 |
40歳以上65歳未満の被保険者が対象 |
|
厚生年金保険料 |
労使折半 |
― |
|
子ども・子育て支援金 |
原則として労使折半 |
2026年4月分から健康保険料とあわせて徴収 |
|
子ども・子育て拠出金 |
会社が全額負担 |
厚生年金保険料とあわせて納付 |
|
雇用保険料 |
会社と従業員が負担 |
会社と従業員で料率が異なる |
|
労災保険料 |
会社が全額負担 |
― |
子ども・子育て支援金は、2026年4月分の保険料から徴収が始まりました。翌月徴収の会社では、原則として5月支給の給与から控除が始まっています。子ども・子育て支援金は健康保険料とあわせて給与から控除し、会社負担分とともに納付する仕組みです。そのため、従業員負担分は預り金(簡便法では法定福利費のマイナス)、会社負担分は法定福利費で処理します。
雇用保険料と労災保険料は、健康保険や厚生年金保険とは別の、労働保険という制度の保険料です。雇用保険料の従業員負担分は、一般的に、給与から控除する前に納付した分は立替金、控除した後に納付する分は預り金で処理します。
なお、従業員負担分を法定福利費のマイナスとする簡便法も選択肢のひとつです。
社会保険料の会社負担分は、保険料の対象となる月の費用として計上するのが基本です。実際の納付は原則として翌月末になるため、対象月の末日に法定福利費と未払金などを計上し、納付時に未払金を消し込みます。
たとえば、4月分の保険料を5月支給の給与から控除する「翌月徴収」の会社では、処理のタイミングは以下のとおりです。
|
処理する内容 |
タイミング |
|
4月分の会社負担分を費用に計上する |
4月末 |
|
4月分の従業員負担分を給与から控除する |
5月の給与支給時 |
|
会社負担分と従業員負担分をまとめて納付する |
原則として5月末 |
期中は、納付時に会社負担分を法定福利費として計上する運用もあります。ただし、その場合は対象月と費用の計上月がずれるため、決算時には未計上の会社負担分を確認し、必要な未払計上を行いましょう。
なお、従業員負担分を給与から控除する時期は、当月徴収か翌月徴収かによって異なります。保険料の対象月と、給与からの控除月・納付月を区別して管理することが大切です。
ここでは、以下の3パターンに分けて、社会保険料の仕訳例を解説します。
一般的に、給与から社会保険料を控除した場合は、従業員負担分を預り金として計上します。控除した金額は会社の費用ではなく、納付するまで従業員から預かっているお金だからです。
ここでは、保険料を翌月の給与から控除する「翌月徴収」の会社を例にします。5月支給の給与300,000円から、4月分の健康保険料・厚生年金保険料などの従業員負担分42,000円を控除したとします。
差額を普通預金から振り込んだ場合の仕訳は、以下の通りです(源泉所得税などの控除は省略)。
|
借方 |
貸方 |
||
|
給料手当 |
300,000円 |
預り金 |
42,000円 |
|
|
|
普通預金 |
258,000円 |
給料手当は控除前の総額で計上し、控除した保険料を預り金に振り分けます。預り金には源泉所得税や住民税も計上されるため、社会保険料預り金などの補助科目を設けると残高を管理しやすくなるでしょう。
役員に支給する場合は、給料手当ではなく役員報酬などの勘定科目を用いるのが一般的です。
会社負担分は、4月分の保険料であれば4月末というように、対象月の末日に法定福利費として計上できます。ただし、4月分の保険料を実際に納付するのは、基本的に5月末です。4月末の時点ではまだ支払っていないため、未払金を使って計上します。
たとえば、4月分の保険料の会社負担分43,000円(子ども・子育て拠出金を含む)を、4月末に計上する場合の仕訳は以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
法定福利費 |
43,000円 |
未払金 |
43,000円 |
保険料の対象となる月の末日に会社負担分を計上すると、4月分の会社負担分が4月の費用になり、月ごとの人件費を正確に把握できます。とくに、決算月分の保険料を当期の費用に含めるうえで有効な処理方法です。
なお、会社によっては、貸方を未払費用とすることもあります。どちらの科目を使う場合も、社内で統一し、継続することが大切です。
社会保険料を納付したときは、預かっていた従業員負担分と、未払金に計上した会社負担分をあわせて消し込みます。納付期限は、保険料の対象となる月の翌月末日です。末日が土日・祝日の場合は、翌営業日が期限となります。口座振替で納付する場合は、引落日を仕訳の計上日とするのが一般的です。
4月分の保険料85,000円(従業員負担分42,000円・会社負担分43,000円)を、5月末に普通預金から納付した場合の仕訳は以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
預り金 |
42,000円 |
普通預金 |
85,000円 |
|
未払金 |
43,000円 |
|
|
納付後は、今回納付した対象月分の預り金と未払金が消し込まれているか確認します。勘定科目全体の残高がゼロになるとは限らないため、給与台帳・保険料の納入告知書・帳簿を対象月ごとに照合しましょう。
なお、月末に会社負担分を計上せず、納付時にまとめて法定福利費とする方法もあります。納付時に会社負担分を計上する場合、4月分の保険料を5月末に納付したときの仕訳は以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
預り金 |
42,000円 |
普通預金 |
85,000円 |
|
法定福利費 |
43,000円 |
|
|
従業員負担分を法定福利費の貸方に計上し、納付時に保険料の全額を法定福利費の借方に計上する簡便法という方法もあります。ただし、控除月と納付月が異なる場合は費用や残高を把握しにくくなるため、対象月ごとの照合が必要です。
5月支給の給与300,000円から、4月分の保険料の従業員負担分42,000円を控除した場合の仕訳は以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
給料手当 |
300,000円 |
法定福利費 |
42,000円 |
|
|
|
普通預金 |
258,000円 |
5月末に4月分の保険料85,000円を納付したときは、全額を法定福利費に計上します。
|
借方 |
貸方 |
||
|
法定福利費 |
85,000円 |
普通預金 |
85,000円 |
給与時のマイナス42,000円と納付時の85,000円をあわせると、法定福利費は43,000円です。最終的には、会社負担分だけが費用として残ります。
上記は、翌月徴収で、給与からの控除と保険料の納付を同じ月に行う場合の例です。決算時には、未計上の会社負担分を法定福利費と未払金で計上します。
一方、当月徴収では、決算月分の従業員負担分がすでに法定福利費から減額されている場合があります。この場合は、会社負担分だけを未払計上しても費用が一致しません。控除済みの従業員負担分と未納付額を照合し、決算整理後の法定福利費が会社負担分になるよう調整してください。
社会保険料は、毎月の給与だけでなく賞与にもかかります。一方、労働保険料(雇用保険料・労災保険料)は、年度ごとに概算で納付し、翌年度に精算する仕組みです。賞与の社会保険料と労働保険料の処理の考え方を、以下の表にまとめました。
|
項目 |
処理の考え方 |
|
賞与の社会保険料 |
賞与から控除した従業員負担分を預り金(簡便法では法定福利費のマイナス)、会社負担分を法定福利費とし、支給月の翌月末までに毎月の保険料とあわせて納付する |
|
雇用保険料(従業員負担分) |
・給与・賞与の支払いの都度控除する。 ・概算保険料に含めて納付済みの場合は立替金などを減らす |
|
労働保険料の概算保険料 |
・納付時に会社負担分を法定福利費、従業員負担分を立替金などで処理する。 ・確定保険料との差額は、不足額と超過額で税務上の計上時期が異なるため、年度更新時に会社負担分と従業員負担分を分けて精算する。 |
賞与の健康保険料・厚生年金保険料は、税引前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に、保険料率を掛けて計算します。標準賞与額には上限があり、健康保険(介護保険と子ども・子育て支援金を含む)は年度累計573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円です。
労働保険の概算保険料には、従業員負担分の雇用保険料も含まれます。そのため、概算保険料の納付時には、従業員負担分を立替金などで処理するのが一般的です。
たとえば、概算保険料360,000円のうち、会社負担分が300,000円、従業員負担分が60,000円の場合の仕訳は以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
法定福利費 |
300,000円 |
普通預金 |
360,000円 |
|
立替金 |
60,000円 |
|
|
概算保険料の納付後に給与から雇用保険料を控除したときは、預り金ではなく立替金を貸方に計上して減らします。
また、概算保険料の全額を法定福利費で処理し、給与からの控除額を法定福利費のマイナスとする方法もあります。
関連記事:保険料の勘定科目は?種類や法人・個人事業主別の振り分け方と仕訳例を解説
社会保険料を期限までに納付しないと、延滞金が発生する場合があります。また、保険料を納めすぎた場合などには、還付を受けることもあります。
いずれも通常の保険料とは扱いが異なるため、次の2つの場面に分けて具体的な処理方法をみていきましょう。
社会保険料の延滞金は、租税公課や雑損失などの勘定科目で処理するのが一般的です。延滞金は保険料そのものではなく、納付の遅れに対して課されるものだからです。法定福利費に含めると、保険料の負担額を正しく把握できなくなります。
なお、法人税法では、国税の延滞税や地方税の延滞金などは損金不算入です。社会保険料の延滞金はこれらに該当しないため、一般的に損金に算入できると解されています。国税の延滞税とは扱いが異なるため、混同しないよう注意しましょう。
ただし、滞納が続くと財産の差押えを受けるおそれもあります。期限内の納付が難しい場合は、督促を待たずに年金事務所へ相談しましょう。一定の要件を満たせば、納付の猶予や換価の猶予を受けられる場合があります。
関連記事:損金算入・不算入とは?経理初心者が知っておくべき勘定科目の考え方と実務の違い
保険料を納めすぎた場合、翌月以降の保険料に充当されるのが一般的です。事業所の廃止などで充当できない場合は、現金で還付を受けられます。現金で還付を受けた場合は、会社負担分と従業員負担分に分けて処理します。
以下は、当期に費用計上した保険料の還付で、還付額を未収入金などに計上していない場合の例です。
|
借方 |
貸方 |
||
|
普通預金 |
10,000円 |
法定福利費 |
5,000円 |
|
|
|
預り金 |
5,000円 |
従業員に5,000円を返還したときの仕訳は、以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
預り金 |
5,000円 |
普通預金 |
5,000円 |
過年度分の還付は、還付が生じた理由や過去の計上内容によって処理が異なります。単に入金時の雑収入とせず、過年度の誤りの訂正に当たるかも確認してください。
個人事業主が自分自身の国民健康保険料や国民年金保険料を支払っても、事業の経費にはなりません。事業主本人の保険料は事業のための支出ではないため、確定申告で社会保険料控除として所得から差し引く仕組みになっています。
事業主自身の保険料を事業用の口座から支払った場合は、事業主貸で処理します。たとえば、2026年度の国民年金保険料(月額17,920円)を事業用口座から支払ったときの仕訳は以下のとおりです。
|
借方 |
貸方 |
||
|
事業主貸 |
17,920円 |
普通預金 |
17,920円 |
なお、私用の口座から支払った場合は、事業の帳簿への記帳は不要です。
個人事業所が社会保険の適用事業所であっても、事業主本人は健康保険・厚生年金保険の被保険者になれません。
一方、従業員の社会保険料の事業主負担分は、法人と同様に法定福利費として経費になります。自身の保険料とは扱いが異なるため、混同しないよう注意しましょう。
関連記事:事業主貸とは?事業主借との違いと仕訳例をわかりやすく解説
健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料には消費税がかからず、仕入税額控除の対象にもなりません。
会計ソフトでは、社会保険料の支払いを課税仕入れとして処理しないよう注意してください。税区分の表示や設定は、利用しているソフトの公式案内に従って確認しましょう。
また、社会保険料について仕入税額控除を受けるためのインボイスは必要ありません。ただし、納入告知書や納付記録など、会計処理の根拠となる書類は保存してください。
関連記事:非課税と不課税の違いとは?免税との区別と具体例をわかりやすく解説
社会保険料の勘定科目に関してよくある質問に回答します。
社会保険料の勘定科目は、会社負担分は法定福利費、従業員負担分は預り金で処理するのが原則です。会社負担分は費用、従業員負担分は従業員から預かっている負債として扱います。
また、従業員負担分を法定福利費のマイナスで処理する簡便法もあります。いずれの方法でも、最終的に費用として残るのは会社負担分だけです。
一般的に、社会保険料の会社負担分は、租税公課ではなく法定福利費で処理します。社会保険料は税金ではなく、従業員の医療や年金などの給付に充てられる保険料だからです。
なお、延滞金は租税公課などで処理する場合があります。
会社負担分の社会保険料は、法定福利費として経費(損金)になります。一方、従業員負担分は預かっているお金のため、会社の経費にはなりません。
個人事業主自身の国民健康保険料や国民年金保険料も、事業の経費にはなりません。ただし、確定申告では社会保険料控除の対象となります。
社会保険料の勘定科目は、原則として会社負担分が法定福利費、従業員負担分が預り金です。従業員負担分は、簡便法を用いて法定福利費のマイナスで処理するケースもあります。
また、納付前の会社負担分は未払金、労働保険の概算保険料に含まれる従業員負担分は立替金などで処理するのが一般的です。延滞金が生じた場合は、租税公課や雑損失など保険料とは別の勘定科目で処理しましょう。
なお、個人事業主が自身の国民健康保険料などを事業用口座から支払った場合は、原則として事業主貸を用います。
社会保険料をはじめ、給与まわりの勘定科目は迷いやすい分野です。 勘定科目の選び方や仕訳を確認したい方は、以下の資料もぜひご活用ください。