更新日:2026.10.27

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棚卸資産回転期間とは、在庫(棚卸資産)を仕入れてから販売するまでに、平均してどのくらいの期間がかかっているかを示す指標です。一般的に、期間が短いほど在庫が早く販売され、効率よく売上に結びついていると判断できます。
在庫を長く抱えると、仕入れに使った資金が手元に戻らず、保管コストの負担や売れ残りのリスクが大きくなります。決算書から棚卸資産回転期間を正しく計算して推移を確認すれば、過剰在庫や資金繰りの悪化に早めに気づけるでしょう。
本記事では、棚卸資産回転期間の意味や計算方法、棚卸資産回転率との違いをわかりやすく解説します。数値の見方や目安、回転期間を短くする方法も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
棚卸資産回転期間とは、棚卸資産(在庫)がどのくらいの期間で入れ替わっているかを示す財務指標です。平均して何日分、または何ヶ月分の在庫を抱えているかを表します。
商品や原材料は、仕入れてから販売されるまでの間、在庫として保有されるのが一般的です。在庫が売れずに残る期間が長くなるほど、仕入れに使った資金を回収できない状態が続きます。また、倉庫代などの保管費用がかさむうえ、値下げや廃棄による損失が生じる点も問題です。
その点、棚卸資産回転期間を算出すれば、在庫の滞留状況を具体的な数値で把握できます。たとえば、棚卸資産回転期間が45日であれば、仕入れた商品が平均して約45日で販売されていると読み取れます。
棚卸資産回転期間の計算に使う棚卸資産には、販売目的で保有する商品や製品のほか、製造途中の仕掛品や原材料なども含まれます。
主な棚卸資産は以下のとおりです。
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区分 |
内容 |
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商品 |
販売するために仕入れた物品 |
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製品 |
自社で製造して完成した物品 |
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半製品 |
製造途中でも、そのまま販売できる状態のもの |
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仕掛品 |
製造途中にあり、そのままでは販売できないもの |
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原材料 |
製品を作るために仕入れた材料 |
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貯蔵品 |
事務用消耗品や包装材料など、未使用のまま保有しているもの |
棚卸資産に該当するかどうかは、物の種類ではなく保有する目的によって判断するのが基本です。たとえば、自動車販売会社が販売するために保有する車は、商品として棚卸資産に含まれます。
一方、同じ会社が営業活動に使う社用車は、固定資産(車両運搬具)として計上します。不動産会社が販売目的で保有する土地や建物も、棚卸資産として扱われるのが一般的です。固定資産を含めて計算すると、回転期間が実態より長く算出されるため注意しましょう。
なお、棚卸資産は、貸借対照表の資産の部のうち、流動資産に表示されます。計算する際は、決算書に記載された商品・製品・仕掛品・原材料などの合計額を使いましょう。
関連記事:棚卸資産とは?区分・評価方法・仕訳と決算で迷いやすい実務ポイントを解説
棚卸資産回転期間は、棚卸資産を売上原価で割って計算するのが一般的です。棚卸資産は原則として仕入れや製造にかかった原価で評価されるため、売上高よりも売上原価と比較した方が、実態に近い数値になりやすいとされます。
年間の売上原価を使う場合、日数・月数は以下の式で求めます。
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棚卸資産回転期間(日)=棚卸資産÷売上原価×365日 |
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棚卸資産回転期間(ヶ月)=棚卸資産÷(売上原価÷12) |
たとえば、棚卸資産が1,500万円、年間の売上原価が1億2,000万円の場合、計算結果は次のとおりです。
期首と期末で棚卸資産の残高が大きく異なる場合は、以下のように期首と期末の平均残高を用いて計算する方法があります。
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棚卸資産回転期間(日)=(期首の棚卸資産+期末の棚卸資産)÷2÷売上原価×365日 |
さらに精度を高めたい場合は、月次試算表から各月末残高の平均を使う方法も有効です。
なお、製造業では、棚卸資産のうち仕掛品や原材料の割合が大きくなる傾向があります。そのため、棚卸資産の合計額で計算した回転期間だけでは、どの段階で在庫が滞っているかまではわかりにくいのが難点です。
回転期間が長くなっているときなどは、製品・仕掛品・原材料の区分ごとに計算すると、原因を探りやすくなります。区分ごとに計算する場合は、原材料は材料費、仕掛品は当期製品製造原価を分母とする方法もあります。
関連記事:原価計算とは?目的・種類・やり方をわかりやすく解説
棚卸資産回転期間と棚卸資産回転率は、同じ在庫の効率を異なる単位で表した指標です。回転率は1年間に在庫が何回入れ替わったか、回転期間は在庫が入れ替わるまでに何日(何ヶ月)かかるかを示します。
具体的な違いは以下のとおりです。
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項目 |
棚卸資産回転率 |
棚卸資産回転期間 |
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示すもの |
1年間に在庫が入れ替わる回数 |
在庫が入れ替わるまでの期間 |
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計算式 |
売上原価÷棚卸資産 |
棚卸資産÷売上原価×365日 |
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単位 |
回 |
日・月 |
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良好と判断される状態 |
数値が大きい |
数値が小さい |
回転期間(日)は365日を回転率で割った値であるため、計算の前提(分母・棚卸資産の残高)が同じであれば、どちらかを計算することでもう一方も求められます。たとえば、回転率が8回の場合、「365日÷8回≒45.6日」が回転期間です。
一般的に、回転率が高いほど、また回転期間が短いほど、在庫が効率よく販売されていると判断できます。回数で見るか期間で見るかは、目的に応じて使い分けましょう。
棚卸資産回転期間は、売上債権回転期間・仕入債務回転期間と組み合わせると、事業全体の資金の流れを把握できます。仕入れから代金の回収までに、資金がどのくらいの期間拘束されているかがわかるためです。
3つの回転期間が示す内容は、以下のとおりです。
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指標 |
示すもの |
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棚卸資産回転期間 |
仕入れてから販売するまでの期間 |
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売上債権回転期間 |
販売してから代金を回収するまでの期間 |
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仕入債務回転期間 |
仕入れてから代金を支払うまでの期間 |
3つの回転期間を組み合わせた指標を、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)と呼びます。
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CCC=棚卸資産回転期間+売上債権回転期間-仕入債務回転期間 |
たとえば、棚卸資産回転期間が45日、売上債権回転期間が60日、仕入債務回転期間が40日の場合、CCCは65日です。仕入代金を支払ってから販売代金を回収するまでの約65日間は、一般的に自己資金や借入金などで運転資金を賄う必要があります。
なお、CCCの計算方法には、3つの回転期間の分母をすべて売上高にそろえる方法や、棚卸資産・仕入債務は売上原価、売上債権は売上高を使う方法などがあります。他社や過去の数値と比較する際は、同じ計算方法で算出しましょう。
関連記事:売上債権回転期間とは?計算式・目安と短縮する方法をわかりやすく解説
棚卸資産回転期間は、一般的に短い方が望ましいとされます。ただし、短すぎても問題が生じる場合があるため、数値の背景まで確認することが大切です。
棚卸資産回転期間が長い場合と短い場合に考えられる状態を解説します。
回転期間が長いときは、在庫が売れずに滞留している可能性があります。考えられる主な原因は、以下のとおりです。
在庫が滞留すると、保管費用がかさみ、仕入れに使った資金も回収できないままです。
また、販売価格の下落や品質の劣化などにより収益性が低下した在庫は、会計上、帳簿価額を切り下げる処理(評価損の計上)が必要になる場合があります。
なお、法人税法上、原価法を採用している場合に評価損を損金算入できるのは、災害による著しい損傷や著しい陳腐化などが生じ、損金経理をした場合に限られるのが原則です。一方、低価法を選定して届け出ている場合は、期末の時価が原価法による評価額を下回ると時価で評価でき、その差額は税務上も損金の額に算入されます。
回転期間が前期より長くなっているときは、商品別の在庫を確認し、原因を特定しましょう。
関連記事:損金算入・不算入とは?経理初心者が知っておくべき勘定科目の考え方と実務の違い
回転期間が短いときは、在庫が早く販売され、資金効率が高い状態と考えられます。在庫に拘束される資金が少なくて済むため、一般的には資金繰りの面で有利です。ただし、実際に現金が入るタイミングは販売代金の回収条件によって異なるため、売上債権回転期間もあわせて確認しましょう。
回転期間が短すぎる場合は、在庫が不足していないかを確認しなければなりません。在庫を絞りすぎると、欠品が発生して注文に応えられなくなり、販売機会を逃すおそれがあるためです。
また、少量の仕入れを頻繁に繰り返している場合は、発注や配送にかかるコストが増えている可能性もあります。回転期間が短いことだけで良好と判断せず、欠品の発生状況や仕入れコストもあわせて確認しましょう。
棚卸資産回転期間の適正な水準は、業種や取り扱う商品によって大きく異なります。そのため、一律の基準を当てはめるのではなく、自社の過去の推移や同業種の水準と比較して評価することが重要です。
財務省の法人企業統計調査にもとづく資料では、2024年度の棚卸資産回転期間が以下のように示されています。
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区分(全規模) |
棚卸資産回転期間 |
日数換算(参考) |
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全産業 |
1.12ヶ月 |
約34日 |
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製造業 |
1.64ヶ月 |
約50日 |
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非製造業 |
0.92ヶ月 |
約28日 |
(出典:法人企業統計からみえる企業の財務指標|財務省 財務総合政策研究所)
上記は売上高を分母とし、棚卸資産に期首・期末の平均残高を用いた数値です。売上原価を分母として計算した自社の数値と比べる場合は、同じ方法で計算し直してください。
なお、製造業は、原材料や仕掛品を抱える期間があるため、非製造業より回転期間が長い傾向にあります。一方、生鮮食品を扱う小売業や飲食業などは、商品が日持ちしないため、一般的に回転期間が短くなりやすいのが特徴です。
棚卸資産回転期間を正しく分析・比較するためのポイントとして、以下の2点を解説します。
棚卸資産回転期間を分析する際は、期末在庫が一時的に増減していないかを考慮する必要があります。決算書の棚卸資産は期末時点の残高であり、年間を通じた平均的な在庫量とは限らないためです。
たとえば、繁忙期の直前が決算日の企業では、販売に備えて在庫を積み増しているケースが多く、回転期間が長く算出される傾向にあります。反対に、決算前にセールなどで在庫を大きく減らした場合は、実態より短い数値になります。
期末在庫の偏りによる影響を抑えるには、期首と期末の平均残高を使って計算する方法が有効です。また、月次の試算表をもとに月ごとの推移を確認すれば、季節による変動も把握しやすくなります。
棚卸資産回転期間を他社や業界の数値と比較する際は、計算方法をそろえることが重要です。分母に売上原価と売上高のどちらを使うか、棚卸資産に期末残高と平均残高のどちらを使うかで、数値が大きく変わるためです。
たとえば、棚卸資産が1,500万円、売上原価が1億2,000万円、売上高が1億8,000万円の場合、売上原価で計算すると1.5ヶ月、売上高で計算すると1.0ヶ月になります。
外部の数値と比較するときは、計算式を確認し、同じ方法で自社の数値を計算し直しましょう。自社の過去の数値と比較する場合も、毎期同じ計算方法を継続してください。
棚卸資産回転期間を短くするには、在庫を適正な量に保ち、売れ残りを減らすことが基本です。ただし、在庫を減らしすぎると欠品につながるため、販売状況を見ながら調整する必要があります。
ここでは、棚卸資産回転期間の主な改善方法として、以下の3つを解説します。
棚卸資産回転期間を短くするには、需要予測にもとづいて発注量を調整することが効果的です。勘や経験だけで発注すると、実際の需要を上回る量を仕入れてしまい、回転期間が長くなりやすくなります。
具体的には、過去の販売実績や季節ごとの売れ行き、キャンペーンの予定などをもとに、商品ごとの販売数量を予測します。そのうえで、在庫が一定の水準を下回ったときに発注する発注点管理を取り入れると、必要以上の在庫を抱えずに済むでしょう。
在庫管理システムを活用すれば、商品ごとの在庫数や販売数をリアルタイムで確認できる場合もあります。需要予測と実績の差を定期的に検証し、発注量を見直してください。
長期間売れていない在庫は、早めに処分を検討することが重要です。処分を先延ばしにすると、保管コストがかさむうえに、在庫の価値がさらに下がるおそれがあります。
処分の方法には、値引き販売やセット販売、アウトレット販売、廃棄などがあります。値引きによって販売価格が原価を下回ったとしても、保管を続けるよりは損失を抑えられるケースも少なくありません。
不良在庫を把握する場合は、棚卸しの機会を活用しましょう。在庫の数量や状態を確認する際に、最後に販売された日から一定期間が過ぎた在庫や、破損・型落ちした在庫もあわせて洗い出すと、処分の対象を整理しやすくなります。そのうえで、処分の基準と承認の手順を社内でルール化しておけば、不良在庫が積み上がるのを防げます。
関連記事:棚卸しとは?目的・種類・手順から評価方法までわかりやすく解説
商品点数や仕入れ先の見直しも、棚卸資産回転期間の短縮につながります。取り扱う商品が多すぎると、1点ごとの在庫を細かく管理しきれず、売れない商品が滞留しやすいためです。また、仕入れ先の最低発注数量が大きい場合や、納品までに時間がかかる場合は、必要以上の在庫を抱え、回転期間が長くなることもあります。
商品点数については、商品ごとの売上高や粗利を比較し、売上への貢献が小さい商品の取り扱いを縮小する方法があります。仕入れ先に対して、発注単位の引き下げや納期の短縮を交渉したり、条件に合う別の仕入れ先を検討したりすれば、必要な分だけ在庫を持つことが可能です。
ただし、小ロットで仕入れる場合は、必要な量を確保するために発注の回数が増え、発注や配送にかかるコストがかさむ可能性があります。在庫の削減効果と仕入れコストのバランスを確認しながら、見直しを進めましょう。
在庫の保管費用など、経理部門で取り組めるコスト削減の進め方を知りたい方は、以下の資料もぜひご活用ください。
「【調査レポート】経理部門が押さえておきたいコスト削減の実態と課題」を無料ダウンロード
棚卸資産回転期間に関してよくある質問に回答します。
棚卸資産回転期間が長くなる主な原因は、需要を上回る仕入れによる過剰在庫や、売れ残り・型落ちによる不良在庫です。また、繁忙期の前に在庫を積み増している場合など、期末在庫が一時的に増えているだけのケースもあります。
回転期間が長くなったときは、商品別の在庫や月ごとの推移を確認し、原因を見極めましょう。
棚卸資産回転期間が短い場合は、在庫が早く販売されている状態と考えられます。在庫に拘束される資金が少なく済むため、一般的に資金繰りの面で有利です。
ただし、短すぎる場合は在庫不足による欠品で、販売機会を逃しているおそれがあります。欠品の発生状況や仕入れコストもあわせて確認しましょう。
棚卸資産回転期間を日数で求める場合は「棚卸資産÷売上原価×365日」、月数で求める場合は「棚卸資産÷(売上原価÷12)」で計算するのが一般的です。
分母に売上高を使う方法もあるため、他社や業界の数値と比較する際は、計算方法をそろえましょう。また、期首と期末の棚卸資産の平均を使うと、より実態に近い数値になりやすくなります。
棚卸資産回転期間は、在庫を仕入れてから販売するまでの平均期間を示す指標です。一般的に「棚卸資産÷売上原価×365日」で計算し、期間が長い場合は過剰在庫や不良在庫、短すぎる場合は欠品の可能性が考えられます。
適正な水準は業種によって異なるため、自社の過去の推移や同業種の水準と比較して評価することが大切です。回転期間が長くなっているときは、発注量の調整や不良在庫の処分、商品点数・仕入れ先の見直しによって短縮を目指しましょう。
棚卸資産回転期間を定期的にモニタリングするには、月次決算を早期化し、 在庫・売上債権・仕入債務の数値をタイムリーに把握できる体制が欠かせません。 経理業務の効率化に取り組みたい方は、以下の資料もぜひご活用ください。