更新日:2026.09.18

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「棚卸しはどのように進めればよい?」「実地棚卸と帳簿棚卸は何が違う?」など、実務で疑問を感じる方もいるでしょう。
棚卸しとは、商品や原材料などの在庫を確認し、数量や金額を把握する作業です。正確な在庫状況を把握するだけでなく、売上原価や利益を正しく計算するためにも欠かせません。
この記事では、棚卸しの意味や目的、具体的な手順をわかりやすく解説します。棚卸資産の評価方法や実施するタイミング、よくあるミス、作業を効率化する方法についても紹介します。
棚卸しとは、企業が保有する商品や製品、原材料などの在庫の数量や状態を確認し、帳簿上の在庫と照合する作業です。
棚卸しは、単に在庫の数を確認するだけではありません。期末に保有する棚卸資産の数量や金額は、売上原価や利益の計算に影響するため、決算や税務申告においても重要です。
そのため、小売業や飲食業、製造業など、商品や原材料といった在庫を保有する事業では、決算時に適切な棚卸しを行い、期末時点の在庫を正確に把握する必要があります。
棚卸資産とは、販売や製造などを目的として保有している商品や原材料などの資産です。
たとえば、小売業では販売するために仕入れた商品、製造業では完成した製品のほか、製造に使用する原材料や製造途中の仕掛品などが該当します。また、事業で使用する消耗品のうち、期末時点で未使用のものなどが棚卸資産に含まれる場合もあります。
決算では、期末時点で保有している棚卸資産の数量と金額を適切に把握することが重要です。
関連記事:棚卸資産とは?区分・評価方法・仕訳と決算で迷いやすい実務ポイントを解説
棚卸しには、大きく分けて「実地棚卸」と「帳簿棚卸」の2つがあります。それぞれの違いは以下のとおりです。
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項目 |
実地棚卸 |
帳簿棚卸 |
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方法 |
実際の在庫を数えて確認する |
入出庫などの記録から在庫数量を算出する |
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確認する在庫 |
実際に存在する在庫 |
帳簿上の在庫 |
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特徴 |
紛失や破損なども確認できる |
日々の記録から在庫を把握できる |
帳簿上の数量と実際の在庫数量は、記録漏れや紛失などによって一致しない場合があります。そのため、実地棚卸で現物を確認し、帳簿上の在庫数量と照合することが重要です。
棚卸しは、正確な在庫数を把握するだけでなく、売上原価や利益を正しく計算するためにも重要な業務です。
ここでは、棚卸しを行う主な目的を3つ紹介します。
棚卸しを行う目的のひとつは、実際に保有している在庫の数量を正確に把握することです。
帳簿や在庫管理システムで在庫を管理していても、入力ミスや入出庫の記録漏れなどによって、帳簿上の数量と実際の在庫数量に差が生じることがあります。
実地棚卸によって現物を確認し、帳簿上の数量と照合することで、実際の在庫状況を正確に把握できます。適切な在庫量を維持し、欠品や過剰在庫を防ぐためにも、正確な在庫数の把握が重要です。
決算では、当期に販売した商品の原価である売上原価を計算し、利益を確定させる必要があります。
商品を仕入れて販売する企業では、売上原価は以下の計算式で求められます。
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売上原価=期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高 |
期末時点の棚卸資産を正確に把握できていないと、売上原価がずれ、利益も正しく計算できません。そのため、棚卸しによって期末在庫の数量や金額を正確に把握することが重要です。
棚卸しでは、在庫の数量だけでなく、商品の状態も確認できます。そのため、破損や劣化、紛失など、帳簿や在庫管理システムだけでは把握しにくい問題の発見にもつながります。
また、長期間売れていない滞留在庫を把握する機会にもなるでしょう。問題のある在庫を早期に発見することで、処分や仕入れ量の調整など、在庫管理の改善につなげられます。
棚卸しのなかでも、実地棚卸は、主に以下の手順で進めます。
棚卸しを正確かつスムーズに行うためには、当日の作業だけでなく事前準備も重要です。それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。
まずは、どのような方法で実地棚卸を行うか決めます。代表的な方法には、「リスト方式」と「タグ方式」の2つがあります。
リスト方式とは、帳簿や在庫管理システムなどをもとに作成した在庫リストを使って、実際の在庫を確認する方法です。リストに記載された品目と現物を照合しながら、実際の数量を記録していきます。
あらかじめ在庫情報が整理されているため、比較的スムーズに作業を進められる点がメリットです。一方、リストに記載されていない在庫を見落とす可能性があるため、保管場所にある現物を漏れなく確認する必要があります。
タグ方式とは、在庫を確認する際に棚札(タグ)を取り付け、品名や数量などを記録する方法です。棚札を回収・集計して、実際の在庫数量を把握します。
確認済みの在庫を判別しやすいため、数え漏れや二重カウントを防ぎやすい点がメリットです。一方、棚札の作成や配布、回収、集計などに手間がかかるため、事前に運用ルールを決めておく必要があります。
在庫の種類や数量、保管場所、作業にかけられる人員などを考慮して、自社に適した方法を選びましょう。
棚卸しを始める前に、対象となる在庫を記録するための棚卸表を準備します。
棚卸表に記載する主な項目は、以下のとおりです。
必要な項目をあらかじめ設けておくことで、在庫の確認や帳簿数量との照合をスムーズに進められます。
棚卸表などを使って実際の在庫を数え、数量を記録します。その後、確認した実在庫の数量と帳簿上の在庫数量を照合し、差異がないか確認しましょう。
複数人で作業する場合は、担当する品目やエリアを明確に分けておくことが重要です。誰がどこまで確認したのかを明確にすることで、数え漏れや二重カウントを防ぎやすくなります。
実在庫と帳簿上の在庫数量に差がある場合は、原因を確認します。差異が発生する原因には、入出庫の記録漏れや入力ミス、商品の紛失・破損など、さまざまな理由が考えられます。
原因を確認したうえで、必要に応じて帳簿や在庫データを修正しましょう。また、数値を合わせるだけでなく、差異が生じた原因を記録・分析することで、同じ問題の再発防止や在庫管理の改善につなげられます。
棚卸資産の評価では、主に原価法と低価法という考え方があります。
それぞれの特徴を確認していきましょう。
原価法とは、棚卸資産の取得原価をもとに評価する方法です。取得時期や価格が異なる商品を保有している場合は、一定の方法に基づいて期末時点の棚卸資産の金額を算出します。
原価法による代表的な評価方法には、先入先出法や総平均法、移動平均法などがあります。
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評価方法 |
算出方法・特徴 |
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先入先出法 |
先に仕入れたものから先に払い出したとみなし、期末に残った棚卸資産の取得原価を算定する |
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総平均法 |
一定期間の期首在庫と仕入れ分の取得原価を合計し、総数量で割った平均単価をもとに算定する |
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移動平均法 |
商品を仕入れるたびに、それまでの在庫と新たな仕入れ分から平均単価を計算し直す |
どの方法を採用するかによって棚卸資産の評価額が変わる場合があるため、自社が採用している評価方法を確認しておくことが重要です。
低価法とは、棚卸資産の取得原価と期末時点の価値を比較し、期末時点の価値が取得原価を下回っている場合に、その低下を棚卸資産の評価額に反映する方法です。
たとえば、商品の劣化や陳腐化、市場価格の下落などによって在庫の価値が低下している場合、取得時の金額のままでは実態よりも資産を高く評価することになります。
低価法を適用して価値の低下を評価額に反映することで、期末時点の棚卸資産の状況を適切に決算書へ反映できます。
棚卸しを行うタイミングは、決算時に期末の棚卸資産を把握するために行うほか、在庫管理の精度を高めるために、月次や一定の周期で実施する場合もあります。
ここでは、決算時と月次・定期的に行う棚卸しについて、それぞれ解説します。
決算時には、期末時点で保有している棚卸資産の数量や金額を確定するために棚卸しを行います。期末棚卸高は売上原価や利益の計算に影響するため、決算において重要な作業です。
実地棚卸は、原則として決算日を基準に実施します。決算日より前後に行う場合は、その間に発生した仕入れや販売、入出庫などを記録し、決算日時点の在庫数量を適切に把握できるように調整する必要があります。
関連記事:【概要解説】年次決算とは?月次との違いと「手間のかかる業務」を減らす実務ポイント
決算時だけでなく、月次や四半期など一定の周期で棚卸しを行う方法もあります。定期的に実在庫と帳簿上の在庫を照合することで、数量のズレや記録ミスなどを早期に発見できます。
また、在庫状況を継続的に確認すれば、過剰在庫や欠品、滞留在庫などの把握にもつながるでしょう。在庫の種類や数量が多い企業では、すべての在庫を一度に確認するのではなく、対象を分けて定期的に棚卸しを行う方法も有効です。
関連記事:【概要解説】月次決算の概要と流れを把握。どの業務負荷を減らせば乗り越えられるかを解説
棚卸しは多くの在庫を確認するため、数え漏れや二重カウントなどのミスが発生することがあります。正確に棚卸しを行うためには、起こりやすいミスを把握し、事前に対策を講じておくことが重要です。
ここでは、棚卸しで起こりやすいミスと注意点を解説します。
在庫の種類や数量が多い場合は、一部の在庫を数え忘れたり、同じ在庫を二重にカウントしたりするミスが起こりやすくなります。
対策として、担当者ごとに作業するエリアを明確に分け、確認済みの場所や在庫がわかるようにしておきましょう。カウント後にチェックやタグを付けるなど、作業の進捗を可視化する方法も有効です。
また、棚や保管場所ごとに一定の順序でカウントするなど、事前に作業ルールを統一しておくこともミスの防止につながります。
棚卸し中に商品の入庫や出庫が発生すると、カウントしている途中で在庫数量が変わり、実際の数量と棚卸表の数量にズレが生じる可能性があります。
そのため、棚卸しを行っている間は、できる限り商品の入出庫を停止して在庫を動かさないようにしましょう。
業務上、入出庫を止めることが難しい場合は、棚卸し中に動いた商品の品目や数量を別途記録します。そして、棚卸し終了後に反映できるよう、あらかじめ入出庫時のルールを決めておくことが重要です。
棚卸しは、在庫の種類や数量が多いほど時間や人手がかかります。棚卸表の見直しやシステムの活用などによって、作業の効率化やミスの削減につなげることが重要です。
ここでは、棚卸しを効率化する3つの方法を紹介します。
棚卸表や在庫管理のフォーマットを整えておくことで、棚卸し当日の作業をスムーズに進められます。
たとえば、品目コードや品名、保管場所などの項目を統一し、在庫を探しやすい順番に整理しておくと、確認や記入にかかる時間を短縮することが可能です。
また、記入方法や作業手順を統一しておくことも、担当者による作業のばらつきやミスの防止につながります。
在庫管理システムやバーコード、ハンディターミナルなどのツールを活用する方法もあります。
バーコードを読み取って在庫数量を記録できれば、手書きによる記入やデータ入力の手間を減らせます。在庫管理システムと連携することで、帳簿上の在庫と実在庫の照合や棚卸差異の確認を効率化することも可能です。
自社の在庫量や棚卸しにかかる作業時間を踏まえて、適したシステムやツールの導入を検討しましょう。
循環棚卸とは、すべての在庫を一度に確認するのではなく、対象を分けて定期的に棚卸しを行う方法です。一度に確認する在庫を減らせるため、棚卸し作業の負担を分散できます。
たとえば、在庫を品目や保管場所ごとに分け、一定のスケジュールで順番に確認します。
在庫の重要度や動きに応じて確認頻度を設定するなど、自社に適したルールで運用することがポイントです。
棚卸しに関するよくある質問に回答します。
棚卸しは、必ずしも毎月行う必要はありません。実施する頻度は、在庫の種類や数量、変動の大きさ、企業の管理方針などによって異なります。
在庫の動きが大きい場合や、帳簿と実在庫の差異を早期に把握したい場合は、月次棚卸や循環棚卸を取り入れる方法があります。自社の在庫状況や作業負担を考慮して、適切な頻度を設定しましょう。
棚卸しは、特定の時点で実際の在庫数量や状態を確認し、帳簿上の在庫と照合する作業です。
一方、在庫管理は、商品の入出庫や保管状況、在庫数量などを継続的に把握・管理する業務を指します。棚卸しは、日々の在庫管理が正しく行われているかを確認する役割もあります。
棚卸しを正確に行うためには、対象範囲や担当者、カウント方法などのルールを事前に決めておくことが重要です。
棚卸し中はできる限り在庫の入出庫を停止し、担当者ごとに作業範囲を明確にします。また、数え漏れや二重カウントを防ぐ方法を決め、実在庫と帳簿上の数量に差があった場合は原因を確認しましょう。
決算では、期末時点の棚卸資産の数量や金額を適切に把握する必要があります。期末棚卸高は売上原価や利益の計算に影響するためです。
ただし、必ずしも決算日当日にすべての在庫を数えなければならないわけではありません。決算日前後に実地棚卸を行う場合は、その間の入出庫を記録・調整し、決算日時点の在庫を正確に把握できるようにします。
棚卸しは、実際の在庫数量や状態を確認し、帳簿上の在庫と照合する重要な業務です。正確な在庫を把握することで、売上原価や利益を適切に計算できるほか、紛失や劣化、滞留在庫などの発見にもつながります。
棚卸しを正確かつ効率的に行うには、事前に対象範囲や作業方法を決め、数え漏れや二重カウントを防ぐルールを整えておくことが大切です。在庫量が多い場合は、在庫管理システムや循環棚卸なども活用し、自社に合った方法で継続的な在庫管理に取り組みましょう。
棚卸資産をはじめ、日々の経理業務では「どの勘定科目で処理すればよい?」と迷う場面も少なくありません。 正確な経理処理を行うための参考資料として、ぜひ以下資料をご活用ください。