更新日:2026.10.22

ー 目次 ー
月次決算とは、会社の取引を1ヶ月単位で締め、売上・費用・利益や資産・負債の状況を確認する業務です。法律で一律に義務づけられているものではありませんが、経営状況の変化を早期に把握するため、多くの企業で経営管理に活用されています。
この記事では、月次決算の目的や年次決算・試算表との違い、実施するメリット、具体的な進め方、早期化するためのポイントを解説します。
月次決算とは、会計期間を1ヶ月ごとに区切り、その月の経営成績と月末時点の財政状態を確認するための社内管理業務です。
月内に発生した取引を記帳するだけでなく、帳簿残高の照合や月次決算整理仕訳を行い、月次試算表や損益計算書、貸借対照表などを作成します。
月次決算で作成・確認する主な資料は次のとおりです。
|
資料 |
確認できる内容 |
|
月次試算表 |
勘定科目ごとの発生額と残高 |
|
月次損益計算書 |
1ヶ月間の売上・費用・利益 |
|
月次貸借対照表 |
月末時点の資産・負債・純資産 |
|
予算実績比較表 |
予算と実績の差額・達成率 |
|
前年同月比較表 |
前年同月からの増減 |
|
資金繰り表 |
今後の入金・支払いと現金残高の見込み |
月次決算は簡易的な決算と説明されることもありますが、必ずしも精度が低い決算を意味するわけではありません。
重要性の低い項目について簡便な計算や見積額を利用する場合はあるものの、会社の規模や経営管理の目的に応じて、年次決算に近い精度で処理することもあります。
毎月同じ基準で処理し、月ごとの数値を比較できる状態にすることが重要です。
月次決算と年次決算は、対象期間や目的、実施義務などが異なります。
年次決算では、貸借対照表や損益計算書などを作成します。株式会社は、会社法に基づき、各事業年度の計算書類や事業報告、その附属明細書を作成しなければなりません。また、法人税の確定申告書は、原則として事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に提出します。
一方、月次決算は法律で一律に義務づけられたものではなく、実施期限や作成資料も会社ごとに決められます。月次試算表や月次の貸借対照表・損益計算書、予算実績比較表などを作成し、経営者や社内の管理者が業績を確認するために利用します。
ただし、月次決算を簡便に行う場合でも、年次決算と会計処理の基準が大きく異なると、年度末に多くの修正が必要です。売上や費用を発生した月へ適切に計上し、月次と年次の数値に大きなずれが生じないよう運用しましょう。
関連記事:決算とは?目的・時期・流れ・主な決算書をわかりやすく解説 | 請求ABC
月次決算は毎月の業績や財政状態を確定・分析する一連の業務であるのに対し、試算表は各勘定科目の合計額や残高を一覧にした資料です。
両者の関係は、次のように整理できます。
試算表は月次決算の過程で作成・確認する資料のひとつです。試算表によって借方と貸方の合計額が一致していることは確認できますが、仕訳の計上漏れや勘定科目の選択ミスまで必ず発見できるわけではありません。
そのため、試算表を出力するだけで月次決算が完了するわけではなく、預金通帳や売掛金明細、買掛金明細、固定資産台帳などと帳簿残高を照合する必要があります。
さらに、前月や前年同月、予算と比較して数値の増減理由を分析することで、月次決算を経営判断に活用できるようになります。
月次決算を行う主なメリットは次のとおりです。
月次決算は数値を作成するだけでなく、その数値を経営判断へ活用することで効果を発揮します。
売上高や利益率、固定費などを毎月確認することで、業績の変化を早期に把握できます。
たとえば、売上高は前月と同程度でも、原材料費や外注費の増加によって粗利益率が低下している場合があります。年次決算まで確認しなければ、問題の発見と対策が遅れる可能性に注意が必要です。
月次決算で部門別・商品別・取引先別などの数値を確認すれば、どの事業や費用が利益へ影響しているかも分析しやすくなります。
月次の実績を予算や前年同月と比較すると、計画の進捗や季節変動を確認できます。
差額が生じた場合は、単に増減額を見るだけでなく、販売数量・販売単価・仕入価格・人員数などに分けて原因を分析しましょう。
たとえば、売上高が予算を下回っていても、翌月へ納品がずれただけなのか、受注そのものが減っているのかによって必要な対応は異なります。月次決算を経営会議と連動させ、分析結果を次月の行動へ反映することが重要です。
損益計算書上で利益が出ていても、売掛金の回収前に仕入代金や給与の支払いが発生すると、手元資金が不足する場合があります。
月次決算で現金・預金、売掛金、買掛金、借入金などの残高を確認し、資金繰り表と組み合わせることで、将来の資金不足を早期に予測が可能です。
不足が見込まれる場合は、請求・回収の早期化や支払条件の見直し、金融機関への相談などを余裕を持って検討できます。
毎月、残高の照合や固定資産の登録、未払費用の計上などを行っていれば、年次決算でまとめて確認・修正する項目を減らせます。
反対に、年次決算まで残高確認を行わないと、1年分の差額や不明取引をさかのぼって調べなければなりません。資料の紛失や担当者の記憶が曖昧になることで、確認に時間がかかる可能性もあります。
月次決算を継続することは、年次決算の早期化と正確性の向上にも効果的です。
月次決算は、次の4つの工程に分けると進捗を管理しやすくなります。
各工程の担当者と期限を決め、毎月同じ順序で進めましょう。
対象月の売上・仕入れを確定し、請求書・領収書・納品書・経費精算書などを回収します。確認する主な項目は次のとおりです。
資料の提出が遅れると、その後のすべての工程が遅れます。提出期限や提出方法を社内ルールとして定め、月末前から関係部署へ案内しましょう。
回収した証憑やデータをもとに仕訳を入力し、補助簿・管理資料と会計帳簿の残高を照合します。
主な確認対象は次のとおりです。
|
勘定科目 |
照合する資料 |
|
現金・預金 |
現金実査表、預金通帳、入出金明細 |
|
売掛金 |
請求管理表、入金明細 |
|
買掛金・未払金 |
支払予定表、請求書 |
|
棚卸資産 |
在庫管理表、棚卸表 |
|
固定資産 |
固定資産台帳、購入・除却資料 |
|
借入金 |
金融機関の残高証明書、返済予定表 |
残高に差異がある場合は、未処理取引、二重計上、振込手数料、値引き、返品などを確認します。
関連記事:残高確認とは?方法・差異の調べ方・残高確認書の書き方まで実務を解説
仕訳入力と残高確認が終わったら、その月の収益・費用を適切に表示するための月次決算整理仕訳を行います。
会社の業種や管理目的によって異なりますが、主な処理は次のとおりです。
企業会計原則では、損益計算書について、一会計期間に属する収益と、それに対応する費用を記載し、期間の利益を表示する考え方が示されています。また、企業会計原則注解では、重要性の乏しい項目については、利害関係者の判断を誤らせない範囲で、簡便な会計処理を採用できるとしています。
月次決算で見積額や簡便処理を使用する場合は、計算方法を社内ルールとして定め、毎月継続して適用しましょう。
すべての仕訳を反映したら、月次試算表や損益計算書、貸借対照表を出力します。決算整理仕訳で変動した勘定科目も含め、補助簿や管理資料と最終残高が一致しているか確認しましょう。
異常値や大きな差異が見つかった場合は、原因と対応方針を記載して経営者へ報告します。月次決算では、数値を確定するだけでなく、分析結果を経営者や関係部署と共有し、課題への対応につなげることが重要です。
月次決算に法定の完了期限はありません。必要な情報を経営判断に間に合う時期に提供できるよう、自社で締め日を設定します。
以下は、翌月10営業日目までに報告する場合の一例です。
|
時期 |
主な作業 |
|
月末前 |
証憑提出の案内、未処理取引の確認 |
|
翌月1~3営業日 |
売上・仕入れの締め、証憑回収、経費精算 |
|
翌月4~6営業日 |
仕訳入力、現預金・債権債務などの残高照合 |
|
翌月7~8営業日 |
月次決算整理仕訳、試算表の作成 |
|
翌月9~10営業日 |
数値分析、責任者の確認、経営会議への報告 |
上記はあくまで例であり、すべての会社が10営業日以内に完了させなければならないわけではありません。取引量や人員、拠点数、経営会議の日程などを考慮して設定します。
まずは現在の完了日を把握し、「翌月15営業日目から10営業日目へ短縮する」など、現実的な目標を設けるとよいでしょう。
月次決算の早期化では、経理担当者が締め日後に急いで処理するのではなく、月中から情報が集まる仕組みを整えることが重要です。
|
よくある遅延原因 |
改善策 |
|
請求書・経費精算の提出が遅い |
提出期限と提出方法を統一する |
|
担当者や進捗が分からない |
締め日程と担当者を一覧化する |
|
毎月同じ仕訳を手入力している |
定型仕訳や自動仕訳を設定する |
|
システム間で転記している |
請求・経費・会計システムを連携する |
|
残高差異を月末にまとめて調べる |
預金・売掛金などを月中から照合する |
|
確認項目が担当者ごとに異なる |
チェックリストと承認基準を共通化する |
|
少額の差異まで確定を待つ |
重要性基準と翌月修正ルールを定める |
見積額を使用した場合は、請求書などで実額が判明した時点で差額を調整します。見積計上した仕訳を取り消して実額を計上するなど、二重計上を防ぐ処理方法も決めておきましょう。
また、締め処理後に過去月の仕訳を自由に変更すると、報告済みの数値と帳簿が一致しなくなるため、締め後の修正方法と承認者も決めておくことも重要です。
関連記事:月次決算はチェックリストの作成で効率化!作成フローやメリットを解説【経理担当初心者必見】
ここでは、月次決算と試算表の違いや、実施期限、処理の精度など、月次決算についてよくある疑問に回答します。
月次決算は、一般の企業に対して一律に法律で義務づけられている業務ではありません。経営状況を早期に把握するため、会社が任意で実施する社内管理業務です。
一方、株式会社は各事業年度の計算書類を作成する必要があるため、月次決算と年次決算の位置づけは異なります。
月次決算は、証憑回収・仕訳入力・残高照合・決算整理仕訳・数値分析などを含む一連の業務です。試算表は、その過程で作成する勘定科目別の集計表です。
試算表を出力しただけでは残高の正確性まで確認できないため、補助簿や通帳などとの照合が必要です。
法律上の期限はありません。経営会議や予算管理に間に合うよう、翌月の早い段階に完了日を設定します。
取引量や社内体制によって適切な期限は異なるため、まずは現在の所要日数を測定し、段階的に短縮しましょう。
経営判断に影響する重要な取引は、月次でも適切に反映する必要があります。金額が確定していない場合は、契約内容や実績などに基づいて合理的に見積もります。
また、重要性の低い項目については、経営判断を誤らせない範囲で簡便な処理を採用できます。見積方法や簡便処理の基準を定め、継続して運用することが重要です。
月次決算とは、会社の取引を1ヶ月単位で締め、経営成績と財政状態を確認するための社内管理業務です。年次決算とは目的や法的な位置づけが異なり、試算表は月次決算の過程で作成する資料のひとつです。
月次決算を有効に活用するには、証憑の回収から残高照合、決算整理仕訳、数値分析、経営者への報告までを一連の業務として整える必要があります。
提出期限や担当者を明確にし、システム連携やチェックリストを活用することで、正確性を保ちながら早期化を進めましょう。
月次決算をはじめとした経理業務を効率化したい方は、以下の資料もご確認ください。