更新日:2026.08.19

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月次決算や年次決算では、残高試算表の金額を見るだけでなく、その数字が現金・預金・取引先別の債権債務・棚卸資産・固定資産などの実態と合っているかまで確かめる必要があります。
とはいえ、決算期は他の締め作業と重なり、残高確認に十分な時間を割けないという声も少なくありません。
本記事の前半では、勘定科目別の確認方法を一覧で押さえたうえで、差異が出たときの調べ方、取引先へ送る残高確認書の書き方を説明します。後半は効率よく残高確認を進める方法、工数を減らす外部委託の考え方までを、実務目線で整理します。
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はじめに、残高確認がどのような業務で、何のために行うのかを整理します。
残高確認とは、会計システムや総勘定元帳の帳簿残高を、現物・通帳・補助元帳・管理台帳・証憑・取引先からの回答などと照合し、帳簿の数字が実態と合っているかを確かめる作業です。
目的は、決算数値の裏づけを取り、記帳漏れや消込漏れを決算に持ち込まないことにあります。

残高試算表の貸借が一致していても、二重計上や科目誤りが隠れていることがあります。試算表は「帳簿内で合っているか」を見るもの、残高確認は「帳簿が帳簿の外の実態と合っているか」を確かめるもの、という違いを押さえておきます。
| 確認作業 | 主な確認内容 |
| 残高試算表の確認 | 勘定科目別の帳簿残高、貸借の一致、前月からの増減 |
| 補助元帳の確認 | 取引先別、口座別、資産別などの内訳 |
| 残高確認 | 帳簿残高と現物、外部資料、取引先の認識との一致 |
残高確認は月次・四半期・年度の各決算で行います。すべての科目を同じ頻度で見る必要はなく、現金・預金・売掛金・買掛金など変動の多い科目は毎月、棚卸資産や固定資産の現物確認は決算時に重点的に、と重要性と変動頻度で頻度を決めます。
確認の基本は、残高試算表で対象科目を把握し、補助元帳で内訳に分解し、現物や外部資料と突き合わせる流れです。勘定科目ごとに「どの帳簿を、何と照合するか」は次章で一覧にまとめます。

勘定科目ごとに照合する資料は異なります。まずは全体像を一覧で押さえ、つまずきやすいポイントを科目別に補足します。
勘定科目ごとに「どの帳簿を、何と照合するか」を整理すると、確認漏れを防ぎやすくなります。まずは代表的な科目について、照合する社内資料・外部資料・主な確認項目を一覧で示します。
| 確認対象 | 帳簿・社内資料 | 照合する資料・現物 | 主な確認項目 |
| 現金・小口現金 | 現金出納帳、小口現金出納帳 | 手元の現金 | 現物残高、未記帳、精算漏れ |
| 未使用の収入印紙等 | 貯蔵品台帳、管理表 | 未使用分の現物 | 購入、使用、廃棄の記録 |
| 預金 | 預金元帳 | 通帳、入出金明細、残高証明書 | 未記帳の入出金、手数料、基準日 |
| 借入金 | 借入金元帳 | 残高証明書、契約書、返済予定表 | 元金残高、利息、返済仕訳 |
| 売掛金・未収入金 | 得意先別補助元帳 | 請求書、入金明細、残高確認書 | 未入金、消込漏れ、返品、値引き |
| 買掛金・未払金 | 仕入先別補助元帳 | 請求書、支払明細、残高確認書 | 未計上、支払漏れ、締め日の違い |
| 商品・製品・原材料 | 在庫台帳 | 実地棚卸表、現物 | 数量差異、破損、滞留、社外在庫 |
| 建物・備品等 | 固定資産台帳 | 現物、請求書、稟議書、廃棄記録 | 取得、移設、遊休、売却、除却 |
残高証明書の例

科目別に、特に見落としやすいポイントを補足します。
金種別に数え、仮払いの未精算や領収書の未提出を確認し、可能なら管理者以外が立ち会うと客観性が高まります。
収入印紙・切手は貯蔵品として現物と台帳を照合します。
帳簿と銀行残高がずれる主因は、手数料の未計上・時間外入出金・基準日の相違。
借入金は元金と支払利息の区分、返済額を全額元金減にしていないかを確認します。
残高証明書は、基準日時点の残高を金融機関が証明する書面です。
不一致は「金額差異/消込の未実施/記帳タイミングのずれ」に分けると絞り込みやすくなります。金額が大きい・長期滞留の取引先は残高確認書で相手先認識と突き合わせます。
数量差異に加え、未計上入荷・未入荷計上・出荷済み未売上・社外在庫・預り在庫・滞留品を確認します。
注意点は、廃棄済みが台帳に残る「除却漏れ」と、使用中が未登録の「資産計上漏れ」です。取得時の稟議・請求書、廃棄時の承認記録も照合します。
棚卸資産の在高は、各事業年度終了時の実地棚卸しによって算定するのが原則です。国税庁の通達でも、業種・業態や資産の性質に応じた合理的な方法(部分計画棚卸しなど)を継続適用する場合は認めるとされていますが、いずれも帳簿数量だけで完結させず現物と照合する点は共通です。
参考:国税庁「法人税基本通達 第4節 棚卸しの手続」

差異が出たら、差額をすぐ雑損失・雑収入で埋めず、基準日→補助元帳→証憑の順に原因を特定します。ポイントは、差額の大小より「どの型の差異か」を見極めることです。
代表的な差異の種類と主な原因は次のとおりです。
| 差異の種類 | 主な原因 |
| タイミング差異 | 締め日の違い、月末入金、未取付の支払い、未検収 |
| 記帳漏れ | 手数料、返品、値引き、仕入、除却などの未計上 |
| 二重計上 | 同じ請求書や入出金データを重複して登録 |
| 科目誤り | 売掛金と未収入金、買掛金と未払金などの誤分類 |
| 消込誤り | 別の請求書や取引先へ入金・支払を充当 |
| 現物差異 | 現金不足、在庫紛失、固定資産の廃棄漏れ |
| 認識の相違 | 請求書未着、返品・値引きの未反映、締め日の違い |
代表的な2ケースの仕訳例です。
| ケース | 確認するポイント | 仕訳例 |
| 振込手数料550円の記帳が漏れていた | 帳簿の普通預金残高が銀行明細より550円多い場合、手数料が未計上でないかを確認する | (借)支払手数料 550 (貸)普通預金 550 |
| 除却済みの備品が固定資産台帳に残っていた | 取得原価・減価償却累計額・廃棄日を確認し、帳簿価額で除却損を計上する | (借)減価償却累計額 ×× (借)固定資産除却損 ×× (貸)工具器具備品 ×× |
固定資産除却損は帳簿価額などにより金額が変わります。現物がないことだけを理由に任意額で処理せず、取得資料と償却計算に基づいて算定します。
ここからが実務の要です。残高確認書は、自社が認識する売掛金・買掛金などの残高を取引先へ提示し、相手先の認識と一致しているかを確かめる書類です。
請求書や入出金明細だけでは解消できない差異や、長期滞留の残高を調べるときにも使います。
売掛金残高確認書の例

主な目的は、請求・計上漏れの発見、消込漏れの確認、返品・値引き・相殺の認識差の把握、長期滞留債権債務の原因調査、決算残高を確認した記録を残すことです。
すべての取引先へ一律送付せず、金額が大きい・長期滞留・過去に差異が出た取引先を優先する方法もあります。
相手先が回答しやすいよう、次の項目をそろえます。
| 記載項目 | 記載内容 |
| 宛先 | 取引先名、担当部署、担当者名 |
| 差出人 | 自社名、部署名、担当者、連絡先 |
| 基準日 | どの時点の残高を確認するか |
| 確認対象残高 | 自社が認識している売掛金等の残高 |
| 残高の内訳 | 請求日、請求書番号、請求額、入金額など |
| 回答欄 | 一致または不一致を選択する欄 |
| 差異記入欄 | 相手先の認識額と差異理由 |
| 回答期限 | 返送を依頼する期日 |
| 回答者情報 | 部署名、氏名、回答日 |
| 返信方法 | 郵送、メールなどの返送先 |
押さえるべきは3点です。

送付して回答をもらうだけでなく、帳簿との照合・差異調査・記録保存まで行って完了です。
①対象取引先を選定する
↓
②基準日時点の残高と内訳を確定する
↓
③残高確認書を送付する
↓
④回答を帳簿と照合する
↓
⑤差異の原因を調査する
↓
⑥修正、承認、記録保存を行う
なお、債権債務管理のために自社が送る残高確認書と、会計監査で監査人が行う外部確認は別物です。
監査上の確認は監査人が確認先の選定・送付・受領を管理するため、会社が独自に回収した確認書をそのまま監査手続と同一視することはできません。
不一致の回答が届いたら、次の順で確認します。
相手先の金額へ直ちに帳簿を合わせず、請求書・入出金明細・契約書で原因を確認してから修正します。
残高確認は、担当者が帳簿を見ながら都度判断するだけでは、確認漏れや属人化が起きやすい業務です。
「毎回どこから手をつけるか迷う」「担当者が変わると精度が落ちる」といった悩みは、確認の手順や資料を仕組みとして整えることで大きく減らせます。
ここからは、精度とスピードを両立させるための打ち手を紹介します。
まず、「何を・いつ・誰が確認し・誰が承認するか」をルール化し、残高確認一覧表や月次決算チェックリストにまとめておきます。
手順が言語化されていれば、担当者が交代しても同じ品質を保ちやすくなります。
あわせて、科目ごとに「どこまで確認できたら完了とみなすか」の基準も決めておくと、確認の深さが人によってばらつくのを防げます。
たとえば預金なら「残高証明書と一致」、売掛金なら「補助元帳と入金明細が一致し、滞留分の理由が説明できる」など、完了ラインを明文化しておくと安心です。
確認頻度や担当者を整理する際は、経理業務の年間スケジュールを解説した記事もあわせて確認すると、月次・四半期・年次の確認タイミングを設計しやすくなります。
特に残高確認書は、送付してからが本番です。送付先・送付日・回答期限・回答状況(未回答/一致/不一致)・差異対応の担当者を一覧化すると、回収の遅れや対応漏れを一目で把握できます。決算直前に未回答が集中するのを防ぐうえでも効果的です。
次のような管理表をつくり、状況を色分けしておくと、誰が見ても進捗が分かる状態になります。
| 管理項目 | 記載する内容の例 |
| 取引先・基準日 | 確認先の会社名、確認対象の基準日 |
| 送付日・方法 | 発送した日付、郵送かメールかの区分 |
| 回答期限・状況 | 返送依頼日、未回答/一致/不一致の区分 |
| 差異の有無・内容 | 差異金額、相手先の認識額、差異理由 |
| 対応担当・期限 | 差異調査の担当者、解消の目標日 |
未回答先は締め日の数日前にリマインドする、不一致先は差異内容ごとに担当を割り振る、といった運用まで決めておくと、少人数の経理部でも回収と調査を滞りなく進められます。
差異調査のスピードは、請求書・入出金明細・棚卸表・契約書などにすぐアクセスできるかで大きく変わります。「証憑を探すだけで半日かかった」という事態を避けるため、取引先別・基準日別に整理し、確認のたびに探し直さなくてよい状態にしておきます。
また、確認した事実そのものも記録に残すことが重要です。確認日・確認者・照合資料・差異内容・原因・修正結果までを一件ずつ残しておくと、翌月の再確認や監査対応の際に「誰が・いつ・何を根拠に確認したか」を説明できます。数字を合わせるだけでなく、説明できる状態にしておくことが、経理としての信頼につながります。
なお、確認に用いた帳簿書類や証憑は法令で定める期間の保存が必要で、会計システムの帳簿や電子的に受け取った請求書は電子帳簿保存法に沿った保存が求められます。保存ルールもあわせて決めておくと、確認から保存までを一連の流れとして運用できます。
参考:国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト
残高確認には、「ルール化すれば誰でも進められる定型作業」と、「経験や判断が必要な非定型作業」が混在しています。前者には、対象取引先の抽出、確認書の作成・発送、回答の回収・進捗管理などがあり、後者には、差異原因の分析や修正仕訳の判断が含まれます。
両者を切り分けておくと、定型作業は手順書やツールで効率化・標準化し、判断が必要な作業に担当者の時間を集中させる、というメリハリのある運用ができます。
この「切り分け」の発想は、次章で紹介する外部委託を検討する際の土台にもなります。

正直なところ、残高確認は経理にとって手間のかかる作業です。そのため、会計士と相談しながら、監査証明に欠かせない範囲へ手続きを絞って運用している企業も少なくありません。訴訟案件を確認する弁護士確認状、銀行口座の残高確認、売掛金の確認など、重要性の高い項目に的を絞るケースです。
一方で、監査対応とは別に、自社独自で取引先との金額の整合性を担保したいという目的で残高確認状を発行している企業もあります。取引先数が多いほど、発行から回収・照合までが大きな負担になり、業務効率化や外部委託を考える企業も少なくありません。
残高確認状の発行業務は、対象取引先の選定、基準日残高・内訳の確定、確認状の作成、送付、回答の受領、自社帳簿との照合と工程が多く、取引先数が増えるほど工数が膨らみます。
中間・本決算の準備期は他の締め作業とも重なり、担当者一人に負荷が集中しがちです。
こうした背景には、経理を含む管理部門の人手不足もあります。弊社の調査でも、人手不足を感じている企業は約4割にのぼりました。限られた人員で決算の精度と期日を守るには、定型かつ工数の大きい業務を切り分ける発想が欠かせません。

出典:株式会社インボイス 【調査レポート】経理人材不足アンケート
外部委託(BPO)では、たとえば次のような範囲を切り出して任せられます。委託範囲は「発送だけ」から「作成〜差異報告まで」まで柔軟に設計でき、単なるサービス誘導ではなく、業務を効率化するための現実的な選択肢になります。
| 委託できる範囲 | 主な作業内容 |
| 対象科目の洗い出し | 確認対象の勘定科目・取引先の抽出と優先順位づけ |
| 残高確認書の準備 | 基準日残高・内訳の反映、確認状の作成 |
| 発送・回答管理 | 送付、回答の受領、未回答先の督促・進捗管理 |
| 差異確認 | 帳簿との照合、不一致の抽出と差異報告 |
| 進捗管理 | 送付・回答・差異対応状況の一覧化と報告 |
これらを外部に任せられれば、経理担当者は差異の原因分析や修正仕訳の判断といった、人でなければ担えない業務に集中でき、繁忙期の負荷も平準化できます。
残高試算表の確認は「帳簿の中で貸借が合っているか」を見る作業、残高確認は「帳簿の数字が現物や取引先の認識と合っているか」を確かめる作業です。
試算表は貸借が一致していても、二重計上や科目誤りが隠れる場合があるため、補助元帳・現物・請求書・残高証明書などまでさかのぼって照合します。
差額をすぐ雑損失・雑収入で埋めず、まず基準日と集計範囲をそろえ、補助元帳から明細へさかのぼり、差異をタイミング差・記帳漏れ・二重計上・消込誤りなどの型に分類します。
記帳漏れや誤仕訳は証憑を確認して修正し、締め日のずれによるタイミング差異は調整項目として記録し翌月の解消を確認します。
宛先・差出人・基準日・確認対象残高・残高の内訳・回答欄・差異記入欄・回答期限・回答者情報・返信方法を記載します。
特に基準日を明記し、一致・不一致を選べる回答欄と差異理由の記入欄を設けると、回答後の調査がスムーズになります。
残高確認では、残高試算表の金額を見るだけでなく、内訳と根拠まで確認することが重要です。試算表で科目別残高を把握し、補助元帳で内訳を確認し、現物・通帳・請求書・残高証明書・残高確認状などと照合します。差異は、基準日・タイミング差・記帳漏れ・消込誤りの順に調べ、原因を確認してから修正します。
そのうえで、確認資料・担当者・確認頻度をルール化し、残高確認状の発行のように工数が大きく定型的な業務は外部委託も含めて体制を見直すことで、経理担当者はより付加価値の高い業務へ時間を振り向けられます。