更新日:2026.10.22

ー 目次 ー
流動負債とは、買掛金や短期借入金など、通常の営業活動で生じる債務や、原則として1年以内に支払う必要がある負債のことです。長期借入金であっても、決算日の翌日から1年以内に返済する部分は流動負債に分類されます。
この記事では、流動負債と固定負債の違いや主な勘定科目、長期借入金の振替仕訳を解説します。資金繰りや短期的な支払能力を確認する方法も紹介するので、決算書を正しく理解する際の参考にしてください。
流動負債とは、通常の営業活動から生じる債務や、決算日の翌日から1年以内に支払い・返済の期限が到来する債務です。貸借対照表では「負債の部」に表示され、固定負債と区別されます。
流動負債には、次のような勘定科目が含まれます。
流動負債は、単純に「1年以内に支払う負債」だけを指すわけではありません。企業会計原則では、通常の営業取引によって生じた支払手形・買掛金・前受金などは流動負債とし、それ以外の借入金や未払金などは、支払期限が1年以内かどうかで区分するとされています。
通常の営業活動で発生した債務を、支払期限にかかわらず流動負債に分類する考え方を「正常営業循環基準」といいます。そのため、通常の仕入取引から生じた買掛金は、決済まで1年を超える場合でも、原則として正常営業循環基準によって流動負債に分類されます。
流動負債と固定負債の主な違いは、支払期限と債務が生じた原因です。
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比較項目 |
流動負債 |
固定負債 |
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主な性質 |
短期的に支払い・返済が必要な債務 |
長期にわたって返済・履行する債務 |
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判定基準 |
正常営業循環基準または1年基準 |
流動負債に該当しない長期債務 |
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主な勘定科目 |
買掛金、未払金、短期借入金、前受金など |
長期借入金、社債、退職給付に係る負債など |
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財務分析上の意味 |
短期的な資金繰りに影響する |
中長期的な返済負担に影響する |
借入期間が5年の借入金であっても、決算日時点で今後1年以内に返済する部分は流動負債です。残りの返済部分は固定負債として表示します。
また、引当金は使用が見込まれる時期などによって分類されます。賞与引当金のように通常1年以内に使用される見込みのものは流動負債、それ以外の長期的な引当金は固定負債に分類するのが基本です。
流動負債の勘定科目は、債務が生じた原因によって次の4つに整理できます。
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流動負債の種類 |
主な勘定科目 |
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仕入れなどの営業取引から生じる負債 |
・買掛金 ・支払手形 など |
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支払い・納付が未完了の負債 |
・未払金 ・未払費用 など |
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先に受け取った金銭や一時的な預り金 |
・前受金 ・預り金 など |
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短期的に返済・使用する借入金や引当金 |
短期借入金 など |
それぞれの意味を確認しましょう。
商品や原材料の仕入れなど、通常の営業取引から生じる債務は、流動負債にあたります。
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勘定科目 |
内容 |
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買掛金 |
商品・原材料などを掛けで仕入れ、代金を後日支払う義務 |
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支払手形 |
仕入代金などの支払いのために振り出した手形に基づく債務 |
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電子記録債務 |
電子債権記録機関の記録によって発生する金銭債務 |
買掛金は、会社の本業に関係する仕入取引から生じる点が特徴です。備品や固定資産など、本業の商品仕入れ以外の取引から生じた債務は、一般に未払金で処理します
関連記事:【科目解説】売掛金・買掛金とは? | 月次締めで押さえるべきポイントを徹底解説
商品やサービスを受けたものの、決算日時点で代金や税金などを支払っていない場合に計上する負債も流動債務です。
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勘定科目 |
内容 |
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未払金 |
備品や設備の購入など、通常の仕入取引以外から生じた未払いの債務のうち、原則として1年以内に支払期限が到来するもの |
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未払費用 |
継続的なサービスを受け、当期分の費用が発生しているものの未払いの金額 |
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未払法人税等 |
当期分として納付する法人税、住民税および事業税など |
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未払消費税等 |
消費税の確定申告により納付する予定の金額 |
未払費用は、一定の契約に基づいて継続的に受けるサービスのうち、当期に対応する未払い額を計上する勘定科目です。たとえば、決算日時点で未払いの借入金利息などが該当します。
請求書が届いていない場合でも、当期分の費用が発生していれば計上を検討します。ただし、単発の取引による未払い額などは、未払金として処理する場合があります。
現金をすでに受け取っていても、将来のサービス提供義務や第三者への支払義務が残っている場合は、収益ではなく負債として計上します。
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勘定科目 |
内容 |
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前受金 |
商品や単発のサービスを提供する前に受け取った代金 |
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契約負債 |
商品やサービスの提供前に、顧客から代金を受け取った場合や、受け取る期限が到来した場合に計上する負債 |
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前受収益 |
継続的なサービスについて先に受け取った翌期以降の収益 |
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預り金 |
源泉所得税や社会保険料など、一時的に預かり、後日納付・返還する金額 |
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仮受金 |
入金理由や金額の内訳が確定していない一時的な受入額 |
前受金や契約負債は、商品・サービスを提供する義務が残っているため負債になります。商品を引き渡したり、サービスの提供を完了したりした時点で売上などへ振り替えます。
仮受金は一時的な科目です。決算までに入金理由を確認し、売上・前受金・預り金など、実態に合った勘定科目へ振り替えましょう
関連記事:前受金とは?負債になる理由と前受収益・仮受金との違いを解説
資金調達によって生じた債務や、近い将来の支出に備えて計上する引当金も流動負債に含まれます。
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勘定科目 |
内容 |
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短期借入金 |
返済期限が決算日の翌日から1年以内に到来する借入金 |
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1年内返済予定の長期借入金 |
長期借入金のうち、決算日の翌日から1年以内に返済する部分 |
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1年内償還予定の社債 |
社債のうち、1年以内に償還期限が到来する部分 |
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リース債務・リース負債 |
適用する会計基準に基づいて計上したリース関連の負債のうち、原則として1年以内に支払期限が到来する部分 |
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賞与引当金 |
翌期に支給する賞与のうち、当期の勤務に対応する見積額 |
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役員賞与引当金 |
翌期に支給する役員賞与のうち、当期に対応する見積額 |
すべての引当金が流動負債になるわけではありません。実際に支出または使用されると見込まれる時期によって、流動負債と固定負債を使い分けます。
また、「その他流動負債」は便利な一括科目ではありますが、金額が大きいものや内容を個別に示す必要があるものは、債務の性質が分かる科目で表示することが重要です。
なお、リースに関する負債の認識や表示は、適用する会計基準によって異なります。新リース会計基準の適用状況も踏まえて確認しましょう。
1年内返済予定の長期借入金とは、長期借入金のうち、決算日の翌日から1年以内に返済期限が到来する部分です。
借入時の契約期間が1年を超えていても、決算時には返済予定表を確認し、翌期中に返済する部分を流動負債へ振り替えます。残りの部分は、引き続き固定負債の「長期借入金」として表示します。
以下で、長期借入金を流動負債に振り替える際の具体的な仕訳を確認しておきましょう。
たとえば、決算日時点の長期借入金残高が1,200万円で、そのうち翌期中に400万円を返済する予定だとします。
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区分 |
金額 |
貸借対照表上の表示 |
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1年以内の返済予定額 |
400万円 |
流動負債 |
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1年を超えて返済する残額 |
800万円 |
固定負債 |
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合計 |
1,200万円 |
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決算整理仕訳を行う場合は、次のように処理します。
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借方 |
貸方 |
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長期借入金 |
400万円 |
1年内返済予定の長期借入金 |
400万円 |
実際に返済した際は、「1年内返済予定の長期借入金」を減額し、普通預金などを貸方に記録します。
なお、会計ソフトや決算書の表示方法によっては、「短期借入金」に含めたり、「1年内返済予定長期借入金」として独立表示したりする場合があります。重要なのは科目名そのものではなく、翌期中の返済予定額が流動負債に正しく含まれていることです。
社債やリース負債も、長期借入金と同じように期限に応じて区分します。
財務諸表等規則でも、リース負債のうち1年以内に期限が到来するものは流動負債に分類すると定められています。
決算時は契約書だけでなく、借入金・社債・リース契約ごとの返済予定表を確認し、翌期の支払額を正しく区分しましょう。
流動負債が多い会社は、近い将来に多額の支払いが必要になるため、短期的な資金繰りを慎重に確認する必要があります。
ただし、流動負債の金額だけで財務状態の良し悪しを判断することはできません。企業規模が大きければ、買掛金や未払金の金額も大きくなるためです。流動資産とのバランスや、各債務の支払期限をあわせて確認します。
短期的な支払能力を確認する代表的な指標が、流動比率です。
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流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100 |
たとえば、流動資産が1,200万円、流動負債が800万円の場合、流動比率は150%です。
流動比率が100%を下回る場合は、流動負債が流動資産を上回っていることを意味します。ただし、100%未満だから直ちに支払い不能になるわけではありません。業種、入出金の時期、金融機関からの調達余力などによって評価は異なります。
また、流動資産に売れ残った在庫や回収が遅れている売掛金が多く含まれている場合は、流動比率が高くても十分な支払能力があるとは限らない点に注意しましょう。
関連記事:流動比率とは?計算方法・目安と当座比率との違いをわかりやすく解説
流動負債を資金繰り管理に活用する際は、貸借対照表の合計額だけでなく、次の点を確認しましょう。
特に借入金は、元本返済だけでなく利息の支払いも発生します。貸借対照表の残高だけを見るのではなく、月ごとの返済額と入金予定を資金繰り表へ反映することが重要です。
買掛金や未払金が増加している場合は、事業の拡大によるものか、支払いの遅延によるものかを確認しましょう。同じ残高の増加でも、原因によって財務上の意味は異なります。
ここでは、流動負債に含まれる勘定科目や、長期借入金の分類など、流動負債についてよくある疑問に回答します。
流動負債に含まれる勘定科目には、買掛金、支払手形、電子記録債務、未払金、未払費用、短期借入金、前受金、契約負債、預り金、未払法人税等、賞与引当金などが含まれます。長期借入金や社債についても、1年以内に返済・償還する部分は流動負債です。
通常の営業取引から生じた買掛金は、原則として正常営業循環基準により流動負債に分類されます。そのため、支払いまで1年を超える場合でも、通常の営業循環内にある買掛金であれば流動負債となります。
長期借入金は原則として固定負債ですが、決算日の翌日から1年以内に返済する部分は流動負債へ振り替えます。分類する金額は、金融機関などから受け取った返済予定表をもとに確認します。
前受金を受け取った時点では、会社に商品を引き渡したり、サービスを提供したりする義務が残っているためです。現金は増えますが、取引が完了するまでは売上ではなく負債として計上します。
流動負債とは、通常の営業活動から生じる債務や、決算日の翌日から1年以内に支払期限が到来する債務です。買掛金・未払金・短期借入金・前受金などに加え、長期借入金のうち1年以内に返済する部分も含まれます。
決算では、借入金や社債、リース負債の返済予定表を確認し、流動負債と固定負債を正しく区分することが重要です。また、流動負債の合計額だけで判断せず、流動資産の内容や支払期日、将来の入出金予定も確認しましょう。
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