更新日:2026.10.22

ー 目次 ー
債権とは、特定の相手に対して金銭の支払いや商品の引き渡しなどを求める権利です。一方、債務とは、特定の相手に対して支払いや引き渡しなどを行う義務を指します。
債権と債務は、同じ取引を異なる立場から見た表裏一体の関係です。たとえば、商品を掛けで販売した場合、売り手には代金を受け取る権利が、買い手には代金を支払う義務が生じます。
この記事では、債権・債務の意味や債権者・債務者の違い、会計上の主な勘定科目を解説します。具体的な仕訳例に加え、債権債務の管理方法や相殺の要件、契約書に記載される清算条項の意味も紹介するので、経理業務や契約管理の参考にしてください。
債権とは、特定の相手に対して、金銭の支払いや商品の引き渡しなど、一定の行為を求める権利です。
一方、債務とは、特定の相手に対して、金銭の支払いや商品の引き渡しなど、一定の行為を行う義務を指します。
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比較項目 |
債権 |
債務 |
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意味 |
特定の相手に一定の行為を求める権利 |
相手の請求に応じる義務 |
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当事者 |
債権者 |
債務者 |
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金銭取引の例 |
代金を受け取る権利 |
代金を支払う義務 |
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貸借の例 |
貸したお金の返還を求める権利 |
借りたお金を返済する義務 |
たとえば、A社がB社へ商品を販売し、代金を1か月後に受け取る契約を結んだとします。A社には代金を請求する債権が生じ、B社には代金を支払う債務が生じます。
このように、ひとつの債権が成立すると、相手側にはそれに対応する債務が生じます。「誰が、誰に対して、何を請求できるのか」を確認すると、債権と債務の関係を整理しやすくなります。
債権者は債権を持つ人や会社、債務者は債務を負う人や会社です。
ただし、債権者・債務者という立場は、人物や会社ごとに固定されるものではありません。どの権利・義務に着目するかによって立場が変わります。
商品売買を例にすると、売り手と買い手は次のような関係になります。
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当事者 |
債権者としての立場 |
債務者としての立場 |
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売り手 |
商品代金の支払いを請求できる |
商品を引き渡す義務を負う |
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買い手 |
商品の引き渡しを請求できる |
商品代金を支払う義務を負う |
そのため、売り手は代金については債権者ですが、商品の引き渡しについては債務者です。反対に、買い手は代金については債務者ですが、商品の引き渡しについては債権者になります。
契約内容を確認するときは、当事者名だけで判断せず、対象となる権利や義務を特定することが重要です。
会計では、金銭の受け取りにつながる債権を資産、将来の支払いにつながる債務を負債として計上するのが基本です。
ただし、法律上の債権・債務と、貸借対照表へ計上する資産・負債は、必ずしも完全に同じ範囲ではありません。会計上の計上時期や金額は、取引の実態や適用する会計基準に基づいて判断します。
会計上の債権には、次のような勘定科目があります。
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勘定科目 |
内容 |
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売掛金 |
商品やサービスを掛けで販売した場合の未回収代金 |
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受取手形 |
取引先から受け取った手形に基づく請求権 |
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電子記録債権 |
電子債権記録機関の記録によって発生する金銭債権 |
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貸付金 |
取引先や役員などへ貸し付けた金銭の返還請求権 |
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未収入金 |
本業の営業取引以外から生じた未回収金 |
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未収収益 |
継続的なサービスについて、当期分として発生した未収額 |
売掛金・受取手形は本業の営業取引から生じる債権です。一方、固定資産の売却代金など、本業以外の取引によって生じた債権は、一般に未収入金として処理します。
企業会計基準では、受取手形・売掛金・貸付金などが金銭債権の具体例として挙げられています。
会計上の債務には、次のような勘定科目があります。
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勘定科目 |
内容 |
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買掛金 |
商品や原材料を掛けで仕入れた場合の未払代金 |
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支払手形 |
自社が振り出した手形に基づく支払義務 |
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電子記録債務 |
電子債権記録機関の記録によって発生する金銭債務 |
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借入金 |
金融機関などから借り入れた金銭の返済義務 |
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未払金 |
本業の仕入れ以外から生じた未払い額 |
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未払費用 |
継続的なサービスについて、当期分として発生した未払額 |
買掛金・支払手形は、通常の営業取引から生じる債務です。一方、設備や備品などの固定資産を後払いで購入した場合は、一般に未払金として処理します。
企業会計基準では、支払手形・買掛金・借入金・社債などの金銭債務は、原則として債務額をもって貸借対照表価額とするとされています。ただし、社債の発行価額と額面金額が異なる場合など、一部には償却原価法が適用される例外に注意が必要です。
10万円の商品を掛けで販売・仕入れた場合、売り手と買い手は同じ取引を異なる仕訳で記録します。
掛け取引における売り手と買い手の関係は、以下の通りです。
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項目 |
売り手 |
買い手 |
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取引内容 |
商品を販売 |
商品を仕入れ |
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債権・債務 |
債権 |
債務 |
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勘定科目 |
売掛金 |
買掛金 |
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貸借対照表 |
資産 |
負債 |
売り手側では、代金を受け取る権利を売掛金として計上します。
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借方 |
貸方 |
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売掛金 |
100,000円 |
売上高 |
100,000円 |
買い手側では、代金を支払う義務を買掛金として計上します。
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借方 |
貸方 |
||
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仕入高 |
100,000円 |
買掛金 |
100,000円 |
売り手の売掛金と買い手の買掛金は、同じ取引から生じた債権・債務です。その後、代金を支払うと、売り手は売掛金を、買い手は買掛金を消し込みます。
関連記事:【科目解説】売掛金・買掛金とは? | 月次締めで押さえるべきポイントを徹底解説
債権債務を適切に管理するには、残高だけでなく、相手先や発生日、支払期日などを把握する必要があります。
主な管理項目は次のとおりです。
債権は、取引先別・入金期日別に管理し、期日を過ぎたものを早期に発見できるようにします。長期間回収できていない売掛金については、請求漏れや取引先の経営悪化などがないか確認しましょう。
債務は、支払い漏れや二重払いを防ぐため、請求書の受領・承認・支払いを一元管理します。資金繰り表や支払予定表にも反映し、支払日に必要な資金を確保することが重要です。
また、帳簿残高と請求書、入出金明細、取引先から届いた残高確認書などを定期的に照合します。差額がある場合は、入金・支払いの計上漏れ、手数料、値引き、返品、相殺などを確認しましょう。
関連記事:消込とは?入金消込・支払消込の違いや仕訳例、効率化の方法を解説
契約書や合意書に記載される「債権債務がないことを相互に確認する」とは、一般に、契約や取引に関して未精算の権利・義務が残っていないことを当事者同士で確認する表現です。清算条項と呼ばれることもあります。
たとえば、業務委託契約の終了時に次のような条項が設けられる場合があります。
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甲および乙は、本契約に関し、本合意書に定めるもののほか、相互に債権債務がないことを確認する。 |
このような条項を盛り込む目的は、契約終了後に未払報酬や返還金などをめぐる争いが生じるのを防ぐことです。
ただし、この条項がどの範囲の債権・債務に及ぶかは、条文の文言や契約全体の内容、締結までの経緯によって異なります。債権債務がないと記載したからといって、あらゆる権利・義務が必ず消滅するとは限りません。
清算条項へ合意する前に、次の項目を確認しましょう。
高額な契約や紛争を伴う契約については、清算条項へ合意する前に弁護士などへ確認することが重要です。
同じ相手に対して債権と債務を持っている場合は、一定の要件を満たせば、双方を同額の範囲で相殺できます。
たとえば、取引先に対する売掛金が50万円、その取引先への買掛金が30万円ある場合、30万円を相殺し、差額の売掛金20万円だけを受け取る方法が考えられます。
民法では、当事者が互いに同種の目的を持つ債務を負い、双方の債務が弁済期にある場合、原則として対当額について相殺できると定めています。また、相殺は当事者の一方から相手方への意思表示によって行います。
一般的な相殺では、次の点を確認しましょう。
実務では、相殺日・対象となる請求書・相殺額・差額の支払方法などを記載した相殺通知書や合意書を作成すると、認識の相違を防ぎやすくなります。
売掛金50万円と買掛金30万円を相殺する場合は、次のように仕訳します。
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借方 |
貸方 |
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買掛金 |
300,000円 |
売掛金 |
300,000円 |
相殺後は、売掛金20万円が残ります。差額が入金された時点で、普通預金などを借方、売掛金を貸方として消し込みます。
売上と仕入れは、それぞれの取引に応じて総額で記帳する必要があります。相殺を予定している場合でも、最初から差額だけを売上や仕入れとして計上するのは適切ではありません。
売掛金と買掛金をそれぞれ計上したうえで、相殺によって債権・債務が消滅した金額を仕訳で処理します。
なお、民法上の相殺は、原則として当事者の一方から相手方への意思表示によって行うことができます。
ここでは、債権と債務の違いや清算条項、相殺など、債権債務についてよくある疑問に回答します。
債権は、特定の相手に支払いや商品の引き渡しなどを求める権利です。債務は、その請求に応じて支払いや引き渡しを行う義務です。
ひとつの取引について、請求する側から見たものが債権、請求される側から見たものが債務となります。
同じ取引や取引先との関係で、ひとつの会社が債権者と債務者の両方になることがあります。
商品売買では、売り手は代金については債権者ですが、商品の引き渡しについては債務者です。また、同じ取引先に商品を販売しながら、別の商品を仕入れている場合は、売掛金と買掛金の両方が発生します。
一般に、当事者間に未払いの代金や未回収の請求など、未精算の権利・義務が残っていないことを意味します。
ただし、どの契約や取引まで対象になるかは条項の文言によって異なります。合意する前に、未払いの報酬や返還金、損害賠償請求などが残っていないか確認しましょう。
同じ取引先との間に売掛金と買掛金があり、民法上の要件や契約条件を満たす場合は相殺できます。
相殺する際は、対象となる債権・債務、相殺額、相殺日、差額の支払方法を相手方と確認し、通知書や合意書などの記録を残すことが大切です。
債権は特定の相手に支払いや商品の引き渡しなどを求める権利、債務はその請求に応じる義務です。債権を持つ側を債権者、債務を負う側を債務者と呼びますが、同じ当事者が取引内容によって両方の立場になることもあります。
会計上は、売掛金・受取手形などが債権、買掛金・支払手形などが債務に該当します。取引先別・期日別に残高を管理し、入金や支払いの後は正しく消し込むことが重要です。
また、清算条項へ合意するときや債権債務を相殺するときは、対象範囲と金額を確認し、当事者間で記録を残しましょう。
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