更新日:2024.10.15
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決算は企業にとって経営状況の把握や支払うべき税額の決定など、さまざまな意味のあるものです。法的に義務付けられているのは年に1回行う年次決算ですが、これだけだとどうしても精度が悪くなってしまいます。そこで、月に1回行う月次決算を活用しましょう。3ヶ月に1回行う四半期決算もありますが、より精度の高い帳簿整理を行うのであれば月次決算をおこなうことでタイムリーな経営状況の把握につながります。
月次決算は月に1回帳簿の整理を行い、お金の流れがミスなく記帳されているかなどを確認するものです。中には、月次決算において課題が見つかる場合もあり、安定した経営を目指す上で欠かせません。しかし、月次決算は当然ミスなく迅速に行う必要があります。一般的に月次決算をミスなく行うためには、チェックリストの作成がおすすめです。
そこで本記事では、月次決算のチェックリスト作成について詳しく解説しています。ミスなく月次決算を行いたい経理担当者の方は参考にしてください。
月次決算は、月ごとの財政状態を算出することで、自社の経営状況の把握を行う決算です。月次決済によって企業はより精度の高い帳簿管理が実現します。この章では、月次決算の目的や年次決算との違いについて詳しく解説します。
月次決算の目的は、正確な財務状況を把握するためです。企業の財政状況は、単月・四半期で大きく変動します。この変動に迅速な判断を行い、安定した経営を目指せます。後述する年次決算のみでは、企業として経営状況の把握が難しいという懸念があります。月次決算を導入していれば、月ごとに課題を立て、経営方針の修正なども可能です。また、中小企業においては常に変化する経営状況の把握に優れ、競合との差別化を図りやすいといった側面もあります。
会社法や金融商品取引法、法人税法などによってすべての企業は、1年に一度決算の義務があります。これを年次決算といい、作成した財務関連表は公告の義務が生じます。対して、月ごとに行う月次決算は、あくまで会社の任意で行うもので、法律などによる義務はありません。しかし、企業として毎月の損益や財産状況を可視化できるため、多くの企業では月次決算を取り入れています。
月次決算を作成するためには、決算整理を行う必要があります。決算整理の手順は以下の通りです。
毎月滞りなく決算整理ができるよう経理はもちろん、関連各部門にスケジュールの共有を行いましょう。また、請求書などの書類の締切日を社内で徹底することなどが必要です。正確かつ迅速な作業を社内に浸透させるようにしましょう。
月次決算において確認すべき事項は多いです。企業として円滑な月次決算ができるよう、チェックリストの作成を行いましょう。この章では、確認すべき事項について詳しく解説します。
事前準備 |
・小口現金出納帳の集計・残高の確認 ・小口現金の精算仕訳入力の確認 ・ネットバンキング以外の口座の仕訳入力の確認 ・給与の仕訳入力の確認 ・売上や仕入などの月末一括仕訳入力の確認 ・在庫の仕訳入力の確認 ・ネットバンキング口座の仕訳登録の確認 |
現金・預金 |
・小口現金出納帳の集計・残高に差異はないか ・帳簿の預金残高と通帳の預金残高に差異はないか ・差異があった場合、原因の確定・修正を行ったか、また帳簿に記載したか |
売掛金・買掛金 |
・未収の売掛金はないか ・未収の売掛金に差異があった場合、担当者に回収依頼をしているか ・売掛金の残高と帳簿に差異はないか ・未払いの買掛金はないか |
仮払金・借受金 |
・当月清算の仮払金の振替を行ったか ・当月清算の借受金の振替を行ったか |
在庫・棚卸資産 |
・月末時の商品在庫と帳簿在庫に差異はないか ・社外にある商品在庫と帳簿在庫に差異はないか ・不良品や納品ミスなどで返品扱いになっている商品はないか |
固定資産 |
・年間の減価償却費や引当金を12分割して計上しているか ・10万円以上の購入資産があるか ・30万円以上の購入資産があった場合、会計処理は適切に行われているか |
借入金 |
・短期借入金は返済予定表残高と合っているか ・長期借入金は返済予定表残高と合っているか |
未払金・預り金 |
・給与残高は0になっているか ・月末時点での未払金額に間違いはないか ・所得税や住民税の残高と当月の給与預かり分の金額に差異はないか |
経過勘定 |
・次月以降に支払いまたは受け取りがあるものを、未払い費用や未収収益として経過勘定に計上したか |
賃借対照表 |
・マイナス残高になっていないか ・マイナス残高があった場合、原因の特定と修正をしたか ・借方と貸方が一致しているか |
月次決算においてチェックリストを作るメリットは多くあります。代表的なものとしては、経営課題を発見できたり、ミスのない作業を進めたりできます。この章では、チェックリストを作って月次決算を行う6つのメリットについて詳しく解説します。
月次決算の最大のメリットは、毎月の経営状況を把握できることです。これにより、企業としてやるべき課題が明確になり、安定した経営戦略を維持できます。3ヶ月に1回行う四半期決算や1年に1回行う年次決算では、手遅れになる課題もあることでしょう。月次決算を行っていれば、こうした課題にも迅速に対応できます。企業において経営課題はその後の発展に大きく影響するので、早期発見できることは企業寿命を延ばすことにもつながります。
年次決算には法的義務があり、決算の結果によって支払うべき税額が決定します。仮に決算が間違っていると支払うべき税額に差異が生じ、最悪の場合申告漏れが発生します。その後、さまざまなペナルティが課せられ、企業として大きな損害を被る恐れがあります。月次決算を実施していれば帳簿の精度が高く、年次決算時にまとめて取り組むよりもミスが起こりにくいです。正確な決算報告ができるだけでなく、次年度の目標設定もスムーズに行えるでしょう。
中小企業におけるメリットの1つとして小回りの良さがあります。その小回りの良さを活かすために、月次決算は必要不可欠です。月次決算は、常に変化する経営状況が見られるだけなく、見つかった課題にも早急に取り組めます。また、競合との差別化にもなり、企業としての経営にプラスになります。
月次決算は一般的に複数人の経理担当者で業務を分担して行うものです。そのため、事前に情報共有がしっかりしていなければ、チェック項目の抜け漏れや同じ項目を複数人で確認してしまうといった無駄が生じてしまいます。こうした無駄は、効率が悪い上にミスを発生させてしまう原因に直結します。チェックリストがあれば、こうした問題が解決可能です。誰がどの項目を確認したか一目でわかる上に、抜け漏れも防げます。
月次決算は迅速さが求められます。できる限り早く終わらせることで、月次決算の結果によって生まれた課題の解決スピードが変わります。そこで注意したいのが属人化です。特定の人間がいなければ進まない状況が存在すると、月次決算を早急に終わらせることが困難になるでしょう。そこで、チェックリストを使うことでやるべき作業の可視化を実現します。誰でも作業できる環境を作ることで、属人化の防止につなげられます。
月次決算は毎月行う作業です。そのため、あらかじめ作業の担当者を決めておけば、問題ないと感じるかもしれません。しかし、近年ではテレワークの導入をする企業が増えています。テレワークだと、オフィスワークのように密にコミュニケーションが取れないといった弊害があります。特に、月次決算のような確認が重要である作業においては影響が大きいです。そこで、チェックリストを作成し、誰でも閲覧できる状態にしておけば、ワークスタイルに関係なく効率よく作業を進められることでしょう。
月次決算は月ごとの財政状態を算出することで、自社の経営状況を把握する企業にとって重要な取り組みです。企業はさまざまな法律によって、年に1回行う年次決算が義務付けられています。年次決算の精度を高めるためにも、月次決算は非常に有効な手段です。
月次決算のコツとしてはチェックリストの作成を行うことです。チェックリストによって項目の漏れや抜け、重複といった問題が解消できます。加えて、迅速さが求められる月次決算において、作業の効率化になるでしょう。月次決算には、法的な義務はないが多くの企業で自主的に導入されています。その背景には、経営課題の早期発見や年次決算の効率化など、さまざまなメリットが企業に与える影響が大きいためです。ミスなく月次決算を行うためにもチェックリストの作成を行いましょう。