更新日:2026.09.24

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流動比率とは、企業の短期的な支払能力を判断するための財務指標です。流動資産と流動負債から算出し、手元の資産で短期間に支払いが必要となる負債にどの程度対応できるかを確認できます。
ただし、適切な水準は業種や企業の状況によって異なるため、数値の高さだけで判断することはできません。
本記事では、流動比率の意味や計算方法、業種別の目安をわかりやすく解説します。流動比率が高い・低い場合の見方や改善方法、確認する際の注意点も紹介するので、自社の財務状況を把握する際にぜひお役立てください。
流動比率とは、企業の短期的な支払能力を判断するための財務指標です。貸借対照表(B/S)の流動資産と流動負債を比較し、短期的に支払いが必要となる負債に対して、対応する流動資産をどの程度保有しているかを確認するのが主な目的です。
流動資産には、現金・預金や売掛金、商品などが含まれます。一方、流動負債には買掛金や短期借入金、未払金などがあります。一般的に、流動負債に対して流動資産が多いほど、短期的な支払いに対応しやすい状態と判断することが可能です。
そのため、流動比率は企業の資金繰りや財務の安全性を確認する際に用いられます。ただし、適切な水準は業種や企業の状況によって異なるため、数値だけで判断しないことが重要です。
関連記事:貸借対照表とは?見方・作り方・決算チェックのポイントまでわかりやすく解説
流動比率は、貸借対照表の流動資産を流動負債で割り、100を掛けて求めます。計算式は以下のとおりです。
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流動比率(%)=流動資産 ÷ 流動負債 × 100 |
たとえば、流動資産が1,500万円、流動負債が1,000万円の場合、流動比率は「1,500万円÷1,000万円×100=150%」です。これは、流動負債1,000万円に対して、流動資産を1,500万円保有している状態を示します。
計算に必要な流動資産と流動負債の金額は、貸借対照表(B/S)で確認することが可能です。一般的に流動比率が高いほど短期的な支払能力に余裕があると判断されますが、適切な水準は業種や企業の状況によって異なります。
流動比率を確認する際は、以下の2つのケースに分けて考えましょう。
それぞれ詳しく解説します。
流動比率が高い場合、短期的な支払いに充てられる資産を比較的多く保有していると考えられます。ただし、数値が高ければ必ずしも良好な状態とは限りません。
使われていない現預金のほか、販売が進まない在庫や回収が遅れている売掛金が増えたことで、比率が上昇しているケースもあります。数値だけで安全性を評価せず、流動資産の内訳を確認し、資金が有効に活用されているかまで確認しましょう。
流動比率が低い場合、近いうちに支払う負債に対して、流動資産が十分でない可能性があります。とくに100%を下回ると、流動資産より流動負債が多い状態です。
ただし、数値が低いだけで資金繰りに問題があるとは限りません。売上代金を早く回収できる企業などでは、低い水準でも支払いに対応できる場合があります。現預金の状況や入出金のタイミング、同業種の水準もあわせて判断しましょう。
流動比率の目安は業種によって異なるため、自社の数値を判断する際は、同じ業種の水準と比較することが重要です。
中小企業庁「令和7年中小企業実態基本調査(令和6年度決算実績)」をもとに算出した、業種別の流動比率は以下のとおりです。
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流動比率 |
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建設業 |
209.7% |
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製造業 |
208.5% |
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情報通信業 |
237.2% |
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運輸業・郵便業 |
186.2% |
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卸売業 |
173.1% |
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小売業 |
172.6% |
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不動産業・物品賃貸業 |
183.4% |
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学術研究・専門・技術サービス業 |
221.4% |
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宿泊業・飲食サービス業 |
190.7% |
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生活関連サービス業・娯楽業 |
138.1% |
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サービス業他 |
183.5% |
出典:中小企業庁「令和7年中小企業実態基本調査(令和6年度決算実績)」をもとに作成
業種によって流動比率に差があるのは、在庫の保有量や売上代金の回収時期、仕入代金などの支払時期が異なるためです。
そのため、自社の流動比率を「○%以上なら安全」と一律に判断するのではなく、同業種の水準や自社の過去の推移などと比較して判断しましょう。
流動比率を改善するには、主に以下の2つの方法があります。
数値を高めることだけを目的にするのではなく、資金繰りや財務状況の改善につながる方法を選ぶことが重要です。
流動比率を改善する方法のひとつは、現金・預金などの流動資産を増やすことです。流動負債の金額が変わらなければ、流動資産が増えることで流動比率も上昇します。
たとえば、不要な固定資産を売却して現金化すれば、固定資産が減る一方で流動資産である現金・預金が増加します。また、営業活動によって安定的に利益とキャッシュを生み出し、資金を社内に留保することも、現預金などの流動資産を厚くする方法です。
なお、売掛金を回収しても、売掛金が現金・預金に変わるだけであるため、原則として流動資産の総額は変わりません。ただし、現金化を早めることで実際の支払いに充てやすくなり、資金繰りの改善につながります。
流動負債を減らすことも、流動比率の改善につながります。流動資産の金額が変わらない状態で流動負債が減少すれば、流動比率は高くなるためです。
たとえば、手元資金に余裕がある場合は、短期借入金などを返済して流動負債を減らす方法があります。また、資金調達の状況によっては、短期借入金を長期借入金へ借り換え、短期の返済負担を長期化する方法もあります。短期借入金が減少し、固定負債である長期借入金が増えれば、流動負債が減少して流動比率が上昇します。
ただし、短期借入金を現預金で返済すると、流動負債だけでなく流動資産も同額減少します。流動比率がもともと100%を超えていれば比率は上昇しますが、100%を下回っている場合は、返済によってさらに低下するため注意が必要です。流動比率だけでなく、返済後の手元資金も確認しましょう。
流動比率だけで企業の財務状況を判断するのは避けましょう。流動比率は短期的な支払能力を確認するうえで役立つ指標ですが、流動資産の内容や業種によって数値の意味が異なるためです。
流動比率を見る際は、以下の点に注意しましょう。
それぞれ詳しく解説します。
流動比率を確認するときは、数値だけでなく流動資産の内訳も確認しましょう。同じ流動資産でも、すぐに支払いへ充てられるとは限らないためです。
たとえば、現金・預金はそのまま支払いに利用できますが、売掛金は回収するまで現金として利用できません。商品や製品などの棚卸資産も、販売できなければ現金化できず、過剰在庫や滞留在庫が含まれている可能性もあります。
そのため、流動比率が高くても、現預金が少なく棚卸資産などの割合が大きい場合は、短期的な支払能力が十分とは限りません。流動資産の金額だけでなく、現金化しやすい資産をどの程度保有しているかまで確認することが重要です。
関連記事:棚卸資産とは?区分・評価方法・仕訳と決算で迷いやすい実務ポイントを解説
流動比率は一時点の数値だけで判断せず、過去からの推移を確認しましょう。貸借対照表は特定の時点における財政状態を表すため、売掛金の回収や仕入代金の支払いなどのタイミングによって流動比率が変動する場合があります。
たとえば、決算日時点では流動比率が高くても、直後に多額の支払いを予定していれば、実際の資金繰りに余裕があるとは限りません。
前期や数年前の流動比率と比較し、継続的に低下していないか、急激な変化がないかを確認することが重要です。大きく変動している場合は、流動資産や流動負債のどの項目が増減したのかまで確認しましょう。
流動比率を評価する際は、自社の数値だけを見るのではなく、同業種・同規模の企業と比較しましょう。必要となる流動資産や流動負債の水準は、事業内容や取引条件、企業規模などによって異なるためです。
たとえば、商品や原材料を多く保有する業種と、在庫をほとんど持たないサービス業では、流動資産の構成が異なります。また、売上代金の回収や仕入代金の支払いまでの期間によっても、適切な水準は変わります。
業界平均などを参考にする際も、可能な限り自社と業種や規模が近い企業のデータを比較対象にしましょう。
流動比率との違いを理解するため、以下の3つの指標を確認しておきましょう。
いずれも企業の財務状況を確認するための指標ですが、計算に使う項目や判断できる内容が異なります。それぞれの意味や計算方法、流動比率との違いを解説します。
当座比率とは、すぐに支払いへ充てやすい資産をどの程度確保しているかを見る指標です。現金・預金や売掛金などの当座資産と流動負債を比較し、企業の短期的な支払能力を確認します。
計算式は以下のとおりです。
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当座比率(%)=当座資産 ÷ 流動負債 × 100 |
流動比率との主な違いは、計算に含める資産の範囲です。流動比率では棚卸資産などを含む流動資産全体を使うのに対し、当座比率では棚卸資産などを除いた当座資産を使用します。
そのため、当座比率は流動比率よりも換金性を重視して短期的な支払能力を確認したい場合に役立ちます。
自己資本比率とは、企業の総資本に占める自己資本の割合を示す指標です。返済義務のない自己資本によって、どの程度事業の資金をまかなっているかを確認できます。計算式は以下のとおりです。
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自己資本比率(%)=自己資本 ÷ 総資本 × 100 |
一般的には、自己資本比率が高いほど借入金などの他人資本への依存度が低いと判断できます。
固定比率とは、建物や機械、土地などの固定資産を、自己資本でどの程度まかなえているかを確認する指標です。長期間使用する固定資産への投資と資金調達のバランスを判断する際に用いられます。
計算式は以下のとおりです。
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固定比率(%)=固定資産 ÷ 自己資本 × 100 |
一般的には、固定比率が100%以下であれば、固定資産を自己資本の範囲内でまかなえていることを示します。ただし、適切な水準は業種や企業の設備投資状況などによって異なるため、数値だけで判断しないことが重要です。
流動比率について、よくある質問に回答します。
流動比率が高いほど、一般的には短期的な支払能力に余裕があると判断できます。流動負債に対して、現金・預金や売掛金、棚卸資産などの流動資産を多く保有していることを示すためです。
ただし、流動比率は高ければ高いほどよいとは限りません。売れ残った在庫や未回収の売掛金が増えた結果、流動比率が高くなっているケースもあります。また、必要以上の現預金を保有している場合は、資金を十分に活用できていないケースも考えられます。
流動比率が高い場合も、流動資産の内訳や同業種の水準などをあわせて確認しましょう。
流動比率が100%を下回る場合は、流動資産より流動負債のほうが多い状態を示します。短期間に支払いが必要となる負債に対して流動資産が少ないため、一般的には短期的な支払能力に注意が必要な状態と考えられます。
ただし、100%を下回ったからといって、直ちに資金不足になるとは限りません。売上代金を短期間で回収できる企業など、事業の特性によって必要な流動資産の水準は異なります。
100%という数値だけで判断せず、手元の現預金や今後の入出金、同業種の水準なども確認することが重要です。
流動性比率とは、企業の短期的な支払能力や資産の換金性を分析する指標を指す言葉です。文脈によって意味は異なりますが、代表的な指標には流動比率や当座比率があります。
流動比率は、流動資産を流動負債で割って算出し、短期的な支払いに対応できる資産をどの程度保有しているかを確認します。一方、当座比率は、流動資産のうち比較的現金化しやすい当座資産に絞って計算する指標です。
流動比率は、近いうちに支払期限を迎える負債に対して、どの程度の流動資産を保有しているかを示す財務指標です。数値が高いほど、一般的には資金面に余裕があると考えられます。
ただし、流動比率は高ければよいとは限りません。流動資産に過剰な在庫や回収が滞っている売掛金が含まれている場合もあるため、資産の内訳まで確認することが重要です。また、適切な水準は業種や企業規模によっても異なります。
流動比率を正しく把握するには、貸借対照表の流動資産・流動負債に含まれる勘定科目を理解しておくことも大切です。
B/S・P/Lの勘定科目や仕訳をまとめて確認したい方は、以下の資料もぜひご活用ください。