更新日:2026.08.21

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貸付金とは、会社が取引先・関係会社・役員・従業員などへ金銭を貸し付けたときに、将来返済を受ける権利を記録する資産の勘定科目です。決算日の翌日から1年以内に回収予定の額は「短期貸付金」、1年を超える額は「長期貸付金」に区分します。
本記事では、似た勘定科目との違い、貸付・返済・利息・決算振替の仕訳、役員・従業員貸付で注意したい税務、契約書や返済予定表と残高を照合する手順まで、表と図を交えて実務目線で解説します。
会社から社外・社内の相手へ金銭を支出した場合でも、すべてを貸付金として処理するわけではありません。
誰に、どのような目的で貸し付けたのか、いつまでに返済を受ける契約なのかを確認し、取引の実態に応じて勘定科目を判断します。
貸付金とは、会社が取引先や関係会社、役員、従業員などへ金銭を貸し付けたときに生じる返済請求権を記録する勘定科目です。
「支払ったお金がまだ戻っていない」という理由だけで貸付金にするのではなく、その支出が金銭の貸付けに当たるかどうかを契約内容から判断します。
商品やサービスの販売代金が未回収なら売掛金、固定資産や有価証券の売却代金が未回収なら未収入金、本来は相手が負担すべき費用を会社が一時的に支払った場合は立替金です。
このように、入出金の方向だけでなく、取引の発生原因から勘定科目を判断することが重要です。
貸付金は、将来金銭を受け取る権利が会社に残るため、貸借対照表では資産に分類されます。貸付時には現金や預金が減少しますが、その代わりに同額の返済請求権が生じるため、原則として費用にはなりません。
元本の返済を受けたときも、売上や収益ではなく、貸付金という資産を回収したものとして処理します。
なお、決算日の翌日から1年以内に回収予定の金額は流動資産、1年を超えて回収予定の金額は固定資産の「投資その他の資産」に表示します。
貸付金は、取引先の一時的な資金不足を支援する場合や、子会社・関連会社へ運転資金・設備資金を融通する場合に発生します。
また、福利厚生制度などに基づき、役員や従業員へ資金を貸し付けるケースもあります。貸付先が複数ある場合や、継続的・重要な貸付けがある場合は、貸付先ごとに補助科目を設定すると、返済状況や残高を追いやすくなります。
金銭消費貸借契約書、返済予定表、入金履歴と会計データをひも付け、貸付先・返済期日・元本残高・利息を確認できる状態を整えておきましょう。
短期貸付金と長期貸付金は、貸付時の契約期間だけで決めるのではなく、各決算日における回収予定時期で判定します。
基準となるのは貸付日からの経過年数ではなく、決算日の翌日から1年以内に回収予定かどうかです。
複数年にわたる分割返済では、同じ契約の残高を短期貸付金と長期貸付金に分けて表示する場合があります。
| 区分 | 判定基準 | 貸借対照表上の表示 | 決算時の確認 |
|---|---|---|---|
| 短期貸付金 | 決算日の翌日から1年以内に回収予定 | 流動資産 | 1年以内回収予定額・入金遅延の有無 |
| 長期貸付金 | 決算日の翌日から1年を超えて回収予定 | 固定資産 | 1年以内回収予定額の振替・回収可能性 |
分割返済の貸付金は、契約残高の全額を短期・長期のどちらか一方へまとめるのではなく、返済予定日ごとに区分します。
例えば、3年間で毎年30万円ずつ返済を受ける契約で、決算日の翌日から1年以内に30万円の返済期日が到来する場合、その30万円は短期貸付金、残りの60万円は長期貸付金です。
条件変更や返済猶予が行われた場合は、古い返済予定表をそのまま使わず、変更後の期日を反映した資料に基づいて再判定しましょう。

区分判定は、次の順序で進めます。契約残高と帳簿残高が一致しない場合は、返済の未消込や条件変更の反映漏れがないかを先に確認してください。

貸付金と似た勘定科目を見分けるときは、まず「なぜその債権・債務が発生したのか」を確認します。
金銭そのものを貸したなら貸付金、本来は相手が負担すべき費用を一時的に支払ったなら立替金です。また、本業の売上代金が未回収なら売掛金、本業以外の資産売却代金などが未回収なら未収入金となります。
借入金は会社が返済する義務を表す負債であり、会社が回収する権利を表す貸付金とは反対の性質を持ちます。
| 勘定科目 | 発生原因 | 会社から見た性質 | 主な確認資料 |
|---|---|---|---|
| 貸付金 | 金銭そのものを貸し付けた | 返済を受ける権利(資産) | 金銭消費貸借契約書、返済予定表 |
| 立替金 | 本来他者が負担する支出を一時的に負担した | 実費の返還を受ける権利(資産) | 領収書、精算書 |
| 未収入金 | 本業以外の資産売却などで代金が未回収 | 売買代金などの回収権(資産) | 売買契約書、請求書 |
| 売掛金 | 本業の商品・サービスを掛けで販売した | 売上代金の回収権(資産) | 請求書、売上台帳 |
| 借入金 | 会社がお金を借りた | 返済する義務(負債) | 借入契約書、返済予定表 |
勘定科目を選ぶ際は、入出金の方向だけで判断せず、契約書・請求書・精算書などから取引の発生原因を確認することが大切です。
勘定科目全体の考え方や、売掛金・未収入金・立替金との違いをさらに確認したい場合は、記事末尾の内部リンクもあわせて参照してください。
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貸付金の仕訳では、元本と利息を分けて考えることが基本です。貸付時は貸付金を資産として計上し、元本の返済を受けたときは貸付金を減額します。
利息を受け取った場合は受取利息として収益計上し、決算日時点で当期分の利息が未入金であれば未収収益を計上します。ここでは、取引の流れに沿って仕訳例を確認します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 短期貸付金 | 1,000,000円 | 普通預金 | 1,000,000円 |
普通預金から100万円を貸し付けた場合、現金・預金が減少し、同額の返済請求権が増加します。そのため、借方に貸付金、貸方に普通預金を計上します。
この例では決算日の翌日から1年以内に回収予定であるため短期貸付金を使用していますが、回収予定が1年を超える場合は長期貸付金を使用します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10,000円 | 受取利息 | 10,000円 |
貸付金の利息1万円を受け取った場合は、受取利息として収益計上します。元本返済とは異なり、利息は資金を貸し付けた対価です。
貸付金の利子は、消費税法上の非課税取引に該当します。受取利息を課税売上として登録しないよう、会計システムの税区分を確認してください。
元本の返済は貸付金という資産の回収であり、受取利息とは処理が異なります。
元本と利息がまとめて入金される場合は、返済明細をもとに金額を分けて入力することが大切です。
参考:国税庁 No.6221 預金や貸付金の利子など
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 500,000円 | 短期貸付金 | 500,000円 |
元本50万円の返済を受けた場合は、普通預金の増加と貸付金の減少を記録します。元本の回収は新たな収益ではないため、売上や受取利息には計上しません。
元本と利息がまとめて入金される場合は、返済明細や契約上の計算方法を確認し、それぞれを分けて仕訳します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収収益 | 5,000円 | 受取利息 | 5,000円 |
利息の入金日が翌期であっても、決算日までに発生した当期分の利息は、期間の経過に応じて当期の収益として計上します。
この例では、未入金の利息5,000円を未収収益として計上しています。翌期に入金を受けたときは、計上済みの未収収益を消し込み、二重に受取利息を計上しないよう注意しましょう。
長期貸付金のうち、翌期に返済期限が到来する30万円を短期貸付金へ振り替える場合は、次のように処理します。
この振替は資産内の表示区分を変更する仕訳であり、損益には影響しません。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 短期貸付金 | 300,000円 | 長期貸付金 | 300,000円 |
役員や従業員への貸付金は、貸付金として仕訳するだけでなく、貸付契約、利率、返済条件、実際の返済状況を継続的に管理する必要があります。
無利息または低利で貸し付ける場合は、給与として課税される可能性もあるため注意しましょう。
役員・従業員へ金銭を貸し付けるときは、金銭消費貸借契約書などを作成し、貸付金額、貸付日、利率、返済期日、返済方法を明確にします。
契約内容が曖昧なまま貸付けを行うと、経理担当者が元本と利息を区分できない、返済予定日を把握できない、貸付金残高の根拠を説明できないといった問題につながります。
社内承認の記録とあわせて、契約書や返済予定表を保存しましょう。
会社が役員や従業員へ無利息または低い利率で金銭を貸し付けると、通常の利率で計算した利息と実際に受け取る利息との差額が、給与として課税される場合があります。
会社が他から借り入れた資金をそのまま貸し付ける場合は、その借入金の利率が基本的な基準です。それ以外の場合は、貸付年に応じて国税庁が示す利率を確認します。
ただし、災害や病気などに伴い合理的な金額・返済期間で貸し付ける場合、会社の平均調達金利など合理的な利率を設定している場合、通常の利息との年間差額が5,000円以下である場合など、給与として課税しなくてもよい取扱いも示されています。
税務上の判断根拠を説明できるよう、貸付契約書、利率の算定資料、返済条件、社内承認記録を保存しておきましょう。また、適用する利率や取扱いは、貸付時点の国税庁情報で確認してください。
参考:国税庁 No.2606 金銭を貸し付けたとき
役員・従業員への貸付後は、返済予定表と実際の入金を定期的に照合します。返済額の不足や入金遅延がある場合は、返済条件の変更、給与控除などの返済方法、未収利息の有無を確認してください。
返済が長期間止まっている貸付金は、帳簿に残高があることだけでなく、今後も契約どおりに回収できるかを確認する必要があります。
契約変更や返済猶予を行った場合は、変更内容を書面で残し、返済予定表と会計上の短期・長期区分にも反映しましょう。

貸付金は、仕訳を計上した後の残高管理も重要です。決算では、契約書・返済予定表・入金履歴・総勘定元帳・補助元帳を照合し、元本残高、利息、短期・長期区分、延滞の有無を確認します。
確認する資料と順序を固定しておくと、担当者が変わっても同じ水準でレビューしやすくなります。
決算時に貸付金をチェックする際は、次の順番で確認しましょう。
返済猶予や契約条件の変更があった場合は、変更契約書と最新の返済予定表を保存し、会計上の区分や利息計算にも反映します。
確認項目を一覧にすると、証拠資料の不足やレビュー漏れを発見しやすくなります。
特に、短期・長期区分と未収利息は決算日に判断が必要となるため、返済予定表と利息計算表を早めに更新しておきましょう。
| 確認項目 | 確認資料 | 見落とした場合の主な影響 |
|---|---|---|
| 貸付先・元本・利率・返済期日 | 契約書 | 利息計算や回収期限の誤り |
| 短期・長期区分 | 返済予定表 | 流動資産・固定資産の表示誤り |
| 元本返済と利息入金 | 銀行明細、入金履歴 | 貸付金残高や受取利息の誤り |
| 未収利息 | 利息計算表 | 収益の期間帰属誤り |
| 延滞・条件変更 | 督促記録、変更契約書 | 回収リスクの見落とし |
| 回収可能性 | 財務情報、返済実績 | 貸倒引当金の検討漏れ |
返済期日を過ぎた貸付金がある場合は、遅延期間や督促状況だけでなく、相手先の財政状態、担保・保証の有無、今後の返済計画まで個別に確認します。長期間動きのない貸付金を一律に正常債権として扱うと、回収リスクを見落とすおそれがあります。
回収可能性が低下している場合は、社内規程や会計方針に基づき、貸倒引当金や貸倒処理の要否を検討してください。
貸付金は会社が貸したお金で、将来回収する資産です。借入金は会社が借りたお金で、将来返済する負債です。
各決算日に返済予定表を確認し、決算日の翌日から1年以内に回収予定となる金額を短期貸付金へ振り替えます。
元本返済は収益ではなく、貸付金という資産の回収です。利息部分のみを受取利息として収益計上します。
貸付金は、金銭を貸し付けたことで生じる資産です。決算日の翌日から1年以内に回収予定の額を短期貸付金、1年を超える額を長期貸付金として区分し、元本と利息を分けて仕訳します。
計上後は、契約書・返済予定表・入金履歴・会計残高を定期的に照合し、延滞や回収可能性まで確認することが重要です。
区分・仕訳・回収管理を一体で回す仕組みを整えることで、決算のミスと回収リスクの両方を抑えられます。
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