更新日:2024.09.27
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適格請求書発行事業者とは、インボイス制度の実施後において、税務署により適格請求書の発行の承認を得た事業者のことを指します。この書類は、取引先が仕入税額控除を受けるために必要な書類であり、交付がされない場合には取引先が多めに消費税を納付しなければならなくなる可能性があります。
適格請求書発行事業者に登録することで取引先との信頼関係構築にもつながり、ひいては新規取引先の開拓にも繋がります。
そこで、本記事では適格請求書発行事業者とは何かについて解説します。適格請求書発行事業者に登録して適格請求書を交付することで取引先との経理上透明性の高いやり取りを行いましょう。経理担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
適格請求書は、売り手が消費税額や税率などを記載し、購入者に提供する書類です。この書類の交付ができるのは、適格請求書発行事業者の承認を受けた場合のみであり、以下の一定要件を満たす必要があります。
この章では、以下の3点に焦点を当てて説明します。
その他、令和5年度税制改正によって見直された事項も紹介します。これらを参考に、適格請求書発行事業者登録制度について理解を深めて、経理業務にお役立てください。
適格請求書発行事業者とは、一定の登録条件を満たすことで買い手に対して適格請求書の発行の承認を得た事業者のことを指します。
当書類は、売り手が支払った税を還付するために必要な書類であり、売り手の名称、住所、取引内容と金額、消費税額などが明記されています。買い手へこの書類を渡せるのは、適格請求書発行事業者として登録を認められている者に限定されます。請求書を発行することで、売り手は消費税の申告納税や入出金管理を正確に行えます。
適格請求書とは、販売者が消費者に対して販売額や適用税率、消費税額等を正確に伝える、一定の法的要件を満たした書類のことを指します。この書類の中には、発行者の名称、住所、取引内容、金額、消費税額などが明記されています。
商品・サービスの購入の際に受け取る書類であり、発行者の消費税の納付を証明する書類となります。この書類を税務署に申請することにより、仕入税額控除を受けて減税ができます。この請求書は、消費税の還付を受けるために必要な書類であり、発行者にとっては税務上の重要な記録となります。
適格請求書について詳細を知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
「適格請求書とは?インボイス制度開始に向けて準備すべき点をわかりやすく解説」
適格請求書発行事業者とは、税務署に認められた企業であり、その制度を適格請求書発行事業者登録制度といいます。この制度は、令和5年度税制改正によって、手続きや申請の柔軟性について見直しが講じられました。
登録を認められた企業は、法的要件を満たしていることが証明され、「適格請求書発行事業者」として認定されます。適格請求書は、買い手において税金の還付のために必要な書類であり、税務上の信頼性を高められます。
登録申請を希望する者は一定の条件を満たさなければならず、登録後も法的要件を遵守し続けることが求められます。この制度の導入により、当書類が発行されることが促進され、不正による罰則のリスクも減少することが期待されています。
適格請求書発行事業者と免税事業者の違いは、消費税の取り扱いにあります。
適格請求書発行事業者は、消費税を納める課税事業者であり、取引において適格請求書(インボイス)を発行できます。インボイスには、取引内容や消費税額などが記載され、取引先の仕入税額控除に利用されます。
一方、免税事業者は、年間の売上が一定基準以下の事業者で、消費税を納める必要はありません。しかし、インボイスを発行できないため、取引先が仕入税額控除を受けられず、取引に影響が出る可能性があります。
インボイス制度導入後は、取引先が適格請求書を求めるケースが増えるため、免税事業者は課税事業者への転換や、取引先の理解を得るなどの対応が必要となるでしょう。
区分 | 適格請求書発行事業者 | 免税事業者 |
消費税の納税義務 | あり |
なし(年間売上高が基準以下)
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インボイス(適格請求書)の発行 | 可能 | 不可 |
取引先への影響 | 取引先の仕入税額控除が可能 |
取引先の仕入税額控除が不可
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インボイス制度導入後の対応 | 特に対応不要 |
課税事業者への転換や、取引先への理解を求めるなどの対応が必要
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適格請求書発行事業者になる条件として、以下のような基準があります。
上記2つの他に、法人格を有し、本人が所在する税務署の管轄内で事業を行っている必要があります。また、申請者は、これらの要件を満たすことを証明するため、事業所の概要や財務状況、過去の実績などを提出する義務があります。また、登録後も、法的要件を遵守し続けることが求められ、定期的な報告書提出や税務調査の受け入れなどが義務づけられています。
以上の要件を満たすと、適格請求書発行事業者として国税庁から認定を受けます。
適格請求書発行事業者への登録を怠ると、取引先との関係が悪化するだけでなく、新規取引の機会も失う可能性があります。
取引先の視点から見ると、適格請求書(インボイス)を受け取れないということは、仕入税額控置が適用できず、本来控除できるはずの消費税額を負担することになります。これは、取引先にとって不利益であり、取引継続の意欲を削ぐ要因となり得ます。
また、新規取引においても、相手企業は適格請求書発行事業者との取引を優先するでしょう。なぜなら、インボイス制度の導入により、適格請求書がなければ仕入税額控除が受けられず、税負担が増加してしまうからです。
たとえ経過措置期間があったとしても、それは一時的な猶予に過ぎません。いずれはインボイスがなければ仕入税額控除が受けられなくなり、取引先にとっての税負担が増加します。長期的な視点で見れば、これは取引先との関係悪化、ひいては取引停止に繋がりかねません。
2022年12月23日に、経済産業省が令和5年度税制改正大綱を公表しました。改正に伴い、適格請求書発行事業者登録制度についていくつか見直されました。また、当改正により、適格請求書の発行が円滑化され、消費者や企業の負担が軽減されることが期待されます。
この章では、適格請求書発行事業者登録制度の見直し内容である「手続きの見直し」「申請の柔軟化」について説明します。
適格請求書の発行に関する制度が緩和され、インボイス制度へのスムーズな移行を促進することが期待されます。以下に、手続きの見直しに関する改訂内容を具体的に紹介します。
インボイス制度の円滑な移行を促進させるため、適格請求書発行事業者の制度が緩和されました。手続きの見直しだけでなく、申請の柔軟化についても改められました。
具体的な改定内容は以下にて、紹介します。
適格請求書発行事業者登録制度は、消費税還付手続きを円滑に行うための制度です。取引先からの信頼性向上や経費削減、事務処理の効率化にもつながる重要な制度です。
適格請求書発行事業者登録しなかった場合、適格請求書を交付できません。そのため、取引先は仕入税額控除が適用されなくなってしまいます。結果として、仕入税額控除を適用できる事業者に発注される可能性が高いことから、適格請求書発行事業者に登録していないと取引先の変更もあり得ます。
適格請求書を発行するために一定の要件を満たす必要がありますが、登録事業者は還付手続きをよりスムーズに行えるため登録の検討をしましょう。課税事業者であっても、適格請求書発行事業者へ自動登録はされないため、自ら税務署へ申請をする必要があります。
発行事業者として登録することで、適格請求書の発行に必要な書式や内容を把握し、自社の請求書作成に役立てられます。
適格請求書発行事業者になるためには、いくつかの手順が必要です。それぞれの手順を理解し、正確に進めることで適格請求書発行事業者として承認を受けられます。
この章では、以下の4つのステップに分けて適格請求書発行事業者の登録申請手続きについて説明します。
適格請求書発行事業者の登録申請をするには、消費税法に定められた書式に従って登録申請書を作成する必要があります
登録申請書には、事業者の基本情報や役員名簿、過去3期分の決算書、税務署とのやりとりを代理する者の情報などさまざまな情報が必要となります。また、登録申請書提出時には税務署の担当者が申請書をチェックすることになるため、必要な書類や情報を漏れなく揃えることが重要であり、正確かつ明確な情報を提供することが求められます。
適格請求書発行事業者の登録申請書は国税庁のサイトから入手できます。以下のリンクからダウンロードしてみてください。
また、e-Taxで申請でき、申請受付は始まっています。e-Taxによる登録申請手続きについては以下をご確認ください。
登録申請書を作成する際には、事業者自身が消費税法に基づいて正確に情報を提供することが求められます。また、登録申請書の作成だけでなく、登録後も適格請求書の発行に関する情報管理や、税務署とのやりとりなど、適格請求書発行事業者としての責務を遵守することが重要です。
適格請求書発行事業者の登録申請書の作成ができたら、税務署へ提出・審査を受けることになります。税務署への提出の方法として、郵送とe-Taxの2つの方法があります。e-Taxでの申請の場合は、電子証明書が必須となります。
税務署に提出された申請書は記載された事業者情報や決算書などを確認し、適格請求書発行に必要な要件を満たしているかを判断されます。税務署の審査は、原則として2ヶ月以内に完了することが求められており、審査期間中に不備があった場合は通知を受けて追加提出が必要となることがあります。
登録後も事業者は、適格請求書発行に関する情報管理や税務署とのやり取りなど責務を遵守して適切な対応を心がけましょう。
登録手続きが完了した後、税務署は適格請求書発行事業者として対象事業者を登録簿に記載し、また、国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」で事業者情報を公表します。公表される情報には、登録日、事業者名、所在地などが含まれます。この公表により、事業者は他の事業者や一般消費者から適格請求書の発行依頼を受けられます。
事業者が適格請求書発行事業者として公表されることで、信頼性が高まり、新規顧客を獲得する機会が増えるかもしれません。また、既存顧客との関係維持にも役立ちます。
適格請求書発行事業者として登録が承認されると、税務署から登録完了の通知が届きます。e-Tax申請の場合は、登録アドレスに「登録通知データ」が格納されたメールが送信されます。
この通知には、登録事業者の名称、住所、登録番号、登録日などが記載されます。通知を受け取ったら、記載内容に誤りがないか確認することが重要です。もし誤りがある場合は、登録が抹消されることがあります。
事業者は、登録完了の通知を受け取った後、適格請求書の発行において法的要件を遵守する責務があることを認識しましょう。
適格請求書発行事業者の登録申請書の記入項目は以下の通りです。
まずは事業者の商号や所在地、事業の種類、従業員数、代表者氏名・生年月日・所属部署・連絡先、申請者と事業者との関係など、基本的な情報が必要です。また、過去3年間の納税状況や所得状況、税理士の有無や提出書類の確認方法なども記入が必要です。
また、e-Taxでの申請の場合、マイナンバー等の申請者の電子証明書の情報や、適格請求書を発行する上での方針や規定も明示する必要があります。加えて、申請書には必要書類の提出も求められ、申請者が法人である場合には、法人登記簿謄本や代表者の印鑑証明書などが必要になります。
記入漏れがないように申請書を作成し、提出する前には慎重に確認することが重要です。
適格請求書発行事業者は、適格請求書を発行できる事業者を指します。この登録がないと、取引先は仕入税額控除の対象から外れるため、取引先との関係維持が困難になる場合があります。
課税事業者であっても、自動的に適格請求書発行事業者に登録されるわけではなく、個別に税務署へ申請する必要があります
適格請求書発行事業者に登録することで、取引先からの信頼性を高められるほか、経費削減や事務処理の効率化にもつながるため、必要に応じて登録を検討しましょう。