更新日:2026.10.22

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債権管理とは、自社が保有する売掛金や受取手形、電子記録債権などの債権を適切に管理する業務のことです。企業間の掛け取引では、売上の計上から代金の入金までに時間差が生じます。そのため、入金までの期間中に回収漏れや資金不足を防ぐ仕組みとして、債権管理が欠かせません。
本記事は、債権管理の目的や与信管理との違い、業務フローなどを解説します。債権管理の課題や効率化の方法もまとめているため、ぜひ参考にしてください。
債権管理とは、売掛金や受取手形、電子記録債権などの債権を発生から回収まで一貫して管理する業務のことです。
債権管理では、債権が発生した後、請求額・支払期日・入金状況・未回収額などを取引先ごとに把握します。期日どおりに回収できなければ督促や取引条件の見直しを行い、貸倒れにつながるリスクを抑えられるのが利点です。
企業間取引の多くは、代金を後日受け取る掛け取引で行われます。その中で、入金予定日や金額を記録していなければ、入金遅れに気づけません。請求書の発行から入金確認、督促までを期日どおりに進めるためには、債権管理の仕組みが必要です。
債権管理の主な目的は、以下の4つです。
それぞれの目的を順に解説します。
債権管理の目的のひとつは、支払遅延や回収不能(貸倒れ)リスクを抑えることです。
債権管理では、取引先ごとに入金予定日と実際の入金を照合するため、期日を過ぎた入金にすばやく気づけます。その結果、取引先の資金繰りがさらに悪化する前に督促や取引条件の見直しに着手できるのです。
支払遅延を見つける指標として、売上債権回転期間があります。売上債権回転期間とは、売上債権(主に売掛金・受取手形・電子記録債権の合計)を1日あたりの売上高で割り、売上計上から回収までの平均日数を示した指標です。
たとえば、年間売上高が前期・当期とも3億6,500万円で、期末の売上債権が4,000万円から5,000万円に増えた場合の売上債権回転期間は以下のようになります。
上記の例では、売上高は変わらないのに、回収までの日数が10日延びています。つまり、入金が遅れている取引先がいる可能性を示すサインです。ただし、支払サイトの長い取引先との取引増加や、期末月への売上集中でも日数は延びるため、原因は取引先別に確認する必要があります。
売上債権回転期間は、直近12ヶ月の売上高や月商を用いて毎月算出し、日数が延びた月は取引先別の状況を確認しましょう。
関連記事:売上債権回転期間とは?計算式・目安と短縮する方法をわかりやすく解説
消滅時効の完成を阻止することも、債権管理を行う目的のひとつです。
売掛金などの債権は、一定期間権利を行使しないままでいると、消滅時効が完成します。そして、取引先が時効を援用(主張)すると、債権は消滅します。2020年4月1日以降に発生した債権の時効完成までの期間は、以下のいずれか早いほうです(それ以前に発生した債権は、改正前民法・商法の時効期間が適用)。
売掛金の場合、通常は支払期日を把握しているため、実務上は「支払期日から5年」と考えて管理するのが一般的です。
時効が完成して援用されると、売掛金などを回収できなくなり、利益を圧迫するうえ、資金繰りにも悪影響を及ぼします。しかし、債権管理の中で支払期日や請求の履歴を記録していれば、時効が近い債権を見逃すことなく、催告や訴訟などの手続きを取れます。
時効が近い債権は、内容証明郵便などで催告して時効の完成を6ヶ月猶予させ、訴訟や支払督促を申し立てましょう。なお、猶予期間中に再度催告しても、完成猶予の効力は生じません。
協議を行う旨の書面合意によって、原則1年間(当事者が定めた1年未満の期間があればその期間)時効の完成を猶予する方法もあります。また、取引先から債務承認書を受け取ったり、一部弁済を受けたりすると、債務の承認として時効が更新され、その時点から新たに時効期間が進行します。
債権管理が整っている企業は、取引先や金融機関から信頼を得やすくなります。請求や入金確認を正確に行うことで、誤請求や誤った督促といった取引先に迷惑をかけるトラブルを防げるためです。
たとえば、入金を確認しないまま、支払い済みの取引先に督促の連絡を入れると不信感を与えます。反対に、請求から入金確認、督促までを期日どおりに行えば、取引条件を守る企業として高く評価されるでしょう。
金融機関の融資審査でも、売掛金の内容や回収状況を確認されるケースが一般的です。長期間回収できていない売掛金が多いと、資産の質が低いと判断される場合があります。取引先別の残高と回収予定時期は、いつでも説明できる状態にしておきましょう。
経理業務の正確性を担保することも、債権管理の目的のひとつです。
債権管理では、請求・入金の記録と売掛金元帳を毎月照合します。そのため、消込漏れや計上誤りがあれば差額として表れ、決算前に見つけて修正できるのです。決算期には、主要な取引先へ残高確認書を送り、相手方の買掛金残高と一致するかを確かめる方法も有効です。
回収不能のおそれがある債権は貸倒引当金を計上し、回収不能が確定した債権は貸倒損失として処理します。ただし、税務上、貸倒引当金を損金算入できるのは、資本金1億円以下の中小法人等(大法人の完全子会社等を除く)や銀行・保険会社等に限られます。貸倒損失も法人税基本通達の要件を満たす必要があるため、まずは税理士などの専門家に確認しましょう。
関連記事:貸倒損失とは?計上できる3つのケースと仕訳・判断ステップを解説
与信管理と債権管理には、以下のような違いがあります。
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項目 |
与信管理 |
債権管理 |
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目的 |
取引前に取引先の信用力を確かめる |
発生した債権を期日どおりに回収する |
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実施時期 |
主に取引開始前 |
主に取引開始後 |
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主な業務 |
信用調査、与信限度額の設定、支払条件の決定 |
請求、入金確認、消込、滞留債権の督促 |
与信管理は、取引先の支払能力を審査し、取引の可否や与信限度額を決める業務です。支払遅延や貸倒れのリスクを未然に抑えることを目的とし、基本的には取引開始前に実施します。
一方、債権管理は、取引で発生した債権を請求から回収まで管理する業務です。取引を始めたあとに実施するものであり、与信管理とは目的や実施時期が異なります。
ただし、取引開始後も、取引先の業績や入金状況に応じた与信限度額の見直し作業などは必要です。そのため、与信管理を債権管理の一部として位置づけ、運用する企業もあります。
広義の債権管理は、与信管理から滞留債権の督促まで、以下の5つのステップで進めます。
具体的な作業内容をそれぞれ詳しくみていきましょう。
新規取引を始める際には、まず与信管理を行います。取引先の信用調査を行い、与信限度額や支払条件などを設定しましょう
信用調査で確認する主な情報は、以下のとおりです。
支払条件や支払期日、遅延損害金などの取引条件は取引基本契約書に明記します。なお、与信限度額は社内の管理値として設定し、契約書には記載しないケースが一般的です。支払遅延や信用不安が生じた場合に期限の利益を失う条項(期限の利益喪失条項)を入れておくと、残りの代金を一括で請求できます。あわせて、所有権留保や相殺予約の条項も検討しましょう。
取引開始後も、決算書や信用調査会社の情報をもとに与信の内容を適宜見直します。入金の遅れが出た場合や、取引額の増加・支払条件の変更を求められた場合は、再審査を行いましょう。
締め日ごとに、出荷や納品、検収の記録と販売データを照合し、請求の対象となる売上を確定させます。売上の確定を誤ると、請求金額の誤りや請求漏れにつながるためです。
売上の計上基準は、取引の実態に合わせて出荷基準・引渡基準・検収基準などから選びます。なお、「収益認識に関する会計基準」が適用される上場企業などでは、原則として、商品・サービスに対する支配が顧客へ移転した時点で収益を認識します。
また、同種の取引には同じ基準を適用し、毎期継続してください。基準が部門ごとに異なったり、期ごとに変更したりすると、売上の計上時期と請求の時期がずれ、売掛金残高を正しく把握できなくなります。
確定した売上は、取引先別の売掛金元帳に記録しましょう。売掛金元帳の残高は、入金確認や滞留債権を把握する際の基礎資料になります。
取引内容に基づき、正確な請求書を期日どおりに発行・送付します。請求書の記載誤りや送付の遅れがあると、取引先の支払処理が止まり、入金日が後ろにずれるおそれがあるため注意してください
請求書には、取引内容や請求金額に加えて、支払期日や振込先口座を明記します。適格請求書を発行する場合は、インボイス制度で定められた記載事項も満たす必要があります。
適格請求書の主な記載事項は以下のとおりです。
あわせて、請求金額の内訳、支払期日、振込先口座、請求書番号などを記載すると、請求・入金管理を行いやすくなります。
請求書の発行前には、売上管理で確定した売上と請求額が一致しているかを確認することが大切です。また、送付後は、発行日や送付方法、取引先の受領状況などを記録します。丁寧に記録を残しておけば、入金が遅れた際に請求書の未着が原因かどうかをすぐ確認できます。
また、請求額の合計と売掛金元帳の計上額を毎月照合し、請求漏れや二重請求を防ぎましょう。
関連記事:請求書の管理方法完全マニュアル|整理方法やファイリングを進めるコツを紹介
請求後は、実際の入金があったかを随時確認し、該当する売掛金の消込を行います。消込とは、入金額と売掛金を照合し、回収済みの売掛金を帳簿から減らす処理です。入金を確認して消込を済まさなければ、どの取引先が未入金なのかを把握できません。
入金額と請求額が一致しない場合、その多くは以下のいずれかが原因です。原因ごとの対応方法を以下の表にまとめました。
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不一致の原因 |
対応方法 |
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振込手数料の差し引き |
自社負担であれば支払手数料、取引先負担であれば売掛金の残額として請求するなど、社内ルールに沿って処理する |
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一部入金 |
残額を売掛金に残し、取引先に残額の支払予定を確認する |
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複数の請求のまとめ入金 |
支払通知書などで内訳を確認してから消し込む |
消込を終えたら、未回収の債権を、発生日または支払期日からの経過期間に応じて区分した債権年齢表(エイジングリスト)を作成しましょう。一覧表に取引先名、請求書番号、請求金額、支払期日、経過日数などを記載しておくと、督促の優先順位を判断しやすくなります。
予定どおりに回収できていない滞留債権が見つかった場合は、速やかに取引先へ督促の連絡を行いましょう。督促は、以下の順序で段階的に進めるケースが一般的です。
取引先に対する買掛金がある場合は、相殺によって回収するのもひとつの方法です。
最終的に回収できない債権は、法人税基本通達の要件を満たす場合に、貸倒損失として損金算入できます。
たとえば、継続的に取引していた取引先との取引を停止し、取引停止時・最後の弁済期・最後の弁済時のうち最も遅いときから1年以上経過した売掛債権は、一定の要件を満たせば、備忘価額を残した残額を貸倒損失として損金経理できます。ただし、担保がある場合などは、この取扱いの対象になりません。
関連記事:相殺とは?意味・仕組みとメリット・デメリット、請求書での処理方法をわかりやすく解説
債権管理は円滑な資金繰りに欠かせない業務ですが、以下のような課題が生じることもあります。
3つの課題と対策を順に解説します。
債権管理は、経理担当者の負担が大きくなりやすい業務です。請求書の発行、入金確認、消込、督促と作業の種類が多く、取引先の数に比例して作業量が増えます。また、月末月初に作業が集中することも、課題として挙げられます。
経理担当者の負担軽減を図る際には、債権管理業務のマニュアル化やシステム・ツールの導入などの方法が有効です。社内のリソースが不足している場合は、外注することも選択肢に入れておきましょう。
経理業務の外注化を検討する際は、以下の資料も参考にしてください。
「経理業務の外注で効率化できる業務・内製すべき業務の見極め方」の資料ダウンロードはこちら
Excelや紙で債権を管理していると、転記ミスや消込漏れが起こりやすくなります。債権管理でよくあるミスは、以下のとおりです。
人的ミスを防ぐには、取引先コードと振込名義を紐づけたマスタを整備し、入金データを銀行から直接取り込む方法が効果的です。また、手作業が残る工程には、担当者と承認者によるダブルチェックを入れましょう。
以下の資料では、日々の作業で起こりやすいミスの傾向を整理し、改善策を実務担当者の目線でまとめているため、ぜひ参考にしてください。
「【実務担当者向け】経理業務ミス分析レポート」の資料ダウンロードはこちら
債権管理を実施するにあたって、拠点が複数ある場合は一元管理できる体制が求められます。拠点ごとに請求や入金確認を行っていると、全社の債権残高や滞留状況を本社が把握できません。
また、管理方法や督促の基準が拠点ごとに異なっている場合には、対応にばらつきが出る点も課題です。
対策として、以下の3点を整えましょう。
各拠点には、データ入力や督促などの作業を残し、承認や全体管理を本社が担う形にすると、役割分担が明確になります。
関連記事:拠点の数だけ「経理の目」は届かなくなる|請求書の分散が招く3つのリスクと対策
債権管理を効率化する方法としては、主に以下の3つが挙げられます。
具体的な効率化の方法を解説するため、自社に合ったものを取り入れてみてください。
まずは、債権管理業務の標準化を図りましょう。具体的には、債権管理の手順や判断基準を社内規程・マニュアルにまとめます。
社内規程・マニュアルに定めておいたほうがよい項目は、以下のとおりです。
債権管理業務を一度可視化しておけば、担当者が交代しても滞りなく業務を続けられます。作成した社内規程・マニュアルは年1回程度見直し、取引先の増加や法改正に合わせて更新することも重要です。
取引先の信用状態を定期的にモニタリングする仕組みをつくることも大切です。取引開始時に問題がなかった取引先でも、業績が悪化するケースは少なくありません
とくに、以下のような状況になった場合は、支払遅延や貸倒れの兆候と考えられるため、取引先の信用状態を細かく確認する必要があります。
取引先の業績悪化などが確認された場合は、与信限度額の引き下げや前払いへの切り替えを検討します。また、見直しの結果を取引先マスタに記録し、営業部門などと共有しておけば、限度額を超える受注も防げます。
債権管理業務の効率化にあたっては、システムを導入するのも有効な手段です。債権管理システムを使えば、入金データと請求データを自動で照合し、未入金の取引先を一覧で確認できるため、消込や滞留債権の確認にかかる作業時間を短縮できます。
一般的な債権管理システムの機能は、以下のとおりです。
システムを導入する際は、現在の販売管理システムや会計ソフトと連携できるか、インボイス制度や電子帳簿保存法に対応しているかといった点を確認しましょう。また、複数の拠点を有する場合は、クラウドサービスを導入するのもひとつの方法です。
最後に、債権管理に関してよく寄せられる質問に回答します。
債権管理とは、売掛金や貸付金などの債権を、発生から回収まで一貫して管理する業務のことを指します。掛け取引で生じる未回収のリスクなどを抑え、資金繰りを安定させることが主な目的です。
基本的には、与信管理、売上管理、請求管理、入金管理、滞留債権管理の5つの業務で構成されます。
与信管理は取引先の支払能力を審査して与信限度額などを決める業務、債権管理は取引で発生した債権を回収まで管理する業務という違いがあります。
与信管理は取引開始前だけでなく、取引中も定期的に見直す点が特徴です。そのため、与信管理を債権管理の一部として位置づける考え方もあります。
債権管理とは、売掛金や貸付金などの債権を、発生から回収まで一貫して管理する業務です。貸倒れの防止や消滅時効の完成阻止などを通じて、資金繰りを安定させることを主な目的としています。
ただし、債権管理業務には、担当者の負担が大きい、手作業によるミスが起きやすいといった課題があります。そのため、業務の標準化やシステムの導入などによって、解消を図ることが重要です。
債権管理を含めた経理業務全体の効率化を検討している方は、以下の資料もぜひご覧ください。