更新日:2023.08.01
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取引先などから請求書を受け取ったら、速やかに支払いを済ませなければなりません。しかし、ヒューマンエラーなどが重なった結果、「支払ったはずが未払いになっていた」というトラブルが起こることがあります。請求書には時効があり、未払いのまま放置するとさまざまな問題が発生するため、請求書はきちんと管理しましょう。
本記事では、請求書の時効に関する基礎知識や、請求書の取り扱いで起こり得るミス、請求書のミスが起こってしまう原因、請求書の処理業務の負担を減らす方法について解説します。
請求書の時効は、民法第166条の1により、債権者が権利を行使できることを知ったときから5年間と定められています。(※)以前は支払期日の翌日から2年間が経過した時点で時効が成立していましたが、2020年に改正民法が施行され、請求書の時効が2年から5年に延長されました。(※)
従来の民法では、業種によって請求書の時効の成立期間に違いがあります。例えば、"運送賃に係る債権・旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権"などは1年、"医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権""工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権"などは3年でした。(※)現在は改正民法によって業種による差がなくなり、業種にかかわらず、請求書の時効は一律5年間に統一されています。
※出典:e-Gov法令検索「民法」
※出典:法務省「民法(債権関係)の見直し~「民法の一部を改正する法律」の概要~」
※出典:厚生労働省「民法改正に伴う消滅時効の見直しについて」p4
請求書を発行してから5年が経過すると、債権者が債務者に請求する権利が失われます。(※)未払いの売掛金があっても取引先から回収できなくなるため、債権者は請求書が時効を迎える前に未払金を回収しなければなりません。
取引先から送られてきた請求書に応じて代金を支払わないとどうなるかというと、まずは先方から問い合わせの連絡が入るのが一般的です。連絡を受けたにもかかわらず支払いに応じないと、内容証明が送られてきます。内容証明を使った催告は、時効中断の事由の一つです。内容証明が送付されると、時効期間が6カ月間延長されます。(※)
それでもなお支払いに応じないと、簡易裁判所から支払督促が発付されます。このとき、未払いを解消するか、あるいは異議申し立てを行わないと、仮執行宣言が発付され、強制執行の申し立てが可能です。仮執行宣言を行っても支払いが行われなかった場合、強制執行が実施され、債務者の財産が強制的に差し押さえられることになります。
未払いが単なるミスだった場合、ここまで問題がこじれることはないかもしれません。しかし、未払いの状態が続くと取引先との関係が悪化する恐れがあります。早急に支払い、未払いミスの再発防止に努めましょう。
※出典:法務省「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-」p3〜4,p8
請求書に関する基本は、以下の記事でご確認ください。
【請求書とは?必要な理由や確認すべきポイントを解説】
https://media.invoice.ne.jp/column/Invoices-and-receipts/with-invoice.html
代金の未払いにつながる請求書のミスは、大きく分けて2つあります。
まず1つ目は、取引先から受け取った請求書の確認不足です。通常、請求書を受け取ったら、内容をすぐに確認し、速やかに支払いの処理を行わなければなりません。しかし、他の書類に埋もれてしまったなど何らかの理由で請求書の確認が遅れてしまった場合、未払いミスに発展するおそれがあります。請求書の確認不足は自社の責任となるため、ミスが発生した原因を追求し、然るべき対策を講じる必要があります。該当する要素がないかどうかを確認してみましょう。
2つ目は、請求書の送付漏れです。通常は納品が完了し、先方が納品書を受け取った段階で請求書が発行・送付されます。しかし、取引先で請求漏れが発生した場合、いつまで待っても請求書が届かないことがあります。一般的に、支払い処理は請求書を受け取った後に行うため、請求書が届かないままだと未払いの状態になりかねません。ただ、請求書の発行・送付に法的な義務はなく、たとえ請求書がなくても債権は発生します。請求書の送付漏れが先方のミスであっても、支払い義務がなくなるわけではありません。したがって、納品からしばらくしても請求書が届かない場合は先方に問い合わせるのがおすすめです。
請求書のミスによって未払いが発生してしまった場合、なぜミスが起こったのかを追求し、再発防止に努める必要があります。ここでは請求書のミスが起こる主な原因を3つ紹介します。
経理業務は一般的に月末に集中しやすく、請求書の受け取りと繁忙期が重なった場合、書類が埋もれてしまうことがあります。また、日頃の業務量に対して人手が不足している場合、請求書の確認漏れや遅延が発生しやすくなります。
人手不足に関しては、新しい人材の採用が手っ取り早い解決法となるものの、コストなどの問題で難しいこともあるでしょう。その場合は、一人あたりの労働生産性を高めるために、請求書の処理業務の効率化を図る必要があります。
請求書が届いたら、その内容を確認した上で支払依頼書を作成し、承認や支払実行の手続きに移行します。この一連のプロセスの中で、入力ミスや書類の作成漏れといったヒューマンエラーが発生すると支払いが正常に行われず、未払いにつながる可能性があります。特に書類の作成や確認を手作業で行っている場合はヒューマンエラーが発生しやすいため、注意しましょう。
経理担当者しか分からない方法で請求書を管理していると、担当者が不在だったり、休職したりした際に請求書が適切に処理されない可能性があります。特に経理担当者が一人しかいない場合に起こりやすいミスなので、もしもの場合に備え、経理業務の属人化は早急に解決する必要があります。
受け取った請求書を適切に処理しないと、取引先に大きな迷惑をかける原因となります。場合によっては取引先との関係に影響を及ぼすこともあるため、請求書の処理ミスが発生しないよう、然るべき対策を講じておきましょう。ここでは請求書のミスを減らすための主な対策を3つ紹介します。
請求書の管理体制が不十分だと、処理プロセスで漏れが生じやすくなります。請求書の受領から、内容確認、承認、仕訳、保管までの業務をワークフローにして順番に業務を進めていけば、未払いの発生リスクを軽減できます。
請求書の詳しい管理方法については、以下の記事もチェックしてみてください。
【請求書の管理や整理方法について業務改善を行うコツを紹介!】
https://media.invoice.ne.jp/column/Invoices-and-receipts/invoice-business-improvement.html
一人で請求書の処理業務を行っていると、自身のミスになかなか気付くことができません。受け取った請求書を管理するときは、担当者一人だけでなく、他の人の手を借りてダブルチェック、トリプルチェックを行う習慣をつけましょう。
請求書は、先方から届くタイミングや書式・様式がそれぞれ異なるため、手作業で管理しようとすると手間や時間がかかるのはもちろん、ヒューマンエラーも頻発しやすくなります。そんなときに活用したいのが請求書をまとめるサービスです。
請求書をまとめるサービスは、その名のとおり、各社からバラバラに届く請求書をまとめてくれるサービスのことです。各社からバラバラに届く請求書を、サービス事業者がまとめて電子化し、中には支払いまで代行してくれるサービスもあります。電子化されたデータを自社のシステムに落とし込めば、データ入力の手間も省けるため、請求書の処理業務を大幅に効率化できます。
請求書代行サービスについては、以下の記事でまとめています。
【請求書代行サービスとは?導入までの流れとメリットを解説!】
https://media.invoice.ne.jp/column/Invoices-and-receipts/invoice-agency-service.html
請求書の処理業務を効率化するサービスはさまざまですが、バラバラに届く請求書を一括で管理したい場合は、株式会社インボイスの請求書おまとめるサービスである、Gi通信やOneVoice公共を利用するのがおすすめです。
Gi通信は通信料金の請求書を、OneVoice公共は電気・ガス・水道の請求書を、それぞれまとめられるサービスです。Gi通信やOneVoice公共を利用すると、以下のようなメリットがあります。
Gi通信とOneVoice公共を利用すれば、各社から送付された請求書の受け取りから支払い、電子データ化まで一貫して代行を依頼できます。各サービスの会社が発行した請求書を株式会社インボイスが受け取り、通信料金、公共料金ごとにまとめて処理してもらうことが可能です。請求書も電子データ化した状態で提供されるため、紙媒体で管理する必要がなく、かつパソコンなどへのデータ入力の手間も省けます。
通信事業やライフライン事業者は複数あり、どの事業者を利用するかは会社によって異なります。また、選択した事業者によって請求書の書式や様式が異なるため、複数の事業者を利用していると一括にまとめて管理するのは大変かもしれません。
Gi通信は利用している通信会社はもちろん、請求書の書式や様式も問わず、すべて一つの請求書にまとめて電子化できるので、事業者ごとに個別の対応を強いられずに済みます。OneVoice公共も、電気は150社以上、ガスは1,000社以上、水道は1,300自治体以上に対応しているため、公共料金の請求書の大部分をまとめてもらえるでしょう。
Gi通信やOneVoice公共を利用すると、複数の請求書データをまとめて確認できるようになります。どのサービスにどのくらいの費用がかかっているのかを簡単に比較できるため、コストの見直しや適正なプランの選択などに役立ちます。
請求書は5年で時効を迎えますが、未払いのまま放置すると催告状が届いたり、支払督促が発付されたりするおそれがあります。場合によっては強制執行の対象になる他、取引先との関係悪化につながるため、請求書が届いたら迅速かつ確実に処理することが大切です。
請求書の処理漏れなどのミスを防ぐために、ワークフローを作る、ダブルチェックやトリプルチェックの体制を整える、請求書のおまとめサービスを利用するなどの工夫が必要です。