更新日:2026.09.08

ー 目次 ー
支払期日を過ぎても入金がなく、督促しても回収できない。取引先が倒産したという知らせが届いた。そんなとき、帳簿に残った売掛金をいつ費用に振り替えるべきか、判断に迷う経理担当者は少なくありません。
回収不能となった債権を費用にする勘定科目が「貸倒損失」です。ただし法人税では、「長期間入金がない」というだけで損金にできるわけではありません。
本記事では、目の前の債権を貸倒損失にできるか、いつ・どう処理し、何を根拠に残すのかを、経理担当者が実際に判断する順番で整理します。
こうした知識の必要性は年々高まっています。帝国データバンクの集計によると、2026年7月の企業倒産件数は1,037件(前年同月比8.5%増)で、2カ月連続で1,000件を超えました。物価高倒産も121件と過去最多です。取引先の資金繰り悪化はいつ自社の売掛金に及んでもおかしくなく、いざというときに正しく判断して処理できる準備が欠かせません。
参考:株式会社帝国データバンク 倒産集計 2026年7月報
売掛金や貸付金は、将来お金を受け取る権利があるため資産として計上されます。ところが取引先の倒産や経営悪化により回収できないことがはっきりした場合、その金額を資産のまま残しておくと、貸借対照表は実態より大きく見えてしまいます。
そこで回収不能額を債権から取り除き、費用として認識する処理が貸倒損失です。
なお本記事では、次の3つの言葉が繰り返し登場します。先に押さえておくと、後半の判断が読みやすくなります。
貸倒損失は売掛金だけの話ではありません。ただし、後述する「取引停止後1年以上」の基準のように、債権の種類によって使える要件が変わります。まずは自社の債権がどれに当たるかを確認しましょう。
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債権の種類 |
内容 |
貸倒損失との関係 |
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売掛金 |
商品やサービスを掛けで販売した代金 |
最も代表的な対象。3つのケースすべてで対象になり得る |
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受取手形 |
取引先から受け取った手形による債権 |
回収不能となれば対象になり得る |
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未収入金 |
営業取引以外などから生じた未回収の代金 |
金銭債権として対象になり得る |
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貸付金 |
取引先や関係会社などに貸し付けた金銭 |
対象になり得るが、「取引停止後1年以上」の基準は使えない |
混同しやすいのが貸倒引当金です。貸倒損失は「回収できないことが確定した損失」、貸倒引当金は「これから回収できなくなるかもしれない見積り」という違いがあります。実務では、確認すべき資料も違う点を押さえておくと判断がぶれません。
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項目 |
貸倒損失 |
貸倒引当金 |
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考え方 |
回収不能が確定した債権を費用にする |
将来の貸倒見込額をあらかじめ見積もる |
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債権への影響 |
対象の債権を直接減らす |
債権は残し、評価勘定として控除する |
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計上のタイミング |
貸倒れの事実が生じたとき |
決算時 |
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経理が確認するもの |
貸倒れの事実と、それを説明できる証拠書類 |
期末の債権残高と、貸倒実績率などの見積根拠 |
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税務上の注意 |
要件を満たせば損金算入できる |
損金算入が認められるのは中小法人や金融機関など一定の法人に限られる |
なお、支払う側から見ると、取引先の債権が切り捨てられた場合は自社に債務免除益が生じます。売上債権と仕入債務を取引先単位で一元管理できていれば、与信の変化を支払側からも早めに捉えられます。

法人税で貸倒損失が認められるのは、大きく分けて3つのケースです。それぞれ根拠となる通達が異なり、対象となる債権や必要な手続きも変わります。
もう一つ見落とされがちなのが、帳簿で費用処理する「損金経理」が要件になるかどうかです。切捨ての事実がある場合は損金経理を要件とせず、その事実が生じた事業年度の損金となります。
一方、回収不能や取引停止のケースは損金経理が前提となるため、処理を忘れると損金にできません。
法的な手続きや正式な合意によって、債権そのものが消滅したケースです。国税庁は次のような事実に基づいて切り捨てられた金額を、その事実が生じた事業年度の損金に算入するとしています。
3つのケースの中で最も根拠が明確な類型です。裁判所の決定書や再生計画、協議の議事録、債務免除の通知書など「いつ・いくらの債権が消滅したか」を示す資料を必ず保管しておきましょう。
実務で判断が分かれやすいのが債務免除です。担当者同士の口頭のやり取りだけでは、税務上の根拠として弱くなります。確認したいのはこの3点です。
通知が相手に届いたことを証明できるよう、内容証明郵便などの方法を選んでおくと安心です。
法的な手続きがなくても、債務者の資産状況や支払能力からみて全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度に貸倒れとして損金経理できます。
ここで押さえたいのは、要件が「全額」である点です。一部でも回収の見込みが残っている債権を、その部分だけこの基準で貸倒損失にすることはできません。
また、回収できるかどうかは担当者の感覚ではなく、決算資料や財産の調査結果、督促の記録など、第三者が見て納得できる材料で判断する必要があります。
見落としやすいのが担保と保証の扱いです。担保物があるときは、それを処分した後でなければ損金経理はできません。保証債務についても、現実に履行した後でなければ貸倒れの対象にできない点に注意が必要です。
さらに連帯保証人がいる場合は、その連帯保証人が債務者と同等の立場にあると考えられるため、連帯保証人の資産状況や支払能力も勘案して回収不能かどうかを判断します。
債権管理台帳には「担保・保証の有無」を必須項目として持たせておきましょう。
いわゆる「1年ルール」です。継続的に取引していた債務者の資産状況や支払能力が悪化したため取引を停止し、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち、最も遅い時から1年以上が経過した場合、売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理できます。ただし、その売掛債権に担保物がある場合は対象から除かれます。

取引停止日・最後の弁済期・最後に入金があった日を並べ、最も遅い日から1年を数えます。請求日を基準にした債権年齢表だけでは判断できません。
売掛金や未収請負金などが対象で、貸付金は含まれません。「1年以上入金がないから貸付金も貸倒れ」とはならない点に注意が必要です。
継続的な取引を行っていた相手であることが前提です。不動産取引のように、たまたま取引した相手に対する売掛債権には適用がありません。
同じ地域の債務者に対する売掛債権の総額が、取立てに必要な旅費などの費用より少なく、支払いを督促しても弁済がない場合も、形式上の貸倒れとして処理できます。
少額の債権を何年も追い続けているケースでは検討の余地がありますが、督促を行った記録が残っていることが前提になります。
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項目 |
切捨て |
全額回収不能 |
取引停止後1年以上 |
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主な要件 |
法的手続の決定、協議による切捨て、書面による債務免除 |
資産状況・支払能力等からみて全額が回収不能と明らか |
継続取引の停止後、最も遅い時点から1年以上経過 |
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対象債権 |
金銭債権 |
金銭債権 |
売掛債権のみ(貸付金は対象外) |
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損金経理 |
不要(事実が生じた事業年度の損金) |
必要 |
必要 |
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備忘価額 |
不要 |
不要 |
必要(通常1円を残す) |
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担保・保証の扱い |
決定・合意の内容に従う |
担保物は処分後、保証債務は履行後でなければ不可 |
担保物がある売掛債権は対象外 |
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保存したい資料 |
認可決定書、再生計画、協議の議事録、債務免除通知の控えと配達証明 |
決算書や財産調査の結果、督促記録、担保処分の資料、社内の稟議記録 |
取引停止を示す資料、入金履歴、督促記録、契約書や請求書 |
参考:国税庁 No.5320 貸倒損失として処理できる場合/法人税基本通達 第6節 貸倒損失 第1款 金銭債権の貸倒れ
要件を覚えていても、実際の場面では「この債権はどれに当たるのか」で手が止まります。処理に進む前に、次の3点を順番に確認しましょう。

最初に確認するのは、本当に未回収なのかという点です。入金はあったが消込が漏れている、振込名義が取引先名と異なる、相殺や返品・値引きの処理が反映されていない。
こうした事務処理上の理由で残高が残っているケースは珍しくありません。ここを飛ばすと、回収済みの債権を貸倒処理してしまう事故につながります。
次に、その債権が売掛金なのか、貸付金なのか、未収入金なのかを区分します。「取引停止後1年以上」の基準は売掛債権にしか使えないため、ここを取り違えると要件そのものを満たさなくなります。
科目名だけでなく、どのような取引から生じた債権なのかまで確認しておきましょう。
債権が確定したら、「この債権は貸倒損失にできる?3つのケースで判断」で整理した順番で整理します。
どれにもはっきり当てはまらない場合は、無理に貸倒損失と決めず、貸倒引当金による評価や専門家への相談に切り替えましょう。
判断でつまずく原因の多くは、情報が担当者の頭の中や個別のメールに散らばっていることです。回収懸念が出た取引先については、次の項目を1社1枚の管理シートにまとめておくと、要件の当てはめも税務調査での説明もスムーズになります。
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記載項目 |
なぜ必要か |
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請求日・支払期日 |
債権の発生時期と滞留期間を把握するため |
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最後に入金があった日 |
1年の起算点を判定するため |
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最終取引日・取引停止日 |
継続取引の停止に当たるかを確認するため |
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督促の日付・方法・相手の回答 |
回収努力を客観的に示すため |
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法的手続の情報 |
切捨ての事実の有無を確認するため |
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担保・保証の有無 |
処分・履行が済んでいるかを確認するため |
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営業部門・弁護士からの情報 |
回収見込みを多面的に判断するため |
判断ができたら、次はそのケースに応じた仕訳です。ここでは、2章で整理した3つのケースがそれぞれどの仕訳になるのかを紐づけながら整理します。
再生計画などで債権の一部が法的に切り捨てられたときは、決定によって消滅した部分だけを処理します。残った金額は引き続き回収予定の債権として帳簿に残し、計画に沿って回収を進めます。
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借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
摘要 |
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貸倒損失 |
200,000 |
売掛金 |
200,000 |
再生計画による切捨分 |
全額回収不能が明らかになり、引当金を積んでいなかった場合の基本形です。回収不能となった売掛金を帳簿から取り除き、その全額を当期の費用として認識します。
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借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
摘要 |
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貸倒損失 |
100,000 |
売掛金 |
100,000 |
回収不能の確定 |
前期までに引当金を積んでいた債権が貸倒れたときは、まず引当金を取り崩し、足りない部分だけを貸倒損失とします。引当金を残したまま全額を貸倒損失にすると、費用を二重に計上することになるため注意が必要です。
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借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
摘要 |
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貸倒引当金 |
60,000 |
売掛金 |
100,000 |
引当金の充当 |
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貸倒損失 |
40,000 |
- |
- |
引当金の不足分 |
いったん貸倒処理した債権が後から回収できたときの処理です。前期以前に貸倒処理した債権を回収したときは、「償却債権取立益」を使って収益として計上します。同じ事業年度のうちに回収した場合は、計上済みの貸倒損失を取り消す処理になります。
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借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
摘要 |
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普通預金 |
20,000 |
償却債権取立益 |
20,000 |
過年度貸倒分の回収 |
なお、消費税の貸倒れに係る税額控除を受けていた場合は、申告上の調整も必要です。詳しくは「貸倒損失を処理した後に確認したい税務上のポイント」で解説します。
意外と見落とされるのが、税込経理と税抜経理で仕訳が変わる点です。税込1,100,000円(本体1,000,000円、消費税等100,000円)の売掛金が貸倒れた場合を比べてみます。
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経理方式 |
借方 |
貸方 |
ポイント |
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税込経理 |
貸倒損失 1,100,000 |
売掛金 1,100,000 |
消費税相当額を含めて費用計上し、税額の控除は申告上で調整する |
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税抜経理 |
貸倒損失 1,000,000 |
売掛金 1,100,000 |
本体部分を費用、消費税相当額は仮受消費税等の減少として処理する |
表示区分は一律ではありません。売掛金など営業活動から生じた債権であれば販売費及び一般管理費、貸付金など営業外の債権であれば営業外費用に表示するのが一般的です。金額が異常に大きい場合には特別損失として表示することもあります。
自社の会計方針と過年度の表示に合わせ、判断に迷うときは顧問税理士や監査人に確認しましょう。
貸倒損失は税務調査で確認されやすい項目です。あとから否認されないために、処理と同時に「なぜそう判断したか」を残しておきましょう。
「この書類さえあれば必ず認められる」という万能の資料はありません。共通して大切なのは、次の3つを資料の組み合わせで説明できる状態にしておくことです。
社内の稟議書や承認記録も、判断の経緯を示す資料として一緒に保管しておきましょう。ケースごとの具体的な保存資料は、2章の比較表を確認してください。
担保物があるときは処分した後、保証債務があるときは現実に履行した後でなければ、貸倒処理はできません。
処理の前に、担保からの回収可能額や保証人・保証会社からの回収見込みが残っていないかを確認し、その結果を記録として残します。
対象債権に前期までの貸倒引当金が設定されていないかを確認します。設定済みであれば、引当金を充当した後の残額を貸倒損失とします。
引当金の取崩しと貸倒損失の計上をセットで記録しておくと、二重計上の防止にもなります。
全額回収不能(ケース2)と取引停止後1年以上(ケース3)は、帳簿で費用として処理する「損金経理」が要件です。処理を忘れると、要件を満たしていても損金にできません。決算で確実に費用計上したかを確認しましょう。
なお、法的な切捨て(ケース1)は損金経理を要件とせず、切捨ての事実が生じた事業年度の損金となります。
仕訳を切って終わりではありません。課税売上げに係る債権であれば、消費税の調整まで確認して初めて処理が完了します。
国内で行った課税資産の譲渡等に係る売掛金などが貸倒れとなった場合、その貸倒れに係る消費税額を、貸倒れとなった課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除できます。
控除を受けるには、貸倒れの事実を明らかにする書類を保存しておく必要があります。なお、免税事業者であった期間の売上げに係る債権は対象になりません。
法人税の仕訳だけで完結させず、消費税申告への影響もチェック項目に加えておきましょう。
貸倒れに係る税額控除を受けた債権を後から回収した場合は、回収額に対応する消費税額を、回収した課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算します。
申告書では「控除過大調整税額」として処理する項目です。償却債権取立益を計上して終わりにせず、消費税の調整までセットで確認してください。
参考:国税庁 No.6367 貸倒れに係る税額の調整/No.6631 貸倒債権を回収したときの消費税額の計算
法人税でも消費税でも、貸倒れの事実を明らかにする書類の保存が求められます。処理年度の決算資料とあわせて、督促記録・法的整理の通知・債権管理シートなどを一式で保管しておきましょう。
決算時に初めて洗い出すのではなく、月次で滞留期間や入金遅延を確認し、30日超・60日超・90日超など自社基準で滞留債権を抽出しておくと、根拠資料が自然と揃います。
なお、この日数基準はあくまで社内管理のルールであり、税務上の貸倒れの要件とは別物です。
「取引停止後1年以上」の基準だけを根拠に貸倒処理することはできません。この基準の対象は継続的な取引から生じた売掛債権であり、貸付金は含まれないためです。貸付金については、法的な切捨てがあるか、全額が回収不能と客観的に判断できるかで検討します。
同じ地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用に満たず、督促しても支払いがない場合は、形式上の貸倒れとして処理できます。
金額の大小よりも、継続取引だったか、督促の記録が残っているかがポイントになります。
計上できます。所得税でも、法人税とほぼ同じ考え方で貸倒れの取扱いが定められており、事業所得などの必要経費に算入します。事業に関連しない貸付金などは扱いが異なるため、対象となる債権かどうかを先に確認しましょう。
参考:国税庁 所得税基本通達 第51条関係 資産損失の必要経費算入
連絡が取れないという事実だけでは処理できません。資産状況や支払能力から全額回収不能が客観的に明らかであること、または継続取引の停止から1年以上が経過していることなど、いずれかのケースに該当する必要があります。
貸倒損失は事実認定が問われやすい項目のため、確認されることは珍しくありません。ただし、どのケースに該当し、なぜ回収不能と判断したかを資料で説明できれば問題ありません。判断の根拠と証拠書類を残しておくことが最大の備えになります。
貸倒損失は、「回収できなくなったから処理する」ものではありません。その債権が貸倒損失として処理できるケースに該当するかを確認し、判断の根拠を残したうえで処理することが重要です。
単なる支払遅延と貸倒れは異なります。対象債権・起算点・担保や保証の有無・損金経理の要否まで押さえ、日頃から売掛金残高と滞留期間を管理しておけば、いざというときに迷わず処理できます。最後に、処理する前の確認ポイントを1枚にまとめました。
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No. |
確認項目 |
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1 |
入金消込漏れや相殺漏れではなく、本当に未回収の債権か |
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2 |
売掛金・貸付金・未収入金など債権の種類を区分したか |
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3 |
法的整理や書面による債務免除など、切捨ての事実はあるか |
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4 |
全額が回収不能と判断できる客観的な資料があるか |
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5 |
「1年以上」の基準を使う場合、継続取引による売掛債権か |
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6 |
1年の起算点を、取引停止日・最後の弁済期・最終入金日から確認したか |
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7 |
担保物の処分、保証債務の履行は済んでいるか |
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8 |
過年度に貸倒引当金を設定していないか |
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9 |
損金経理が必要なケースで、帳簿上の費用処理を行ったか |
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10 |
貸倒れの事実を説明できる資料と督促記録を保存したか |
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11 |
課税売上げに係る債権について、消費税の調整を確認したか |
請求から入金までのデータを取引先単位で一元管理できていれば、貸倒れの兆候を早期に捉え、判断の根拠も自然と揃っていきます。
参考:中小企業庁 中小企業の会計 31問31答