更新日:2026.10.19

ー 目次 ー
小口現金とは、交通費や切手代、事務用品費など、日常的に発生する少額の支払いに備えて手元で管理する現金です。支払いを迅速に行える一方、記帳や残高確認の手間、紛失・盗難などのリスクがあります。
この記事では、小口現金と現金の違い、定額資金前渡制度による管理方法、仕訳例、廃止・縮小する際の進め方をわかりやすく解説します。
小口現金とは、日常業務で発生する少額の支払いに使用するため、会社が一定額を手元に用意して管理する現金です。経理部門だけでなく、店舗や営業所、各部署などで管理する場合もあります。
小口現金が使われる代表的な支出は、次のとおりです。
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支出の種類 |
具体例 |
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交通費 |
電車代、バス代、タクシー代 |
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通信費 |
切手、はがき、宅配便代 |
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消耗品費 |
文房具、コピー用紙、清掃用品 |
少額の支払いのたびに振込処理や経理部門への申請を行うと、業務が煩雑になります。そこで、必要な部署へあらかじめ一定額を渡し、担当者が支払いと記録を行う仕組みとして小口現金が利用されます。
ただし、どの支出にも自由に使える現金ではありません。利用できる費目や1回当たりの上限額、承認方法などを社内規程で定めて運用することが重要です。
小口現金は会社が保有する現金の一部ですが、用途や管理単位が限定されています。
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比較項目 |
小口現金 |
現金 |
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主な用途 |
日常的な少額支払い |
会社全体の現金取引 |
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管理場所 |
部署、店舗、営業所など |
本社の金庫、経理部門など |
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管理担当者 |
小口現金担当者 |
出納担当者、経理担当者 |
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使用範囲 |
社内規程で定めた経費 |
売上代金の受領を含む現金取引全般 |
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帳簿 |
小口現金出納帳など |
現金出納帳など |
社内管理では小口現金という独立した勘定科目や補助科目を使用することがあります。一方、貸借対照表では通常、ほかの手元現金や預金とあわせて「現金及び預金」に含めて表示します。
現金と小口現金は別の資産ではなく、同じ現金を用途・保管場所・担当者ごとに区分して管理している関係です。
小口現金を正確に管理するには、主に次の3点を決めます。
それぞれの管理方法を確認していきましょう。
小口現金では、あらかじめ決めた金額を担当者へ渡し、一定期間に使用した分だけ補充する「定額資金前渡制度(インプレスト・システム)」が用いられます。
たとえば、設定額を30,000円とし、1週間で7,500円を支払った場合は、残額22,500円と領収書などを確認したうえで7,500円を補充します。補充後の小口現金は、再び30,000円になります。
この方法なら、次の計算によって不足や記帳漏れを発見しやすくなります。
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実際の残額+領収書等の合計額=設定した小口現金額 |
金額が一致しない場合は、未記帳の支出や領収書の紛失、計算間違いなどがないかを確認します。
小口現金の保有額について、すべての会社に共通する法定上限はありません。会社ごとに、補充までの期間に見込まれる支出額と予備分をもとに設定します。
設定時には、次の項目を決めておきましょう。
保有額が多すぎると、盗難や不正使用のリスクが高まります。反対に少なすぎると、頻繁な補充が必要になります。
過去数か月の利用実績を確認し、1週間または1か月など、補充周期に必要な範囲で設定するとよいでしょう。
小口現金を使用した場合は、小口現金出納帳へ支出内容を記録します。主な記載項目は次のとおりです。
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記載項目 |
記載内容 |
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日付 |
支払いまたは補充を行った日 |
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証憑番号 |
領収書や出金伝票に付けた番号 |
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摘要 |
支払先、購入品、使用目的 |
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勘定科目 |
旅費交通費、通信費、消耗品費など |
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収入額 |
補充された金額 |
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支出額 |
小口現金から支払った金額 |
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残高 |
取引後の手元現金 |
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承認者 |
内容を確認・承認した担当者 |
記帳後は「直前の残高+収入額-支出額」で計算した残高と、実際の手元現金を照合します。
法人は、現金出納帳などの帳簿や領収書などの取引関係書類を、原則として7年間保存する必要があります。国税庁も、保存対象となる帳簿の例として現金出納帳を挙げています。
関連記事:【記入例あり】現金出納帳の書き方|記載項目・仕訳例・残高が合わない時の対処法
小口現金の仕訳は、支出をいつ会計帳簿へ反映するかによって異なります。ここでは、次の取引を例に確認します。
普通預金から30,000円を引き出し、小口現金として担当者へ渡した場合の仕訳は次のとおりです。
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借方 |
貸方 |
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小口現金 |
30,000円 |
普通預金 |
30,000円 |
会社によっては小口現金ではなく現金の補助科目として管理する場合もあります。使用する科目は社内で統一しましょう。
定額資金前渡制度では、小口現金係が日々の支払いを小口現金出納帳へ記録し、一定期間ごとに経理担当者へ報告します。
経理担当者が報告された支出額と同額を補充する際に、各経費と預金の減少をまとめて仕訳する方法があります。
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借方 |
貸方 |
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通信費 |
500円 |
普通預金 |
2,500円 |
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旅費交通費 |
800円 |
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消耗品費 |
1,200円 |
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この方法では、小口現金勘定の帳簿残高は30,000円のまま維持されます。実際の手元現金も2,500円を補充することで30,000円に戻ります。
小口現金を使用するたびに会計帳簿へ反映する場合は、支払い時に次の仕訳を行います。
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借方 |
貸方 |
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通信費 |
500円 |
小口現金 |
2,500円 |
|
旅費交通費 |
800円 |
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消耗品費 |
1,200円 |
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その後、使用した2,500円を補充します。
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借方 |
貸方 |
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小口現金 |
2,500円 |
普通預金 |
2,500円 |
支払いの都度記帳する方法と、補充時にまとめて記帳する方法を混在させると、二重計上や記帳漏れが起こりやすくなります。会社全体で処理方法を統一することが大切です。
小口現金は預金と異なり、金融機関の取引履歴が自動的に残りません。担当者の注意だけに頼らず、管理ルールと確認体制を整える必要があります。
小口現金を管理する際の注意点は、以下の通りです。
可能な範囲で、現金を保管・記帳する担当者と、残高や領収書を確認する担当者を分けましょう。
具体的には、次のようなルールを設けます。
現金の保管、支払い、承認、照合を一人だけで完結させないことが、不正やミスの防止につながります。
帳簿残高と実際の小口現金が一致しない場合は、すぐに雑費や雑損失として処理せず、まず次の点を確認します。
原因が判明しない場合は、一時的に「現金過不足」で処理します。その後、原因が判明した時点で本来の勘定科目へ振り替え、決算まで原因が不明であれば、一般的に不足額を雑損失、超過額を雑収入へ振り替えます。
関連記事:現金過不足とは?差額が合わないときの確認手順・仕訳・決算処理と発生防止の実務ポイント
小口現金は少額の支払いに便利な一方、現金を維持するための管理業務が発生します。法人カードや経費精算システムなどの代替手段が増えていることから、小口現金を廃止したり、保有額や利用範囲を縮小したりする企業もあります。
主な理由は、次のとおりです。
また、小口現金そのものの金額が少なくても、現金の準備、記帳、証憑確認、残高照合、補充といった作業が繰り返し必要です。そのため、小口現金の利用頻度が低い場合は、管理にかかる手間が支払いの利便性を上回ることもあります
法人カードやプリペイドカード、経費精算システムなどで代替できる支出が増えている場合は、小口現金を維持する必要性を定期的に見直しましょう。完全に廃止するのが難しい場合でも、利用できる費目や設定額を限定すれば、管理負担を減らせます。
法人カードやプリペイドカード、交通系ICカード、経費精算システムなどを活用すれば、小口現金を使う場面を減らせます。
経済産業省も、キャッシュレス化の意義として、現金管理に伴うコストの削減や業務効率化、人手不足への対応などを挙げています。
小口現金の用途を洗い出し、次のように代替手段へ置き換えます。
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小口現金の用途 |
代替手段 |
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事務用品の購入 |
法人カード、法人向け通販 |
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電車・バス代 |
法人用交通系ICカード |
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タクシー代 |
法人カード、タクシーアプリ |
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切手・郵送費 |
料金後納、オンライン郵便サービス |
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従業員の立替経費 |
経費精算システム、銀行振込 |
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少額の店舗購入 |
法人プリペイドカード |
決済履歴を会計ソフトや経費精算システムと連携すれば、入力や照合の負担を減らせます。ただし、自動作成された仕訳についても、勘定科目や税区分、利用目的の確認は必要です。
現金しか利用できない店舗での支払い、慶弔費、災害・通信障害時の支払いなどがある場合、小口現金を一度に廃止するのは現実的ではありません。
次の手順で段階的に縮小すると進めやすくなります。
キャッシュレス化にも、カードの不正利用や私的利用、証憑の回収漏れといったリスクがあります。決済方法を変更するだけでなく、利用明細の確認や承認ルールもあわせて整備しましょう。
ここでは、小口現金の上限額や領収書を紛失した場合の対応、完全に廃止できない場合の管理方法など、小口現金についてよくある疑問に回答します。
小口現金の保有額について、すべての会社に共通する法定上限はありません。会社の利用実績や補充頻度、盗難リスクを考慮し、社内規程で設定します。
保有総額だけでなく、1回当たりの支払上限や、上限を超える場合の承認方法も定めておくことが重要です。
まず、購入先に領収書や請求書を再発行できるか確認します。再発行できない場合は、出金伝票や紛失理由書を作成し、支払日、支払先、金額、用途、承認者などを記録しましょう。
クレジットカードの利用明細や交通系ICカードの利用履歴など、支払いの事実を確認できる資料もあわせて保存します。
ただし、消費税の仕入税額控除を受ける場合、クレジットカード利用明細や社内の出金伝票だけでは、原則として適格請求書等の保存要件を満たしません。取引内容によって必要な書類や特例が異なるため、適格請求書等を取得できるか確認することが重要です。
現金でしか対応できない支出がある場合は、完全廃止にこだわらず、例外用の資金として最小限の金額を残します。
利用できる費目を限定し、少額の設定額と支払上限を設けたうえで、法人カードなどで代替できる支出を継続的に移行していく方法が現実的です。
小口現金とは、交通費や切手代、事務用品費など、日常的な少額支払いに備えて会社が手元で管理する現金です。現金と別の資産ではありませんが、用途・保管場所・担当者を区分し、小口現金出納帳で管理します。
運用する場合は、定額資金前渡制度を活用し、設定額や支払上限、証憑の提出期限、残高確認の方法を明確にしましょう。一方、管理負担や紛失・不正使用のリスクが大きい場合は、法人カードや経費精算システムへ置き換え、例外用の現金だけを残して段階的に縮小する方法もあります。
小口現金の管理や経費精算業務を効率化したい方は、以下の資料もご確認ください。