更新日:2026.07.24

ー 目次 ー
現金出納帳は、現金の入金・出金と残高を記録する帳簿です。手元現金は通帳のように取引履歴が自動で残らないため、記帳漏れや証憑の紛失が残高差異につながりやすくなります。本記事では、現金出納帳の基本、書き方、記入例、仕訳との関係、残高が合わない場合の対処法を解説します。

現金出納帳とは、会社や個人事業で扱う現金について、入金・出金・残高を日付順に記録する帳簿です。現金取引だけを対象にする補助簿であり、帳簿上の残高と実際の手元現金が一致しているかを確認するために使います。
現金は預金と違い、取引履歴が金融機関の明細として自動的に残りません。そのため、日々の入出金を記録し、領収書やレシートなどの証憑と照合することが、正確な経理処理の前提になります。
現金出納帳を作成する主な目的は、現金の流れを見える化し、記帳漏れや二重計上、証憑の紛失、不正を早期に発見することです。特に現金を扱う店舗や営業所では、毎日の帳簿残高と実残高の照合が、差異を小さいうちに見つける基本的な管理手順になります。
現金出納帳は、仕訳帳や総勘定元帳と役割が異なります。違いを整理すると、次のとおりです。
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帳簿名 |
帳簿 |
対象 |
主な役割 |
|
現金出納帳 |
補助簿 |
現金取引 |
現金の入出金と残高を管理する |
|
仕訳帳 |
主要簿 |
すべての取引 |
借方・貸方に分けて取引を日付順に記録する |
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総勘定元帳 |
主要簿 |
勘定科目ごとの取引 |
勘定科目別に増減や残高を確認する |
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預金出納帳 |
補助簿 |
銀行口座の入出金 |
預金口座ごとの入金・出金を管理する |
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小口現金出納帳 |
補助簿 |
小口現金の入出金 |
実際の残高と小口現金出納帳が合致しているか確認 |
5つの帳簿の関係を図で整理すると、現金出納帳と預金出納帳が「補助簿」として現金取引に特化し、主要簿である仕訳帳・総勘定元帳と連動しているということになります。

たとえば、現金で文具を購入した場合、現金出納帳には出金額と残高を記録し、仕訳帳には「消耗品費/現金」として借方・貸方を記録します。現金出納帳と仕訳帳は別の帳簿ですが、同じ取引を異なる角度から記録しているため、内容は一致している必要があります。
小口現金出納帳は、交通費や消耗品費など少額支出用の現金を管理する帳簿です。会社全体の現金を管理する現金出納帳に対し、小口現金出納帳は部署・店舗・担当者単位で持つ少額資金の動きを管理する点が異なります。
小口現金を定額で補充する運用では、あらかじめ一定額を渡し、使用後に領収書と残額を確認して不足分を補充します。この方法を採る場合でも、支出内容・証憑・残高を記録し、実際の現金と一致しているかを確認することが重要です。
法人は、帳簿を備え付けて取引を記録し、帳簿と取引関係書類を原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。国税庁は帳簿の例として、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳などを挙げています。なお、一定の欠損金や災害損失がある事業年度では、保存期間が10年間となる場合があります。
現金出納帳は保存義務のある重要な帳簿ですが、日々の記帳は特定の担当者に委ねられやすく、書き方や判断基準がその人の中だけで積み上がる傾向があります。
当社の「経理担当者165人にアンケート!経理管理職のお悩み調査」(2025年8月)でも、経理管理職のお悩み第2位に「業務の属人化」(20.5%)が挙げられており、「特定の人にしか対応できない業務」が現場で積み上がっている実態がうかがえます。

出典:株式会社インボイス 「経理担当者165人にアンケート!経理管理職のお悩み調査」
現金出納帳は一見シンプルですが、摘要の書き方や締めのタイミングは担当者ごとに独自ルール化しやすく、交代時の手戻りやひも付け漏れにつながります。次章では、誰が担当しても同じ品質で記帳できるよう、記載項目と書き方の基本を整理します。
現金出納帳は、前日または期首の残高を起点に、入金と出金を発生順に記録します。記入後は「直前残高+入金額-出金額」で残高を更新し、最後に実際の手元現金と一致しているかを確認します。

現金出納帳に決まった様式はありませんが、後から取引内容を確認できるよう、次の項目をそろえておくと管理しやすくなります。
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項目 |
記載内容 |
確認ポイント |
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日付 |
入金・出金があった日 |
証憑の日付と一致しているか |
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証憑番号 |
領収書や伝票に付けた番号 |
帳簿と証憑を追跡できるか |
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相手先 |
取引先名、店舗名、担当者名など |
後から支払先・入金元を確認できるか |
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摘要 |
取引内容の説明 |
「文具代」だけでなく内容が具体的か |
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勘定科目 |
売上、消耗品費、旅費交通費など |
仕訳と整合しているか |
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入金額・出金額 |
現金の増減額 |
入金欄と出金欄を逆にしていないか |
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残高 |
取引後の手元現金残高 |
実際の現金と一致しているか |
帳簿の最初には、期首残高または前日繰越額を記入します。前日の現金残高を引き継ぐことで、その日の入出金後の残高を正しく計算できます。事業開始時に現金を用意した場合は、事業用資金として処理し、開始時点の残高を明確にします。
現金売上、売掛金の現金回収、普通預金からの引き出しは入金欄に記入します。一方、現金仕入、経費の現金払い、普通預金への預け入れは出金欄に記入します。銀行振込やクレジットカード払いなど、手元現金が動かない取引は、原則として現金出納帳には記入しません。

次の例では、前月繰越100,000円から、現金売上、消耗品購入、普通預金への預け入れを順番に記録しています。
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日付 |
摘要 |
入金 |
出金 |
残高 |
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4月1日 |
前月繰越 |
100,000円 |
||
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4月2日 |
現金売上 |
30,000円 |
130,000円 |
|
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4月2日 |
コピー用紙購入 |
5,500円 |
124,500円 |
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4月3日 |
普通預金へ預け入れ |
50,000円 |
74,500円 |
一日の終わりには、帳簿上の残高と実際の現金を照合します。差異がある場合は翌日に持ち越さず、領収書、伝票、入力内容、釣銭、立替精算の有無を確認します。確認日と確認者を残しておくと、後日の調査や承認にも役立ちます。
現金出納帳と仕訳は別物ですが、同じ現金取引をもとに記録します。現金が増えたときは「現金」を借方、現金が減ったときは「現金」を貸方に記入します。4つの仕訳例を見ながら理解していきましょう。
※記入例①~④は残高を繰越する前提で、各記入例に「前日繰越」として記載しています。
【仕訳例】
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取引 |
仕訳 |
現金出納帳 |
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借方:現金 33,000円/貸方:売上 33,000円 |
入金欄に記入 |
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借方:消耗品費 5,500円/貸方:現金 5,500円 |
出金欄に記入 |
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|
借方:現金 50,000円/貸方:普通預金 50,000円 |
入金欄に記入 |
|
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借方:普通預金 80,000円/貸方:現金 80,000円 |
出金欄に記入 |

| 仕訳 | 現金出納帳 |
| 借方:現金 33,000円/貸方:売上 33,000円 | 入金欄に33,000円を記入し、残高を増やす |
商品を現金33,000円で販売した場合の記入例です。現金が増えるため、現金出納帳では入金欄に記入します。税抜経理方式を採用している場合は、売上と仮受消費税等を分けて処理します。

| 仕訳 | 現金出納帳 |
| 借方:消耗品費 5,500円/貸方:現金 5,500円 | 出金欄に5,500円を記入し、残高を減らす |
事務用品を現金5,500円で購入した場合の記入例です(税込経理方式)。現金が減るため、現金出納帳では出金欄に記入します。インボイスの有無や税率区分は、領収書や会計データで確認します。

| 仕訳 | 現金出納帳 |
| 借方:現金 50,000円/貸方:普通預金 50,000円 | 入金欄に50,000円を記入する |
普通預金から現金50,000円を引き出した場合の記入例です。会社全体の資産総額は変わりませんが、預金から現金へ資産の形が移動します。現金出納帳では入金として記録します。

| 仕訳 | 現金出納帳 |
| 借方:普通預金 80,000円/貸方:現金 80,000円 | 出金欄に80,000円を記入する |
手元現金80,000円を普通預金へ預け入れた場合の記入例です。現金出納帳では出金、預金出納帳では入金として記録されます。
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現金出納帳と実際の現金が合わない場合は、帳簿残高を無理に実残高へ合わせるのではなく、原因を順番に確認します。原因が分かるまでは、一時的に「現金過不足」で処理し、判明後に正しい勘定科目へ振り替えます。
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確認順 |
確認内容 |
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1 |
領収書・レシート・入出金伝票の漏れがないか |
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2 |
入金欄と出金欄を逆に記入していないか |
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3 |
同じ取引を二重に記帳していないか |
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4 |
釣銭、立替精算、仮払金の処理漏れがないか |
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5 |
前日繰越や開始残高に誤りがないか |
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6 |
原因不明の場合のみ現金過不足で一時処理する |
6つの確認ステップを流れで見ると、現金過不足での一時処理は「最後の手段」になります。まずはステップ1〜5で原因を特定し、それでも判明しない場合のみステップ6に進めるようにしましょう。
帳簿残高100,000円に対して実際の現金が99,000円の場合、原因不明の1,000円については「借方:現金過不足1,000円/貸方:現金1,000円」と処理します。後日、通信費の記帳漏れと分かれば「借方:通信費1,000円/貸方:現金過不足1,000円」へ振り替えます。
帳簿残高100,000円に対して実際の現金が101,000円の場合、原因不明の1,000円については「借方:現金1,000円/貸方:現金過不足1,000円」と処理します。後日、売掛金の現金回収を記入していなかったと分かれば、現金過不足を売掛金の回収処理へ振り替えます。
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取引 |
仕訳 |
現金出納帳 |
| 帳簿残高100,000円に対して実際の現金が99,000円 | 借方:現金過不足1,000円/貸方:現金1,000円 | 出金欄に記入 |
|
帳簿残高100,000円に対して実際の現金が101,000円 |
借方:現金1,000円/貸方:現金過不足1,000円 |
入金欄に記入 |
決算まで原因が分からない差異は、一般に現金不足を雑損失、現金超過を雑収入へ振り替えます。ただし、金額が大きい場合や同じ拠点で繰り返し発生している場合は、社内規程に基づく承認や原因調査が必要です。
手元現金は通常マイナスにならないため、現金出納帳の残高がマイナスになる場合は、開始残高の誤り、入出金欄の逆記入、記帳漏れ、私費との混同などが疑われます。安易に仮払金や借入金を追加せず、取引をさかのぼって原因を確認します。
現金出納帳を正確に管理するには、担当者の注意力だけに頼らず、記帳期限、証憑管理、承認、保管、照合のルールを決めることが大切です。特に店舗や営業所が複数ある企業では、拠点ごとに運用がばらつくと、本部で差異の原因を追いにくくなります。
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管理項目 |
決めておきたいルール |
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記帳期限 |
当日中、または翌営業日午前中までに記帳する |
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照合時刻 |
閉店後、業務終了後など毎日同じタイミングで確認する |
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証憑番号 |
領収書・伝票と帳簿を同じ番号でひも付ける |
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保有上限額 |
拠点ごとに手元現金の上限を決める |
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差異報告 |
金額や発生頻度に応じて上長・本部へ報告する |
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承認者 |
記帳者と確認者を可能な範囲で分ける |
複数拠点展開で現金を扱う企業では、本部が統一ルールを定め、各拠点がそのルールに沿って日次で記帳・照合・報告を行う体制が有効です。本部と現場の役割を図にすると、次のように整理できます。

現金を扱う担当者が、記帳、保管、照合、承認まで一人で完結すると、誤りや不正を見つけにくくなります。少人数の組織でも、上長による日次・週次確認、抜き打ち実査、補充時の別担当確認など、可能な範囲でチェック機能を設けます。
現金出納帳の各行は、領収書、レシート、入金伝票、出金伝票と対応させます。証憑番号を付けておけば、後から「この支出は何のためだったのか」「領収書はどこにあるのか」を確認しやすくなります。領収書がない支出は、支払先、目的、日付、金額、承認記録を残します。
消費税の課税事業者が仕入税額控除を受ける場合は、帳簿と請求書等の保存が要件になります。現金で支払った経費についても、税率区分、取引内容、相手先、支払対価の額などを確認できるようにしておくことが重要です。
現金出納帳と仕訳帳を別々に手入力すると、転記漏れや金額不一致が起こりやすくなります。会計ソフトやクラウドサービスを活用すれば、入力データから帳簿や仕訳を連動させ、証憑画像、承認履歴、修正履歴も一元管理しやすくなります。電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法の要件も確認しましょう。
複数店舗や拠点を展開する企業では、拠点コード、勘定科目、摘要の書き方、締め時刻、現金保有上限、補充方法、差異報告基準などを統一します。本部は差異金額だけでなく、照合未実施、証憑未提出、長期未解消の現金過不足も確認するようにしましょう。
統一を推奨します。多拠点企業では、様式、勘定科目、摘要の書き方、締め時刻、保有上限、差異報告基準を統一することで、本部での照合と原因追跡が容易になります。監査や税務調査でも、統一フォーマットは説明のしやすさに直結します。
連結決算の効率と内部統制の観点から、少なくとも項目名・勘定科目・締め時刻・差異報告のルールは親会社側に揃えることを推奨します。会計システムが異なる場合でも、出力フォーマットを共通化しておくと、突合作業の負担が大幅に減ります。
主に、①帳簿残高と実残高の照合記録、②現金過不足の発生頻度と振替処理、③証憑(領収書・伝票)とのひも付け、④差異発生時の承認記録が確認されます。日次の照合サインと承認者の記録があると、統制が機能していることを示しやすくなります。
現金出納帳は、現金の入出金と残高を記録し、記帳漏れや不正を早期に発見するための帳簿です。正確に管理するには、取引発生時の記帳、証憑とのひも付け、実残高との照合を一つの業務として運用する必要があります。まずは、現金を保管する場所ごとに責任者、照合時刻、差異発生時の報告ルールを決めることから始めましょう。