更新日:2026.09.01

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レジ締めや金庫の実査で、帳簿上の現金残高と実際の現金が合わない。現金を扱う職場では珍しくない場面です。この記事は、差額を見つけた担当者が「まず何を確認し、どう仕訳し、決算までに何を整理し、どう再発を防ぐか」を、その場で判断できるようにまとめています。
差額をいったん受け止めるための勘定科目が「現金過不足」ですが、目的は帳簿を合わせることではなく、原因までたどって同じミスを繰り返さないことです。まずは、差額が出たときに最初に確認することから見ていきます。
参考
国税庁:記帳や帳簿等保存・青色申告 / 帳簿の記帳のしかた(現金出納帳) / 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21:起業マニュアル「会計・経理の基本」
現金過不足とは、帳簿上の現金残高と実際有高が一致せず、原因がすぐに判明しないときに、差額を一時的に受け止めるための勘定科目です。原因が判明するまでの仮勘定であり、最終的な費用や収益を確定する科目ではありません。
差額を見つけたら、いきなり仕訳を切る前に、次の3つを順番に確認します。
| 確認する順番 | 確認すること | 目的 |
| ①数えるものの確認 | 商品券や未処理の証憑など、現金として扱わないものが混ざっていないか | そもそも「差額」なのかを確定する |
| ②向きの確認 | 実際有高が帳簿より少ない(不足)か、多い(過剰)か | 疑う原因と確認資料を絞り込む |
| ③金額の確認 | 差額はいくらか、社内の報告基準を超えるか | 自分で処理するか、上長へ報告するかを判断する |
仕訳の基本は、数え直して確認した実際有高を基準に、帳簿上の現金を修正することです。実際有高が少なければ現金を貸方で減らし、多ければ現金を借方で増やします。その反対側に現金過不足を置きます。
次の図では、現金不足と現金過剰について、実際有高との関係から借方・貸方を整理しています。

| 【基本判断表】 | ||||
| 状況 | 実際有高と帳簿残高 | 現金勘定 | 現金過不足 | 調査中に残る残高 |
| 現金不足 | 実際有高<帳簿残高 | 貸方 現金を減らす |
借方 | 借方残高 |
| 現金過剰 | 実際有高>帳簿残高 | 借方 現金を増やす |
貸方 | 貸方残高 |
現金過不足の処理は、差額を一時的に計上し、原因が判明したら本来の科目へ振り替え、決算まで残ったものを整理するという3段階で進みます。
今どの段階にいるかを意識すると、次の作業が判断しやすくなります。
| 【3段階早見表】現金過不足の処理 | |||
| 段階 | 状況 | 使う科目 | 処理の目的 |
| ①差額発生時 | 実際有高との差額が判明した | 現金過不足 | 帳簿上の現金残高を実際有高に合わせる |
| ②原因判明時 | 記帳漏れや二重計上などが判明した | 売上、消耗品費、旅費交通費、売掛金など | 現金過不足を消し込み、本来の取引へ振り替える |
| ③決算時 | 原因が判明しないまま決算日を迎えた | 不足は雑損失 過剰は雑収入 |
現金過不足をゼロにして翌期へ持ち越さない |
差額の向きを確認したら、やみくもに伝票を探すのではなく、不足・過剰それぞれで疑う原因と確認資料を絞り込みます。ここでは、実務でそのまま使える確認手順を示します。
現金不足と現金過剰では、想定される原因と最初に確認する資料が異なります。次の表を目安に調査範囲を絞り、帳簿、証憑、実際有高を照合しましょう。
| 差額 | 主な原因候補 | 最初に確認する資料 |
| 不足 | 経費の記帳漏れ 売上の二重計上 紛失・盗難・不正な持ち出し |
領収書・出金伝票 POSデータ・売上伝票 金庫の開閉記録・入退室記録 |
| 過剰 | 現金売上の記帳漏れ 売掛金回収の記帳漏れ 経費の二重計上 |
レジ日報・売上伝票 領収証控・入金記録 仕訳帳・証憑番号 |
| 両方 | 入力金額や桁の誤り 現金移動の記録漏れ 釣銭・受け渡しのミス |
証憑原本・入力履歴 現金移動・補充記録 レジ締め表・担当者記録 |
差額の向きだけで原因を断定することはできません。たとえば現金不足でも、経費の記帳漏れだけでなく、売上の二重計上や現金移動の記録漏れが原因となる場合があります。

差額を発見したら、すぐに雑損失や雑収入として処理せず、現金の数え直し、証憑との照合、入力内容の確認という順で原因を調べます。確認した資料や結果を記録しながら進めましょう。
なお、エスカレーションの金額基準は、法令や会計基準で一律に定められているものではありません。取引量、現金の取扱高、保管場所の数、過去の発生状況などを踏まえ、「いくらから、誰に、いつまでに報告するか」を社内ルールとして定めておくと、担当者が判断に迷わずに済みます。
そもそも差額に気づくには、現金出納帳に記録した帳簿残高と、金庫やレジの実際有高を日々照合しておく必要があります。帳簿を実際有高に合わせて終わらせず、差額が「いつ」「どの保管場所で」「どの証憑に関係して」発生したかを遡れる状態にしておくと、原因特定が早くなります。
参考:国税庁 帳簿の記帳のしかた(現金出納帳) / 記帳や帳簿等保存・青色申告
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経理における現金とは?預金・現金同等物の違いや判断に迷いやすいケースを解説
確認の段階に応じて、仕訳は「差額を見つけたとき」「原因が判明したとき」で分かれます。判断の軸は、実際有高を基準に帳簿上の現金を増減することです。
帳簿残高が50,000円に対し、Aレジの実際有高は48,660円、Bレジは52,680円でした。Aレジは1,340円の不足、Bレジは2,680円の過剰です。
| 差額を見つけたときの仕訳 | |||||
| 状況 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
| Aレジ 1,340円不足 |
現金過不足 | 1,340円 | 現金 | 1,340円 | 現金実査による不足 原因調査中 |
| Bレジ 2,680円過剰 |
現金 | 2,680円 | 現金過不足 | 2,680円 | 現金実査による過剰 原因調査中 |
不足は現金を減らすため現金が貸方、過剰は現金を増やすため現金が借方です。摘要に実査日、保管場所、担当者、原因調査中であることを残すと、後から確認しやすくなります。
現金が多い場合も、売上や回収の記帳漏れが隠れている可能性があるため、不足と同様に調査します。
Aレジの1,340円は文房具購入の記帳漏れ、Bレジの2,680円は現金売上の記帳漏れと判明しました。
| 原因判明後の振替仕訳 | |||||
| 判明した原因 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
| 消耗品購入の記帳漏れ | 消耗品費 | 1,340円 | 現金過不足 | 1,340円 | 文房具購入 領収書確認済み |
| 現金売上の記帳漏れ | 現金過不足 | 2,680円 | 売上 | 2,680円 | 現金売上 レジ日報確認済み |
つまずきやすいのが、原因判明時に現金を再び動かしてしまうミスです。差額発見時に帳簿上の現金は実際有高へ修正済みのため、動かすのは現金過不足と本来の科目だけです。
次の図では、差額を見つけたときと原因が判明したときの仕訳を2段階に分けて示しています。

売上や経費の記帳漏れが判明した場合は、消費税の課税区分も本来の取引に基づいて設定します。現金過不足のまま滞留させず、判明した時点で正しい取引へ振り替えることが、税務調査での説明のしやすさにもつながります。
現金不足5,000円を現金過不足で処理した後、3,200円は経費の記帳漏れと判明し、残る1,800円は特定できていないケースです。
| 原因の一部だけ判明した場合 | ||||
| タイミング | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 差額発生時 | 現金過不足 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 |
| 3,200円の原因判明時 | 消耗品費など | 3,200円 | 現金過不足 | 3,200円 |
| 未解明額 | 現金過不足1,800円が借方残高として残るため、差額管理台帳で継続して調査する | |||
すべての原因が判明するまで振替を待つ必要はありません。判明した分から本来の科目へ振り替え、当初差額・判明額・未解明額を分けて管理します。
差額に気づいた時点で原因が特定できている場合は、現金過不足を経由する必要はありません。たとえば1,340円の不足が文房具購入の記帳漏れとその場で確認できたなら、次のように直接記帳します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 消耗品費 | 1,340円 | 現金 | 1,340円 |
現金過不足は、原因がわからない差額を一時的に受け止めるための科目です。原因が判明している取引まで経由すると、仕訳が増え、本当に調査が必要な残高を把握しにくくなります。
現金過不足は原則として決算書に残しません。決算日までに原因が判明しなかった差額は、不足なら雑損失、過剰なら雑収入へ振り替え、残高をゼロにします。
原因不明の不足1,800円が借方残高、別の保管場所では過剰3,400円が貸方残高のまま決算日を迎えたケースです。
| 現金過不足の決算整理仕訳 | |||||
| 状況 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 処理後 |
| 1,800円不足 | 雑損失 | 1,800円 | 現金過不足 | 1,800円 | 借方残高を消し込む |
| 3,400円過剰 | 現金過不足 | 3,400円 | 雑収入 | 3,400円 | 貸方残高を消し込む |
雑損失・雑収入へ振り替えるのは、原因を特定できなかった部分だけです。判明した金額までまとめると、本来計上すべき売上や費用が正しく表示されません。
現金過不足の仕訳が会計上できていても、税務上の処理まで自動的に決まるわけではありません。原因不明の差額を処理する場合と、売上や経費の記帳漏れなど原因が判明した場合では、消費税や法人税の取扱いが異なります。
原因や発生状況を確認し、次の論点を分けて判断しましょう。
現金過不足の計上や、雑損失・雑収入への振替は、対価を得て行う資産の譲渡や役務の提供ではないため、消費税の課税対象外です。
ただし、原因が判明して売上や経費へ振り替える場合は、その取引に応じた課税区分を適用します。
原因不明の不足を会計上、雑損失として計上した場合でも、法人税上の取扱いは、差額が生じた事情や調査記録を踏まえて確認します。
差額の発生日、実査結果、確認した証憑、調査内容、承認者を記録し、調査経緯を説明できる状態にしておきましょう。
会計方針や金額的重要性に応じて、少額の原因不明額を雑費として処理する場合もあります。ただし、少額を理由に原因調査を省略するのは適切ではありません。
原因が判明していれば、金額にかかわらず本来の科目へ振り替えます。
盗難や横領が疑われる場合は、雑損失で完了させず、事実確認、社内規程に沿った報告、返還請求時の債権計上などを検討します。
取扱いは個別性が高いため、社内の管理部門や顧問税理士と連携します。
参考:国税庁 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
決算時は、現金過不足をゼロにするだけでなく、振替と調査記録の両面を点検します。
参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21 起業マニュアル「会計・経理の基本」
現金過不足を繰り返さないためには、差額が発生した後の確認手順を整えるだけでなく、現金を扱う業務そのものを見直す必要があります。経費精算の申請時期、領収書の回収方法、証憑と仕訳の紐づけ、現金の受け渡し方法など、差額が生じる前の工程まで確認することが重要です。
差額を減らすうえで効果が出やすいのは、実査の回数を増やすことよりも、「どの単位で」「誰が」「何と照合し」「どのように記録・承認するか」を決めることです。ここからは、現金管理と周辺業務を見直す5つのポイントを紹介します。
複数店舗や複数レジの合計だけで確認すると、あるレジの不足と別のレジの過剰が相殺され、全社合計では差額ゼロに見える場合があります。差額が解消したのではなく、発生場所が見えなくなっているだけです。

本社金庫、店舗レジ、小口現金など、保管単位ごとに「前回残高+入金-出金=帳簿残高」を計算し、実際有高と照合します。
小口現金を定額前渡制で運用している場合は、補充の前後で残額と証憑の合計を確認すると、差額の発生時点を特定しやすくなります。
差額を単発の仕訳で片づけず、原因判明または決算整理でクローズするまで追跡する案件として管理します。次の項目を記録すると、当初差額・判明額・未解明額を把握しやすくなります。
| 区分 | 主な項目 | 記録のポイント |
| 発生情報 | 発生日、保管場所、担当者 | レジや金庫まで特定できる単位で記録する |
| 金額情報 | 帳簿残高、実際有高、差額 | 不足と過剰を区別して記録する |
| 調査情報 | 確認資料、想定原因、判明原因 | 確認済みの資料がわかるようにする |
| 処理情報 | 判明額、未解明額、仕訳番号、承認者 | 判明分と未解明分を分けて管理する |
| 再発防止 | 是正内容、担当者、クローズ日 | 手順や確認方法の変更まで記録する |
現金不足の原因が、経費を支払った後の記帳漏れや、領収書の提出遅れにある場合は、現金管理だけを見直しても再発を防げません。経費精算の申請期限、領収書の提出方法、証憑を確認する担当者をあらかじめ決めておく必要があります。
領収書、出金伝票、経費精算書、レジ日報、POSデータ、売上伝票、現金移動記録には管理番号を付け、仕訳の摘要欄と紐づけます。差額が発生したときに帳簿から証憑、証憑から承認履歴へ遡れる状態にしておくと、同じ資料を繰り返し探す手間を減らせます。
領収書がない支出について出金伝票を作成することはありますが、出金伝票を作っただけで取引の事実が証明されるわけではありません。取引先、支払日、支払内容、承認者を確認できる資料もあわせて保存しましょう。
少額の不足を担当者が自分の財布から補填すると、その場は一致しますが、記帳漏れや受け渡しミスといった本当の原因が記録に残りません。過剰分を抜き取って合わせる運用も、売上や回収の記帳漏れを隠してしまいます。
金額にかかわらず、差額が出た事実を記録し、調査・報告・承認プロセスへ乗せる運用に統一しましょう。
1件の金額が小さくても、同じ拠点・時間帯・担当工程で繰り返し発生している場合は、業務手順に共通の原因があります。金額だけで判断せず、次の切り口で傾向を確認します。
現金過不足だけでなく、請求書処理、勘定科目の判断、振込先情報の入力など、経理業務のミスは複数の工程で発生します。
個別のミスを担当者の注意力だけで防ごうとせず、どの業務に手作業や属人化が残っているかを整理し、仕組みとして改善することが大切です。
かかりません。差額を現金過不足として計上する処理も、決算で雑損失・雑収入へ振り替える処理も、消費税の課税対象外です。
ただし、原因が判明して売上や経費など本来の取引へ振り替える場合は、その取引に応じた課税区分を適用します。
残しません。現金過不足は原因を調査している間の仮勘定です。決算までに判明しなかった差額は、不足なら雑損失、過剰なら雑収入へ振り替え、残高をゼロにします。
少額を雑費として処理する実務もありますが、金額、発生頻度、会計方針を踏まえて判断します。
原因が判明している場合は、雑費や雑損失にまとめず、本来の科目へ振り替えます。迷う場合は顧問税理士へ確認してください。
拠点別・レジ別・時間帯別・取引種類別に件数を集計します。特定のレジや時間帯に偏りがあれば、記帳のタイミング、証憑の回収方法、レジ締め手順などに共通の原因がないか確認します。差額は結果であり、原因は手前の工程にあります。
雑損失で完了させず、事実確認と社内規程に沿った報告が必要です。会社が返還を求める場合は債権計上の要否も検討します。
取扱いは個別性が高いため、社内の管理部門や顧問税理士と連携してください。
差額の発生は、記帳のタイミングや証憑の回収、現金の受け渡し手順のどこかに無理があるサインです。まずは自社の現金保管単位を書き出し、照合の担当・頻度・報告先を決めるところから始めましょう。
ただし、現金過不足を繰り返さないためには、現金管理だけを見直すのでは十分ではありません。経費精算、領収書回収、請求書処理、証憑管理、仕訳、承認といった周辺業務も含め、手作業や属人化が残っている工程を確認する必要があります。
現金過不足をはじめとする経理業務のミスは、担当者個人の注意力だけで防ぐことが難しい場合があります。「経理業務ミス分析レポート」では、実務担当者と管理者で異なるミスの捉え方や、ミスが発生しやすい業務要因を調査結果から整理しています。
現場で感じている手作業の負担や業務上のリスクを整理し、管理者へ改善を提案する際の参考資料としてご活用ください。