更新日:2026.10.19

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「一括償却資産と少額減価償却資産は何が違うのか」「途中で除却した場合はどう処理するのか」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。
一括償却資産とは、取得価額20万円未満の減価償却資産について、個別の耐用年数を使わず、原則3年間で均等に費用化できる税務上の制度です。実務では、通常の減価償却や中小企業者等の少額減価償却資産の特例と比較して処理方法を選びます。
この記事では、一括償却資産の対象や計算方法、少額減価償却資産との違い、仕訳例、償却資産税、除却・売却時の注意点をわかりやすく解説します。
一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の減価償却資産を、個別の耐用年数にかかわらず原則3年間で均等に費用化する制度です。ただし、一定のリース資産や貸付用資産などは対象外となります。
取得価額10万円未満の資産は、通常、取得時に全額を費用処理できます。そのため、実務上は10万円以上20万円未満の資産を購入した場合に、一括償却資産として処理するかを検討するケースが中心です。
たとえば、15万円のパソコンを一括償却資産として処理した場合、1年を通じた通常の事業年度であれば、次のように3年間で費用化します。
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事業年度 |
償却額 |
償却後の残額 |
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1年目 |
50,000円 |
100,000円 |
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2年目 |
50,000円 |
50,000円 |
|
3年目 |
50,000円 |
0円 |
通常の減価償却とは異なり、資産ごとの法定耐用年数を調べる必要はありません。また、事業年度の途中で購入しても、月割計算は行わず、その事業年度から原則として取得価額の3分の1を損金または必要経費へ算入できます。
少額の資産を購入した場合、取得価額や事業者の要件に応じて、主に次の処理方法から選択します。
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取得価額 |
主な処理方法 |
適用条件 |
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10万円未満 |
取得年度に全額費用化 |
原則、事業者の区分を問わない |
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20万円未満 |
一括償却・通常の減価償却 |
原則、事業者の区分を問わない |
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40万円未満 |
少額減価償却資産の特例 |
一定の中小企業者等 |
|
40万円以上 |
通常の減価償却 |
特例の対象外の場合など |
一括償却資産として処理できるのは取得価額20万円未満の資産です。10万円以上20万円未満の資産であっても、一括償却が強制されるわけではなく、通常の固定資産として法定耐用年数にわたり減価償却することもできます。
また、青色申告書を提出する一定の中小企業者等であれば、少額減価償却資産の特例を選択できる場合があります。
なお、取得価額の判定は、通常1単位として取引される単位で行います。たとえばパソコンは原則として1台ごと、応接セットはテーブルと椅子を含む1組ごとに判定します。
ここでいう「少額減価償却資産」とは、中小企業者等が利用できる「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を指します。
一括償却資産と少額減価償却資産との主な違いは、次のとおりです。
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比較項目 |
一括償却資産 |
少額減価償却資産の特例 |
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対象金額 |
取得価額20万円未満 |
取得価額40万円未満 |
|
利用できる事業者 |
法人・個人事業主 |
青色申告を行う一定の中小企業者等 |
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費用化する期間 |
原則3年間 |
使用を開始した年度に全額 |
|
年間上限 |
なし |
合計300万円まで ※事業年度が12ヶ月未満の場合は月数に応じて調整 |
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償却資産税 |
原則として申告対象外 |
原則として申告対象 |
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除却・売却時 |
残額の一括費用化はできない |
全額費用化済みのため未償却残高なし |
一括償却資産は、青色申告の有無や企業規模を問わず選択でき、取得価額を原則3年間で均等に費用化します。
一方、少額減価償却資産の特例を利用できるのは、青色申告書を提出する一定の中小企業者等です。2026年4月1日以後に取得等をした資産について、対象金額は30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。
また、対象法人の従業員数要件は、原則として500人以下から400人以下へ引き下げられています。資本金や出資関係などによっても適用の可否が変わるため、利用前に自社が対象となるか確認しましょう。
少額減価償却資産の特例は取得年度に全額を費用化できる一方、一括償却資産は3年間で費用化し、原則として償却資産税の申告対象にならない点が異なります。
どちらを選んでも資産の取得価額を超えて費用にできるわけではなく、主に費用を計上する時期と償却資産税の取り扱いが異なります。自社が特例の対象になるか、年間300万円の上限に余裕があるかも踏まえて判断しましょう。
関連記事:少額減価償却資産とは?2026年度改正で40万円未満に|特例の要件を解説
一括償却資産の損金算入限度額は、原則として次の計算式で求めます。
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損金算入限度額=一括償却対象額×当期の月数÷36ヶ月 |
事業年度が12ヶ月の場合は、取得価額の3分の1を毎年費用化する計算です。
具体例として、12ヶ月の事業年度に、15万円のパソコンを購入して事業に使用した場合を考えます。損金算入限度額は以下のとおりです。
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150,000円×12ヶ月÷36ヶ月=50,000円 |
1年目から3年目まで、毎年50,000円を損金へ算入します。
通常の減価償却では、事業年度の途中から使用した場合、使用月数に応じた月割計算を行います。一括償却資産は事業年度内の使用開始月による月割計算を行わないため、期末近くに購入しても、12ヶ月の事業年度であれば原則3分の1を算入可能です。
ただし、設立初年度や決算期変更などによって事業年度が12ヶ月未満の場合は、その事業年度の月数に応じて計算します。
一括償却資産は、取得時に資産として計上し、決算時に償却額を費用へ振り替えます。
ここでは、15万円のパソコンを普通預金から支払い、3年間で償却する場合を例に確認します。
パソコンを購入し、事業で使用を開始したときの仕訳は次のとおりです。
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借方 |
貸方 |
||
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一括償却資産 |
150,000円 |
普通預金 |
150,000円 |
会社によっては、「工具器具備品」などの勘定科目を使用し、固定資産台帳上で一括償却資産として区分する場合もあります。勘定科目の名称だけでなく、税務上どの方法を選択したかを確認できるように管理しましょう。
12ヶ月の事業年度における毎年の償却額は50,000円です。直接法で処理する場合、次の仕訳を3年間行います。
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借方 |
貸方 |
||
|
減価償却費 |
50,000円 |
一括償却資産 |
50,000円 |
間接法を採用する場合は、貸方に「減価償却累計額」などを使用します。会計上の処理と税務上の損金算入額が異なる場合は、法人税申告で調整が必要になることがあります。
関連記事:減価償却費とは?対象資産・計算方法・仕訳・注意点をわかりやすく解説
一括償却資産を処理する際は、通常の固定資産や少額減価償却資産の特例との違いを理解しておく必要があります。特に注意したい点は、次の3つです。
一括償却資産として3年間で費用化する資産は、原則として固定資産税の一種である償却資産税の申告対象になりません。
一方、少額減価償却資産の特例によって取得年度に全額を損金または必要経費へ算入した資産は、原則として申告対象です。
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税務上の処理 |
償却資産税の取り扱い |
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取得価額10万円未満で全額費用処理 |
原則として申告対象外 |
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一括償却資産として3年間で償却 |
原則として申告対象外 |
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少額減価償却資産の特例で全額費用処理 |
原則として申告対象 |
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通常の固定資産として減価償却 |
原則として申告対象 |
ただし、償却資産税の課税標準額の合計が150万円未満で税額が発生しない場合でも、申告を求められることがあります。具体的な手続きは、資産が所在する市区町村の案内を確認しましょう。
一括償却資産は、個々の資産ではなく、取得した事業年度ごとにまとめて管理します。そのため、途中で除却・売却しても、未償却額を除却損や売却原価として一括計上することはできません。
たとえば、15万円のパソコンを一括償却資産として処理し、1年目の償却後に廃棄した場合も、次のように3年間の償却を続けます。
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事業年度 |
資産の状況 |
損金算入額 |
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1年目 |
使用中 |
50,000円 |
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2年目 |
廃棄済み |
50,000円 |
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3年目 |
廃棄済み |
50,000円 |
一括償却資産を途中で売却した場合も、残りの取得価額を一括して費用化せず、原則として当初の計算に従って償却を継続します。
売却代金については、未償却額と相殺せず、別途処理が必要です。法人では売却による収益を計上し、個人事業主では資産の用途などに応じて所得区分を判断します。
固定資産台帳から現物の情報を削除する場合でも、一括償却資産の残額と残りの償却期間は、税務上引き続き管理できるようにしておきましょう。
取得価額10万円以上20万円未満の資産について、一定の中小企業者等は、主に次の処理方法から選択できます。
当期の費用計上を優先する場合は、少額減価償却資産の特例が選択肢になります。一方、償却資産税の申告対象から外したい場合や、特例の年間300万円枠を別の資産に残したい場合は、一括償却資産が適していることがあります。
処理方法を決める際は、次の点も確認しましょう。
選択した処理方法は、資産の取得価額や使用開始日とあわせて固定資産台帳へ記録し、償却が完了するまで継続して管理することが重要です。
ここでは、対象となる資産や購入時期による計算の違い、処理方法の変更など、一括償却資産についてよくある疑問に回答します。
取得価額20万円未満の減価償却資産が対象です。具体的には、以下のようなものが該当する可能性があります。
ただし、資産の種類だけでなく、取得価額の判定単位や使用目的も確認する必要があります。
12ヶ月の事業年度であれば、年度の途中に購入して事業で使用を開始した場合でも、使用月数による月割計算は行わず、原則として取得価額の3分の1を損金算入できます。
ただし、設立初年度や決算期変更によって事業年度自体が12ヶ月未満の場合は、事業年度の月数を使って計算します。
一括償却資産として申告した後に、都合に応じて未償却残額を少額減価償却資産の特例へ変更し、一括で費用化することはできません。
資産を取得して事業で使用した年度の決算時に、利用できる制度や税負担、償却資産税への影響を比較したうえで処理方法を決めることが重要です。
一括償却資産は、少額の減価償却資産を3年間で費用化できる制度です。通常の減価償却と異なり、個別の耐用年数を調べる必要がなく、原則として償却資産税の申告対象にもなりません。
一方、中小企業者等の少額減価償却資産の特例を利用できる場合は、取得年度に全額を費用化できます。費用計上の時期や償却資産税への影響を比較し、適切な方法を選択しましょう。
また、一括償却資産は途中で除却・売却しても、未償却額を一括して損金算入できません。取得年度ごとに残額を管理し、当初の3年間にわたって償却を続けましょう。
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