更新日:2026.09.28

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パソコンや事務機器など、長期間使用する資産は、原則として取得時に全額を経費にするのではなく、耐用年数にわたって減価償却します。ただし、取得価額が一定額未満の資産には、通常より簡便な処理が認められています。
青色申告をしている一定の中小企業者や個人事業主は、「少額減価償却資産の特例」を利用することで、対象資産の取得価額を事業に使用し始めた年または事業年度に全額経費にできます。
この記事では、少額減価償却資産の意味、2026年度税制改正の内容、特例の適用要件を解説します。取得価額別の処理方法や仕訳例、申告に必要な明細書、償却資産税に関する注意点も確認しましょう。
少額減価償却資産とは、取得価額が一定額未満の減価償却資産を指す言葉です。税務上は、10万円未満の資産、一括償却資産、中小企業者等の少額減価償却資産の特例など、取得価額や事業者の要件によって処理が異なります。
たとえば、パソコン・デスク・複合機・工具・機械装置・ソフトウェアなど、事業に使用し、時間の経過や使用によって価値が減少する資産が該当します。
減価償却資産は、原則として法定耐用年数にわたって取得価額の費用配分が必要です。一方、取得価額が10万円未満の資産や、一定の中小企業者等が取得する40万円未満の資産などには、取得価額を早期に経費へ算入できる制度があります。
関連記事:減価償却累計額とは?減価償却との違いや仕訳方法を簡単に解説
少額減価償却資産の特例とは、青色申告をしている一定の中小企業者等が、原則として取得価額10万円以上40万円未満の減価償却資産を取得等し、事業に使用した場合に、その取得価額の全額を損金または必要経費へ算入できる制度です。
正式には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」などと呼ばれます。10万円未満の資産は、この特例ではなく、通常の少額資産の取り扱いによって全額を経費にできます。
特例を利用すると、対象額を事業に使用し始めた年または事業年度にまとめて経費へ算入できるため、固定資産管理や毎期の減価償却計算にかかる負担を軽減できます。また、その年または事業年度の経費が増えるため、課税所得を抑える効果もあります。
ただし、通常の減価償却よりも費用計上の時期が早まる制度であり、資産の使用期間全体で経費にできる総額が増えるわけではありません。将来の減価償却費を先に計上する効果であることを理解しておきましょう。
2026年度税制改正では、物価上昇などを踏まえ、少額減価償却資産の特例について取得価額基準の引き上げや適用期限の延長などが行われました。なお、2026年4月1日以降に取得した資産にのみ改正後の基準が適用されます。
以下では、法改正による主な変更点を紹介します。
2026年4月1日以後に取得等をする資産は、取得価額40万円未満であるかどうかによって特例の対象を判定します。従来は対象外だった30万円以上40万円未満のパソコンや機器なども、ほかの要件を満たせば全額を損金または必要経費へ算入できます。
年間合計300万円までという上限は改正されていないため、対象となる資産が増えても無制限に全額経費へ算入できるわけではありません。
特例の適用期限は3年間延長され、2029年3月31日までとなりました。個人事業主も法人も、対象期間内に資産を取得等し、事業に使用することが必要です。
購入日、納品日、検収日、使用開始日が異なる場合は、請求書だけで判断しないようにしましょう。
40万円未満の新基準を適用するかどうかは、原則として資産を取得等した日で判断します。一方、特例によって損金または必要経費へ算入するには、資産を実際に事業の用に供することも必要です。取得日と使用開始日が異なる場合は、それぞれを確認できる資料を保存しましょう。
2026年4月1日以後に取得等をする資産について、対象者の常時使用する従業員数の要件は、原則500人以下から400人以下へ引き下げられました。個人事業主についても、青色申告をしている一定の中小事業者であることなどの要件があります。
法人は、資本金や大規模法人との資本関係、所得金額、通算制度の適用状況などによっても対象可否が変わります。また、一定の「特定法人」には従業員数300人以下という別の基準があります。資本金が1億円以下、または従業員数が400人以下という条件だけで判断せず、取得日と事業供用日の時点で中小企業者等に該当するか確認しましょう。
少額減価償却資産の特例を利用するには、事業者と資産の両方が要件を満たす必要があります。
取得価額が40万円未満であるだけでは適用できない点に注意しましょう。
個人事業主の場合は、青色申告書を提出する中小事業者であることが必要です。
白色申告の個人事業主は、取得価額10万円未満の資産を全額必要経費にする制度や、20万円未満の一括償却資産の制度は利用できますが、40万円未満を対象とする特例は利用できません。
法人の場合は、青色申告書を提出する中小企業者または一定の組合等が対象です。ただし、大規模法人に支配されている法人、一定額を超える所得が続いている法人、通算法人などは対象外となる場合があります。従業員数要件も法人の区分によって異なるため、申告前に最新の要件を確認してください。
2026年4月1日以後に取得等をする場合、特例の対象となるのは、原則として1単位当たりの取得価額が10万円以上40万円未満の減価償却資産です。器具備品や機械装置などの有形固定資産だけでなく、ソフトウェア、特許権、商標権などの無形固定資産や中古資産も対象になり得ます。
一方、主要な事業として行う場合を除き、貸付けに使用する資産は原則として対象外です。また、特別償却、税額控除、圧縮記帳など、ほかの制度と重複して適用できない場合があります。
特例を適用できる取得価額の合計は、1年または1事業年度当たり300万円までです。例えば、取得価額35万円の資産を10台購入した場合、合計額は350万円になります。1台単位で判定するのであれば、8台分の280万円に特例を適用し、残る2台は通常の減価償却などで処理する方法が考えられます。
限度額は1台ごとではなく、特例を適用する資産の取得価額の合計で判定します。法人の事業年度が1年未満の場合は、300万円を12で割り、その事業年度の月数を掛けて限度額を計算します。複数の部署や拠点で資産を購入する会社は、全社の適用額を集計できるようにしましょう。
少額減価償却資産の特例を利用して、法人税や所得税で取得価額の全額を損金・必要経費に算入した資産でも、償却資産税の申告対象になる場合があります。
法人税・所得税と償却資産税では、資産の扱いが異なるためです。たとえば、少額減価償却資産の特例を適用した資産は、原則として償却資産税の申告対象となります。
一方、取得価額10万円未満で全額を損金・必要経費に算入した一定の資産や、20万円未満で一括償却資産として3年間で費用化する資産は、原則として償却資産税の申告対象になりません。
また、ソフトウェアや特許権などの無形固定資産、自動車税や軽自動車税の対象となる車両など、そもそも償却資産税の対象外となる資産もあります。
そのため、少額減価償却資産の特例を使って全額を経費にしたからといって、固定資産台帳から削除したり、償却資産税の申告対象外と判断したりしないように注意しましょう。資産の種類や税務上の処理方法を確認したうえで、申告の要否を判断することが大切です。
取得価額が少額の資産には、その取得価額に応じて会計・税務処理が変わります。2026年4月1日以後に取得等をする場合の基本的な違いは以下のとおりです。
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取得価額 |
主な処理 |
費用化の時期 |
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10万円未満 |
少額資産として全額費用 |
使用した事業年度に全額 |
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10万円以上20万円未満 |
一括償却資産 |
3年間 |
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少額減価償却資産の特例 |
使用した年・事業年度に全額 |
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通常の減価償却 |
法定耐用年数 |
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20万円以上40万円未満 |
少額減価償却資産の特例 |
使用した年・事業年度に全額 |
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通常の減価償却 |
法定耐用年数 |
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40万円以上 |
通常の減価償却 |
法定耐用年数 |
関連記事:消耗品費とは?勘定科目や仕訳例、雑費・工具器具備品との違いを解説
40万円未満かどうかは、請求書の合計額ではなく、通常1単位として取引される単位ごとに判定します。パソコンは通常1台ごと、機械は1台または1基ごと、工具や備品は1個、1組または1そろいごとに判断するのが基本です。
例えば、テーブルと椅子が応接セットとして1組で機能し、通常1組で取引される場合は、テーブルと椅子の合計額で判定します。カーテンのように複数枚で一つの部屋における機能を果たすものは、部屋ごとの合計額で判断します。請求書の明細を形式的に分けただけでは、別々の資産として判定できるとは限りません。
取得価額には、原則として資産本体の購入代金だけでなく、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、事業に使用するための据付費なども含まれます。本体価格だけなら40万円未満でも、送料や設置費を加えると40万円以上になる場合があるため注意しましょう。
消費税を取得価額に含めるかは、採用している経理方式によって異なります。税抜経理方式では税抜金額、税込経理方式では税込金額で判定します。免税事業者は税込経理となるため、原則として消費税込みの取得価額を使用します。
関連記事:設備投資の請求書処理は通常経費と何が違う?|検収・資産判定・拠点統制を解説
ここでは、税込経理方式を採用する会社が、業務用パソコン1台を38万5,000円で購入し、普通預金から支払った例を紹介します。
購入したパソコンは2026年4月1日以後に事業で使用し始め、少額減価償却資産の特例を適用するものとします。
購入時に取得価額の全額を費用として処理する場合は、消耗品費などを使用します。
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借方 |
貸方 |
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消耗品費 |
385,000円 |
普通預金 |
385,000円 |
少額減価償却資産の特例は、税務上、取得価額の全額を損金または必要経費へ算入する制度です。実際に使用する勘定科目は、自社の会計方針や資産管理方法に合わせて統一しましょう。
資産の取得履歴を明確にするため、購入時に工具器具備品として計上し、その後、取得価額の全額を減価償却費へ振り替える方法もあります。
購入時の仕訳は以下のとおりです。
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借方 |
貸方 |
||
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工具器具備品 |
385,000円 |
普通預金 |
385,000円 |
特例を適用するときの仕訳は以下のとおりです。以下は直接法の例です。
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借方 |
貸方 |
||
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減価償却費 |
385,000円 |
工具器具備品 |
385,000円 |
間接法を採用する場合は、貸方に「減価償却累計額」を使用します。全額を費用にしても、資産そのものがなくなるわけではありません。固定資産台帳には資産名、取得日、取得価額、使用開始日、設置場所、管理担当者、適用した制度などを記録し、売却・廃棄まで管理しましょう。
なお、会計上の資産計上基準と税務上の損金算入要件が一致しない場合があります。会計上は資産計上し、税務申告で調整するケースなどは、適用する会計基準や会社の方針に応じて判断してください。
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少額減価償却資産の特例は、帳簿上で全額を費用処理するだけでは適用できません。法人と個人事業主で必要な申告手続きが異なるため、それぞれ確認しましょう。
法人が特例を適用する場合は、対象資産の取得価額相当額を損金経理し、法人税の確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書(別表十六(七))」を添付します。
明細書には、資産の種類、構造、細目、事業に使用した年月、取得価額などを記載します。租税特別措置を適用する法人は、適用額明細書への記載も必要になるため、別表十六(七)の金額と一致しているか確認しましょう。
個人事業主が特例を適用する場合も、原則として確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付します。
ただし、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に、特例を適用する資産の取得価額合計、この特例を適用する旨、明細を別途保管している旨を記載し、資産ごとの明細を保存することで、明細書の添付に代えられます。
請求書や領収書だけでなく、納品書、検収記録、支払い記録なども保存し、取得日、取得価額、使用開始日を説明できるようにしておきましょう。
ここでは、2026年度改正の適用時期や個人事業主の利用可否など、少額減価償却資産についてよくある疑問に回答します。
2026年4月1日以後に取得、製作または建設をする減価償却資産から、取得価額40万円未満の基準が適用されます。2026年3月31日までに取得等をした資産は、従来の30万円未満の基準で判定します。
判定基準は「取得価額40万円以下」ではなく「40万円未満」です。取得価額が40万円ちょうどの場合は特例を利用できないため、通常の減価償却など、ほかの処理方法を検討します。
少額減価償却資産の特例は、青色申告をしている一定の個人事業主であれば利用できます。2026年度改正後は、常時使用する従業員数が400人以下であることなどが要件です。白色申告の個人事業主は利用できません。
個人事業主の場合も、原則として取得価額10万円以上40万円未満の資産を対象期間内に取得等し、事業に使用すること、年間合計300万円の範囲内であること、確定申告で必要事項を記載することなどが求められます。
少額減価償却資産の特例は、青色申告をしている一定の中小企業者や個人事業主が、取得価額の全額を事業に使用した年または事業年度の損金・必要経費へ算入できる制度です。
2026年度税制改正により、2026年4月1日以後に取得等をする資産について、取得価額の基準が30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。適用期限は2029年3月31日まで延長され、従業員数要件は原則400人以下へ見直されています。年間合計300万円の上限は変更されていません。
適用を検討するときは、本体価格だけでなく送料や設置費などを含めた取得価額を確認し、事業に使用し始めた日も記録しましょう。法人は別表十六(七)、個人事業主は所定の明細書または青色申告決算書への記載が必要です。全額を経費にした後も、固定資産台帳や償却資産税の申告対象から漏れないように管理してください。
償却資産の扱いを含む経理業務の効率化については、以下の資料もあわせてご覧ください。