更新日:2026.09.07

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取引先から「今後の支払いはでんさいで」と連絡を受け、売掛金からいつ電子記録債権へ振り替えるのか、支払期日にどの資料を見ればよいのかで手が止まっていないでしょうか。初めて電子記録債権を扱う経理では、発生記録と仕訳のタイミングがずれたり、入金後も元帳に残高が残ったりしがちです。
電子記録債権は、紙の手形を電子データに置き換えたものではありません。記録原簿に電子記録されて初めて権利が生まれる、手形債権とも売掛債権とも別の金銭債権です。この違いを押さえないまま処理を進めると、二重計上や消込漏れにつながります。
本記事では、紙の手形や売掛金から経理実務が何が変わるのかを整理したうえで、発生から決済までの仕訳、管理で押さえる5つのポイント、残高が合わないときに確認する資料と順番までをまとめました。手形からの移行で確認したい支払条件や社内運用にもご活用ください。
電子記録債権とは、電子債権記録機関が管理する記録原簿に電子記録されることで、発生や譲渡の効力が生じる金銭債権です。紙そのものが権利を表す手形と異なり、権利の内容は記録原簿の記録によって決まります(電子記録債権法第2条・第9条)。

混同されやすい「でんさい」は、株式会社全銀電子債権ネットワークが取り扱う電子記録債権の名称で、制度全体の呼び名ではありません。記録機関は他にも存在するため、法律で定められた仕組みと、利用中のサービスで実際に使える機能は分けて考えます。
たとえば法律上は質権設定の記録が用意されていますが、でんさいネットでは取り扱われていません。「制度にあるから自社でも使える」とは限らないため、記事内では「電子記録債権(でんさい等)」と補いつつ、名称の混同を避けます。
手形は作成・交付・保管に手間がかかり、紛失や盗難のリスクもありました。通常の債権譲渡も、債権の存在確認や二重譲渡への備えが必要でした。法務省は、こうしたコストとリスクを減らし、事業者の資金調達を円滑にするための制度と説明しています。
「紙をデータにしただけ」と捉えると仕訳のタイミングを外しやすいため、まずは手形債権とも売掛債権とも別個の債権だと押さえておきましょう。
参考:株式会社全銀電子債権ネットワーク 手形に代わる!電子決済手段 でんさい
印紙税法上、電子記録債権は手形などの有価証券には当たりません。ただし「有価証券ではない=いつでも印紙不要」ではない点に注意します。
国税庁の質疑応答事例では、売上代金を電子記録債権で受け取った際の受取書に、電子記録債権で受領した旨の記載がない場合、第17号の1文書に当たるとされています。
受取書のひな形に但し書きが入っているかで結論が変わるため、社内の様式を確認しましょう。
| 受け取った手段 | 受取書の記載 | 第17号の1文書への該当 | 経理が確認すること |
|---|---|---|---|
| 紙の手形 | 手形で受領した旨を記載 | 該当する | 受取金額に応じた印紙を貼付する |
| 電子記録債権 | 「上記金額を電子記録債権で受領しました」など受領手段を明記 | 該当しない | 受取書のひな形に但し書きがあるか |
| 電子記録債権 | 受領手段の記載なし | 該当する | 記載漏れを防ぐ運用ルールがあるか |
| 決済後の預金入金 | 金銭の受取書を別途交付 | 金銭の受取書として判定する | 同じ取引で受取書を二重に出していないか |
※印紙税の取扱いは受取書の記載内容や取引の実態で変わります。判断に迷う場合は所轄の税務署にご確認ください。
参考:国税庁 電子記録債権の受領に関する受取書

まずは、電子記録債権が受取手形・売掛金とどう違うのかを、経理が判断に使う軸で並べます。ここでは他記事で扱われにくい「残高の確認方法」「回収できなかったときの扱い」も加えました。
| 項目 | 電子記録債権 | 受取手形 | 売掛金 |
|---|---|---|---|
| 権利の生まれ方 | 記録原簿への発生記録 | 手形の振出と交付 | 掛取引による代金請求権 |
| 証書の有無 | なし | あり(現物保管が必要) | なし |
| 譲渡の方法 | 譲渡記録による | 裏書と交付による | 債権譲渡の手続による |
| 分割 | 分割記録で一部だけ譲渡できる | 手形そのものは分割できない | 契約や譲渡方法による |
| 残高の確認方法 | 記録機関の未決済一覧と元帳を突合 | 手形の現物と手形記入帳を照合 | 売掛金元帳と入金明細を照合 |
| 支払われなかったとき | 支払不能となり、記録機関の支払不能処分制度の対象となる場合がある | 不渡りとなり、不渡手形へ振り替える | 滞留債権として回収可能性を評価する |
| 消滅時効 | 原則3年(電子記録債権法第23条) | 原則3年 | 民法の一般原則による |
| 印紙税 | 有価証券に当たらない(受取書の記載に注意) | 手形は課税文書に当たる | 債権そのものは対象外 |
| 主な勘定科目 | 電子記録債権 | 受取手形 | 売掛金 |
表だけでは実務のつまずきどころが見えにくいため、経理が特に迷いやすい項目を個別に確認します。
受取手形は紙の証書が前提で、現物の保管、取立の依頼、期日管理が必要になります。電子記録債権は紛失や盗難の心配がなく、必要な金額だけを分けて譲渡できます。
一方で、記録機関や金融機関への利用申込と取引先の合意が前提であり、紙をやめればすぐ使えるわけではありません。また、請求書の内容が正しくても、記録された金額や支払期日が同じとは限りません。記録内容と契約書を必ず照合しましょう。
商品を販売した時点ではまず売掛金が立ち、その後の発生記録で電子記録債権に振り替わります。電子記録債権が発生しても、原因となった売掛債権が自動的に消えるわけではないため、どちらについて支払いを受けたのかを区別して管理します。
請求書の発行日や支払条件を合意した日で振り替えると、二重計上や振替漏れが起きやすい点に注意してください。
電子記録債権は、会計システムの元帳残高だけを見ても正しく管理できません。記録機関が持つ未決済一覧と元帳を突き合わせて、はじめて残高の正しさを確かめられます。
手形が現物と手形記入帳の照合で管理できたのとは、確認の起点が異なる点に注意します。
電子記録債権への移行は、機能の損得よりも「日々の経理業務がどう変わるか」で捉えると判断しやすくなります。現物の保管や取立は減る一方で、記録機関のデータと会計帳簿を突き合わせる業務が新たに増えます。
| 経理業務 | 紙の手形(Before) | 電子記録債権・でんさい(After) | 移行時の確認点 |
|---|---|---|---|
| 受取確認 | 手形の現物を受け取る | 発生記録の通知を確認する | 連絡日ではなく発生記録の内容で確認する |
| 保管 | 金庫などで現物を保管する | 記録機関のデータで管理する | 担当者の閲覧・操作権限を設定する |
| 期日管理 | 手形記入帳で満期を管理する | 台帳と未決済一覧で支払期日を管理する | 資金繰り表の入金予定日と一致させる |
| 譲渡 | 裏書して手形を交付する | 譲渡記録を行う | 譲渡額と残存額を分けて管理する |
| 決済 | 取立依頼と入金を確認する | 決済結果と預金明細を確認する | 決済済みの債権を元帳から消し込む |
| 残高確認 | 現物と手形記入帳を照合する | 未決済一覧と総勘定元帳を照合する | 合計額だけでなく債権単位で確認する |
紙をやめても管理そのものが不要になるわけではなく、記録機関のデータと会計帳簿をどのタイミングで照合するかを社内ルールとして決めることが重要です。
なお、支払期日まで現金にならない点や、自動決済が回収の保証ではない点は手形と変わりません。取適法の対象取引では、電子化しただけでは支払条件の見直しにならない点も押さえておきましょう。
▲関連記事:
手形とは?2027年廃止で経理が混乱する前に押さえておきたい基礎知識
売掛金・買掛金とは?月次締めで押さえるべきポイントを徹底解説

| 場面 | 受け取る側の仕訳 | 支払う側の仕訳 | ここを間違えやすい |
|---|---|---|---|
| ①掛けで販売・仕入 | (借)売掛金 1,000,000/(貸)売上 1,000,000 | (借)仕入 1,000,000/(貸)買掛金 1,000,000 | この時点では電子記録債権はまだ発生していない |
| ②発生記録を実施 | (借)電子記録債権 1,000,000/(貸)売掛金 1,000,000 | (借)買掛金 1,000,000/(貸)電子記録債務 1,000,000 | 請求書の発行日ではなく、発生記録の通知日で振り替える |
| ③支払期日に決済 | (借)普通預金 1,000,000/(貸)電子記録債権 1,000,000 | (借)電子記録債務 1,000,000/(貸)当座預金 1,000,000 | 入金明細だけで消し込まず、債権番号と金額を照合する |
仕訳の流れが分かっても、決算で並べる「表示科目」は別の判断が必要です。次に、貸借対照表でどの科目を使うかを整理します。
企業会計基準委員会の実務対応報告第27号では、電子記録債権は手形債権に準じて取り扱うとされています。もとの取引が営業取引かどうかで科目が変わるため、表で整理します。
| もとの取引 | 受け取る側の 表示科目 |
支払う側の 表示科目 |
押さえるポイント |
|---|---|---|---|
| 商品やサービスの販売など通常の営業取引 | 電子記録債権 | 電子記録債務 | 発生記録を確認して売掛金・買掛金から振り替える |
| 固定資産の売却など営業取引以外 | 営業外電子記録債権 | 営業外電子記録債務 | 営業債権と混ぜず、区分して表示する |
| 金銭の貸付け・借入れ | 貸付金のまま | 借入金のまま | 発生記録があっても科目を振り替えない |
| 金額の重要性が乏しい場合 | 受取手形に含めて表示できる | 支払手形に含めて表示できる | 重要性の判断基準を社内で決めておく |
| 譲渡時に保証記録を行った場合 | 受取手形の割引高・裏書譲渡高と同じように注記する | - | 譲渡後も支払責任が残ることを開示に反映する |
この表で迷いやすいのが「営業外」の扱いです。混同を避けるため、営業外電子記録債権・営業外電子記録債務を次で補足します。
営業外電子記録債権とは、商品やサービスの販売といった通常の営業取引以外から生じた電子記録債権をいいます。
たとえば固定資産や有価証券を売却し、その代金を電子記録債権で受け取った場合が該当します。反対に、営業取引以外の支払いを電子記録債権で行った側は、営業外電子記録債務として計上します。
ポイントは、営業取引から生じた「電子記録債権」と混在させず、区分して表示することです。両者を一括りにすると、売上債権の回転期間などの分析がゆがみ、決算書を見た金融機関や監査人に誤解を与えかねません。もとの取引が本業の売上かどうかを起点に、科目を使い分けましょう。
参考:企業会計基準委員会 「実務対応報告第27号」
電子記録債権は、買掛金の支払いに充てたり、金融機関へ譲渡して支払期日前に資金化したりできます。会計処理は契約内容や金融機関との取引条件で変わるため、仕訳例は目安として扱ってください。
| 場面 | 仕訳例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 買掛金の支払いに充てて譲渡した(額面1,000,000円のうち600,000円) | (借)買掛金 600,000 (貸)電子記録債権 600,000 |
分割譲渡では残りの400,000円が自社に残る。元の債権を全額消してしまわない |
| 金融機関へ譲渡して資金化した(額面1,000,000円、差引後980,000円が入金) | (借)当座預金 980,000/電子記録債権売却損 20,000 (貸)電子記録債権 1,000,000 |
差額は営業外費用の電子記録債権売却損。計算書で内訳を確認する |
これらの仕訳で特に誤解が多いのが「譲渡すればリスクも移る」という思い込みです。
でんさいネットでは、譲渡記録を請求する際に、原則として譲渡人を保証人とする保証記録もあわせて請求する取扱いになっています。手形を裏書譲渡した裏書人が原則として遡及義務を負うのと同様に、譲渡人が電子記録保証人となり、債務者が支払えなければ、譲渡した側が支払いを求められることがあります。
回収リスクを引き受けない資金調達手段とは前提が異なる点を押さえ、保証記録がある譲渡は注記の対象になるかもあわせて確認しましょう。なお、譲受人が譲渡人の保証を必要としない場合は、保証記録を行わない取扱いも可能です。
電子記録債権を管理するときは、発生額、発生日、支払期日、決済状況、会計帳簿上の残高の5点を確認します。発生記録や未決済一覧だけでなく、債権管理台帳、総勘定元帳、預金明細を突き合わせることで、振替漏れや消込漏れによる残高差異を防ぎやすくなります。
ここでは、初めてでんさいを扱う経理担当者が、発生記録から決済後の消込までに押さえたい管理ポイントを5つに分けて解説します。
| ステップ | 実施事項 | 確認する内容 | 使う資料 |
|---|---|---|---|
| 1 | 発生を確かめてから振り替える | 請求書の発行や取引先の連絡ではなく、発生記録の通知を根拠に売掛金から振り替える | 記録機関・金融機関からの通知 |
| 2 | 台帳で5項目を管理する | 取引先・債権番号・発生日・支払期日・金額を記録し、補助科目とひも付ける | 債権管理台帳・会計システム |
| 3 | 未決済一覧と元帳を突き合わせる | 元帳の残高だけを見ず、記録機関の未決済一覧と一致するかを確認する | 未決済一覧・総勘定元帳 |
| 4 | 入金予定として資金繰りに乗せる | 決済までは現金ではない。資金化する場合は手数料と入金日も織り込む | 資金繰り表・預金明細 |
| 5 | 支払条件そのものを確認する | 取適法の対象取引では、支払期日までに満額を受け取れる条件かどうかを確かめる | 発注書・契約書・支払条件 |
振替の根拠は、請求書の発行や取引先からの口頭連絡ではなく、記録機関・金融機関から届く発生記録の通知です。通知を確認する前に振り替えると、実際には発生していない債権を計上してしまう恐れがあります。まずは通知を起点にする運用を徹底しましょう。
債権管理台帳では、取引先・債権番号・発生日・支払期日・金額の5項目を管理します。これらは、記録機関の明細と会計帳簿の取引をひも付け、発生から決済まで同じ債権を追跡するために必要です。「なぜ必要か」「いつ更新するか」「どの資料と照合するか」まで整理しておきましょう。
| 管理項目 | なぜ必要か | 更新するタイミング | 照合する資料 |
|---|---|---|---|
| 取引先 | 売掛先と記録上の債務者を一致させるため | 発生記録を確認したとき | 請求書・契約書・発生記録 |
| 債権番号 | 発生・譲渡・決済を同じ債権として追跡するため | 発生記録を確認したとき | 記録機関・金融機関の通知 |
| 発生日 | 売掛金から振り替える時期を確認するため | 発生記録を確認したとき | 発生記録・総勘定元帳 |
| 支払期日 | 入金予定と滞留状況を管理するため | 発生時に登録し、変更記録があれば更新 | 発生記録・資金繰り表 |
| 金額 | 元帳残高と決済額を照合するため | 発生・分割譲渡・決済の都度 | 未決済一覧・預金明細・総勘定元帳 |
分割譲渡を行った場合は、元の債権番号、譲渡額、残存額、分割後の債権番号も追記します。台帳を発生時だけ更新するのではなく、譲渡・変更・決済の都度更新することが、残高差異を防ぐポイントです。
元帳の残高だけを見て「合っている」と判断するのは危険です。記録機関が持つ未決済一覧と総勘定元帳を突き合わせ、件数と金額が一致するかを月次で確認します。ここでズレを早期に見つけられれば、決算時の手戻りを大きく減らせます。
電子記録債権は支払期日まで現金化されないため、決済日を入金予定として資金繰り表に反映します。金融機関へ譲渡して早期に資金化する場合は、差し引かれる手数料と実際の入金日もあわせて織り込み、見込み違いを防ぎます。
取適法の対象取引では、支払期日までに満額を受け取れる条件になっているかを確認します。電子記録債権に切り替えても、支払サイトが長すぎたり満額に満たなかったりすれば、制度の趣旨に沿わない場合があります。発注書・契約書と照らして、条件そのものを点検しましょう。
電子記録債権の残高が合わない場合は、元帳を直接修正する前に、原因を順番に切り分けることが重要です。元帳、電子記録の明細、入出金明細、未決済一覧、仕訳の順に突き合わせ、どの段階でズレたのかを特定しましょう。
まず総勘定元帳で、期首残高、当月の発生額、譲渡・決済による減少額、期末残高を確認します。差異が当月に生じたのか、前月以前から持ち越されているのかを切り分けます。
発生記録と譲渡記録を確認し、元帳に計上されていない債権や、譲渡後も帳簿に全額残っている債権がないかを確認します。分割譲渡がある場合は、残存額まで一致しているかを見ます。
預金明細から、支払期日に実際に入金または引落しされた金額を確認します。複数の債権がまとめて決済されている場合は、債権番号ごとの内訳まで確認しましょう。
記録機関の未決済一覧と、電子記録債権の元帳残高を照合します。合計額だけでなく、債権番号、取引先、支払期日、金額が一致しているかを確認します。
最後に、売掛金から電子記録債権への振替漏れ、決済後の消込漏れ、譲渡額の減額漏れ、金額や支払期日の入力誤りを確認します。修正仕訳を行う場合は、差異の原因と修正内容を記録しておきましょう。
支払期日に入金が確認できなくても、すぐに貸倒れと判断するわけではありません。まずは記録機関や金融機関から届いた決済結果を確認し、資金不足や口座情報の誤り、原因取引に関する争いなど、決済されなかった理由を切り分けます。
そのうえで、債務者の状況や回収可能性を踏まえ、貸倒引当金や貸倒損失の検討へ進みましょう。
手形の取引停止処分に似た支払不能処分の制度が、記録機関側にも用意されています。また、電子記録債権の消滅時効は、権利を行使できるときから原則3年(電子記録債権法第23条)です。売掛金と同じ感覚で放置しないようにしましょう。
2026年から2027年にかけて、取適法の施行、金融機関による手形・小切手の最終振出期限、電子交換所での交換廃止が予定されています。紙の手形からでんさいへ移行する経理は、利用開始の準備と、混同しやすい3つの日付を分けて確認しましょう。

電子記録債権は、申し込めばすぐ使えるわけではありません。取引先との合意から社内ルールの整備まで、次の4ステップで準備を進めると、導入後の残高ズレを防げます。
まず取引先と、支払方法・支払期日・手数料の負担を取り決めます。ここが曖昧なままだと、入金額や入金日が想定と食い違い、後工程の消込や資金繰りに影響します。
取引金融機関へ電子記録債権の利用を申し込み、記録機関の利用者登録を行います。自社と取引先の双方が利用者登録をしていないと取引が成立しないため、相手方の登録状況もあわせて確認します。
利用者番号の通知を受けたら、入金口座や、発生記録・譲渡記録を行う担当者の権限を設定します。誰がどの操作を行えるかを最初に決めておくと、記録の重複や漏れを防げます。
いきなり本格運用に入らず、少額の取引で試したうえで、振替のタイミングと台帳項目を社内ルールとして固めます。この工程を飛ばすと、担当者ごとに振替日がばらつき、月次で残高が合わなくなりやすいため注意しましょう。
制度変更への対応では、「いつから変わるのか」だけでなく、「何が変わるのか」「どの取引が対象になるのか」を切り分けることが重要です。ここでは、経理が押さえておきたい3つの日付を時系列で解説します。
2026年1月1日に取適法が施行され、対象取引では手形による代金の支払いが禁止されます。電子記録債権で支払う場合も、支払期日までに代金相当額を受け取れる条件になっていることが必要です。
経理部門は、まず自社の取引が取適法の対象になるかを確認しましょう。そのうえで、電子記録債権への切り替え後も、支払期日や手数料負担が適切かを発注書・契約書・支払条件通知書などと照合します。
多くの金融機関では、2026年9月30日ごろまでに紙の手形・小切手の最終振出期限を設定しています。ただし、具体的な期限や期限後の取扱いは金融機関によって異なります。
経理部門は、取引銀行が設定している最終振出期限を確認し、社内に残っている手形帳・小切手帳の冊数や未使用枚数を棚卸ししましょう。あわせて、取引先ごとに銀行振込や電子記録債権などへの切り替え状況を整理しておく必要があります。
2027年3月31日には、電子交換所における手形・小切手の交換が廃止される予定です。ただし、2027年4月1日から法律上一律に手形・小切手が使用できなくなるという意味ではありません。
電子交換所を介した決済が終了すると、金融機関の判断によって手形・小切手の取扱いが変わる可能性があります。支払う側だけでなく受け取る側も、取引先がどの支払手段へ切り替えるのか、支払期日や入金予定日に変更がないかを確認しましょう。
このように、3つの日付はそれぞれ意味が異なります。電子記録債権へ切り替えれば対応が完了するわけではなく、支払手段の電子化と、支払期日・手数料負担などの支払条件の適正化を分けて確認することが重要です。
参考:
金融庁「手形・小切手機能の全面的な電子化について」
中小企業庁「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた金融界の取組状況について」
電子記録債権について、経理担当者が迷いやすいポイントをまとめました。管理方法、印紙税、譲渡後の責任、未決済時の処理など、実務上の疑問を確認しておきましょう。
電子記録債権を管理するときは、発生額、発生日、支払期日、決済状況、会計帳簿上の残高の5点を確認します。記録機関の発生記録や未決済一覧だけで判断せず、債権管理台帳、総勘定元帳、預金明細と突き合わせることが重要です。
月次では、売掛金から電子記録債権への振替漏れ、決済後の消込漏れ、譲渡後の残高更新漏れがないかを、債権番号ごとに確認しましょう。
でんさいは、株式会社全銀電子債権ネットワークが取り扱う電子記録債権の名称です。電子記録債権という制度全体の名称ではありません。電子債権記録機関は、でんさいネット以外にも存在するため、自社が利用するサービスの取扱いを確認しましょう。
電子記録債権自体は、印紙税法上の有価証券には当たりません。ただし、電子記録債権で売上代金を受領した際に発行する受取書は、記載内容によって課税文書に該当する場合があります。受取書に電子記録債権で受領した旨が記載されているかを確認しましょう。
電子記録債権を譲渡しても、回収責任が必ずなくなるわけではありません。でんさいネットでは、譲渡記録を行う際に、原則として譲渡人を電子記録保証人とする保証記録もあわせて行われます。債務者が支払不能となり、譲受人が支払いを受けられない場合、保証記録をした譲渡人が支払いを求められることがあります。
支払期日に入金がないことだけを理由に、直ちに貸倒処理するわけではありません。まずは決済結果を確認し、資金不足、口座情報の誤り、原因取引に関する争いなど、未決済となった理由を切り分けます。そのうえで、回収可能性を評価し、必要に応じて貸倒引当金や貸倒損失の計上を検討します。
電子記録債権の消滅時効は、権利を行使できるときから原則3年です。支払期日に決済されなかった債権は放置せず、通知内容や回収状況を継続的に確認しましょう。
手形・小切手の電子交換所での交換が廃止された後も、電子記録債権の利用が一律に義務付けられるわけではありません。銀行振込など、ほかの支払手段も選択できます。
ただし、取引先による支払手段の変更に伴い、支払期日や入金予定日、手数料負担が変わる可能性があります。紙の手形から移行する際は、採用する支払手段だけでなく、支払期日、入金予定日、手数料の負担者を取引先ごとに確認しましょう。
売上計上のときは売掛金、発生記録を確認したら電子記録債権、支払期日に入金されたら預金へ。この順番で捉えれば仕訳に迷いにくくなります。譲渡や資金化では、残る債権額と保証記録の有無を必ず確認しましょう。
残高が合わないときは、元帳、電子記録の明細、入出金明細、未決済一覧、仕訳の順に確認します。制度変更は「紙をやめたか」ではなく「支払条件が適正か」で確認することが大切です。まずは月次の突合ルールを整えることが、混乱を防ぐ最初の一歩になります。