更新日:2026.08.31

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見積依頼書は、見積書の作成に必要な品名、数量、仕様、納期、提出期限などを発注者から受注候補者へ伝える文書です。決まった法定書式はありませんが、依頼条件を書面に残すことで、見積もりの漏れや認識違いを防ぎやすくなります。
この記事では、見積依頼書の目的や見積書との違い、記載すべき項目、作成時の注意点を解説します。新規・既存取引先や相見積もりで使えるメール例文、建設業法や取適法に関する注意点も紹介するため、見積依頼をスムーズに進めたい担当者の方は参考にしてください。
見積依頼書とは、商品やサービスの購入を検討している発注者が、取引条件を示して見積書の作成を依頼する文書です。まずは、見積依頼書を作成する目的と見積書との違い、書面で依頼するメリットを確認しましょう。
見積依頼書の主な目的は、発注者が希望する品名、数量、仕様、納期などを受注候補者へ正確に伝えることです。条件が曖昧なまま見積もりを依頼すると、必要な作業が金額に含まれていなかったり、異なる規格の商品で金額が算出されたりする可能性があります。
依頼内容を書面に残せば、受注候補者は必要な原価や工数を検討しやすくなり、発注者も提出された見積書が依頼条件を満たしているか確認できます。ただし、見積依頼書は原則として発注を確約する文書ではありません。「見積内容を確認後に発注の可否を決定する」と明記しておくと、見積依頼と正式発注の混同を防ぎやすくなります。

見積依頼書は、発注者が受注候補者へ「この条件で金額や納期を提示してほしい」と依頼する文書です。一方、見積書は、依頼を受けた事業者が、商品や作業の金額、内訳、有効期限などを発注者へ提示する文書です。作成者と文書の目的が異なります。
見積依頼書には希望する仕様や回答期限を記載し、見積書には単価、数量、税額、諸経費、合計額などを記載するのが一般的です。いずれも通常は契約書そのものではありません。ただし、「この条件で申し込む」「承諾により契約が成立する」と受け取れる記載ややり取りがあると、契約の申込みと評価される可能性があります。
関連記事:見積書と請求書5つの違い|それぞれの役割とトラブル回避のポイント
一般的な取引では、見積依頼書を必ず発行しなければならないという一律の法的義務はありません。電話やメール本文だけで見積もりを依頼することも可能です。ただし、依頼した仕様、数量、納期、予算などが残っていないと、見積金額の前提を後から確認できなくなるおそれがあります。
特に、高額な取引、相見積もり、仕様変更が起こりやすい案件では、見積依頼書を作成するのが実務的です。添付資料や図面にも版番号や作成日を付け、どの条件を基に見積もったか分かるようにします。なお、建設工事など個別の法律が適用される取引では、具体的な見積条件の提示や見積期間の確保が求められる場合があります。
見積依頼書は、依頼条件を正確に共有したい取引や、後から比較・確認する必要がある取引で役立ちます。なかでも書面で依頼する効果が大きい代表的な場面を紹介します。
初めて取引する事業者へ見積もりを依頼するときは、自社の概要や担当者情報とともに、見積依頼書を送付すると丁寧です。過去の取引実績がない相手には、自社で通常使用している略称や発注方法、希望する見積書の形式が伝わらないためです。
見積依頼書には、依頼の背景、対象となる商品や業務、数量、希望納期、回答期限を記載します。見積もり後に社内審査や比較検討を行う場合は、その旨も説明しましょう。また、見積書の提出が正式受注を意味しないことや、選定結果の連絡予定も示すと、相手が対応を判断しやすくなります。機密情報を渡す場合は、送付前に秘密保持契約の要否も検討してください。
相見積もりでは、適切な比較のために原則として、すべての候補先へ同じ見積条件を提示します。会社ごとに数量、仕様、納期などが異なれば、提示金額に差が生じても、価格競争力によるものか条件の違いによるものか判断できません。
金額だけでなく、送料、設置費、保守費、値引き、支払条件など、見積書に含めてほしい費用も指定します。選定基準に納期や実績、サポート体制を含める場合は、回答欄を設ける方法も有効です。
相見積もりであることを事前に伝えれば、受注候補者も競争条件を理解したうえで回答できます。ただし、他社の見積書を無断で開示し、値下げを迫る行為は避けましょう。
システム開発、設備工事、広告制作、コンサルティングなど、成果物や作業範囲が複雑な案件では、見積依頼書による条件整理が大切です。「Webサイト制作一式」のような表現だけでは、ページ数、撮影有無、原稿作成、保守などの範囲が事業者ごとに異なり、金額を比較しにくくなります。
見積依頼書では、成果物、作業範囲、対応回数、検収条件、納品形式、スケジュールを具体化します。確定していない事項は無理に固定せず、「提案を希望する事項」「見積対象外とする事項」に分けるとよいでしょう。
見積依頼書には、相手が価格と対応可否を判断するために必要な情報を過不足なく記載します。ここでは、基本となる記載項目と、依頼内容や提出条件を明確にする書き方を解説します。
関連記事:見積書の正しい書き方とは?発行目的と作り方についても解説

見積依頼書には、一般的に以下の10項目を記載します。
社内管理番号や見積書の有効期間、選定予定日が必要な場合は追加します。すべての案件で同じ書式を使うのではなく、物品購入、業務委託、工事など取引の性質に応じて項目を調整しましょう。
依頼内容は、受注候補者が同じ条件を再現できる程度まで具体化します。物品であれば、品名、メーカー、型番、数量、色、サイズ、新品・中古の別などを記載します。業務委託であれば、成果物、作業範囲、作業量、修正回数、納品形式を示しましょう。
仕様書や図面がある場合は、見積依頼書に添付し、ファイル名や版番号を記載します。「同等品可」「メーカー提案可」など代替を認める条件も明確にしてください。要件が確定していない項目は、確定事項と混在させず、提案を求める項目として区別します。相手の解釈に委ねる表現を減らすことで、見積もりの抜けや発注後の追加請求を防ぎやすくなります。
見積書の回答期限は、「できるだけ早く」ではなく、「2026年8月21日(金)17時まで」のように日付と時刻を指定します。期限の起算点が分かるよう、見積依頼書の発行日や送信日も記載しましょう。期限内に対応できない場合の連絡先を添えると、相手が調整しやすくなります。
提出方法は、メール添付、専用システムへのアップロード、郵送などから指定しましょう。メールの場合はPDFやExcelなど希望するファイル形式、送信先アドレス、件名の付け方も案内します。パスワード付きファイルや大容量データを使用する場合は、自社の情報セキュリティルールに合った送付方法を伝えましょう。
正確な見積金額を算出してもらうには、価格に影響する取引条件も提示します。希望納期、納品場所、送料の負担、設置作業の有無、検収方法、支払期日、振込手数料の負担などを記載しましょう。分割納品や月末締めなどの条件がある場合も明記します。
たとえば、納品先が遠方や複数拠点であれば、運送費や人件費が変わる点に注意が必要です。支払いまでの期間が長い場合も、受注候補者が資金繰りを含めて判断する必要があります。ただし、見積依頼の段階で一方的に不利な条件を押し付けるのは適切ではありません。調整可能な項目には「応相談」と記載し、相手から代替条件を提案できる余地を設けましょう。
見積依頼書をメールで送るときは、依頼内容、回答期限、添付ファイルを本文でも簡潔に伝えます。相手との関係や相見積もりの有無に応じて使い分けられる例文を紹介します。
新規取引先には、自社を名乗ったうえで、相手を知った経緯や依頼の背景を簡潔に説明します。突然ファイルだけを添付するのではなく、対応可否を確認する姿勢を示しましょう。
以下は、新規取引先に見積もりを依頼するメール例文なので、参考にしてください。
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件名:〇〇導入に関するお見積もりのお願い 株式会社〇〇 営業部 〇〇様 突然のご連絡失礼いたします。株式会社△△の△△と申します。貴社Webサイトを拝見し、〇〇の導入についてお見積もりをお願いしたく、ご連絡いたしました。 詳細は添付の見積依頼書に記載しております。恐れ入りますが、〇月〇日までにPDF形式でご提出いただけますでしょうか。ご不明点や対応が難しい条件がございましたら、お知らせください。何卒よろしくお願いいたします。 |
既存取引先へのメールでは、日頃の取引へのお礼を述べ、今回の案件を特定できる情報を記載します。過去と仕様が異なる場合は、変更箇所を明示すると確認の手間を減らせます。
以下は、既存取引先に見積もりを依頼する際のメール例文です。
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件名:【見積依頼】〇〇追加発注の件
株式会社〇〇 〇〇様 いつもお世話になっております。株式会社△△の△△です。 〇〇の追加発注を検討しており、お見積もりをお願いいたします。数量および納品先が前回と異なるため、詳細は添付の見積依頼書をご確認ください。 お忙しいところ恐縮ですが、〇月〇日17時までに本メールへの返信でお送りいただけますと幸いです。期日の調整が必要な場合は、事前にご連絡ください。よろしくお願いいたします。 |
相見積もりの場合は、複数社へ依頼していることや、価格以外の選定基準があれば事前に伝えます。他社名や他社の提示金額を開示する必要はありません。
以下は、相見積もりであることを伝えるメールの例文です。
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件名:〇〇業務に関するお見積もりのお願い
株式会社〇〇 〇〇様 お世話になっております。株式会社△△の△△です。 現在、〇〇業務の委託先選定にあたり、複数社へお見積もりをお願いしております。添付の見積依頼書をご確認のうえ、〇月〇日までにご回答いただけますでしょうか。 価格に加え、納期、実施体制、保守内容を含めて総合的に検討する予定です。選定結果は〇月〇日頃までにご連絡いたします。何卒よろしくお願いいたします。 |
見積依頼書は、条件を一方的に提示するためではなく、双方が適切な取引条件を検討するための資料です。相手が正確に見積もれる情報と期間を確保し、適用される法律にも注意しましょう。
予算が決まっている場合は、「予算上限100万円」「80万〜100万円を想定」など、可能な範囲で伝えましょう。予算を示すと、受注候補者は実現可能な仕様や代替案を提案しやすくなります。予算と希望内容が大きく離れている場合も、見積作成に時間をかける前に調整できます。
ただし、予算額を一方的な値下げの根拠にしたり、必要な原価を無視した金額を求めたりするのは避けるべきです。必須条件と希望条件を分け、予算を超える場合は、機能の削減、納期の変更、数量の調整などを提案してもらいましょう。
回答期限は、依頼内容の複雑さや必要な確認作業を踏まえて設定します。既製品の単価確認と、現地調査や外注先への照会が必要な工事では、見積作成にかかる時間が異なる点も理解しておきましょう。短すぎる期限を設けると、算出ミスや辞退につながる可能性があります。
急ぎの事情がある場合は、理由を説明したうえで、対応可能な期限を相手に確認しましょう。詳細見積もりに時間がかかるときは、概算見積もりを先に受け取り、後日正式版を提出してもらう方法もあります。期限を変更した場合は、口頭連絡だけで済ませず、メールなどで新しい日付を共有し、関係者間の認識をそろえることが大切です。
一般的な取引では、見積もりを依頼された事業者に、必ず見積書を作成・提出しなければならないという一律の義務はありません。採算が合わない、対応する人員がいない、期限が短いなどの理由で、依頼を断られる場合があります。無料での見積作成が当然とも限りません。
現地調査や設計作業を伴う案件では、見積料や調査費が設定されることもあります。依頼前に費用の有無を確認し、無償で過度な提案や設計を求めないようにしましょう。
ただし、建設業法では、建設業者は注文者から請求を受けた場合、請負契約が成立するまでに見積書を提示しなければならないとされています。そのため、取引分野ごとのルールを確認することが大切です。
建設工事では、注文者は工事内容や工期、支払方法などの見積条件をできる限り具体的に示し、予定価格に応じて以下の見積期間を設ける必要があります。
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工事の予定価格 |
見積期間 |
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500万円未満 |
中1日以上 |
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500万円以上5,000万円未満 |
中10日以上 |
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5,000万円以上 |
中15日以上 |
なお、500万円以上の工事については、やむを得ない事情がある場合に限り、見積期間を5日以内の範囲で短縮できる場合があります。
また、2025年12月施行の改正建設業法を踏まえ、建設業者は材料費、労務費、適正な施工に必要な経費などの内訳や、工程ごとの作業・準備日数を記載した見積書の作成に努める必要があります。見積依頼時は工事範囲や施工条件、費用負担を明確にし、最新の国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」も確認しましょう。
2026年1月1日に旧下請法は「中小受託取引適正化法(取適法)」へ改められ、対象となる取引や事業者の範囲が拡大されました。
見積もりの依頼と正式な発注は区別して考える必要があります。取適法の対象となる製造・修理・情報成果物作成・役務提供などを正式に発注する場合は、給付内容や代金、受領期日、支払期日などを、速やかに書面または電磁的方法で明示しなければなりません。
そのため、見積依頼書に取引条件を記載しただけでは、正式発注時の明示義務を満たすとは限りません。見積もり後に内容や金額を確定し、必要事項を記載した発注書などを交付しましょう。
また、中小受託事業者から価格について協議を求められたにもかかわらず、協議せず一方的に代金を決定することも禁止されています。
取適法の適用対象は資本金、従業員数、委託内容で変わるため、公正取引委員会の取適法資料で確認してください。
ここでは、見積依頼書の書式、メールだけで依頼する場合の扱い、返信がない場合の対応、押印の要否など、作成時に迷いやすい疑問へ回答します。
一般的な見積依頼書に、法律で統一された書式はありません。自社でWordやExcelのテンプレートを作成し、必要な項目を案件ごとに変更できます。以下のような内容がわかれば形式は自由です。
ただし、業界や取引内容によっては、記載すべき事項や見積期間が法律、契約、社内規程で定められている場合があります。建設工事や官公庁調達、取適法の対象となる発注では、一般的なテンプレートをそのまま使わず、個別のルールを確認しましょう。
一般的な取引であれば、メール本文だけで見積もりを依頼しても問題ありません。品名、数量、仕様、希望納期、回答期限、提出方法などを本文に整理して記載すれば、メール自体が依頼条件の記録になります。簡単な物品購入や、取引条件を共有済みの相手への依頼に向いています。
一方、以下のような案件では見積依頼書を添付したほうが確認しやすくなるでしょう。
メール本文には、添付ファイル名、版番号、回答期限を記載しましょう。
回答期限を過ぎても返信がない場合は、メールが届いているか、担当者が不在ではないかを確認します。催促の連絡では、送信日、案件名、当初の期限を伝え、対応可否だけでも回答してほしい旨を丁寧に依頼しましょう。急ぎの場合は、新しい回答期限も示します。
見積依頼を断られたときは、無理に提出を求めず、可能であれば納期、予算、対応範囲のどの条件が難しいかを確認します。条件を調整できなければ、別の候補先を探しましょう。
一般的な見積依頼書に、法律上、押印が必須とされるわけではありません。会社名、部署名、担当者名、連絡先が記載され、誰からの依頼か確認できれば、押印なしでメール送付することも可能です。電子印鑑を付けても、押印の有無だけで文書の効力が決まるものではありません。
ただし、相手先の受付ルール、自社の稟議規程、官公庁の手続きなどで押印済み書類を求められる場合があります。押印を省略する場合は、送信元を会社のメールアドレスに統一し、承認済みの依頼であることが分かる運用を整えましょう。重要案件では、担当者だけでなく責任者や購買部門を送信先・CCに含める方法もあります。
見積依頼書は、発注者が受注候補者へ品名、数量、仕様、納期、取引条件などを示し、見積書の作成を依頼する文書です。一般的な取引では発行義務や決まった書式はありませんが、条件を書面に残すことで、見積もりの漏れや認識違いを防ぎやすくなります。相見積もりでは、すべての候補先へ同じ条件を提示することが重要です。
作成時は、依頼内容だけでなく、回答期限、提出方法、納品場所、支払条件も具体的に記載しましょう。建設工事では見積条件や見積期間、見積書の内訳に関する建設業法上のルールがあります。取適法の対象取引を正式に発注する場合は、見積依頼とは別に、確定した給付内容や代金、支払期日などを適切に明示してください。
見積依頼書の扱いも含めた経理業務の効率化については、以下の資料もご覧ください。