更新日:2026.10.01

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繰延資産とは、すでに支出した費用のうち、その効果が将来にも及ぶため、いったん資産として計上できるものです。創立費や開業費のほか、税務上は返還されない権利金などが該当する場合があります。
この記事では、会計上・税務上の繰延資産の違いや具体例、償却方法、固定資産との違い、仕訳例をわかりやすく解説します。
繰延資産とは、すでに支出し、役務の提供も受けた費用のうち、その効果が将来にも及ぶため、一定の要件を満たす場合に資産として計上し、後の期間に費用化する項目です。
繰延資産に該当する支出は、原則として支出時に費用処理します。ただし、創立費や開業費などは、一定の要件を満たせば繰延資産として計上し、後の年度に償却できます。
すべての支出を自由に繰延資産へ計上できるわけではありません。主に次の点を確認します。
会計上は費用処理が原則であり、繰延資産への計上は例外的な処理です。対象となる項目や償却方法を確認したうえで判断しましょう。
繰延資産と繰延税金資産は、名前が似ていますが異なる会計項目です。
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名称 |
内容 |
|
繰延資産 |
支出済みの費用のうち、効果が将来にも及ぶもの |
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繰延税金資産 |
税効果会計により、将来の税負担を軽減すると見込まれる金額 |
繰延資産は創立費や開業費などの支出に関する項目です。一方、繰延税金資産は、会計と税務の認識時期の違いなどから生じます。
繰延資産に該当する項目は、会計上と税務上で異なります。それぞれの代表例を確認しましょう。
会計上の繰延資産は、次の5項目に限られます。
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種類 |
主な内容 |
会計上の償却期間・方法 |
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創立費 |
会社設立のためにかかった費用 |
会社成立後5年以内に定額法 |
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開業費 |
会社成立後、営業開始までにかかった費用 |
開業後5年以内に定額法 |
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開発費 |
新市場の開拓などにかかった費用 |
支出後5年以内に定額法など |
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株式交付費 |
株式の交付に直接かかった費用 |
株式交付後3年以内に定額法 |
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社債発行費等 |
社債や新株予約権の発行にかかった費用 |
・社債発行費は原則として償還までの期間に利息法で償却 ・継続適用を条件に定額法も可 ・新株予約権発行費は3年以内に定額法 |
いずれも支出時の費用処理が原則ですが、繰延資産として計上することも認められています。なお、研究開発費会計基準の対象となる研究開発費は、発生時に費用処理します。
税務上は、会計上の5項目に加え、支出の効果が1年以上に及ぶ一定の費用も繰延資産に含まれます。
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種類 |
具体例 |
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資産を賃借するための費用 |
建物を借りる際に支払う返還されない権利金 |
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公共施設などの負担金 |
道路や上下水道などの整備負担金 |
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共同施設の負担金 |
商店街のアーケードや共同展示施設の負担金 |
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広告宣伝用資産の費用 |
取引先へ贈与した看板や陳列棚などの費用 |
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役務の提供を受けるための費用 |
フランチャイズなどの契約に際して支払う返還されない加盟一時金など |
礼金や入会金などは、名称だけで判断できません。返還されないことや、支出の効果が1年以上続くことなど、契約内容と実態に基づいて判断します。
なお、将来受けるサービスの対価を単に前払いした場合は、前払費用に該当することがあります。複数年分を一括で支払っただけで、税務上の繰延資産になるわけではありません。
将来返還される敷金や保証金は、原則として繰延資産ではありません。返還されない部分がある場合は、その部分について繰延資産に該当する可能性があります。
繰延資産は、資産計上した後、会計基準や税法に従って費用化します。償却方法は、繰延資産の種類によって異なります。
繰延資産の償却方法は、次のように整理できます。
「任意償却」とは、税務上の償却限度額の範囲内で、その年度に損金算入する金額を決められる方法です。一方、均等償却では、税法上の償却期間に応じて毎期の償却額を計算します。
税務上のみ繰延資産となる一定の支出は、支出額が20万円未満であれば、支出した年度に全額を損金算入できる場合があります。
たとえば、建物の賃借や役務提供に関する費用は、原則として契約ごとに20万円未満かどうかを判定します。
ただし、この少額処理はすべての繰延資産に適用されるわけではありません。また、20万円未満かどうかを契約単位や施設単位など、どの単位で判定するかは支出の種類によって異なります。
繰延資産と固定資産は、どちらも貸借対照表の「資産の部」に計上されますが、資産として計上する対象や費用化の考え方が異なります。
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比較項目 |
繰延資産 |
固定資産 |
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内容 |
将来にも効果が及ぶ支出 |
長期間使用・保有する資産や権利 |
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資産としての性質 |
支出の効果を将来へ繰り延べたもの |
資産や権利そのものに経済的価値があるもの |
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具体例 |
・創立費 ・開業費 ・株式交付費など |
・建物 ・機械 ・特許権 ・ソフトウェアなど |
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貸借対照表の区分 |
繰延資産 |
有形固定資産・無形固定資産など |
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費用化 |
項目ごとに定められた期間・方法で償却する |
減価償却資産は耐用年数などに応じて減価償却する |
固定資産には、建物や機械などの有形固定資産だけでなく、特許権やソフトウェアなどの無形固定資産も含まれます。無形固定資産は形がない点で繰延資産と似ていますが、権利や機能そのものに経済的価値があることが特徴です。
一方、繰延資産は独立した財産や権利ではなく、すでに支出した費用の効果を将来へ繰り延べたものです。たとえば、会社設立時の登録免許税などは、創立費として繰延資産に計上できます。
関連記事:貸借対照表とは?見方・作り方・決算チェックのポイントまでわかりやすく解説
繰延資産として計上する場合は、支出時に資産へ計上し、その後の決算で償却費へ振り替えます。以下では繰延資産の具体的な仕訳例を紹介します。
会社設立にかかった創立費60万円を普通預金から支払い、会計上5年間で均等に償却する例は次のとおりです。
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タイミング |
借方 |
貸方 |
||
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支出時 |
創立費 |
600,000円 |
普通預金 |
600,000円 |
|
1年分の償却時 |
創立費償却 |
120,000円 |
創立費 |
120,000円 |
償却費は損益計算書の費用となり、その年度の利益に影響します。
建物を借りるために支払った返還されない権利金は、支出の効果が1年以上続く場合、税務上の繰延資産に該当します
たとえば、権利金60万円を普通預金から支払い、5年間で償却する場合の仕訳は次のとおりです。
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タイミング |
借方 |
貸方 |
||
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支出時 |
長期前払費用 |
600,000円 |
普通預金 |
600,000円 |
|
1年分の償却時 |
長期前払費用償却 |
120,000円 |
長期前払費用 |
120,000円 |
上記2つのケースに該当しない一般的な建物賃借の権利金等は、税務上5年で償却します。ただし、賃貸借期間が5年未満で、契約更新時に再び権利金等を支払うことが明らかな場合は、その賃貸借期間が償却期間です。
また、年度の途中で支払った場合、初年度の償却限度額は支出日から事業年度末までの月数に応じて計算します。返還される敷金・保証金は原則として償却しないため、権利金と区別して処理しましょう。
関連記事:損益計算書の見方が変わる|5つの利益と販管費でわかる会社のリアル
ここでは、固定資産との違いや、開業費の取り扱い、繰延資産の仕訳など、繰延資産についてよくある疑問に回答します。
固定資産は、建物や機械、特許権など、長期間使用・保有する資産です。繰延資産は、すでに支出した費用のうち、将来にも効果が及ぶものを一時的に資産として計上したものです。
開業費は、会計上の繰延資産のひとつです。会社成立後から営業開始までに特別に支出した費用などが対象となり、支出時に費用処理するほか、繰延資産として計上することもできます。
繰延資産として処理する場合は、支出時に創立費や開業費などの資産勘定へ計上します。その後、決算時などに償却額を費用へ振り替え、繰延資産の帳簿価額を減額します。
繰延資産とは、すでに支出した費用のうち、その効果が将来にも及ぶため、一定期間にわたって費用化する会計項目です。
会計上の繰延資産は創立費や開業費などの5項目に限られますが、税務上は権利金や公共施設の負担金なども対象になる場合があります。対象範囲や償却方法が異なるため、支出の名称だけでなく、契約内容や実態を確認することが重要です。
判断が難しい支出については、税理士などの専門家へ相談し、適切な会計・税務処理につなげましょう。
繰延資産の扱いを含めた経理業務を効率化したい方は、以下の資料もご確認ください。