更新日:2026.08.05

ー 目次 ー
経理でいう「現金」は、紙幣や硬貨だけを指すわけではありません。他人振出小切手や郵便為替証書、配当金領収証など、すぐに現金化できる通貨代用証券も現金勘定に含めて処理します。
一方で、普通預金、自社振出小切手、先日付小切手、郵便切手、商品券、電子マネーなどは、金庫に保管していたり支払いに使えたりしても、原則として現金勘定では処理しません。
本記事では、経理で現金に含まれるもの・含まれないものを一覧で整理し、迷いやすい小切手の判断、仕訳例、現金出納帳と実際残高を合わせる管理ポイントまで解説します。
国税庁:「No.6621 帳簿の記載事項と保存」「記帳や帳簿等保存・青色申告」
企業会計基準委員会:「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」
一般的な「現金」と簿記上の「現金」は、必ずしも一致しません。経理上の現金は、紙幣・硬貨などの通貨と、すぐに換金できる通貨代用証券に分けて理解すると整理しやすくなります。
現金は貸借対照表上、流動資産に含まれる資産です。実務では「現金及び預金」として表示されることもありますが、仕訳や帳簿では現金と預金を分けて管理します。現金を受け取ったときは借方、支払ったときは貸方に記録するのが基本です。
手元で保有する通貨や、すぐに換金できる証券は、資産科目である「現金」で処理します。他人振出小切手や郵便為替証書のような通貨代用証券を受け取ったときも、専用の勘定科目はなく、すべて「現金」勘定にまとめて計上します。
つまり「通貨代用証券」という勘定科目は存在しません。受け取った証券の種類にかかわらず、借方は「現金」で仕訳する点を押さえておきましょう。具体的な仕訳は後述の各ケースで確認します。
現金勘定は手元の紙幣・硬貨や他人振出小切手などを対象とし、普通預金や当座預金は預金勘定で管理します。
一方、キャッシュ・フロー計算書の「現金及び現金同等物」には、要求払預金や一定の短期投資が含まれ、日々の仕訳とは範囲が異なります。
| 区分 | 日々の仕訳での扱い | キャッシュ・フロー計算書での扱い |
|---|---|---|
| 手元の紙幣・硬貨 | 現金勘定 | 現金 |
| 普通預金・当座預金 | 普通預金・当座預金などの預金勘定 | 要求払預金として現金に含まれる |
| 定期預金 | 定期預金勘定 | 原則として要求払預金には含まれない(※取得日から満期まで3か月以内のものは現金同等物に含まれる) |
| 短期投資 | 有価証券など | 一定要件を満たす場合、現金同等物に含まれる |
普通預金はいつでも引き出せますが、日々の仕訳では「普通預金」勘定を使い、「現金」勘定とは分けて管理します。ただしキャッシュ・フロー計算書では要求払預金が資金の範囲に含まれるため、作成する資料によって「現金」の定義が変わる点に注意しましょう。
本記事で「現金」と表現する場合は、日々の仕訳で使う現金勘定の範囲を中心に説明します。
整理すると、経理でいう現金は2つに区別されます。
金庫にあるかどうかや、支払いに使えるかどうかではなく、すぐに換金できるか、そして換金額が目減りしないかで判断するのがポイントです。
次章から、具体的に何が含まれ、何が含まれないのかを一覧で見ていきましょう。

現金として扱うかどうかは、紙幣・硬貨であるか、または簡単な手続きですぐに現金化できる通貨代用証券であるかを基準に判断します。まず一覧で全体像を確認しましょう。
| 区分 | 具体例 | 使う勘定科目 |
|---|---|---|
| 現金として扱う | 紙幣・硬貨、他人振出小切手、送金小切手、郵便為替証書、配当金領収証、期限到来後の公社債利札 | 現金 |
| 現金として扱わない | 普通預金・当座預金、定期預金、自社振出小切手、先日付小切手、切手・収入印紙、商品券・電子マネー、借用証 | 預金・受取手形・貯蔵品・預け金など |
日本の紙幣・硬貨に加え、米ドルやユーロなどの外国通貨も手元で保有する通貨のため、現金として管理します。ただし帳簿には円換算額で記録し、通貨別の補助科目や外貨現金出納帳を設けると管理しやすくなります。
商品110,000円を現金で販売した場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金 110,000円 | 売上 110,000円 |
通貨代用証券とは、それ自体は紙幣や硬貨ではないものの、金融機関などへ持ち込めば、ほぼ手続きなしにそのまま換金できる証券のことです。会計では「いつでもお金に換えられる」という性質を重視するため、受け取った時点で現金と同じ扱いをします。
ポイントは、「換金までに待たされないか」「金額が目減りしないか」の2つです。この2つを満たすものだけが現金勘定に含まれ、満たさないもの(例:記載日まで待つ先日付小切手)は、たとえ手元にあっても現金からは外れます。代表的なものは次のとおりです。
| 現金に含まれるもの | 判断のポイント | 主な処理 |
|---|---|---|
| 他人振出小切手 | 銀行へ持ち込むことで現金化できる | 現金 |
| 送金小切手 | 金融機関等で換金できる | 現金 |
| 郵便為替証書 | 郵便局で現金化できる | 現金 |
| 配当金領収証 | 金融機関等で配当金を受け取れる | 現金 |
| 期限到来後の公社債利札 | 支払期日を迎えており利息を受け取れる | 現金 |
政府は紙の小切手について、2026年度末(2027年3月末)を目途に利用廃止・電子化の方針を示しています。他人振出小切手を受け取る機会は今後減っていく点も押さえておきましょう。
取引先が振り出した小切手(他人振出小切手)は、銀行へ持ち込めばすぐに換金できるため、受け取った時点で「現金」として計上します。手形のように支払期日を待つ必要がない点が、仕訳を分けて考えるうえでのポイントです。
売掛金200,000円を、取引先が振り出した小切手で回収した場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金 200,000円 | 売掛金 200,000円 |
その小切手を当座預金へ預け入れた場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 当座預金 200,000円 | 現金 200,000円 |
ここで押さえたいのは、「受け取ったとき=現金」「預け入れたとき=当座預金へ振替」という2段階で処理する点です。手元に小切手がある間は現金として管理し、入金手続きを終えて初めて預金へ移すと考えると、実際の資金の流れと帳簿が一致します。
なお、受取後すぐに預け入れる運用であれば、現金勘定を省いて直接当座預金で処理する方法もあります。
保有株式の配当金を「配当金領収証」で受け取った場合も、金融機関へ持ち込めば現金化できるため、受取時点で現金として計上します。相手科目には収益である「受取配当金」を使う点が、売掛金の回収とは異なります。
配当金領収証30,000円を受け取った場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金 30,000円 | 受取配当金 30,000円 |
実務では、源泉徴収後の手取額が記載されているケースが多いため、源泉所得税の有無や金額を配当金計算書で確認してから計上すると、後の税務処理がスムーズです。
自社が振り出す小切手は、支払時に手元の現金が減るわけではなく、後日、銀行の当座預金口座から引き落とされます。そのため相手科目は「現金」ではなく「当座預金」を使う点に注意が必要です。
他人振出小切手(現金扱い)と混同しやすいところなので、「自社が振り出す=当座預金」「他社から受け取る=現金」とセットで覚えておくと迷いません。
買掛金150,000円を自社振出小切手で支払った場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 買掛金 150,000円 | 当座預金 150,000円 |
先日付小切手は、実際の受取日より先の日付を振出日として記載した小切手です。法律上は記載日より前でも換金できますが、取引先との信頼関係や商慣習から、記載日までは呈示しないのが一般的な取り決めです。
つまり実質的には「支払を待つ」性質を持つため、受取時点では現金として扱わず、受取手形などの債権科目で管理します。
売掛金100,000円について先日付小切手を受け取った場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 受取手形 100,000円 | 売掛金 100,000円 |
すぐに換金できる他人振出小切手とは扱いが正反対になるため、受け取った小切手の日付を必ず確認し、先日付かどうかを見極めてから計上することが、残高管理のうえでも重要です。
郵便切手や収入印紙は金庫内に保管されることがありますが、自由に支払いへ使える通貨ではありません。
購入時に費用(通信費・租税公課)で処理し、決算時に未使用分が残っている場合は、重要性に応じて貯蔵品へ振り替えます。
郵便切手10,000円分を現金で購入した場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 通信費 10,000円 | 現金 10,000円 |
決算時に未使用の切手3,000円分が残っていた場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貯蔵品 3,000円 | 通信費 3,000円 |
商品券や電子マネーは利用先や換金方法に制限があるため、通常の現金勘定とは区別します。電子マネーへチャージした時点では預け金や仮払金などで処理し、使用時に費用へ振り替える方法が考えられます。
ポイントも受け取った時点では原則計上せず、使用時に値引や雑収入として処理します。
業務用の電子マネーへ現金30,000円をチャージした場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 預け金 30,000円 | 現金 30,000円 |
チャージ残高から消耗品5,000円を購入した場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 消耗品費 5,000円 | 預け金 5,000円 |

迷ったときは、次の3つの質問を順に確認すると整理できます。
| 確認順 | 質問 | 判断 |
|---|---|---|
| 1 | 紙幣・硬貨などの通貨か | はい:現金/いいえ:次へ |
| 2 | 簡単な手続きですぐに現金化できる証券か | はい:現金/いいえ:次へ |
| 3 | 預金・手形・商品券・切手など専用の勘定科目があるか | はい:該当科目で処理/いいえ:実態に応じて確認 |
現金は換金性が高く、紛失や盗難、不正が起きても履歴を追いにくいため、預金以上に厳格な管理が必要です。日々・月次で押さえるべきポイントを確認しましょう。
現金を扱った日は、現金勘定の残高と、金庫・レジ内の紙幣・硬貨および通貨代用証券の合計を照合します。
切手、収入印紙、商品券、借用証などは集計から除外します。
他人振出小切手や普通為替証書は、紙幣・硬貨とは分けて保管します。受領日、取引先、金額、証券の種類、換金日・預入日、担当者を台帳へ記録すると、換金漏れや紛失を防止できます。
現金を保管する担当者、帳簿へ入力する担当者、残高を確認する担当者を、可能な範囲で分けます。完全に分離できない場合でも、上長による定期的な残高確認や出金承認を設けることで牽制が働きます。
日々の管理に加え、月次決算のタイミングで漏れなくチェックすることが大切です。毎月同じ視点で確認できるよう、確認項目を一覧にまとめました。自社の現金管理フローに合わせて、月次チェックシートとしてご活用ください。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 現金実査 | 金庫・レジ内の紙幣、硬貨、通貨代用証券を実際に数えたか |
| 帳簿照合 | 現金出納帳、総勘定元帳、実際残高が一致しているか |
| 小切手の区分 | 他人振出、自社振出、先日付小切手を区別したか |
| 通貨代用証券 | 郵便為替証書や配当金領収証を計上したか |
| 除外資産 | 切手、収入印紙、商品券、借用証を現金から除外したか |
| 現金過不足 | 原因を調査し、必要な修正仕訳を行ったか |
| 外貨現金 | 通貨別数量と円換算額を確認したか |
| 未換金証券 | 小切手や為替証書が長期間残っていないか |
現金管理は、ルールを決めても運用でつまずきがちです。とくに複数の拠点を展開する企業では、次のような課題が月次決算の負担や残高差異につながります。あらかじめ想定し、仕組みで解決しておきましょう。
切手や商品券を現金実査へ含めるかどうかの判断が拠点ごとに違うと、月次で差異の原因を追いにくくなります。現金に含めるもの・除外するものの基準を本部で統一し、各拠点へ共通ルールとして展開しましょう。
拠点や担当者ごとに様式が異なると、集計や比較に手間がかかります。共通フォーマットを配布し、記載項目(日付・摘要・相手方・入出金・残高)をそろえると、全社での照合が容易になります。
領収書や小切手控と仕訳の突合に時間がかかると、月次締めが遅れます。証憑の電子化やワークフロー化を進めると、確認作業を大幅に短縮できます。
差異が出てから原因を探すと調査に追われがちです。日次照合と担当者の分担を徹底し、差異が起きても早期に特定できる体制を整えておくことが、決算負担の平準化につながります。
紙幣・硬貨などの通貨に加え、すぐに換金できる通貨代用証券が含まれます。具体的には、他人振出小切手、送金小切手、郵便為替証書、配当金領収証、期限到来後の公社債利札などです。
これらは受け取った時点で「現金」勘定に計上します。一方、普通預金や自社振出小切手、切手、商品券などは現金には含めず、それぞれ専用の勘定科目で処理します。
取引先が振り出した「他人振出小切手」は、銀行へ持ち込めばすぐに換金できるため、受け取った時点で現金として処理します。
ただし、自社が振り出した小切手は「当座預金」、記載日まで換金できない「先日付小切手」は「受取手形」で処理します。
小切手は種類によって扱いが変わるため、振出人と日付を必ず確認しましょう。
日々の仕訳でいう「現金」は、手元の通貨や通貨代用証券を指す勘定科目です。
一方、キャッシュ・フロー計算書でいう「現金及び現金同等物」には、要求払預金や、取得日から満期まで3か月以内の定期預金などの短期投資も含まれます。
作成する資料によって「現金」が指す範囲が異なる点に注意が必要です。
経理上の現金は、紙幣・硬貨だけではありません。他人振出小切手や普通為替証書など、すぐに換金できる通貨代用証券も現金に含まれます。一方、普通預金、自社振出小切手、先日付小切手、切手、商品券などは、現金に似ていても別の勘定科目で処理します。
判断に迷ったときは、本文の判断フロー(①通貨か ②すぐに換金できる通貨代用証券か ③専用の勘定科目を使うべき資産か)に立ち返ると整理できます。現金出納帳と実際残高を一致させるためにも、金庫内にあるものを一つずつ分類して管理することが大切です。
現金管理は、単に金額を合わせるだけでなく、帳簿に残すべき取引内容や証憑を整理することも重要です。国税庁は、帳簿に取引年月日・取引内容・金額・相手方などを記載し、一定期間保存する必要があると示しています。現金取引でも、領収書や小切手控、預金通帳などの関連書類を合わせて確認できる状態にしておきましょう。
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