更新日:2026.09.18

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損益分岐点とは、事業の採算ラインを把握するための基本的な経営指標です。損益分岐点を把握すれば、現在の売上が黒字化の基準を超えているか、利益を出すにはどの程度の売上が必要かを確認できます。
この記事では、損益分岐点の意味や計算方法をわかりやすく解説します。さらに、損益分岐点比率や損益分岐点を下げる方法、経営への活かし方についても解説するので、経理担当者の方はぜひ参考にしてください。
損益分岐点は、事業が黒字になるか赤字になるかを分ける基準となる売上水準です。売上と費用が同じ金額になるため、利益も損失も発生しません。
損益分岐点を超える売上を確保できれば黒字となり、反対に届かなければ赤字となります。現在の売上と損益分岐点を比較することで、事業の採算状況や売上減少に対する余裕を把握できます。
たとえば、飲食店なら「1日に何人のお客様が来店すれば赤字にならないか」、製造業なら「製品を何個販売すれば費用を回収できるか」といった目安を把握することが可能です。
損益分岐点を把握すれば、黒字を確保するために必要な売上の目安が見えてきます。売上目標を決めるときはもちろん、コストの見直しや新規事業の検討など、さまざまな経営判断に役立ちます。
たとえば、新規事業を立ち上げる際には、採算を取るために必要な売上高を算出し、実現可能な売上予測と照らし合わせられます。両者に大きな差がないかを確認すれば、事業計画に無理がないかを検討しやすくなるでしょう。
既存事業については、損益分岐点を基準に現在の売上状況を見ることで、どこまで売上が減少しても黒字を維持できるのかを確認できます。売上が落ち込んだときに、売上拡大とコスト削減のどちらを優先すべきか考える材料としても活用できます。
損益分岐点を計算するには、以下の用語の意味を理解しておく必要があります。
いずれも損益分岐点の計算に用いるため、それぞれの意味や違いを確認しておきましょう。
固定費とは、売上高や販売数量の増減にかかわらず、一定額発生する費用のことです。
一般的に固定費として扱われるものには、以下のようなものがあります。
たとえば、店舗の売上が少ない月でも、家賃は基本的に毎月支払わなければなりません。このように、売上の増減による影響を受けにくい費用が固定費に該当します。
固定費が大きいほど、費用を回収するために多くの限界利益が必要になるため、損益分岐点も高くなる傾向があります。
変動費は、売上や販売数量の変化に伴って金額が変わる費用です。一般的に、商品を多く販売したり生産したりするほど、変動費も増加します。
代表的な変動費には、以下のようなものがあります。
たとえば、商品の仕入原価が1個80円の場合、10個販売するための仕入原価は800円、100個なら8,000円です。このように、販売数量などに応じて増減する費用が変動費に該当します。
ただし、すべての費用を固定費と変動費に明確に分けられるとは限りません。たとえば、人件費でも固定給であれば固定費ですが、販売数や生産量に応じた出来高払いであれば変動費として扱う場合があります。
損益分岐点を計算する際は、それぞれの費用が売上や販売数量の増減によって変化するかを確認し、固定費と変動費に分類しましょう。
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限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた金額です。固定費の回収や利益の確保に充てられる金額を表します。
限界利益と限界利益率は、以下の式で求められます。
たとえば、売上高が100万円、変動費が60万円の場合、限界利益は40万円です。限界利益率は「40万円÷100万円×100=40%」となります。
限界利益率は、売上高のうち限界利益が占める割合を表します。同じ売上高であれば、限界利益率が高いほうが固定費の回収に充てられる金額が多くなります。
反対に限界利益率が低ければ、売上の多くが変動費に充てられるため、固定費を回収して利益を生み出すには、より大きな売上が必要です。
損益分岐点は、「売上高」と「販売数量」の2つを用いた計算で求められます。
それぞれの計算方法を具体例とともに確認していきましょう。
損益分岐点売上高は、事業が赤字から黒字に切り替わる基準となる売上金額です。固定費と限界利益率を使い、次の式から算出します。
月50万円の固定費がかかり、限界利益率が40%のケースで考えてみましょう。限界利益率40%を「0.4」として計算すると、以下の結果になります。
このケースでは、売上高125万円が黒字と赤字を分けるラインです。売上高が125万円に達すると、得られる限界利益は50万円となり、固定費50万円をちょうど回収できます。
損益分岐点は、売上金額だけでなく販売数量からも算出できます。必要な販売数を知りたい場合は、次の式を使います。
なお、上記の計算式は、主に単一の商品を販売している場合や、商品の販売構成が一定の場合に利用できます。複数の商品を異なる価格や利益率で販売している場合は、商品構成を考慮して計算する必要がある点に注意しましょう。
固定費50万円、商品1個から得られる限界利益が40円のケースでは、以下の計算になります。
このケースでは、12,500個を販売した時点で、商品から得られる限界利益の合計が固定費50万円に達します。したがって、12,500個が黒字化に必要な販売数量の目安と判断することが可能です。
商品ごとの販売単価と変動費がわかれば、黒字化するために何個売る必要があるのかを算出でき、販売目標の設定に役立てられます。
損益分岐点は、売上と費用の動きをグラフにすると視覚的に捉えやすくなります。横軸には売上高または販売数量、縦軸には金額を取り、売上高と総費用の変化をそれぞれ線で示します。
売上高は、販売数量が増えるにつれて大きくなります。一方、総費用には売上の有無にかかわらず発生する固定費が含まれるため、ゼロから始まりません。そこへ販売数量に伴って増える変動費が加わり、総費用も増加していきます。
売上高と総費用が一致するポイントが損益分岐点です。 ここを境に、売上高が総費用より大きければ黒字、総費用のほうが大きければ赤字となります。
損益分岐点を把握したら、「損益分岐点比率」と「安全余裕率」も確認しておきましょう。どちらも、現在の売上高にどの程度の余裕があるのかを判断する際に役立つ指標です。
損益分岐点比率とは、実際の売上高に対して、損益分岐点売上高がどの程度の割合を占めているかを示す指標です。以下の計算式で求められます。
比率が低いほど損益分岐点までの余裕が大きく、売上が減少しても赤字になりにくい状態と判断できます。一方、100%に近いほど余裕が少なく、100%を超えると実際の売上高が損益分岐点売上高を下回っているため、赤字の状態です。
安全余裕率は、現在の売上高が損益分岐点売上高をどれだけ上回っているかを割合で表したものです。次の式から算出します。
数値が大きいほど、現在の売上と赤字に転じるラインとの間に余裕があることを意味します。つまり、ある程度売上が落ち込んでも黒字を維持できる状態です。
安全余裕率は「100%-損益分岐点比率」でも求められます。たとえば、損益分岐点比率が70%であれば、安全余裕率は30%です。
損益分岐点を下げるには、固定費や変動費を削減するほか、販売価格を見直して限界利益率を高める方法があります。
自社のコストや価格設定を確認し、改善できる部分がないか検討しましょう。
固定費を抑えると、売上によって回収する必要がある費用そのものを減らせます。その結果、黒字化に必要な売上高も小さくなり、損益分岐点の引き下げにつながるでしょう。
見直しの対象としては、オフィスや店舗の規模、設備・サービスの契約内容、人員配置などが挙げられます。継続的に発生している支出のなかに、現在の事業規模に合わなくなったものがないか確認してみましょう。
ただし、費用を減らすことだけを優先すると、業務効率の悪化や商品・サービスの品質低下につながる可能性があります。事業への影響も考慮しながら、削減する項目を選ぶことが大切です。
変動費を抑えれば、売上から差し引かれる費用が少なくなり、その分だけ限界利益を増やせます。限界利益率が上昇すれば、同じ固定費でも黒字化に必要な売上高を抑えることが可能です。
具体的には、仕入先との取引条件を見直す、発注方法を改善する、製造時の材料ロスを減らすといった方法が考えられます。
一方で、安さだけを基準に仕入先や材料を選ぶと、商品・サービスの品質に影響するおそれがあります。コストと品質のバランスを考えながら、無駄になっている変動費を減らすことが重要です。
変動費などの条件が変わらなければ、販売価格を引き上げることで、1商品あたりの限界利益や限界利益率が高まり、損益分岐点を下げられる場合があります。
ただし、値上げによって顧客離れや販売数量の減少を招く可能性もあります。競合商品の価格や顧客ニーズ、自社の商品・サービスが提供する価値などを踏まえて、適切な価格を設定することが重要です。
関連記事:【決算直前】期をまたぐ「単価改定」の請求書処理|計上ミスを防ぎ、監査・税務調査を突破する4つの急所
CVP分析とは、コスト(Cost)・販売量(Volume)・利益(Profit)の関係を分析する手法です。
損益分岐点分析はCVP分析の代表的な方法のひとつで、目標利益に必要な売上高の算出や事業計画の策定などに活用できます。
損益分岐点は、利益がゼロになる売上高です。この計算方法を応用すると、目標とする利益を得るために必要な売上高も求められます。
計算式は以下のとおりです。
たとえば、固定費が50万円、限界利益率が40%で、月100万円の利益を目標とする場合は、次のように計算します。
(50万円+100万円)÷0.4=375万円
つまり、月100万円の利益を確保するには、375万円の売上高が必要です。
このように目標利益から必要な売上高を逆算すれば、具体的な売上目標の設定や事業計画の策定に活用できます。
損益分岐点分析は、新規事業の採算性を検討したり、事業計画を策定したりする際にも活用できます。
たとえば、損益分岐点売上高と売上予測を比較すれば、計画している売上で固定費や変動費を回収できるのかを検討できます。また、売上やコストが変化した場合の利益への影響をシミュレーションすることも可能です。
融資を受けるために事業計画書を作成する際にも、損益分岐点を示すことで、必要な売上高や利益計画の根拠を説明しやすくなります。
損益分岐点に関するよくある質問に回答します。
損益分岐点売上高は、以下の計算式で求められます。
|
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率 |
限界利益率は、「(売上高-変動費)÷売上高×100」で算出します。固定費と変動費、売上高がわかれば、損益分岐点売上高を計算できます。
損益分岐点が低いほど、同じ売上水準で比較した場合、少ない売上高で黒字化できるためです。そのため、売上が減少しても赤字になりにくくなります。
なお、企業の規模が異なる場合などは、損益分岐点そのものではなく、損益分岐点比率で比較すると、経営の安全性を判断しやすくなります。
反対に、損益分岐点が高い場合は、黒字を維持するためにより多くの売上高が必要です。
損益分岐点が高くなる主な原因は、固定費の増加や限界利益率の低下です。たとえば、家賃や人件費が増えると、回収すべき固定費が大きくなるため、黒字化に必要な売上高も増加します。
また、仕入原価や材料費などの変動費が増えたり、販売価格を引き下げたりすると限界利益率が低下し、損益分岐点が高くなります。
適正な損益分岐点は業種や事業のコスト構造などによって異なるため、「○%以下なら安全」と一律には判断できません。
自社の過去の数値や同業他社などと比較しながら、継続的に確認することが重要です。
損益分岐点を算出すれば、自社が黒字を確保するために必要な売上高や販売数量の目安が見えてきます。現在の売上と照らし合わせることで、採算状況を確認する際にも役立ちます。
さらに、固定費の削減や仕入条件の改善、販売価格の見直しなどによって、より少ない売上でも利益を出せる収益構造を目指せます。目標とする利益が決まっている場合は、CVP分析を用いて、その達成に必要な売上高を計算することも可能です。
損益分岐点は、一度計算して終わりではありません。売上やコストの変化に合わせて定期的に確認し、自社の収益構造を見直す材料として活用することが大切です。
コスト削減の具体的な進め方や経理部門が抱える課題について詳しく知りたい方は、以下の資料もぜひご活用ください。