更新日:2024.08.21
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消耗費とは、会計上使用期間1年未満のもの、もしくは1年以上でも10万円以下のものを指します。雑費との違いはその対象範囲です。
では、具体的な消耗品費の品目や雑費との違いとはなんなのでしょうか。そこで、本記事では消耗品費について詳しく解説します。消耗品費の勘定科目や仕訳例、雑費・工具器具備品との違いについて知りたい経理担当の方はぜひ参考にしてください。
消耗品費とはすぐに使い切れるものの費用を指します。しかし、税法上で明確に定められているわけではありません。では、具体的にどのようなものが該当するのでしょうか。
この章では、消耗品費の概要や具体例について詳しく解説します。
消耗品費は、消耗品を経費にする際の勘定科目です。また、すぐに使い切ってしまうものを指します。会計上でいうと使用期間が1年未満のものや、使用期間が1年以上のものであっても、1つあたり10万円未満のものが消耗品に該当します。
消耗品費の具体的な品目例について表で詳しく紹介します。
消耗品の内訳 |
具体的な例 |
事務用系 |
文房具、コピー用紙、インクなど |
作業用系 |
軍手、ドライバー、長靴など |
包装系 |
包装紙、レジ袋、リボンなど |
広告系 |
カレンダー、広告チラシなど |
棚卸資産系 |
プラスチック製スプーン、ストローなど |
具体的な例であげたものの中には使用期間が1年以上と推定できるものもありますが、10万円以下の少額の消耗品であれば消耗品費として処理可能です。
消耗品費と混同しやすい勘定科目として、雑費や工具器具備品があります。これらもまた、消耗品費同様に明確な定義があるわけではありません。では、具体的にどのようなものが該当するのでしょうか。この章では、消耗品費と雑費・工具器具備品との違いを解説します。
雑費は雑多なもの、あるいは一時的なものを処理する際に用いられます。対して、消耗品費のほとんどが継続して使用するものが該当します。雑費の具体的な例としては、ゴミの処分にかかる費用や書籍代などです。つまり、雑費とは、消耗品費を含む他の勘定科目に該当しない支出、または一時的な支出を処理する際に使用する勘定科目です。
工具器具備品は取得価額が10万円以上のものを指す場合が多いです。対して、消耗品費は取得価額が10万円以下のものを指します。工具器具備品の具体的な例を挙げると、応接セットやカメラなどが当てはまります。つまり、工具器具備品は取得価額10万円以上で耐用年数が1年以上のものが該当する勘定科目です。
実際に消耗品費の仕訳方法について具体的な例を挙げて紹介します。消耗品費の仕訳方法は2パターンあり、どちらの方法でも税法上問題ありません。この章では、1本300円のボールペンを10本現金で購入して、決算時に2本余っていた場合を例として詳しく解説します。
購入時に消耗品(資産)として仕訳を行う場合です。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
消耗品 |
3,000円 |
現金 |
3,000円 |
購入時に消耗品費(費用)として仕訳を行う場合です。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
消耗品費 |
3,000円 |
現金 |
3,000円 |
購入時の仕訳では、10本のボールペンに3,000円支払ったものとして、消耗品であれば資産に、消耗品費であれば費用に計上します。
ここでは現金で購入しているため貸方科目は現金になっていますが、銀行口座引き落としであれば普通預金となります。
購入時に消耗品として仕訳をして、決算時に2本余っていた場合の仕訳です。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
消耗品費 |
2,400円 |
消耗品 |
2,400円 |
決算時は使用した8本分の金額2,400円を消耗品費で計上します。貸方は購入時の消耗品を相殺するために消耗品にします。
次は購入時に消耗品費として仕訳をして、決算時に2本余っていた場合の仕訳です。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
消耗品 |
600円 |
消耗品費 |
600円 |
決算時は未使用の2本分の金額600円を消耗品で計上します。貸方は購入時の消耗品費を相殺するために消耗品費にします。どちらの方法をとっても、結果として賃借対照表には消耗品が600円、損益計算書には消耗品費2,400円となります。
消耗品費は10万円以下のものとされているため、10万円以上のものを購入した場合はどうすればよいのでしょうか。10万円以上の物品を経費として処理する方法はいくつかあります。
この章では、消耗品費に属さない10万円以上の物品における経費処理方法を解説します。
中小企業者が減価償却資産(取得価額30万円未満)を購入した場合、損金算入の特例により全額を減価償却することなく経費として処理可能です。なお、当特例は令和4年3月までに購入した減価償却資産が対象でしたが、令和4年の税制改正によりさらに2年間期間が延長されています。
規定の要件は以下の通りです。
参照元:「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」国税庁
通常10万円以上のものを経費とする場合は、品目ごとに減価償却資産として処理します。税法により品目ごとに耐用年数が決められています。
以下の表は、税法による主な減価償却資産の耐用年数です。
品目 |
耐用年数 |
事務机 |
15年(主に金属製)、8年(それ以外) |
応接セット |
5年(接客業用)、8年(それ以外) |
電子計算機 |
4年(サーバー用を除くパーソナルコンピュータ)、5年(それ以外) |
時計 |
10年 |
看板 |
3 |
固定資産(取得価額10万円以上20万円未満)は、一括償却資産として処理可能です。例えば、30万円のパソコン購入時、3年間で10万円ずつ経費にできます。このケースでは、品目ごとの法定耐用年数を加味しなくてもよいので、本来4年間となっているパソコンも3年間で均等償却ができます。
消耗品費は対象範囲が比較的広く、扱いやすい勘定科目です。その分、雑費などと混同しやすかったり、固定資産となるものは消耗品費にできなかったりといくつか注意すべき点があります。
この章では、消耗品費を仕訳する際の注意点について、詳しく解説します。
消耗品費の仕訳では、他の勘定科目と混同しないように注意しましょう。特に消耗品費は事務用品費と混同しやすいです。事務用品費は、その名の通りボールペンやコピー用紙などの事務用品のことです。消耗品費と事務用品費をしっかり区分するのか、事務用品費を消耗品費の一部として区分するのか、あらかじめ会社の処理方針をしっかりと決めておく必要があります。また、仕訳の際は摘要欄を活用して、購入した品目を細かく記入しておくと、後から見返したときに一目で何に使った経費がわかるようになります。
消耗品費と雑費を比較すると、多くのケースで消耗品費の方が金額が高くなる傾向があります。なお、消耗品費と雑費の使い分けについては明確な基準がないため、法人によってあらかじめ決めておく必要があります。使い分けは大きく分けて金額や重要度で決める場合がほとんどです。
金額であれば〇〇万円以上は消耗費、〇〇万円以下は雑費というように決めるとわかりやすいでしょう。重要度であれば会社にとって重要となる品目は消耗品費、あまり重要ではない品目は雑費というように決めます。
なぜ消耗品費と雑費を混同しないようにしたいのかというと、税務調査において不信に思われないようにするためです。消耗品費の年間経費が20万円なのに、雑費が100万円以上となっていれば経理処理の方法を疑われる可能性が高いです。そのため、消耗品費と雑費の使い分けのルールをしっかりと作っていく必要があります。
固定資産となるものは消耗品費や雑費として処理することはできません。固定資産とは、建物や機械装置などで以下の要件を満たすものになります。
100万円の機械装置を現金で購入した場合の仕訳です。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
摘要 |
機械装置 |
1,000,000円 |
現金 |
1,000,000円 |
機械装置購入 |
固定資産は消耗品費や雑費のように購入時に取得価額を全額経費にできません。耐用年数に応じて毎年少しずつ取得価額を経費として計上することになります。この仕組みは減価償却とよばれ、固定資産は減価償却費として処理します。
機械装置の減価償却費が5万円だった場合の仕訳です。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
摘要 |
減価償却費 |
50,000円 |
機械装置 |
50,000円 |
当期償却費 |
青色申告をしていることが条件ですが、個人事業主や法人は取得価額30万円未満のものであれば消耗品費として処理可能です。ただし、年間300万円までとなっています。
25万円の機械装置を現金購入、消耗品費として処理する場合の仕訳です。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
摘要 |
消耗品費 |
250,000円 |
現金 |
250,000円 |
機械装置購入 |
なお、応接セットのようなイスやテーブルなど単品の取得価額が10万円以下のものは注意が必要です。単品の取得価額が10万円以下でも、応接セットはセットとして扱うべき品目になります。そのため、応接セットに付随するすべての取得価額が合計10万円以上の場合は、事業者によっては消耗品や雑費で処理できないため注意しましょう。
本記事では消耗品費について詳しく解説しました。消耗品費は雑費などと混同しやすいため金額や使用期間で区分する必要があります。また、工具器具備品や事務用品費などの勘定科目とも混同しやすいため、会社としてしっかりとした仕訳ルールの確立が求められます。
10万円以上のものは原則消耗品費として経費にできませんが、減価償却資産として処理する方法もあります。加えて青色申告をしている事業者は1つあたり30万円未満まで消耗品費として処理できる場合があります。今回紹介した情報を参考に、消耗品費の仕訳をしっかりおこない、会社の経費削減に貢献しましょう。