更新日:2026.01.27

ー 目次 ー
2026年10月から、免税事業者からの仕入税額控除に関する控除率が変更されます。「インボイス対応を一通り済ませているけれど、最近の報道でまた制度変更があると聞いて不安になった」「具体的に自社の経理や仕訳にどんな影響があるのか、今のうちに把握しておきたい」と感じていませんか。
本記事では、免税事業者からの仕入税額控除の現状と、2026年10月から適用される控除率変更のポイントを、実際の仕訳例や経過措置の流れも交えて詳しく解説します。また、会計システム設定や社内の運用フロー見直しなど、経理担当者が今から準備しておくべき実務面の注意点も整理しています。
出典:令和8年度税制改正大綱を参考に編集
こんな方にオススメ
この記事を読むと···
インボイス制度の導入以降、免税事業者との取引に関する仕入税額控除は、経理現場にとって特に注意が必要な分野となっています。2026年10月以降に控除率が変更されることで、日々の経理処理やコスト管理に直接的な影響が及ぶため、今後の対応策を早めに検討することが重要です。
ここでは、まず制度の基本を簡単におさらいし、免税事業者から仕入れた場合の控除可否、仕訳例などを整理します。主な論点を以下の通りまとめました。
仕入税額控除とは、事業者が商品やサービスの仕入れ・経費で支払った消費税分を、納付すべき売上消費税から差し引いて計算できる制度です。これにより、各取引段階で消費税が二重に課されることを防ぐ役割を果たしています。
仕入税額控除を正しく適用するためには、請求書や領収書に記載されている消費税額の確認と、インボイス制度に対応した適格請求書の受領が不可欠です。取引ごとの書類管理や税区分の適正な入力が重要な業務ポイントとなります。
免税事業者とは、たとえば前々年度の課税売上高が1,000万円以下など、一定の基準を満たすことで消費税の納税義務が免除されている事業者のことです。2023年10月から始まったインボイス制度では、こうした免税事業者はインボイス(適格請求書)を発行できないため、取引先との消費税処理に影響が出るケースが増えています。
免税事業者と課税事業者の主な違いはこの通りです。
|
事業者 |
免税事業者 |
課税事業者 |
|
消費税の申告・納付義務 |
無し |
有り |
|
インボイスの発行 |
不可 |
可能 |
|
日々の経理処理方法 |
簡単 |
複雑 |
経過措置が適用される期間、仕入税額控除率のスケジュールは以下のように定められていました。現在から2026年9月30日まで控除率が80%、翌月の10月1日から控除率が減少して50%になり、2029年9月30日までが経過措置期間です。最終的には控除ができなくなります。
| 経過措置期間 | 控除率 |
|
2023年10月1日~2026年9月30日 |
80% |
| 2026年10月1日~2029年9月30日 | 50% |
| 2029年10月1日以降 | 廃止 |
インボイス登録をしていない免税事業者からの仕入については、基本的に仕入税額控除の対象外となります。ただし、経過措置として、2023年10月から2026年9月までは仕入税額の80%まで、2026年10月から2029年9月までは50%まで控除できる特例が段階的に設けられています。実際の仕訳例を確認しながら、どのように経理処理すべきかを整理していきましょう。
免税事業者からの仕入税額控除に関して、実際の会計仕訳がどのようになるのかは経理担当者にとって大きな関心事です。ここでは、課税事業者と免税事業者それぞれから仕入れた場合の仕訳例を比較し、具体的な違いを整理します。ここでは現行の控除率80%で計算します。
控除率の経過措置に応じた記帳方法や、今後の変更を踏まえたイメージも押さえておきましょう。
| 課税事業者から仕入れた場合 | 免税事業者から仕入れた場合 | |
| 仕入金額(税抜) | 100,000円 | 100,000円 |
| 消費税 | 10,000円 | 10,000円 |
| 仮払消費税 | 10,000円 | 8,000円 |
| 仕入原価 | 100,000円 | 102,000円 |
| 現金支払額 | 110,000円 | 110,000円 |
| 控除率 | 100% | 80% |
| 控除不可分の扱い | 発生しない | 控除不可2,000円を仕入原価に含めて処理 |
それぞれのケースについて、仕訳の流れと経理上のポイントを詳しく見ていきます。
課税事業者(インボイス登録済)から仕入れた場合は、消費税分を全額「仮払消費税」として処理し、後に売上消費税から差し引くことが可能です。たとえば、税抜100,000円の仕入に対し消費税10,000円の場合、(借方)仕入100,000円、(借方)仮払消費税10,000円、(貸方)現金110,000円という仕訳となります。
■課税事業者から仕入(控除率0%)
| 借方 | 貸方 |
|
仕入 100,000円 |
現金 110,000円 |
|
仮払消費税 10,000円 |
ー |
仕入原価:110,000円ー10,000円=100,000円
こ の場合、消費税の全額を控除できるため、仕入原価は税抜100,000円のままとなります。控除不可部分は生じないため、経理処理もシンプルです。インボイス制度に完全対応した取引先であれば、今後もこの流れが標準となります。
免税事業者(インボイス未登録)からの仕入については、経過措置により控除できる消費税額が80%に限定されています。たとえば、税抜100,000円・消費税10,000円の場合、控除対象外となる2,000円分を仕入原価に加算し、(借方)仕入102,000円、(借方)仮払消費税8,000円、(貸方)現金110,000円という仕訳になります。
■控除率80%
| 借方 | 貸方 |
|
仕入 102,000円 |
現金 110,000円 |
|
仮払消費税 8,000円 |
ー |
仕入原価:110,000円ー8,000円=102,000円
消費税10,000円のうち8,000円のみ控除対象、残り2,000円は仕入原価に含めて処理するため、仕入勘定は税抜金額より2,000円増加します。控除率が50%に下がると仮払消費税は5,000円、仕入は105,000円となり、仕入原価の増加幅がさらに大きくなります。
■控除率50%
| 借方 | 貸方 |
|
仕入 105,000円 |
現金 110,000円 |
|
仮払消費税 5,000円 |
ー |
仕入原価:110,000円ー5,000円=105,000円
今後の控除率変更に備え、仕訳パターンをシミュレーションしておくと安心です。
2026年10月以降の控除率については、政府の令和8年税制改正大綱で変更されており、今後の実務対応には継続的な情報収集が必要です。次の章では、現時点で決まっている控除率の割合とスケジュールを説明します。
2026年10月以降の控除率変更は、経理現場にとって見逃せないポイントです。ここでは、控除率の推移や今後予定されている改正スケジュールを整理し、どのタイミングで何を準備すべきかを明確にします。また、控除率が軽減されても慌てず対応できるよう、事前の対策や実務上の注意点にも触れていきます。まずは主要な検討事項を確認しましょう。
これらを順に整理し、現場で実践できる対策のイメージを持っていただけるよう解説していきます。
| 経過措置期間 | 控除率 |
|
2023年10月1日~2026年9月30日 |
80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 廃止 |
現在は、インボイス制度開始の2023年10月~2026年9月30日まで、仕入税額の80%まで控除できる経過措置が設けられています。
令和8年度税制改正大綱を見ると、従来より段階的に引き下げられている内容になっています。2026年10月から控除率が70%となり、2028年10月から50%、2030年10月には30%へと段階的に引き下げられ、2031年10月には経過措置が終了する予定です。
こうした段階的な見直しは、経理担当者にとってスケジュール管理や社内調整が不可欠となります。確定情報が出るタイミングや運用開始までの猶予期間を意識しながら、会計ソフトのバージョンアップやマニュアル改訂を進めておくことが求められます。
控除率が引き下げられる場合、会計ソフトの設定変更や仕訳入力時のミス防止策、請求書の内容確認など、実務面での準備が複数必要となります。特に発表から施行までの期間が短い場合、現場が混乱しやすくなるため、事前準備が決定的に重要です。過去の調査でも、インボイス制度導入初期に混乱なく対応できた企業は全体の3割未満でした。
今回の控除率変更においても、社内の認識統一やシステム更新を早めに進め、必要に応じて控除率が70%・50%となるケースのシミュレーションも実施しておくと安心です。不確定要素がある中でも、早めの行動が経理担当者の負担を最小限に抑えるカギとなります。
2026年10月から免税事業者からの仕入税額控除率が見直されることを受けて、経理実務にもさまざまな調整が必要となり、控除率の変更は、日々の仕訳入力にも影響を及ぼします。特に経過措置期間中は複数の控除率が併存するため、担当者が誤った控除率を適用するリスクが高まります。
ここでは、具体的にどのような業務上の影響が想定されるのか、主なポイントを整理し、それぞれの課題を深掘りしていきます。
控除率が変更される場合、会計ソフトや業務システムの設定を見直し、マスターデータの更新も必要となります。たとえば、2026年10月以降は控除率が70%へ変更される見込みですが、その適用時期や控除対象の判断基準もソフト側で正しく反映されている必要があります。
設定作業が遅れると、誤った控除額で処理されるリスクが高まります。また、会計システムのバージョンアップやマニュアルの改訂も発生しやすい時期です。
実務上は、ベンダーからの情報収集や、現行データとの突き合わせも欠かせません。現場での混乱を防ぐため、早めのテスト運用や設定変更の手順書作成を進めておくと安心です。
控除率の変更は、日々の仕訳入力にも影響します。特に経過措置期間中は複数の控除率が混在するため、担当者が間違った控除率を適用してしまうリスクが高まります。
たとえば、2026年10月以降は70%、さらに将来的には50%や30%への段階的な引き下げが予定されているため、仕入日や請求書発行日ごとに適用率が異なります。入力時に適用すべき控除率を誤ると、税額計算のミスや申告漏れにもつながりかねません。
こうしたリスクを減らすには、社内でのルール徹底やチェック体制の強化、定期的な担当者教育が欠かせません。適用時期ごとの控除率一覧を手元に置くなど、現場での工夫も有効です。
控除率が下がることで、仕入コストが増加する場合があります。免税事業者との取引が多い場合は、取引条件の見直しや、インボイス発行事業者への切り替えを検討する必要が出てきます。
そのため、仕入先がインボイス発行事業者かどうかを再確認し、場合によっては取引条件の変更や、インボイス発行事業者への切り替えを相談する必要性も出てきます。
経理担当者としては、価格交渉や契約条件の見直しを社内外で調整する場面が増えるでしょう。取引先との信頼関係を維持するためにも、事前に最新の制度変更内容を共有し、双方納得できる形での条件見直しを進めることが重要です。
免税事業者からの仕入税額控除に関する控除率は、今後も段階的な見直しが予定されているため、経理担当者は常に最新の情報を把握し、社内の体制や業務フローを柔軟に調整する必要があります。
控除率の見直しは、会計ソフトの設定変更や仕訳入力時のミスリスク増加、コストシミュレーションへの影響など、実務面でさまざまな課題を引き起こします。ここでは実務で押さえておきたい三つのポイントを整理します。
免税事業者からの仕入税額控除率は、今後数年かけて70%、50%、30%と段階的に引き下げられる予定です。今後も政府発表によりスケジュールや割合が変更される可能性があります。
経理担当者は、財務省や関連省庁の公式発表、報道を日常的にウォッチし、確定情報が出次第すぐに自社の会計システムや業務マニュアルへ反映させることが求められます。情報のキャッチアップが遅れると、誤った控除率で処理してしまうリスクや、課内全体の業務に支障が出る場合もあるため注意しましょう。
控除率の変更は、経理担当者だけでなく、仕入れ担当や経理補助、他部門にも影響を与えます。情報が一部の担当者だけに留まってしまうと、入力ミスや伝達漏れが発生しがちです。
そのため、控除率の変更が正式に決定したタイミングで、社内メールや掲示板、定例会議などを活用し、全関係者に周知を徹底しましょう。また、会計ソフトの操作手順や仕訳の記載ルール、控除不可部分の計算方法などを明記した最新マニュアルを作成し、誰が見ても迷わず処理できる環境を整備することが重要です。業務の平準化と属人化防止の観点からも、マニュアルの更新と共有は必須と言えます。
控除率の変更は、仕入コストに直接影響します。2026年10月以降の控除率変更を見据え、仮に70%、50%、30%といった各ケースで自社の仕入コストがどの程度変動するか、事前にシミュレーションしておくことが大切です。
たとえば、免税事業者からの仕入れが多い場合は、控除不可部分が増え、仕入原価が上昇します。これにより利益率の低下や、仕入先との取引条件見直しが必要となる可能性もあります。早い段階で数値を具体的に把握し、経営層や関係部門と共有することで、先手を打った対応策やコスト管理が可能になります。
免税事業者からの仕入税額控除に関する制度は、2026年10月以降に控除率が大きく変わる見通しです。現時点では、70%や50%といった段階的な控除率が検討されていますが、報道や税制改正大綱などで今後も追加の変更が発表される可能性があります。
会計ソフトの設定や業務フローの見直しは短期間で完了しないため、早めに準備を進めることがリスクの低減につながります。経理担当者としては、最新情報の定期的な確認と、社内での周知徹底を積極的に進めることが重要です。
将来のコストや業務負担を最小限に抑えるためにも、今から行動を開始しましょう。