更新日:2026.08.31

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インボイス制度では、課税事業者が消費税の仕入税額控除を受けるために、原則として適格請求書(インボイス)と一定事項を記載した帳簿の保存が必要です。
ただし、インボイスを発行できない免税事業者などからの仕入れでも、経過措置により一定割合を控除できます。さらに2026年度税制改正によって、この控除割合は2026年10月から「50%」ではなく「70%」となり、経過措置の終了時期も2031年9月末まで延長されました。
この記事では、仕入税額控除の基本、控除を受けるための要件、2026年10月以降の経過措置、少額特例・2割特例・3割特例まで、経理実務で迷いやすいポイントを整理します。
仕入税額控除とは、事業者が納める消費税を計算するときに、売上にかかる消費税額から、仕入れや経費で支払った消費税額を差し引く仕組みです。
たとえば、商品を税込11万円で仕入れ、その商品を税込22万円で販売したとします。いずれも税率10%とすると、売上時に受け取る消費税相当額は2万円、仕入時に支払う消費税相当額は1万円です。一般課税で全額控除できる場合、納付税額は「2万円-1万円=1万円」となります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上にかかる消費税額 | 20,000円 |
| 仕入れにかかる消費税額 | 10,000円 |
| 仕入税額控除後の納付税額 | 10,000円 |
インボイス制度は、この仕入税額控除を行うための証憑ルールを「適格請求書等保存方式」に変更した制度です。一般課税では、原則としてインボイスがない仕入れについて仕入税額控除を受けられません。
なお、実際に控除できる金額は課税売上高や課税売上割合などによって変わる場合があります。すべての課税仕入れについて必ず全額を控除できるわけではありません。
仕入税額控除の対象になるのは、事業のために行う「課税仕入れ」に含まれる消費税です。代表例を整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 主な例 |
|---|---|
| 対象になりやすい | 商品・原材料の仕入れ、事務用品・備品、外注費、広告宣伝費、事業用の通信費・水道光熱費、出張時の宿泊費など |
| 対象にならない・消費税がかからない | 給与・賃金、税金の支払い、保険料、住宅の貸付けに係る家賃など |
「経費にできるか」と「仕入税額控除できるか」は別の判定です。法人税・所得税上は経費になる支出でも、消費税が非課税・不課税の取引であれば仕入税額控除の対象にはなりません。
一般課税で仕入税額控除を受ける場合、原則として「一定事項を記載した帳簿」と「適格請求書等」の両方を保存します。
受け取る書類の名称が「請求書」である必要はありません。領収書やレシートでも、必要な記載事項を満たしていれば適格請求書または適格簡易請求書として扱えます。
適格請求書の主な記載事項は次の6項目です。
| 記載事項 | 確認ポイント |
|---|---|
| 発行者の氏名または名称・登録番号 | Tから始まる13桁の登録番号が記載されているか |
| 取引年月日 | 実際に商品・サービスの提供を受けた日が確認できるか |
| 取引内容 | 軽減税率対象の場合は、その旨が分かるか |
| 税率ごとの対価の額・適用税率 | 8%と10%を区分しているか |
| 税率ごとの消費税額等 | 税率別の税額が記載されているか |
| 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 | 買い手の名称が記載されているか |
受け取った書類に登録番号があるだけでは十分ではありません。取引年月日、税率ごとの金額・消費税額など、必要な項目全体を確認することが重要です。
インボイスを保存するだけでなく、帳簿には課税仕入れの相手方、取引年月日、取引内容、支払対価の額などを記載します。一般課税で仕入税額控除を受ける場合は、証憑と帳簿の内容が対応している状態をつくっておきましょう。
ここは誤解されやすいポイントです。仕入税額控除を受ける買い手が、自ら「適格請求書発行事業者」に登録していることは、仕入税額控除そのものの要件ではありません。
買い手が消費税の課税事業者で、一般課税により申告し、必要な帳簿とインボイス等を保存していれば、原則として仕入税額控除を適用できます。一方、免税事業者はそもそも消費税の納税義務がないため、仕入税額控除を使って納付税額を減らすという計算は行いません。
インボイス発行事業者ではない免税事業者や、登録を受けていない課税事業者などからの仕入れは、原則としてインボイスを受け取れないため、仕入税額控除の対象外です。
ただし、制度移行による急激な負担増を抑えるため、一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。2026年度税制改正で、この経過措置は2年間延長され、控除割合も見直されました。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
| 2031年10月1日以降 | 原則として控除不可 |
従来は2026年10月から50%、2029年10月以降は控除不可となる予定でしたが、2026年度税制改正により「70%→50%→30%」と段階的に縮小する形へ変更されています。
標準税率10%の取引について、インボイス発行事業者ではない取引先へ税込11,000円を支払った場合、仕入税額相当額を1,000円とすると、経過措置による控除額のイメージは次のとおりです。
| 取引時期 | 控除割合 | 控除額のイメージ |
|---|---|---|
| 2026年9月30日まで | 80% | 800円 |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 70% | 700円 |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 50% | 500円 |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 30% | 300円 |
| 2031年10月1日以降 | 0% | 0円 |
同じ支払額でも、取引日によって控除できる金額が変わります。2026年10月1日をまたぐ時期は、会計ソフトの税区分や経過措置の設定を見直しておく必要があります。
2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、経過措置の対象となる金額の上限が、その年または事業年度で1億円となります。1億円を超える部分には経過措置を適用できません。
中小企業では影響が限定的なケースも多いものの、特定の免税事業者等との取引額が大きい企業は確認しておきましょう。
免税事業者等からの仕入れで経過措置を適用する場合、インボイスそのものは受け取れませんが、何も保存しなくてよいわけではありません。
原則として、次の2つを保存します。
1. 区分記載請求書等保存方式の記載事項を満たした請求書・領収書等
2. 通常の帳簿記載事項に加え、「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を記載した帳簿
帳簿には「80%控除対象」「70%控除対象」「経過措置適用」など、対象取引であることが客観的に分かる記載を行います。会計ソフトにインボイス区分や控除割合を設定する欄がある場合は、取引日と取引先の登録状況に合わせて正しく設定しましょう。
「インボイスがなければ必ず一部しか控除できない」というわけではありません。一定の取引では、インボイスの保存がなくても帳簿だけで仕入税額控除が認められます。
一定規模以下の事業者は、2023年10月1日から2029年9月30日までの税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくても、一定事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象事業者 | 基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下 |
| 対象取引 | 1回の取引金額が税込1万円未満の課税仕入れ |
| 保存要件 | 一定事項を記載した帳簿。消費税計算上、インボイス保存は不要 |
| 適用期間 | 2023年10月1日~2029年9月30日 |
少額特例は、取引先がインボイス発行事業者であるかどうかに関係なく利用できます。また、1万円未満かどうかは原則として商品1点ごとではなく、1回の取引金額で判定します。たとえば5,000円の商品と7,000円の商品を同時に購入し合計12,000円となる場合は、少額特例の対象外です。
請求書等の交付を受けることが難しい一部の取引では、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除が認められます。代表例は次のとおりです。
これらは少額特例とは別のルールです。適用する取引の種類によって帳簿への追加記載事項があるため、社内の経費精算ルールとあわせて整理しておくと処理ミスを防げます。
ここまでの「帳簿+インボイスが原則」という説明は、主に一般課税で実際の仕入税額を計算する場合の話です。簡易課税制度や2割特例・3割特例では、消費税の納付税額を売上側から計算するため、消費税計算のために受け取ったインボイスを保存する必要はありません。
| 制度 | 対象・概要 | インボイス保存 |
|---|---|---|
| 一般課税 | 実際の仕入税額をもとに控除額を計算 | 原則必要 |
| 簡易課税 | 基準期間の課税売上高5,000万円以下など一定要件。みなし仕入率で計算 | 消費税計算上は不要 |
| 2割特例 | インボイス制度を機に免税から課税になった一定の事業者。納付税額を売上税額の2割とする | 消費税計算上は不要 |
| 3割特例 | 一定の個人事業者の2027年・2028年分。納付税額を売上税額の3割とする | 消費税計算上は不要 |
ただし、所得税・法人税や電子帳簿保存法など、消費税以外の観点から請求書・領収書等の保存が必要になる場合があります。「インボイスを保存しなくてよい=証憑を捨ててよい」という意味ではありません。
2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者となった一定の事業者について、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間で適用できます。
「2026年9月30日を過ぎたら、その日から即使えない」と単純に日割りで考える制度ではありません。個人事業者や法人の課税期間によって適用対象となる申告期が異なるため、自社の課税期間で確認してください。
2026年度税制改正では、2割特例の終了後も事務負担への配慮が必要な個人事業者向けに「3割特例」が新設されました。
一定の要件を満たす個人事業者は、2027年分・2028年分の消費税申告について、納付税額を売上税額の3割とすることができます。法人は3割特例の対象外です。
取引先がインボイス発行事業者かどうかで、一般課税における仕入税額控除の扱いが変わります。登録番号を一度確認しただけで終わらせず、主要取引先は国税庁の公表サイトなどで定期的に登録状況を確認できる運用にしておくと安心です。
2026年10月1日以降の対象取引は、従来予定されていた50%ではなく70%控除です。会計ソフトや経費精算システムで「80%控除」「50%控除」などの税区分を手動設定している場合は、70%区分への対応状況を確認してください。
少額特例は、要件を満たせばインボイスがなくても税込1万円未満の課税仕入れを全額控除できる制度です。一方、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置は、1万円以上の取引などについて一定割合のみ控除する仕組みです。
同じ「インボイスがない取引」でも処理が異なるため、金額・取引日・取引先区分を分けて判定することが重要です。
いいえ。買い手自身がインボイス発行事業者として登録していることは、仕入税額控除そのものの要件ではありません。
一般課税で仕入税額控除を受ける課税事業者は、原則として売り手から受け取ったインボイスと帳簿を保存します。免税事業者は消費税の納税義務がないため、仕入税額控除による納付税額の計算を行いません。
いいえ。2026年度税制改正により、2026年10月1日から2028年9月30日までは仕入税額相当額の70%を控除できます。その後は50%、30%と段階的に下がり、2031年10月1日以降は原則として控除できなくなります。
少額特例の対象事業者で、2029年9月30日までに行う1回の取引金額が税込1万円未満の課税仕入れであれば、一定事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除が可能です。
ただし、対象事業者の売上規模要件があり、1万円未満の判定も商品単価ではなく取引単位で行います。
いいえ。インボイスの有無は主に消費税の仕入税額控除に関する論点です。法人税・所得税上の必要経費や損金になるかどうかは別のルールで判定します。
「経費に計上できるか」と「消費税を仕入税額控除できるか」を分けて考えると、処理を整理しやすくなります。
インボイス制度では、一般課税で仕入税額控除を受けるために、原則として一定事項を記載した帳簿と適格請求書等の保存が必要です。
一方、免税事業者などインボイス発行事業者以外からの仕入れには経過措置があり、2026年9月30日までは80%、2026年10月からは70%、その後50%、30%と控除割合が段階的に縮小します。経過措置は2031年9月30日で終了予定です。
また、税込1万円未満の仕入れに使える少額特例や、公共交通機関・自動販売機などの帳簿のみ特例、簡易課税・2割特例・3割特例など、インボイス保存が不要になるケースもあります。
2026年10月は経理処理の切替ポイントです。取引先の登録状況、会計ソフトの控除割合、少額特例の判定ルールをあらためて確認し、控除漏れと誤処理を防ぎましょう。