更新日:2026.08.12

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当座預金とは、企業や個人事業主が手形・小切手、振込などの決済に使う預金です。普通預金と違って決済を主な目的とするため、原則として利息は付きません。
経理実務では、預金保険による保護範囲だけでなく、自社振出小切手と他社振出小切手の仕訳の違い、残高不足時の当座借越、銀行残高と帳簿残高の照合まで押さえておく必要があります。
本記事では、当座預金の仕組みと普通預金との違い、ケース別の仕訳例、当座借越の処理をわかりやすく解説します。あわせて、経理担当者が日々どう管理し、2027年3月末に予定される電子交換所での手形・小切手交換廃止にどう備えるかまで紹介します。

金融庁 預金保険制度(決済用預金の全額保護)
預金保険機構 保護の範囲(決済用預金・一般預金等の保護)
一般社団法人 全国銀行協会 電子交換所の交換廃止時期の決定および手形・小切手交換廃止時期の明確化について / 紙の手形・小切手利用廃止へ(最終振出期限)
日本銀行 日本銀行当座預金の役割
当座預金は、主に企業や個人事業主が、手形や小切手、振込といった事業上の支払いに利用する預金です。資金を預けて利息を得ることよりも、取引先への決済を安全かつ確実に行うことを目的としています。
大きな特徴は2つあります。1つは、小切手を使えば多額の現金を持ち運ばずに決済でき、支払記録を銀行取引として残せること。もう1つは、無利息・要求払い・決済サービスの提供という要件を満たす「決済用預金」に該当し、金融機関が破綻した場合でも預金額にかかわらず全額が預金保険制度で保護されることです。
当座預金には、普通預金とは異なるいくつかの特徴があります。まずは全体像を押さえておきましょう。
当座預金は、現金や普通預金と同じく貸借対照表の流動資産に区分します。入金や預入れで増えたときは借方、支払いや小切手の振出しで減ったときは貸方に記帳します。
一般企業が銀行に開設する当座預金と、ニュースなどで見かける「日本銀行当座預金」は別物です。
日本銀行当座預金は、日本銀行が取引先の金融機関などから受け入れている預金で、金融機関間の決済や現金通貨の支払準備、準備預金などに使われます。
当座預金と普通預金の最も大きな違いは、口座の利用目的です。普通預金は資金の保管、入出金、振込、口座振替など幅広く使われますが、当座預金は企業の決済を主な目的としています。主な違いを6項目で整理します。
| 比較項目 | 当座預金 | 普通預金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 企業間決済、手形・小切手の支払い | 入出金、振込、口座振替、資金保管 |
| 主な利用者 | 法人、個人事業主 | 法人、個人 |
| 利息 | 付かない | 通常は付く(無利息型もある) |
| 手形・小切手 | 契約により利用できる | 原則として利用しない |
| 預金保険 | 決済用預金として全額保護 | 利息付きは原則、元本1,000万円と破綻日までの利息等まで。無利息型は要件を満たせば全額保護 |
| 会計上の科目 | 当座預金 | 普通預金 |
会計ソフトでは、普通預金と当座預金をまとめず、金融機関・支店・口座種別ごとに補助科目を設定しておくと管理しやすくなります。取引先へ振込先を案内するときは、銀行名・支店名・口座番号とあわせて「普通」「当座」の別を正確に記載しましょう。
振込先の書き方については、あわせてこちらもご覧ください。

当座預金の仕訳でつまずきやすいのが、自社が振り出した小切手と、取引先から受け取った小切手で処理が変わる点です。ここでは代表的な取引を仕訳例で確認します。
| 取引内容 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 普通預金から当座預金へ100万円を振り替えた | 当座預金 1,000,000 | 普通預金 1,000,000 |
| 売掛金55万円が当座預金に入金された | 当座預金 550,000 | 売掛金 550,000 |
| 買掛金33万円を自社振出小切手で支払った | 買掛金 330,000 | 当座預金 330,000 |
| 支払手形110万円が決済された | 支払手形 1,100,000 | 当座預金 1,100,000 |
| 取引先振出の小切手22万円を受け取った(受取時) | 現金 220,000 | 売掛金 220,000 |
| 受け取った小切手22万円を当座預金へ預け入れた | 当座預金 220,000 | 現金 220,000 |
| 銀行手数料660円が当座預金から引き落とされた | 支払手数料 660 | 当座預金 660 |
ポイントは、自社が振り出した小切手は「当座預金」、他社が振り出した小切手を受け取ったときは「現金」で処理する点です。
他社振出の小切手は、すぐに換金できる通貨代用証券として、原則として現金勘定で受け入れます。自社振出小切手は、振り出した時点で当座預金を減少させます。
借方・貸方の考え方に不安がある場合は、基礎からこちらで確認できます。

当座借越は、当座預金残高を超えて支払える一方で、実態は「借入れ」です。処理方法には一勘定制と二勘定制があり、決算時の扱いも変わります。ここで整理しておきましょう。
当座借越とは、金融機関との契約に基づき、当座預金残高を超えて一定額まで支払いができる融資の仕組みです。たとえば、残高が10万円の状態で30万円を支払うと、20万円分が当座借越になります。
当座借越契約がなければ、残高を超える支払いが自動的に認められるわけではありません。
一勘定制では、期中は当座預金だけを使い、残高がマイナスになっても当座預金で処理します。
当座預金残高10万円の状態で買掛金30万円を支払った場合
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 支払時 | 買掛金 300,000 | 当座預金 300,000 |
| 決算時(貸方残高20万円を振替) | 当座預金 200,000 | 当座借越 200,000 |
当座預金は資産科目のため、決算時に貸方残高を残さず、負債科目へ振り替えます。貸借対照表では通常、短期借入金に含めて表示します。
二勘定制では、預金残高を超えた部分が発生した時点で当座借越を使います。
| 取引内容 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 買掛金30万円を支払った(残高10万円) | 買掛金 300,000 | 当座預金 100,000 当座借越 200,000 |
| 当座借越20万円を普通預金から返済した | 当座借越 200,000 | 普通預金 200,000 |
一勘定制は期中の記帳が簡便ですが、決算時に振替が必要です。二勘定制は預金と借入れを随時把握しやすい方法です。なお、利息を支払った場合は、元本部分を当座借越、利息部分を支払利息として区分します。
当座預金は、開設して仕訳を切るだけで終わりではありません。資金繰りへの活用、銀行残高との照合、権限管理、不渡りの防止まで、経理担当者が継続して管理すべきポイントがあります。ここでは日々の実務で押さえたい観点を整理します。
当座借越契約を結んでいれば、一定の限度額まで当座預金残高を超えて支払いができ、一時的な資金不足に対応できます。ただし、当座借越は預金ではなく借入れであり、利用した金額と日数に応じて利息が発生します。
常態的な利用は避け、資金繰り表に残高と限度額、利用予定額を反映して、いつ・いくら借越が発生するかを事前に把握しておきましょう。
当座預金は、小切手を振り出した日と銀行で決済される日が異なるため、銀行残高と帳簿残高が一致しないことがあります。月末や決算時には銀行勘定調整表を作成し、差異の原因と解消予定日を記録しましょう。主な差異は次のとおりです。
| 差異の種類 | 内容 |
|---|---|
| 未取付小切手 | 自社では仕訳済みだが、受取人が銀行へ持ち込んでいない |
| 未取立小切手 | 銀行へ預け入れたが、取立てが完了していない |
| 銀行手数料 | 銀行では引落済みだが、会社側で未仕訳 |
| 振込入金 | 銀行では入金済みだが、会社側で入金元を特定できていない |
| 誤記帳 | 金額、口座、借方・貸方などの入力ミス |
不正や誤送金を防ぐため、権限や保管は分散させておくことが重要です。
手形や小切手の支払期日に必要な残高がなく、当座借越でも支払えない場合、不渡りになる可能性があります。
残高不足は単なる記帳ミスではなく、取引信用や資金調達にも影響する重大な管理事項です。支払予定と入金予定を突き合わせ、期日前に残高を確認する運用を徹底しましょう。
当座預金を使う企業にとって、2027年3月末に予定される手形・小切手の交換廃止は避けて通れないテーマです。日々の管理体制が整ったら、決済環境の変化への備えも進めておきましょう。
電子交換所における手形・小切手の交換は、2027年3月31日に廃止される予定です。ただし、2027年4月1日からすべての手形・小切手が直ちに使えなくなるわけではありません。
注意したいのは、多くの金融機関が紙の手形・小切手の最終振出期限を2026年9月30日に設定している点です。この場合、10月1日以降に振り出された手形・小切手は、原則として当座勘定からの支払いができなくなる可能性があります。
「2027年3月まで猶予がある」と考えず、2026年9月末を目安に取引先との支払・回収方法を見直しておきましょう。
移行手順の一例は次のとおりです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 小切手・手形で支払っている取引先を一覧化する |
| 2 | 支払金額、支払日、振出枚数を集計する |
| 3 | 銀行振込またはでんさい(電子記録債権)への移行方法を決める |
| 4 | 取引先と支払条件を変更する |
| 5 | 契約書・請求書・支払通知書の記載を見直す |
| 6 | 振込手数料の負担者を決める |
| 7 | 会計システムと承認フローを変更する |
| 8 | 未決済の手形・小切手を管理する |
手形の基礎知識や電子化の流れは、こちらもあわせてご覧ください。
金融機関の審査を通過すれば、法人や個人事業主が開設できます。ただし、事業実態や取引状況などが確認され、普通預金より審査に時間がかかる場合があります。
取扱いは金融機関や契約内容によって異なります。窓口、振込、専用カードなどを利用する場合があるため、利用中の金融機関へ確認してください。
電子交換所での交換廃止と、当座預金口座の廃止は同じではありません。ただし、手形・小切手の発行や取立てなどの取扱いは金融機関ごとに変更される可能性があります。
当座預金は、企業が手形や小切手、振込などの決済に利用する、原則として無利息の預金です。普通預金とは、利用目的、利息、払戻方法、預金保険による保護範囲などが異なります。
仕訳では、当座預金への入金を借方、支払いや小切手の振出しによる減少を貸方に記帳します。ただし、取引先から受け取った小切手は原則として現金で処理する点に注意しましょう。残高を超えて支払った場合は、当座借越または短期借入金として負債に振り替えます。
経理担当者は、銀行残高と帳簿残高の照合、未取付小切手の管理、当座借越の利用状況を定期的に確認し、決済と資金繰りを一体で管理することが大切です。あわせて、2026年9月末を目安とした手形・小切手からの切替え準備も進めておきましょう。
なお、当社が経理担当者441人に実施した調査(2025年8月)でも、過去1年間で最も多かったミスは「請求書の処理ミス(計上漏れ・仕訳間違い)」149件、次いで「勘定科目の誤り」132件、「振込先情報の誤入力」87件でした。

出典:株式会社インボイス「経理のミスが多い仕事ランキング調査」(2025年8月実施、n=441)
いずれも、当座預金と現金の使い分けや当座借越の振替判断など、本記事で解説した「判断を伴う処理」と重なります。
こうしたミスは注意力だけで防ぎ切るのは難しく、口座別の補助科目管理や銀行残高との定期照合といった仕組みで減らしていくことが有効です。
