更新日:2024.10.15
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ほとんどの請求書のテンプレートには、備考欄が設置されています。しかし、請求書の備考欄に何を書くべきか悩むこともあるでしょう。
本記事では、請求書の備考欄の役割や必要性について詳しく解説します。さらに、備考欄の正しい書き方や具体的な例文、注意事項についても紹介します。
備考欄を効果的に活用して、経理業務をスムーズに進めましょう。
「備考」の意味は、主要な情報や事項に付随して記載される補足的な情報を表す言葉です。そのため、請求書の備考欄は、顧客に請求金額を正しく振り込んでもらうための補足情報を知らせる役割があります。
備考欄に必要な情報を記入することで、双方の経理業務がスムーズになり、誤解やトラブルを未然に防ぐことができます。
備考欄と摘要欄は混同されやすい言葉ですが、それぞれの役割や意味合いは大きく異なります。主に、以下のような違いがあります。
適用欄:取引の内容や要点を記載する
備考欄:覚書として補足情報を記載する
摘要欄は、取引の詳細や要点を簡潔に記載するための欄です。取引の概要や商品の種類、サービス内容など、請求書の主要な情報をひと目で把握できるようにまとめます。
一方、備考欄は注意事項や顧客に対するお願いなど補足的な情報を記載する場所として使われます。
請求書の備考欄には、主に以下の内容を記載します。
補足情報としてこのような情報を備考欄に記載することで、支払い手続きがスムーズに進みます。次章では、備考欄の正しい書き方を解説します。
請求書の備考欄は、取引先に対する重要な補足情報を伝える場所です。こちらの章では、振込先情報や支払条件など、支払いに関する具体的な記載事例を解説します。
振込先情報の記載方法を詳しく解説します。
振込先となる金融機関名と支店名を記載します。
記載例)
〇〇銀行・〇〇支店
都市銀行や地方銀行の支店名は、通帳やインターネットバンキングのホームページから確認できます。
ゆうちょ銀行の支店名は、通帳に記載された記号から把握できます。記号の左から2-3桁の数字に8または9を加えた3桁の数字が支店名です。(例:〇〇八または〇〇九)
金融機関コード(4桁の数字)や支店コード(3桁の数字)の記載は必須ではありませんが、併記しておくと誤入金の予防となり、取引先の振り込みがスムーズになるでしょう。備考欄に余裕があれば記載しておくと丁寧です。
金融機関コードや支店コードは、下記の金融銀行協会のホームページから確認できます。統廃合によって金融機関名や支店名に変更が生じる場合もあるため、金融機関からの通知やホームページを確認しておきましょう。
参考:一般社団法人全国銀行協会「銀行の店舗を探す」
金融機関の口座番号は、7桁の数字が一般的です。ゆうちょ銀行では、口座番号が7桁でない場合があるため注意が必要です。
7桁でない場合は、以下のように7桁になるように調整します。
ゆうちょ銀行の口座番号)
7桁未満の場合:桁の最初に0をつけて7桁にする
8桁の場合:末尾の1を除き7桁にする
入力ミスがないよう、慎重に記載しましょう。
引用:ゆうちょ銀行「記号・番号から振込用の店名・預金種目・口座番号への変換の公式」
振込先の銀行口座には、普通口座または当座預金口座が主に使用されます。口座の種類は、預金種別を表す預金種目コードで見分けられます。
預金種目の「1」が普通口座、「2」が当座預金を表します。振込先情報を記入する際には、しっかり区別して記載しましょう。
口座種類の記載例)
普通)〇〇〇〇〇〇〇
(普)〇〇〇〇〇〇〇
当座)〇〇〇〇〇〇〇
(当)〇〇〇〇〇〇〇
預金種類と口座番号を一列に記載するのが一般的です。口座の種類は、普通・当座もしくは普・当と省略しても問題ありません。
口座名義は、銀行に登録された口座名義をカタカナで記します。個人事業主の場合は、屋号で口座開設している場合は屋号を記入し、屋号がない場合は個人名を記載します。
インターネットバンキングやATMからの振込は、金融機関や支店名、口座番号を入力すると口座名義が自動的に表示される仕組みです。一方、金融機関の窓口で振込手続きを行う場合は、口座名義が誤っていると正常に振込ができません。
口座名義に誤りがないよう、細心の注意を払って記載しましょう。
法人名義の口座名は、以下のように法人格は略称で記載します。
口座名義の記載例)
株式会社:カ
有限会社:ユ
合同会社:ド
学校法人:ガク
一般社団法人・公益社団法人:シャ
一般財団法人・公益財団法人:ザイ
医療法人・医療法人財団など:イ
営業所:エイ
また、法人格は場所によってカッコの付け方が異なるため、注意が必要です。
先頭:株式会社〇〇 カ)〇〇
末尾:〇〇株式会社 〇〇(カ
中間+末尾:〇〇株式会社△△営業所 〇〇(カ)△△(エイ
備考欄には、振込手数料の負担先を明記しておきましょう。振込手数料の負担は「先方負担」と「当方負担」の2つの方法があります。
先方負担:請求書の発行者が負担する
当方負担:請求書の受領者が負担する
先方負担の場合は、合計金額から振込料を差し引いて振り込みます。振込手数料の負担先に関して、民法第485条では以下のような記載があります。
「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者(発注者)の負担とする」
つまり、代金を振り込む側が振込手数料を負担することが原則であり、商品やサービスを発注した側が負担するケースが一般的です。手数料は振込額によって異なるため、双方で事前に取り決めを行い、取り決めルールを優先して備考欄に反映しましょう。
振込手数料の負担先の例文)
振込手数料は御社のご負担にてお願いいたします。
誠に勝手ながら、振込手数料は貴社にてご負担お願いいたします。
恐れ入りますが、お客様の方で振込手数料をご負担くださいますようお願いいたします。
振り込み手数料を依頼する場合は、丁寧な文面で表します。振込手数料が債務者(受注者)負担の場合は、備考欄に記載する必要はありません。
支払期日を備考欄に記入することで、発注者側の支払管理もしやすくなり、見落としも減少します。支払期限は、以下のルールが一般的です。
請求書作成前に双方であらかじめ決めておきましょう。
支払期日の記載例)
支払期日:〇年〇月〇日
支払期日は、具体的な日付で表記するのがポイントです。「発行日の翌月末まで」「発行日から30日以内」といった曖昧な表現は避けましょう。
また、「ただちに」「速やかに」といった表現方法も適切ではありません。支払期日の部分には、シンプルに日付のみを記載します。
支払いの特記事項として、分割払い、前払金、着手金などの特別な条件が挙げられます。分割払いや着手金が発生した場合は、備考欄に支払金額の詳細を記載しておきましょう。
分割金の記載例)
第1回目:請求金額 〇〇円 お支払期限〇月〇日
第2回目:請求金額 〇〇円 お支払金額〇月〇日
着手金の記載例)
2回分を分割払いとし、以下のお振込み期日までに上記の口座までお振込みをお願いいたします。
着手金のお支払期限:〇年〇月〇日
納品時のお支払期限:〇年〇月〇日
上記のように金額や支払期限を明確に記載しておくと、取引先は残金管理がしやすくなります。また、発行側も次回の請求作成や事務処理がスムーズになり、両者間でのトラブルを未然に防ぐことができます。
請求書の備考欄には、連絡事項として請求書の問い合わせ先情報の記載が可能です。請求書の発行は、営業部や経理部など企業によって異なるため、備考欄に経理担当者の連絡先を明記しておくと、不明点があった場合に迅速に対応できます。
問い合わせ情報の記載れ)
請求書に関するお問い合わせは経理担当の〇〇までご連絡ください。
電話番号:〇〇
メールアドレス:〇〇
請求書に備考欄を設けることで、発注者だけではなく受注者側にもメリットがあります。備考欄を設けるメリットを解説します。
備考欄を設置することで、支払方法に関する情報や振込手数料の依頼など、請求書の本文には収まりきらない情報が記載できます。取引先にお願いしたい情報を丁寧に伝えられるため、書面上でも円滑なコミュニケーションが図れる点がメリットです。
備考欄に支払期日を明記することで、万が一支払いが遅れた場合でも、双方の認識が一致しやすくなるため、トラブルが起きても速やかに対処できます。また、入金のタイミングが明確になることで、発行側の事務処理も効率的に進められます。
さらに、金融機関コードや支店コードを備考欄に記載しておくと、インターネットバンキングで振込する際に振込作業がスムーズに進められるため、支払う側にとってもメリットとなるでしょう。
備考欄を活用することで、取引先とのトラブルを事前に防ぐことができます。例えば、費用の負担者を明記しないと、両者間の認識にズレが生じトラブルに発展する可能性もあります。
請求書を発行時に、備考欄に支払者に負担してもらう旨や必要な情報を明記しておくことで、双方の理解が一致し、お互いに気持ちのよい取引が継続できます。
備考欄に請求書の問い合わせ先を記載しておくことで、請求書に関して不明点があった場合に迅速に対応できるため、顧客との信頼関係を保つことができます。請求書はビジネスにおいて重要な文書のひとつです。
顧客との良好な関係を維持するためにも、備考欄を活用し、親切で丁寧な取引を心がけましょう。
請求書の備考欄にはメリットが多くありますが、注意点もいくつかあります。備考欄を使用する際の注意点を解説します。
請求書の備考欄は補足情報を記載する際に役立ちますが、情報が多すぎると、取引先の確認作業が煩雑になり、時間がかかることもあります。そのため、必要な情報のみを簡潔に記載することが大切です。
特に追記事項がない場合は、備考欄を空白にしておいても問題はありません。しかし、備考欄があることで請求書の漏れや抜けを防げるため、書く内容がなくても枠は用意しておくといいでしょう。
備考欄に取引情報を記入する際には、取引先との事前確認は必須です。取り決めがないまま勝手に記載すると、トラブルにつながります。
請求書作成時には、以下の情報を事前に確認しておきましょう。
請求書の備考欄の活用方法や書き方を解説しました。備考欄は、取引の詳細や補足情報を伝えるために必要な部分であり、双方の取引をスムーズに進行させるために欠かせません。
備考欄を使用することで、取引先とのコミュニケーションを円滑にし、トラブルを未然に防ぐことができます。
請求書の備考欄を上手に活用し、取引先との信頼関係を保ちましょう。