更新日:2026.08.28

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保有株式の時価が上がっても、その含み益がそのまま利益になるとは限りません。同じ上場株式でも、何のために保有しているかによって、期末の評価方法や評価差額の表示先が変わるためです。
たとえば、取得原価100万円の株式が期末に130万円になった場合、差額30万円を当期の利益へ計上するのか、それとも純資産へ反映するのかを判断しなければなりません。さらに、翌期に140万円で売却したとき、売却益を40万円とするのか、前期末時価との差額である10万円とするのかも、洗替処理を理解していないと迷いやすいポイントです。
本記事では、その他有価証券に該当するかどうかの判定から、取得、決算、翌期首、売却までの処理を、同じ数字を使って一気通貫で解説します。後半では、値下がり時の減損判定や税務との違い、決算前に残しておきたい証跡まで整理します。
参考
その他有価証券とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式および関連会社株式のいずれにも該当しない有価証券です。
「その他」という名称だけでは対象範囲がわかりにくいものの、実務では、ほかの3区分に該当するかを順番に確認し、いずれにも該当しない有価証券をその他有価証券に区分します。
また、「その他有価証券」は勘定科目名ではなく、保有目的に基づく会計上の区分です。仕訳帳や貸借対照表で、必ず「その他有価証券」という勘定科目を使用するわけではありません。
一般的には、決算日の翌日から1年以内に満期が到来する債券などは、流動資産の「有価証券」として表示します。それ以外の株式や債券は、固定資産の「投資有価証券」として表示します。
本記事では仕訳の流れをわかりやすくするため、その他有価証券の勘定科目を「投資有価証券」に統一して解説します。
有価証券の4区分は、保有目的だけでなく、決算時の評価方法と評価差額の表示先が異なります。特に混同しやすいのが、売買目的有価証券とその他有価証券です。
どちらも原則として期末時価で評価しますが、売買目的有価証券の評価差額は当期の損益へ計上します。一方、その他有価証券の評価差額は、原則として税効果を調整したうえで純資産の部へ反映します。
| 区分 | 主な保有目的 | 決算時の評価 | 評価差額の扱い |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 短期売買による利益獲得 | 時価 | 当期の損益に計上 |
| 満期保有目的の債券 | 満期まで保有し、元本と利息を受け取る | 取得原価。金利調整差額がある場合は償却原価 | 時価変動による差額は認識しない |
| 子会社株式・関連会社株式 | 支配または重要な影響力の行使 | 取得原価 | 原則として時価評価しない |
| その他有価証券 | 上記以外。政策保有株式や中長期の資産運用など | 時価 | 原則として純資産の部に「その他有価証券評価差額金」として計上 |
会計区分を誤ると、貸借対照表だけでなく、当期純利益や税効果会計にも影響します。決算時に時価だけを確認するのではなく、取得時の保有目的までさかのぼることが重要です。
その他有価証券に該当するのは、短期売買、満期保有、支配または重要な影響力の行使のいずれも主な保有目的ではない有価証券です。代表的なケースとして、次のようなものが挙げられます。
ただし、「長期間保有しているからその他有価証券」と単純に判断できるわけではありません。長期間保有していても、他社を支配する目的であれば子会社株式に該当します。
また、満期まで保有する意思と能力がある債券であれば、満期保有目的の債券に該当する可能性があります。
有価証券の区分を判断するときは、まず短期売買目的に該当するかを確認します。次に、債券であれば満期まで保有する意思と能力があるかを確認し、株式であれば支配や重要な影響力の行使が目的かを確認します。
いずれにも該当しない場合は、原則としてその他有価証券に区分します。

保有目的は、担当者の口頭説明だけでなく、取得時の稟議書、投資方針、取締役会または経営会議の資料などで裏づけることが重要です。
前年と同じ銘柄であっても、売却方針やグループ戦略が変わっている可能性があるため、前年の区分を機械的に引き継がないようにしてください。
その他有価証券は、取得時には取得原価で計上し、決算時には原則として期末時価で評価します。取得原価と期末時価の差額が評価差額ですが、その差額がそのまま当期の利益や損失になるわけではありません。
その他有価証券を取得した時点では、購入価額を基礎とする取得原価で計上します。有価証券の取得に直接要した買入手数料などの付随費用は、原則として取得原価に含めます。
たとえば、株式を100万円で取得し、取得に直接要した手数料が1万円であれば、原則として101万円を取得原価として計上します。ただし、本記事の仕訳例では、評価差額や洗替処理をわかりやすくするため、付随費用は発生していないものとします。
市場価格のあるその他有価証券は、決算時に期末時価で評価します。上場株式であれば取引所などで公表される市場価格、投資信託であれば運用会社などが公表する基準価額、債券であれば市場価格や金融機関から取得した評価情報などを使用します。
取得原価100万円の株式の期末時価が130万円であれば、会計上の貸借対照表価額を130万円とし、差額30万円を評価差額として認識します。
評価計算表には、銘柄、数量、取得原価、決算日時価、価格の参照元、価格の取得日、評価差額を記録します。決算日が休場日である場合にどの価格を使用するかについても、社内ルールを定めて継続して適用することが重要です。
その他有価証券評価差額金は、貸借対照表の純資産の部にある「評価・換算差額等」に表示されます。評価益が生じた場合は純資産を増加させ、評価損が生じた場合は純資産を減少させます。
たとえば、取得原価100万円の株式が期末に130万円となり、税効果を考慮しない場合、30万円の評価差額金を貸方へ計上します。反対に、期末時価が70万円に下落した場合は、30万円を借方へ計上し、評価差額金がマイナスとなることがあります。
ここで重要なのは、評価差額金が「現金化した利益」ではない点です。株式を売却していないため、現金収入は発生していません。あくまで保有中の時価変動を、当期純利益とは切り離して純資産へ反映しているものです。
「その他有価証券評価差額金」と「有価証券評価益・有価証券評価損」は名称が似ていますが、対象となる有価証券と財務諸表上の表示場所が異なります。
| 科目 | 主な対象 | 表示場所 | 当期純利益への影響 |
|---|---|---|---|
| 有価証券評価益・有価証券評価損 | 売買目的有価証券 | 損益計算書 | あり |
| その他有価証券評価差額金 | その他有価証券 | 貸借対照表の純資産の部 | 原則としてなし |
| 投資有価証券評価損 | 減損処理を行う有価証券など | 損益計算書 | あり |
同じ30万円の値下がりでも、通常の評価差額として処理する場合は純資産が減少し、減損処理を行う場合は当期の損失となります。どちらの処理になるかは、下落率や回復可能性などを踏まえて判断します。
その他有価証券の時価が下がった場合、すべてを同じ方法で処理するわけではありません。通常の評価差額として純資産へ反映するケース、会計上の減損として当期の損失へ計上するケース、税務上も評価損の損金算入が認められるケースに分けて考える必要があります。

値下がりの判断を行う前に、まず期末時価が正確に把握されているかを確認します。使用する価格情報は、金融商品の種類によって異なります。
評価計算表には、価格だけでなく、価格の参照元や取得日も記録します。証券会社の残高報告書と会計帳簿を照合し、数量や銘柄の誤りがないかも確認してください。
時価が取得原価を下回っていても、直ちに減損処理を行うわけではありません。著しい下落に該当しない場合や、著しい下落に該当しても回復する見込みがあると認められる場合は、通常の評価差額として処理します。
全部純資産直入法を採用している場合、評価差額に税効果を反映した金額を、その他有価証券評価差額金として純資産の部へ計上します。
評価差額金がマイナスとなっても、そのことだけで減損に該当するわけではありません。通常の評価差額と減損は、区別して判断する必要があります。
市場価格のある有価証券について時価が著しく下落した場合は、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価まで帳簿価額を切り下げ、差額を当期の損失として処理します。
| 取得原価からの下落率 | 会計上の考え方 |
|---|---|
| 50%程度以上 | 「著しく下落した」に該当し、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行う |
| 30%以上50%未満程度 | 各社が定める合理的な基準により、回復可能性の判定対象とするかを判断する |
| 30%未満 | 一般に「著しく下落した」には該当しないと考えられる |
※取得原価からの下落率別の取扱いは、 移管指針第9号第91項 を踏まえた整理です。
ここでいう回復可能性とは、単に「将来上がるかもしれない」という期待ではありません。下落が一時的であり、期末日後おおむね1年以内に取得原価にほぼ近い水準まで回復すると、合理的な根拠をもって予測できることが必要です。
減損処理を行った場合は、切り下げ後の金額が新たな帳簿価額となります。通常の評価差額のように翌期首に洗い替えるのではなく、切放しとなる点に注意してください。
市場価格のない株式等は、原則として取得原価を貸借対照表価額とします。企業価値評価などによって一定の価額を算定できたとしても、その金額を上場株式と同じ意味での時価として、毎期の評価替えに使用するわけではありません。
ただし、発行会社の財政状態が悪化し、1株当たり純資産額などを基礎として算定した実質価額が著しく低下している場合は、減損を検討します。
実務では、次の要素を踏まえて判断します。
実質価額が取得原価に比べておおむね50%程度以上低下している場合は、回復可能性が十分な証拠によって裏づけられる場合を除き、相当の減額を行うことを検討します。
会計上の減損と、税務上の評価損の損金算入は別のルールで判断します。会計上、投資有価証券評価損を計上したからといって、その全額が自動的に税務上の損金となるわけではありません。
税務上、市場有価証券等の評価損を損金算入する場合は、事業年度終了時の価額が税務上の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、かつ、近い将来に価額の回復が見込まれないことなどを確認します。
実務では、次の点を分けて確認してください。
値下がりが生じた場合は、まず取得原価からの下落率を確認し、著しい下落に該当するかを判断します。次に回復可能性を検討し、通常の評価差額として処理するか、会計上の減損を行うかを判断します。
そのうえで、税務上の損金算入要件を別に確認します。
期末前1か月の平均価額は、使用する場面によって取扱いが異なります。特に、期末の貸借対照表価額、会計上の減損判断、税務上の評価損判断を混同しないことが重要です。
| 場面 | 期末前1か月の平均価額 | 使用する金額 |
|---|---|---|
| 会計|期末の貸借対照表価額 | 使用しない | 期末日の時価 |
| 会計|減損するかどうかの判断 | 使用できる場合がある | 期末日の時価または期末前1か月の平均価額 |
| 会計|減損損失額の算定 | 使用しない | 期末日の時価 |
| 税務|評価損の損金算入における50%基準の判断 | その他有価証券について使用できる | 事業年度終了の日以前1月間の市場価格の平均額 |
平均価額を使える場面と使えない場面が混在している点は、実務上の落とし穴です。減損判断に平均価額を使用する場合は、どの価格情報を採用するかを社内規程に定め、年度によって有利な価格へ変更することがないよう継続して適用してください。
その他有価証券の評価差額を処理する方法には、全部純資産直入法と部分純資産直入法があります。特に違いが表れるのは、評価益の銘柄と評価損の銘柄を同時に保有している場合です。
全部純資産直入法では、評価益と評価損を含めた評価差額の合計額を、税効果を調整したうえで純資産の部へ計上します。評価益と評価損が混在している場合は、両者を相殺した純額を基礎にします。
部分純資産直入法では、評価益の銘柄は純資産へ計上する一方、評価損の銘柄は当期の損失として計上します。このため、評価損がある年度では、部分純資産直入法のほうが税引前利益を押し下げます。
| 比較項目 | 全部純資産直入法 | 部分純資産直入法 |
|---|---|---|
| 評価益 | 純資産へ計上 | 純資産へ計上 |
| 評価損 | 評価益と相殺し、純資産へ計上 | 当期の損失として計上 |
| 損益計算書への影響 | 原則としてなし | 評価損がある場合はあり |
| 処理単位 | 評価差額の合計額 | 銘柄ごと |
次の2銘柄を保有しているケースで比較します。B社株式の下落率は24%であり、本設例では減損ではなく通常の評価差額として処理します。また、実効税率は説明用に30%と仮定します。
| 項目 | 全部純資産直入法 | 部分純資産直入法 |
|---|---|---|
| A社株式の評価益200万円 | 純資産へ | 純資産へ |
| B社株式の評価損120万円 | A社株式の評価益と相殺して純資産へ | 当期の損失へ |
| 損益計算書への影響 | なし | 投資有価証券評価損120万円 |
| その他有価証券評価差額金 | 56万円。純額80万円×70% | 140万円。A社株式の評価益200万円×70% |

全部純資産直入法では、A社株式の評価益200万円とB社株式の評価損120万円を相殺し、純額80万円を基礎に処理します。
一方、部分純資産直入法では、B社株式の評価損120万円を損益計算書へ計上するため、全部純資産直入法と比べて税引前利益が120万円少なくなります。
当期純利益への影響額は、評価損に対応する繰延税金資産を認識するかどうかによって異なります。実効税率30%で繰延税金資産36万円を全額認識する場合、税引後の当期純利益への影響は84万円となります。
全部純資産直入法では、2銘柄の評価差額を合算した80万円について、繰延税金負債24万円とその他有価証券評価差額金56万円を計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 800,000円 | 繰延税金負債 | 240,000円 |
| その他有価証券評価差額金 | 560,000円 |
部分純資産直入法では、A社株式の評価益200万円は純資産へ計上し、B社株式の評価損120万円は当期の損失へ計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 2,000,000円 | 繰延税金負債 | 600,000円 |
| その他有価証券評価差額金 | 1,400,000円 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券評価損 | 1,200,000円 | 投資有価証券 | 1,200,000円 |
評価損に関する税効果は、繰延税金資産の回収可能性を踏まえて別途検討します。仕訳の形だけでなく、どの金額が損益計算書へ入り、どの金額が純資産へ入るのかを区別して確認してください。
全部純資産直入法と部分純資産直入法のどちらを採用するかは、自社の会計方針に基づいて判断します。全部純資産直入法は、評価差額の合計額を純資産へ計上する方法です。
採用した方法は継続して適用しなければなりません。評価損が発生した年度だけ処理方法を変更するなど、当期の業績に有利な方法を年度ごとに選ぶことはできません。
会計方針を変更する場合は、変更する正当な理由があるかを確認し、変更による影響額や財務諸表への注記の要否を検討します。
その他有価証券の評価差額を純資産へ計上するときは、税効果会計を適用します。これは、期末時点で会計上の帳簿価額と税務上の帳簿価額に差が生じるためです。
会計上は、市場価格のあるその他有価証券を期末時価まで評価します。一方、税務上は、通常の評価差額が直ちに課税所得へ反映されるとは限りません。
取得原価100万円の株式が期末に130万円になった場合、会計上の帳簿価額は130万円となります。税務上の帳簿価額が100万円のままであれば、会計と税務の間に30万円の一時差異が生じます。
評価益が生じて会計上の帳簿価額が税務上の帳簿価額を上回る場合は、将来加算一時差異となります。将来その有価証券を売却したときに課税所得が増える方向の差であるため、繰延税金負債を計上します。
評価損が生じて会計上の帳簿価額が税務上の帳簿価額を下回る場合は、将来減算一時差異となります。この場合は、繰延税金資産の計上を検討します。
ただし、評価損に税率を掛けた金額を機械的に計上するのではなく、将来の課税所得から税負担を減らせると見込まれる範囲を確認する必要があります。
取得原価100万円の株式が期末に130万円となり、実効税率を説明用に30%とした場合、税効果は次のように計算します。

| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 300,000円 | 繰延税金負債 | 90,000円 |
| その他有価証券評価差額金 | 210,000円 |
評価差額30万円の全額を純資産へ計上するのではなく、税金相当額9万円を除いた21万円が、その他有価証券評価差額金となります。
評価損が生じた場合は、繰延税金資産の計上を検討します。ただし、繰延税金資産を計上できるのは、将来の課税所得によって税負担の軽減効果を回収できると見込まれる範囲です。
決算時には、将来の課税所得の見積りや一時差異の解消見込みを確認し、回収可能性を判断した資料を保存してください。本記事で用いる実効税率30%は、仕組みを説明するための仮定です。実際の仕訳では、自社に適用される法定実効税率を使用します。
ここからは、共通する1つの設例を使い、取得から決算、翌期首、売却までの仕訳を時系列で確認します。
共通設例

その他有価証券を取得した時点では、購入価額を基礎とした取得原価で計上します。本設例では、株式を100万円で取得し、普通預金から支払ったものとします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 1,000,000円 | 普通預金 | 1,000,000円 |
有価証券の取得に直接要した買入手数料などの付随費用は、原則として取得原価に含めます。本設例では、評価差額と洗替処理の流れをわかりやすくするため、付随費用は発生していないものとします。
決算日に時価が130万円となった場合、取得原価100万円との差額30万円を評価差額として認識します。税効果を考慮しない基本形では、投資有価証券を30万円増額し、同額をその他有価証券評価差額金へ計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 300,000円 | その他有価証券評価差額金 | 300,000円 |
実効税率30%で税効果を適用する場合は、30万円のうち9万円を繰延税金負債、残り21万円をその他有価証券評価差額金として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 300,000円 | 繰延税金負債 | 90,000円 |
| その他有価証券評価差額金 | 210,000円 |
取得原価100万円の株式が期末に70万円となった場合、評価差額はマイナス30万円です。ここでは、全部純資産直入法を採用し、減損には該当しない通常の評価差額として処理するケースを考えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 90,000円 | 投資有価証券 | 300,000円 |
| その他有価証券評価差額金 | 210,000円 |
繰延税金資産9万円については、回収可能性があることを前提としています。回収可能性が認められない場合は、上記と異なる処理になる点に注意してください。
また、時価が著しく下落している場合は、通常の評価差額を計上する前に減損の要否を検討します。減損に該当する場合は、純資産ではなく当期の損失として処理します。
通常の評価差額は、翌期首に前期末仕訳の反対仕訳を行い、帳簿価額を取得原価へ戻します。前期末に時価130万円まで増額していた場合は、次の仕訳で評価差額30万円を取り崩します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| その他有価証券評価差額金 | 210,000円 | 投資有価証券 | 300,000円 |
| 繰延税金負債 | 90,000円 |
この洗替処理により、翌期首の帳簿価額は取得原価100万円へ戻ります。一方、減損処理を行った場合は切放しとなり、切り下げた後の金額が新たな帳簿価額となるため、翌期首に反対仕訳を行いません。
翌期首の洗替によって帳簿価額が100万円へ戻った後、株式を140万円で売却した場合、売却益は40万円です。前期末時価130万円との差である10万円ではありません。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 1,400,000円 | 投資有価証券 | 1,000,000円 |
| 投資有価証券売却益 | 400,000円 |
前期末に計上した評価差額30万円は、翌期首に洗い替えられています。そのため、本設例の売却時には売却価額140万円と洗替後の帳簿価額100万円を比較します。
管理台帳でも、取得原価、期末時価、洗替後の帳簿価額を別々の列で管理すると、売却損益の計算誤りを防ぎやすくなります。
その他有価証券の決算処理は、仕訳だけを確認しても不十分です。保有残高、会計区分、時価、減損、税効果、翌期の洗替までがつながっているため、決めた順番で確認する必要があります。

最初に、有価証券管理台帳と証券会社の残高報告書を突き合わせます。時価評価の計算が正しくても、数量や取得原価が誤っていれば、評価差額の総額も誤るためです。
期中に一部売却した銘柄では、移動平均法など、会社が採用している方法で取得原価が正しく払い出されているかも確認してください。
各銘柄の保有目的を確認し、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式・関連会社株式、その他有価証券のどこに該当するかを整理します。
取得時の稟議書、投資方針、取締役会または経営会議の資料を確認し、政策保有株式の縮減方針やグループ再編によって、取得時と決算時で保有方針が変わっていないかも確認します。
あわせて、1年以内に満期が到来するかなどを確認し、流動資産の「有価証券」と固定資産の「投資有価証券」の表示区分も見直してください。
期末時価を確認したら、計算結果だけでなく、価格情報の出所を保存します。監査や翌期の決算で再確認できるよう、価格の取得日と参照元がわかる状態にしておくことが重要です。
値下がりしている銘柄は、通常の評価差額仕訳を作成する前に、減損の要否を判断します。先に評価差額金を計上し、その後に減損へ振り替えると、二重計上や仕訳漏れが起こりやすくなるためです。
減損した銘柄は切放しとなるため、翌期首の洗替対象から外します。管理台帳上でも、通常の評価差額と減損銘柄を区別できるようにしてください。
決算仕訳を計上したら、翌期首に必要な洗替仕訳も一覧化します。その他有価証券評価差額金だけでなく、繰延税金資産または繰延税金負債の戻しも確認します。
有価証券管理台帳には、次の金額を別々の列で管理すると、翌期処理や売却損益の計算がしやすくなります。
売却損益を計算するときは、前期末時価ではなく、売却時点の帳簿価額と売却価額を比較します。通常の評価差額と減損後の帳簿価額では処理が異なるため、切放し銘柄を台帳で識別できるようにしておくことが重要です。
その他有価証券の処理では、仕訳の金額だけでなく、区分、時価、回復可能性をどのような根拠で判断したかが確認されます。判断過程を担当者の記憶に依存させず、次の資料を銘柄ごとにひもづけて保存しましょう。
| 確認する内容 | 残す資料 |
|---|---|
| 保有目的と会計区分 | 取得時の稟議書、投資方針、取締役会・経営会議資料 |
| 残高の正確性 | 証券会社の残高報告書、有価証券管理台帳 |
| 取得原価 | 取得時の取引報告書、手数料明細、取得原価計算資料 |
| 期末時価 | 市場価格・基準価額の参照資料、価格の取得日、参照元 |
| 評価差額と税効果 | 評価差額計算表、実効税率の根拠、税効果の計算資料 |
| 減損の要否 | 社内基準、下落率の計算資料、回復可能性の検討メモ |
| 市場価格のない株式等 | 発行会社の決算書、実質価額計算表、事業計画、超過収益力の検討資料 |
| 税務上の評価損 | 税務上の帳簿価額、損金算入要件の判断資料、申告調整資料 |
| 翌期処理 | 翌期首の洗替仕訳一覧、切放し銘柄の管理表 |
これらの資料を決算のたびに探し直すと、確認作業が属人化します。銘柄別の管理台帳から関連資料へアクセスできるようにするなど、保存場所とファイル名のルールを統一しておくと、監査対応や担当者交代時の引継ぎがしやすくなります。
その他有価証券評価差額金は、収益や費用ではなく、純資産の項目です。全部純資産直入法では、評価益が生じると評価差額金が増加し、評価損が生じると評価差額金が減少します。原則として当期純利益には影響しません。
損益計算書へ影響するのは、売買目的有価証券の評価損益、部分純資産直入法による評価損、著しい下落による減損などです。
あります。全部純資産直入法では、その他有価証券の時価が取得原価を下回ると、その他有価証券評価差額金を借方へ計上し、純資産を減少させます。
ただし、評価差額金がマイナスであることと、減損に該当することは同じではありません。減損の要否は、下落率と回復可能性を踏まえて別に判断します。
取得原価から50%程度以上下落した場合は、会計上「著しく下落した」に該当します。そのうえで、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価まで帳簿価額を切り下げ、評価差額を当期の損失として処理します。
回復する見込みを示すには、期末日後おおむね1年以内に取得原価にほぼ近い水準まで回復すると合理的に予測できる資料が必要です。「今後上がると思う」という担当者の見込みだけでは不十分です。
また、会計上の減損と税務上の損金算入は別に判断します。会計で投資有価証券評価損を計上しても、税務上の要件を満たさない場合は、申告調整が必要です。
毎期選び直すことはできません。どちらを採用するかは会計方針であり、継続して適用する必要があります。当期の業績に有利な方法へ年度ごとに切り替えることはできません。
会計方針を変更する場合は、変更する正当な理由があるかを確認し、必要な会計処理や注記を検討します。
その他有価証券の通常の評価差額は、洗替方式で処理するためです。前期末に時価評価によって増減させた帳簿価額を、翌期首に反対仕訳によって取得原価へ戻します。
これにより、翌期に売却した場合は、売却時点の帳簿価額と売却価額を比較して売却損益を計算できます。本記事の設例では、前期末時価130万円から取得原価100万円へ戻した後に140万円で売却するため、売却益は40万円となります。
ただし、減損処理を行った有価証券は切放しとなるため、翌期首に洗い替えません。
その他有価証券の処理は、まず保有目的を確認し、有価証券の会計区分を決めることから始まります。そのうえで、取得原価と期末時価を確認し、通常の評価差額として処理するのか、減損が必要なのかを判断します。
通常の評価差額であれば、税効果を反映した金額を純資産へ計上し、翌期首に洗替処理を行います。売却時は、洗替後の帳簿価額と売却価額を比較して売却損益を計算します。一方、減損を行った場合は切放しとなるため、翌期首に元の取得原価へ戻しません。
仕訳の借方・貸方だけを暗記するのではなく、「区分」「評価」「減損」「税効果」「洗替・売却」という処理の順序を理解することが、決算時の誤りを防ぐポイントです。
さらに、保有目的、期末時価、回復可能性、税務上の損金算入要件について、判断根拠を資料として残しておけば、監査や税務調査でも一貫した説明ができます。
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