更新日:2025.06.26
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2024年1月1日から、電子取引データの電子保存がすべての事業者に完全義務化されました。この変更により、「取引年月日」の扱いに悩む経理担当者や個人事業主が増えています。
電子帳簿保存法では、保存した電子データを検索できる状態にすることが求められており、その際に「取引年月日」が重要な検索項目の1つとなっています。
しかし、「取引年月日」の解釈は書類ごとに異なるため、その正確な理解と適切な管理が重要です。見積書、注文書、請求書など、それぞれの書類で「取引年月日」として記載すべき日付が異なり、統一的な理解がないと法令遵守に支障をきたすおそれがあるため、注意が必要です。
本記事では、電子帳簿保存法における「取引年月日」の定義と、書類ごとの具体的な記載ルールについて解説します。
電子帳簿保存法上の「取引年月日」は、原則として「実際に取引が成立した日」を指します。この定義は、単に書類が作成された日や受領された日とは異なる場合があるため、実務上はとくに注意が必要です。
たとえば、見積書や請求書のように、書類が発行された日付と、その書類が示す取引が実際に成立した日付が異なるケースは少なくありません。この原則は、商品やサービスの提供、契約の締結といった経済活動が具体的に発生した時点を重視しています。
取引年月日は書類の作成や受領といった事務手続き上の日付ではなく、実態に焦点を当てた解釈となっています。したがって、各書類の性質を理解したうえで適切な日付を「取引年月日」として認識することが、電子帳簿保存法への正確な対応の第一歩です。
電子帳簿保存法上の取引年月日は、書類が発行された日付と、その書類が示す取引が実際に成立した日付が異なるケースは少なくありません。各書類の性質に応じた日付の取り扱いを理解することが、適切な電子保存を実現するための基本です。
ただし、書類の種類ごとに「取引年月日」の解釈が変わるため、画一的な対応では法令遵守が困難になる可能性があります。
ここでは、主要な国税関係書類のそれぞれの「取引年月日」の考え方について解説します。
見積書に記載する「取引年月日」は、「見積もりを提示した日付」です。これはあくまで取引の前段階であり、実際に取引が成立した日とは異なる場合がある点に注意が必要です。
見積書は、将来の取引に向けた提案を示す書類であり、その日付は提案がおこなわれた時点を反映しています。この日付管理は、見積もりの有効期限管理や、後の契約成立時の参照資料としても重要です。
注文書に記載される「取引年月日」は、「注文が確定した日」を指します。企業間では、受注側が注文を正式に受け付け、商品やサービスの提供が確定した「受注の承諾日」を意味します。
実務では、注文書の発行日と受注承諾日が異なる場合があります。しかし、法律上の「取引年月日」は、注文が最終的に確定し、両当事者に契約上の義務が発生する日付を適切に捉えることが重要です。
請求書における「取引年月日」は、「サービスや商品の提供が完了した日」もしくは「請求対象期間の最終日」と定義されます。ただし、実務上は「請求年月日」を記載することが多いです。
企業内でどの解釈を採用するかを明確に定めて、すべての請求書に対して一貫したルールの適用が重要です。この一貫性によって検索機能の確保が確実になり、税務調査の際の対応も円滑に進められます。
支払通知書を電子保存する際の「取引年月日」は、原則として「支払通知書の発行日」を検索日付に設定することが適切とされています。
もし支払通知書に発行日が記載されていない場合は、「書類受領日など」を検索日付として、合計金額で検索できるようにすることが必要です。企業は、発行日がない場合の代替ルールを明確にして、一貫して適用することが求められるため、例外的な取り扱いも、社内規程で明文化しておくことが望ましいです。
インターネットバンキングを利用した振込などの取引も電子取引に該当するため、振込などを実施した「取引年月日」が記載されたデータの保存が必要です。金融機関が提供するオンライン上の通帳や入出金明細なども、電子帳簿保存法の要件を満たせば保存方法として利用できます。
重要なのは、これらの金融機関データも、「取引年月日」が実際に振込や入出金がおこなわれた日付を指す点です。通帳や明細が発行された日付ではなく、個々の取引が実行された日付を正確に把握して、検索できるような管理が求められます。
書類上で「取引年月日」を適切に管理することで、電子帳簿保存法を遵守できます。適切な管理を怠った場合は税務調査の際に必要な書類を提示できず、青色申告の承認取り消しや追徴課税などの重大なペナルティを受けるかもしれません。
一方で、適切に管理すれば、業務効率の向上や迅速な書類検索が可能となり、経理業務全体の生産性向上にもつながります。
ここでは、電子帳簿保存法における取引年月日を記載する際のポイントについて解説します。
電子帳簿保存法では、保存した電子データを「取引年月日その他の日付」「取引金額」「取引先」で検索できる状態にしなければなりません。さらに、日付または金額で範囲を指定して検索できること、および2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できることも原則として求められています。
これらの要件は、税務調査の際に必要な書類を迅速に特定して提示するために不可欠です。
保存する電子ファイルの名前には、「取引年月日」を含めるのがおすすめです。
ファイル名には、「取引年月日」「取引金額」「取引先名」の3項目を含めて統一した順序の命名が推奨されます。日付を明示することで、後々の確認や税務調査にも対応しやすいです。
規則的なファイル命名は、専用のシステムを使用しない場合でも、検索要件を達成するための基礎となります。社内で統一したルールを定めて、すべての担当者が同じ方法でファイル名を付けられるようなマニュアル化が重要です。
関連記事:【例あり】電子帳簿保存法のファイル名ルールと設定ポイント・保存方法を解説
取引年月日を記録する際には、西暦・和暦のどちらかに統一する必要があります。日付表示を統一することで、フォルダ内で管理しやすくなり、ほかの方が確認した際のミスや混乱を防げます。
また、一桁の月日の表記も、たとえば1月1日を「0101」と表記するなど、ファイル全体で統一された形式を採用するのがおすすめです。日付表記の不統一は、検索する際に必要なデータが漏れる原因となり、結果として法令遵守の妨げとなる可能性があります。
本記事では、電子帳簿保存法における「取引年月日」の定義と、書類ごとの具体的な記載ルールについて解説しました。
電子帳簿保存法上の「取引年月日」は、単なる日付情報ではなく、電子データの検索機能と真実性を確保するための根幹をなす要素です。見積書や注文書、請求書など、それぞれの書類の性質に応じて適切な日付を「取引年月日」として管理することで、法令を遵守できます。
「取引年月日」の正確な管理を徹底して、罰則リスクを回避するだけではなく、経理業務の効率化と企業のデジタル変革を推進して、より強固な経営基盤の構築につなげましょう。適切な管理体制の構築は、将来的な業務改善にもつながる重要な投資といえます。