更新日:2026.07.30

ー 目次 ー
「電帳法(電子帳簿保存法)に対応しているつもりだけど、正直このやり方で合っているのか自信がない」。経理の現場では、そんな声が今も少なくありません。
2024年1月から電子取引データの保存が完全義務化され、さらに2024年以降は新たな「猶予措置」も設けられました。ところが「どの書類が対象で、どこまでが義務なのか」「紙に印刷して保管してはいけないのか」といった基本の部分でつまずくケースが後を絶ちません。
本コラムでは、株式会社インボイスが発行する「電子帳簿保存法では結局、どの書類をどう管理したらいいのかガイド」をもとに、3つの保存区分の違い・義務と任意の境目・対応必須の「電子取引」への具体策までを整理します。まずは自社の運用に抜け漏れがないか、チェックリスト感覚で読み進めてみてください。
参考:国税庁 電子取引関係
結論から言えば、電子帳簿保存法(電帳法)とは、帳簿や国税関係書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。そして2024年1月からは、そのうち「電子取引」で受け取ったデータを電子のまま残すことが、規模を問わずすべての事業者の義務になりました。
なぜ今あらためて確認が必要かというと、電帳法は施行以降たびたび改正されており、古い理解のまま運用を続けると法令違反とみなされ、青色申告の取消しや追徴課税といったペナルティにつながる恐れがあるためです。特に2022年施行の改正と、2024年1月からの完全義務化(および検索要件の緩和)で、対応の考え方が大きく変わっています。
電帳法でデータを保存する際は、大きく2つの考え方が土台になっています。「真実性の確保(データが改ざんされていないこと)」と「可視性の確保(必要なときにすぐ探し出して確認できること)」です。後述する細かな要件も、すべてこの2本柱に紐づいていると押さえておくと、全体像がぐっと掴みやすくなります。

電帳法対応でまずつまずきやすいのが、「すべての帳簿・書類を電子化しなければならない」という思い込みです。実際に義務化されているのは3区分のうち「電子取引」だけで、残る2つはあくまで任意です。この切り分けを最初に正しく理解することが、無駄なシステム投資や対応漏れを防ぐ第一歩になります。
当該の書類が「電子データ」なのか「紙」なのか、また「取引先とデータでやり取りしたもの」か「自社で作成したもの」かによって、保存方法は変わります。下表で全体像を整理します。
| 保存区分 | 対象となる書類 | 対応 |
|---|---|---|
| ①電子帳簿等保存 | 会計ソフト等で自社が最初から電子作成した帳簿・決算書類 | 任意 |
| ②スキャナ保存 | 紙で受領・作成した請求書や領収書などを画像化して保存 | 任意 |
| ③電子取引の保存 | メールのPDF請求書やWeb領収書など電子データでやり取りした書類 | 義務 |
つまり、メールで受け取ったPDFの請求書やWebサイトからダウンロードした領収書など、もともと電子データとして受け取った書類は「電子のまま保存しなければならない」と定められています。一方で、紙でもらった書類をスキャンして保存すること(スキャナ保存)や、自社で作成した帳簿を電子保存すること(電子帳簿等保存)は、いまのところ任意です。

3区分のなかで唯一の義務が「電子取引」です。ここでいう電子取引とは、紙を介さず電子的に授受した請求書・領収書・契約書などを指します。最大のポイントは、「電子で受け取った書類を紙に印刷して保管するだけ」では原則として認められない点です。
たとえばメールでPDFの請求書を受け取った場合、それを印刷して紙で保存し、元のPDFを削除してしまうと要件違反となる可能性があります。これまで紙・電子を問わず「印刷して保存」で統一していた企業も、電子で受け取った書類については電子のまま残せる体制へ切り替える必要があります。
2023年末までは「宥恕(ゆうじょ)期間」として、書面出力による保存も認められる猶予がありました。しかしこの宥恕措置は2023年12月31日で終了し、2024年1月からは電子取引データの電子保存が完全義務化されています。「まだ紙運用のままだった」という企業は、早急な見直しが必要です。

電子データは、単にフォルダに入れておけばよいわけではありません。電帳法では、先に触れた「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの観点から、満たすべき要件が定められています。まずは全体像を表で整理します。
| 2本柱 | 満たすべき内容 |
|---|---|
| 真実性の確保 (改ざんされていない) |
次のいずれかで対応 ・タイムスタンプの付与 ・訂正削除の履歴が残る(または訂正削除できない)システムで保存 ・訂正削除を禁止する事務処理規程を整備・運用 |
| 可視性の確保 (すぐ探して確認できる) |
・PCやディスプレイ、プリンタなど見読可能装置の備付け ・「取引年月日」「取引金額」「取引先」での検索機能の確保 ・電子計算機処理システムの概要書(システム仕様書)の備付け |
真実性を担保する代表的な方法がタイムスタンプの付与です。これはデータがその時点で存在したことを証明する技術で、総務大臣が認定する時刻認証業務に係るタイムスタンプが有効とされています。
ただし、訂正や削除の履歴がすぐ確認できる(または訂正削除自体ができない)システムで保存していれば、タイムスタンプは不要です。加えて、コストをかけずに対応したい中小企業では、「訂正削除の防止に関する事務処理規程」を整備・運用する方法が現実的な選択肢になります。
可視性の中心は検索機能です。保存した電子データを「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できる状態にしておく必要があります。専用システムの構築が理想ですが、手間やコストを考えると、次のような現実的な運用でも要件を満たせます。
なお、前々年(法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下で、かつ税務調査時のダウンロードの求めに応じられる事業者は、この検索要件が免除されます。また、電子取引データを出力した書面を取引年月日や取引先ごとに整理し、税務調査時に提示・提出できる状態にしている場合も、検索機能の確保は不要です。
なお、自社開発プログラムで対応する場合は「電子計算機処理システムの概要を記載した書類(システム仕様書)」を自社で用意する必要がありますが、一般提供の業務システムを利用する場合は提供元側で対応済みのため、ユーザー企業が個別に用意する必要はありません。
結論として、要件をすべて満たすのが難しい事業者にも救済の道があります。2024年1月から、宥恕措置に代わって新たに設けられた「猶予措置」です。宥恕(〜2023年末で終了)とは別物なので、混同しないよう注意しましょう。
この猶予措置は、次の2つをともに満たす場合に適用されます。
「相当の理由」とは、システムや社内のワークフロー整備が間に合わない事情などが該当し、事業者の実情に応じて幅広く認められると考えられています。この猶予措置に該当すれば、改ざん防止措置や検索機能などの要件を満たしていなくても、電子データを保存しておくだけで対応が可能です。
ただし、あくまで「電子データの保存義務そのもの」は免除されない点に注意が必要です。また判断基準に曖昧さも残るため、該当するか不明な場合は自己判断せず、所轄の税務署に相談するのが安心です。
要件違反が判明すると、青色申告の承認取消しや、悪質な場合の重加算税の加重(10%加算)など、通常の申告漏れとは比較にならない負担が生じる恐れがあります。ここでは経理現場でありがちな間違いを整理します。
| ありがちな運用 | 問題点と対処 |
|---|---|
| PDF請求書を印刷し、元データを削除 | 電子取引データが残らず要件違反の恐れ。電子データを保存してから印刷する手順に変更 |
| ファイル名が「scan001.pdf」など | 日付・金額・取引先で検索できず可視性を満たせない。命名規則を統一 |
| 担当者の個人PC・個人メールで保管 | 異動・退職でデータ消失リスク。会社指定の保存先へ集約 |
電帳法の改正により、電子取引データの電子保存が義務化されました。優先すべきは、まず義務である「電子取引」への対応です。「電子帳簿等保存」や「スキャナ保存」は任意のため、体制が整い次第、段階的に導入していけば問題ありません。
対応が難しい場合も、2024年からの猶予措置という受け皿があります。ただし電子データの保存義務そのものは残るため、「電子で受け取ったデータは電子で保存する」という基本ルールを軸に、日々の運用を見直していくことが対応の第一歩です。
今回ご紹介した「電子帳簿保存法では結局、どの書類をどう管理したらいいのかガイド」では、実務でそのまま使える以下の内容を掲載しています。
「うちの保存方法で本当に大丈夫?」という不安を、早見表とチェックリストで一気に解消できる一冊です。無料でダウンロードのうえ、ぜひ自社の抜け漏れ確認にご活用ください。