更新日:2025.06.24
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インボイス制度の施行で、個人事業主にはIT環境の整備が急務の課題となっています。インボイス(適格請求書)の発行や管理に対応するためには、パソコンの導入や更新が必要なケースも少なくありません。
そこで注目すべきなのが「IT導入補助金2025」のインボイス枠です。この制度を利用すれば、個人事業主でもパソコン購入費用の最大半額(上限10万円)が補助される可能性があります。ただし、申請条件や手続きには細かいルールがあるため、正確な知識が不可欠です。
本記事では、個人事業主がインボイス制度対応のためにパソコンを購入する際に活用できる補助金制度について、申請方法や注意点もあわせて解説します。
IT導入補助金は、中小企業や個人事業主を含む小規模事業者のデジタル化と生産性向上を支援するための国の制度です。2017年に開始されて以来、年々その対象範囲が拡大してきました。当初はソフトウェアのみが対象でしたが、2022年には「デジタル化基盤導入枠」が新設され、パソコンやタブレットなども補助の対象となりました。
2025年度は、インボイス制度への対応を支援するための強化策が打ち出されており、補助金の種類も5つの申請枠にわかれています。
このうち、パソコンの購入に補助金を利用できるのは「インボイス枠(インボイス対応類型)」のみです。この枠では、インボイス制度に対応した会計・受発注・決済のいずれかの機能を持つソフトウェアとともに、パソコンなどのハードウェア購入費用の一部が補助されます。
また、2025年度の申請スケジュールは、1次締切が2025年5月12日、2次締切が2025年6月16日、3次締切が2025年7月18日で、それぞれの締切後に約1か月で交付決定がおこなわれる予定です。
IT導入補助金2025のインボイス枠(インボイス対応類型)は、個人事業主であっても利用できる枠であり、この枠でパソコンの購入が可能です。
「インボイス枠」はインボイス制度に対応するためのITツール導入を支援する目的で設けられた枠組みとなっています。この枠ではインボイス制度に対応した「会計」「受発注」「決済」の機能を持つソフトウェアとともに、パソコンやタブレットなどのハードウェア購入費用も補助の対象です。
また、個人事業主は小規模事業者として申請が可能で、中小企業と比べて補助率が優遇されている利点があります。たとえば、1機能のITツールを導入する場合、通常の中小企業の補助率は3/4ですが、小規模事業者の場合は4/5にまで引き上げられています。
IT導入補助金は、手順を誤った場合や要件を満たしていない場合などは申請が不採択になる可能性があり、補助金を受け取れません。したがって、導入補助金申請から受領までの流れを理解しておくことが重要です。
なお、補助金は後払いとなるため、まずは自費でパソコンやソフトウェアを購入する必要があります。また、必ずIT導入支援事業者から購入する必要があるといった制約もあるため、申請・手続きにあたっては注意が必要です。
ここでは、IT導入補助金2025の申請から補助金受領までの7つのステップについて解説します。
まずは政府の認証サービス「gBizIDプライム」の取得が必要です。gBizIDプライムを取得するための手順は以下のとおりです。
gBizIDプライムを取得したら、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度「SECURITY ACTION」で「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言しましょう。さらに、「みらデジ」ポータルサイトに「gBizID」で登録して、無料の「経営チェック」を実施します。
IT導入補助金はIT導入支援事業者と一緒に申請する必要があります。IT導入支援事業者は補助金対象のソフトやシステムなどのITツールを提供し、申請手続きをサポートしてくれる事業者です。
IT導入支援事業者と相談して、どのようなITツールを導入するか、どのようなパソコンを購入するかを決めます。
準備が整ったら、交付申請をおこないます。gBizIDでログインし、申請フォームに必要事項を入力します。申請には事業計画書の作成が必要で、導入するITツールの目的や期待される効果の具体的な説明が必要です。
また、以下のような必要書類の提出も求められます。
申請内容は審査機関によって審査されて、条件に合致していると判断されれば「交付決定通知」が届きます。審査期間は申請のタイミングや申請数ごとに異なりますが、採択結果が出るまで数週間かかることもあるため、余裕を持った申請がおすすめです。
ただし、交付決定前に購入すると補助金の対象外となるため、交付決定通知を受け取るまでは、ITツールやパソコンの購入手続きを進めないよう注意しましょう。
交付決定を受けたら、IT導入支援事業者と正式に契約を結び、補助対象のパソコンを導入します。パソコンやソフトウェアの購入、設定などをおこない、実際に業務で活用できる状態にします。
購入する際の領収書や払込受領書は破棄せずに保管しておきましょう。これらはのちの実績報告の際に必要です。また、導入したITツールの使用状況を記録しておくことも重要です。
パソコンやITツールを導入したら、補助金を受け取るために「事業実績報告」をおこないます。これは、導入したITツールを実際に活用していることを証明するための報告書です。
事業実績報告では、以下書類を添付して作成・提出します。
事業実績報告が審査を通過すると、指定した口座に補助金が振り込まれます。実績報告に不備があると補助金の受領が遅れる可能性があるため、IT導入支援事業者のサポートを受けながら丁寧に報告書を作成することが大切です。
また、補助金を受領したあとも導入効果の報告が必要な場合があります。
IT導入補助金2025を申請する際には、いくつかの注意点を押さえておくことで申請がスムーズに進み、採択される可能性も高まります。不安な点があれば、IT導入支援事業者に相談するのもおすすめです。
ここでは、IT導入補助金を申請する際の注意点について解説します。
IT導入補助金2025でパソコンを購入する際の注意点は、パソコン単体での申請はできないことです。インボイス制度に対応した「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を有するソフトウェアとセットで導入する必要があります。
補助対象のソフトウェアは事前に認定されたものに限られるため、IT導入支援事業者と相談しながら最適なものを選ぶことが重要です。
もう1つの重要な注意点は、交付決定を受けたあとにパソコンを購入する必要がある点です。交付決定前に購入すると、どのような理由があっても補助対象外のため、交付決定を待ってから購入手続きを進める必要があります。
また、購入はIT導入支援事業者をとおしておこなう必要があり、家電量販店やフリマアプリなどでの購入は対象外です。
本記事では、個人事業主がインボイス制度対応のためにパソコンを購入する際に活用できる補助金制度について、申請方法や注意点もあわせて解説しました。
IT導入補助金2025のインボイス枠(インボイス対応類型)を利用すれば、個人事業主でもパソコン購入費用の最大50%(上限10万円)が補助を受けられます。
ただし、申請には必ずインボイス対応ソフトウェアとセットでの導入が必要で、パソコン単体での申請はできません。また、必ずIT導入支援事業者を通じて購入する必要がある点や、交付決定後に購入手続きを進める必要がある点にも注意が必要です。
インボイス制度への対応が求められる今、この機会を活用してIT環境の整備を進めましょう。