更新日:2025.12.01

ー 目次 ー
フリーランスの動画編集者として活動するなら、欠かせないのが請求書の発行です。
「いつ送ればいいんだろう?」「源泉徴収の書き方がわからない...」「メールの文面ってこれで合ってる?」と、初めての請求書作成では戸惑うことも多いですよね。
この記事では、そんな不安を解消できるように、動画編集者向けの請求書の書き方を見本付きで分かりやすく紹介します。動画編集ならではの作業内容の書き方例、源泉徴収やインボイス制度に関する注意点まで、ひと通りまとめました。正しい知識を身につけて、クライアントと気持ちの良い関係を築きながら、安心して報酬を受け取れるようにしていきましょう。
まずは、請求書発行の基本的なタイミングと、それぞれのパターンの特徴を理解しておきましょう。
動画編集の請求書は、基本的に動画をクライアントへ納品した後に発行します。これは、クライアントが内容を確認して問題がないことを確かめたうえで支払いを行う、という日本の一般的な流れに沿ったものです。納品後に請求することで、相手も安心して取引を進められます。
また、請求書をいつ出すかは、トラブルを防ぐためにも事前に決めておくことが大切です。契約前に、クライアントとしっかり話し合い「請求のタイミング」や「支払期日」を契約書や発注書などに明記しておきましょう。
ただし、仕事の内容や契約の形によっては、請求のタイミングを柔軟に変えることもあります。次に、よくあるパターンを紹介します。
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請求タイミング |
特徴 |
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納品後(後払い) |
最も一般的なタイミング。成果物の納品・検収後に請求書を発行する。 |
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納品前(前払い・着手金) |
契約後、作業開始前に報酬の一部または全額を請求する。 |
|
分割払い |
プロジェクトの進捗に合わせて、複数回に分けて請求する。 |
|
月次締め(継続案件) |
毎月決まった日に1ヶ月分の作業費をまとめて請求する。「月末締め翌月末払い」など。 |
この章では、請求書の基本的な書き方から、動画編集者ならではの記載のポイントまで、見本を交えながら詳しく解説します。
請求書には、法律で定められた記載事項や、商習慣上記載すべき項目があります。どのクライアント宛てでも共通する基本項目なので、抜け漏れがないようにしっかり確認しましょう。
請求書を発行するあなた自身の情報を記載します。個人事業主の場合は、屋号と氏名、または氏名のみを記載します。住所、電話番号、メールアドレスといった連絡先も明記しましょう。適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の場合は、登録番号の記載も必須です。
請求書を送付する相手方の情報を正確に記載します。会社名、部署名、担当者名を記載するのが一般的です。「株式会社」を「(株)」と省略せず、正式名称で記載しましょう。担当者名が不明な場合は「経理ご担当者様」とすることもあります。
請求書番号は、複数の請求書を管理しやすくするために設定する任意の番号です。「202405-001」のように、発行年月と連番を組み合わせると管理しやすくなります。発行日は、請求書を作成・発行した日付を記載します。クライアントの締め日に合わせて発行日を指定される場合もあるため、事前に確認しておくとスムーズです。
提供したサービスの内容を具体的に記載する、請求書の中心となる部分です。品目、単価、数量、そして単価と数量を掛け合わせた金額を明記します。動画編集の案件では、この品目の書き方が特に重要になります。詳細は後述します。
取引内容に記載した金額の合計額(税抜)を記載します。複数の品目がある場合は、それぞれの金額を合算したものが小計となります。
小計金額に対してかかる消費税額を記載します。適用税率(例:10%)も併記すると、より丁寧な請求書になります。課税事業者でない場合は、消費税の請求はできません。
報酬から天引きされる源泉徴収税の金額を記載します。動画編集の業務は源泉徴収の対象となる場合があります。源泉徴収が必要かどうかはクライアントとの契約や業務内容によりますので、事前に確認が必要です。源泉徴収税額はマイナス表記で記載します。
小計、消費税を足し、源泉徴収税額を引いた、最終的にクライアントに支払ってもらう金額です。最も重要な項目なので、計算間違いがないか必ず確認し、目立つように記載しましょう。
報酬を支払ってもらう期限を明記します。通常は「月末締め、翌月末払い」など、契約時に取り決めた期日を記載します。また、振込先となる金融機関名、支店名、口座種別(普通・当座)、口座番号、口座名義(カタカナ)を正確に記載してください。
振込手数料をどちらが負担するか(例:「恐れ入りますが、振込手数料は貴社にてご負担いただけますようお願い申し上げます。」)といった補足事項や、クライアントへの感謝の言葉などを記載するスペースとして活用できます。
動画編集の請求書でクライアントが最も注目するのが「取引内容」です。
単に「動画編集料」と記載するのではなく、作業内容を具体的に示すことで、業務の透明性が高まり、クライアントからの信頼を得やすくなります。また、後から「この作業は契約に含まれていたか」といったトラブルを防ぐことにも繋がります。
作業内容を分解して記載する際の項目例を以下に示します。
|
記載項目 |
内容の例 |
ポイント |
|
基本編集作業 |
YouTube動画編集(15分以内) |
動画の長さやプラットフォームを明記すると分かりやすいです。 |
|
具体的な作業内容 |
カット編集、テロップ挿入、BGM・効果音選定・挿入 |
どのような作業を行ったかを箇条書きで示すと親切です。 |
|
追加オプション |
サムネイル作成、モーショングラフィックス制作 |
基本料金に含まれない追加作業は、別項目として立てて記載します。 |
|
素材費など |
有料素材(動画・BGM)購入費 |
クライアントの許諾を得て購入した有料素材などの実費を記載します。 |
|
修正対応 |
追加修正対応(3回目以降) |
契約で定めた無料修正回数を超えた場合の追加料金などを記載します。 |
このように作業内容を明確にすることで、自身の提供した価値を正しく伝え、適正な報酬請求の根拠とすることができます。
それでは、ここまでの内容を踏まえて、実際の請求書の見本を見てみましょう。各項目にどのような情報を記載すればよいか、具体的なイメージを掴んでください。
ご請求書
株式会社〇〇
営業部 〇〇 〇〇様
請求書番号: 202405-001
発行日: 2024年5月31日
動画クリエイター屋号
〒123-4567 東京都渋谷区〇〇 1-2-3
動画 太郎
TEL: 090-1234-5678
適格請求書発行事業者登録番号: T1234567890123
下記の通りご請求申し上げます。
合計請求金額: ¥107,880
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品目 |
単価 |
数量 |
金額 |
|
YouTube動画編集(カット、テロップ、BGM挿入) |
¥50,000 |
2 |
¥100,000 |
|
サムネイル作成 |
¥5,000 |
2 |
¥10,000 |
|
小計 |
¥110,000 |
|
消費税 (10%) |
¥11,000 |
|
源泉徴収税額 |
-¥11,220 |
|
合計金額 |
¥109,780 |
お振込先
〇〇銀行 〇〇支店
普通預金 1234567
口座名義: ドウガ タロウ
お支払期日: 2024年6月30日
備考
誠に恐れ入りますが、振込手数料は貴社にてご負担くださいますようお願い申し上げます。
この見本のように、誰が見ても内容が明確に理解できるよう、情報を整理して記載することが重要です。請求書作成ツールやテンプレートを活用し、自分なりの基本フォーマットを用意しておくと、毎回の作業が効率的になります。
フリーランスとして動画編集の仕事をする上で、請求書の作成と税金の知識は切り離せません。特に「源泉徴収」と2023年10月から始まった「インボイス制度」は、報酬の手取り額やクライアントとの取引に直接影響する重要なポイントです。
ここでは、動画編集者が請求書を発行する際に注意すべき税金について、分かりやすく解説します。
源泉徴収とは、クライアントが報酬を支払う際に、あらかじめ所得税などを差し引いて国に納める仕組みのことです。フリーランスの動画編集者も、業務内容によってはこの源泉徴収の対象になることがあります。
法律上、「動画編集」という明確な項目は所得税法に定められていませんが、実際の運用では「デザインの報酬」として扱われ、源泉徴収が行われるケースが多いのが現状です。
たとえば、企画構成やテロップの作成、エフェクト加工、BGMの選定といったクリエイティブな要素を含む編集は「デザイン業務」とみなされやすい一方で、カット編集やつなぎ合わせなど機械的な作業は対象外と判断される場合もあります。
最終的な判断はクライアントによって異なるため、契約前や請求書を発行する前に、「源泉徴収の対象になるかどうか」「処理はどちらが行うのか」を事前に確認しておくことが大切です。
源泉徴収の対象となる場合、請求書に源泉徴収税額を明記する必要があります。源泉徴収税額は、請求金額(消費税込みの金額)を基に計算します。
計算方法は以下の通りです。
※10.21%の内訳は、所得税10%+復興特別所得税0.21%です。
請求書には、算出した源泉徴収税額をマイナスの項目として記載し、最終的な合計請求金額から差し引きます。以下に記載例を示します。
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項目 |
金額 |
|
小計 |
100,000円 |
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消費税 (10%) |
10,000円 |
|
合計 |
110,000円 |
|
源泉徴収税額 (-10.21%) |
-11,231円 |
|
ご請求額 |
98,769円 |
※源泉徴収税額は、消費税を含めた報酬全体の金額(上記例では110,000円)に対して計算します。
2023年10月1日から、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まりました。この制度は、クライアント(買い手)が消費税の仕入税額控除を受けるために、「適格請求書(インボイス)」を保存することが必要になる仕組みです。
フリーランスの動画編集者がインボイスを発行するには、税務署に申請して「適格請求書発行事業者」として登録する必要があります。登録が完了すると、「T」から始まる13桁の登録番号が発行されます。
クライアントが課税事業者の場合、インボイスの発行を求められるケースもあります。もし発行できないと、クライアント側の消費税負担が増えてしまうため、取引の継続や新規契約で不利になる可能性もあります。
適格請求書発行事業者が発行する請求書(インボイス)には、従来の項目に加えて以下の記載が必要です。
これらの情報を請求書に追記することで、適格請求書として認められます。登録番号は、発行者情報の欄に記載するのが一般的です。消費税については、品目ごとに適用税率を記載し、最後に税率ごとの合計消費税額を明記しましょう。
クライアントに失礼のないように、ビジネスマナーを守って送付することがフリーランスとしての信頼につながります。ここでは、動画編集の請求書を送る際の基本的なマナーと、すぐに使えるメールの文例をご紹介します。
請求書をメールで送る際は、ファイル形式をPDFに変換するのが一般的です。WordやExcelなどの編集可能なファイル形式のまま送ると、意図しない改ざんや計算式のズレといったトラブルの原因になりかねません。
PDFであれば、誰がどのデバイスで開いてもレイアウトが崩れる心配がなく、編集もされにくいため、証憑書類として適しています。
また、ファイル名も分かりやすく設定しましょう。受け取った相手が何のファイルか一目でわかるように、「請求書番号」「取引年月日」「案件名」「発行者名」などを含めると親切です。
ファイル名の例:
「20231031_動画編集費ご請求書(株式会社〇〇様)_△△クリエイト.pdf」
クライアントは日々多くのメールを受け取っています。そのため、請求書を送るメールは、件名だけで用件が伝わり、本文は簡潔で分かりやすい内容にすることが大切です。
件名には「何の要件」で「誰からの」メールなのかが分かるように、情報を盛り込みましょう。「【】」などを使って目立たせると、他のメールに埋もれにくくなります。
件名の例:
本文には、宛名、挨拶、用件、添付ファイルの内容、結びの言葉、署名を漏れなく記載します。以下に、そのままコピーして使える例文を用意しました。必要に応じて内容を調整してご活用ください。
【メール例文】
件名:【ご請求書】動画編集費(2023年10月分)/△△クリエイト
株式会社〇〇
経理ご担当者様
いつもお世話になっております。
フリーランス動画編集者の△△(氏名)です。
先日納品いたしました動画編集の請求書を、PDFファイルにて添付いたしました。
お手数をおかけしますが、ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。
本メールと行き違いでお振込みいただいておりましたら、何卒ご容赦ください。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡ください。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
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署名
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メールの最後の「署名」には、誰からの連絡か明確にするために署名を必ず入れましょう。屋号、氏名、連絡先などを記載するのが基本です。
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屋号 |
△△クリエイト |
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氏名 |
山田 太郎(やまだ たろう) |
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郵便番号 |
〒123-4567 |
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住所 |
東京都〇〇区〇〇1-2-3 〇〇ビル4F |
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電話番号 |
090-1234-5678 |
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メール |
yamada.taro@example.com |
請求書は、原則として動画を納品した後に発行します。記載する際は、発行者情報や取引内容、合計金額、振込先といった必須項目を漏れなく記述することが重要です。特に動画編集の案件では、作業内容を具体的に記載することで、取引の透明性を高めることができます。
また、源泉徴収やインボイス制度(適格請求書等保存方式)といった税金の知識は、トラブルを未然に防ぎ、報酬を正しく受け取るために必ず押さえておくべきポイントです。ご自身の状況に合わせて、適切な対応を心がけましょう。