更新日:2024.07.27
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旅費交通費とは、出張時に発生する交通費や宿泊費などの必要経費です。業務に伴う電車、バス、タクシーなどの交通機関の利用や宿泊にかかる費用が該当します。
一方、交通費は、普段の通勤や勤務地からの移動にかかる費用を指します。
混同されやすい両者ですが、旅費交通費は通常の勤務地以外の場所への移動費用であるのに対し、交通費は通常の勤務地への通勤や勤務地からの移動費用であるという点が異なります。
項目 | 旅費交通費 | 交通費 |
定義 | 通常の勤務地以外の場所への移動費用 |
通常の勤務地への通勤や勤務地からの移動費用
|
対象となる移動 | 出張、転勤、会議・研修への参加など |
自宅と会社間の通勤、営業訪問、社用外出など
|
具体例 | 出張時の交通費・宿泊費・日当、転勤費用など |
通勤費、営業交通費、社用外出の交通費など
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税務上の扱い | 原則として全額損金算入 |
一定額まで非課税、超過分は給与所得として課税
|
この記事では、経理担当者の方に向けて、この違いを正しく理解し、適切な経理処理を行うための知識を網羅的に解説します。具体的には、以下の内容を詳しく解説します。
これらの知識を身につけることで、経費精算のミスを防ぎ、会社の利益を守ることにもつながります。ぜひ最後まで読んで、理解を深めてください。
旅費交通費とは、出張で発生する交通手段や宿泊費などの必要経費の一つです。該当項目を理解し、適切な使用や経費計上が必要です。
この章では、旅費交通費の該当例や交通費との違いについて解説します。
旅費交通費とは、業務に伴う電車やバス、タクシーなどの交通機関を利用した移動費や宿泊費を含む経費です。一般的には、出張や営業活動などで発生する費用を補填できます。
旅費交通費の代表例は以下の通りです。
これらの旅費交通費は、業務上に発生する費用が対象であり、私的な使途の場合は課税対象となるため、経費として計上ができません。そのため、業務上で発生した経費か否かを明確に切り分けて計上する必要があります。
旅費交通費とは、業務上に発生する経費であり、自分が所属する企業や団体の旅費交通費規定に則った使用が重要です。
旅費交通費の利用方法には、以下の4つの方法があります。
■自己負担した旅費や交通費を後日経費として申請する場合
旅費交通費を自己負担した場合、領収書の受け取りと保管が必要です。申請する際に、必要事項を記載した経費申請書と併せて領収書を会社に提出します。
■カードや電子マネーなどを利用して、直接支払いをする場合
カードで直接支払いする際は、領収書が発行されない場合があります。その場合は、領収書の代わりにカードの利用明細書を保管し、経費の申請を行います。
■小口現金から支払いをする場合
小口現金とは、日常的に発生する経費の支払いのために持っておく少額の現金です。小口現金で支払った場合は、支払い時に領収書を受け取り、経理担当者への提出が必要です。
■定額資金前渡制度(インプレスト・システム)による支払いの場合
定額資金前渡制度とは、会社から事前に支払いを受け取る制度です。この場合、会社側が支払い時に領収書を受け取っているため、利用者は領収書をもらう必要がありません。ただし、経費の管理漏れを防ぐため、支払い済みの記録を残しておきましょう。
旅費交通費は、出張や転勤など、通常の勤務地以外の場所への移動や滞在にかかる費用です。交通費、宿泊費、日当などが含まれます。
一方、交通費は、通勤や営業訪問など、通常の勤務地への移動にかかる費用のみを指します。
宿泊費は、出張や研修などで、業務のために宿泊施設を利用する際に発生する費用です。他にも経費で落とせる費用について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
項目 | 旅費交通費 | 交通費 | 宿泊費 |
定義 | 通常の勤務地以外の場所への移動や滞在に必要な費用 | 通常の勤務地への通勤や勤務地からの移動に必要な費用 |
出張や研修などで、業務のために宿泊施設を利用する際に発生する費用
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対象となる移動 | 出張、転勤、会議・研修への参加など | 自宅と会社間の通勤、営業訪問、社用外出など |
出張、研修、会議など
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具体例 | 出張時の交通費・宿泊費・日当、転勤費用など | 通勤費、営業交通費、社用外出の交通費など |
ホテル代、旅館代など
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税務上の扱い | 原則として全額損金算入 | 一定額まで非課税、超過分は給与所得として課税 |
旅費交通費に含まれる場合は損金算入
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■経費で落とすための条件を詳しく知りたい方はこちら
「経費で落とす」ための条件とは?計上できる費用・できない費用やメリットをわかりやすく解説
旅費交通費は、交通費や出張費と間違われやすいため、仕訳の際には注意が必要です。勘定科目について正確に理解し、適切に仕訳を行うことが重要です。この章では、旅費交通費の仕訳例と節税方法について詳しく説明します。
旅費交通費は、交通費や出張費などの似た言葉があるため、計上時に間違われやすい勘定科目です。この間違いは、仕訳について適切に理解できていないことが原因の一つです。具体的な仕訳例を知ることで、正確な勘定科目の判断ができ、適切な経理処理ができるようになります。
以下では、ある企業の社員が出張のために、費用を支払った際の旅費交通費の仕訳例を紹介します。
■新幹線代、ホテル代、飛行機代、タクシー代をそれぞれ支払った場合
借方 |
摘要 |
貸方 |
||
旅費交通費 |
105,000円 |
新幹線代:30,000円 ホテル代:20,000円 飛行機代:50,000円 タクシー代:5,000円 |
普通預金 |
105,000円 |
■新幹線代、ホテル代、飛行機代をまとめて支払った場合
借方 |
摘要 |
貸方 |
||
旅費交通費 |
100,000円 |
新幹線代:30,000円 ホテル代:20,000円 飛行機代:50,000円 |
普通預金 |
105,000円 |
未払費用 |
5,000円 |
タクシー代 |
所得税法に基づく税制措置に則り、適切な経費計上を行うことで、控除を受けることが可能です。旅費交通費にかかわる旅費控除税務制度は、以下の通りです。
これらの税務制度を活用することで、交通費や出張に伴う飲食費用などが控除対象となり、節税効果が得られます。また、旅費交通費の経費を節税するためには、費用の明細の保管が重要です。レシートや領収書などを集め、以下の項目を明記しておくことで、必要な情報を把握しやすくなります。
経費控除が可能となる税務制度を正しく理解し、旅費交通費の節税をしましょう。
※1:交通費控除制度とは、通勤や業務上の移動で発生した交通費を控除できる所得税法に基づく税制措置
※2:出張旅費特別控除とは、出張に伴う飲食代や宿泊費などの費用を控除できる所得税法に基づく税制措置
※3:中小企業等経営強化法に基づく旅費控除とは、出張に伴う交通費、宿泊費などの控除ができる中小企業等の経営強化を支援するために設けられた税制措置
経費控除に関する税制の措置や制度の改正は定期的に実施されています。制度改正があった際には、制度内容の理解と必要に応じた対応が求められます。
最近では、旅費交通費が関わる制度改正として、2023年10月1日から適格請求書等保存方式の導入による「仕入れ代金の還付にかかわる旅費等の算入について」が挙げられます。
参照元:消費税の仕入税額控除制度における 適格請求書等保存方式に関するQ&A
この改正により、消費税の仕入れ代金還付申請において旅費交通費が原則として算入対象外となりました。ただし、以下のいずれかに該当する場合は算入対象となります。
また、制度の改正により、一部の事業者にとっては財務面での影響の可能性があるため、改正後の消費税申告については、事前に念入りの確認をしておくと良いでしょう。
旅費交通費は、経費の中でも頻繁に利用されることが多く、領収書の管理や申請書の作成などの観点からも管理が煩雑になりやすいです。旅費交通費の管理が煩雑化する原因として、以下のようなものが挙げられます。
効率的な経費管理を行うには、これらの問題を解消させる必要があります。そこで、この章では、旅費交通費を効率的に管理する方法を紹介します。
旅費交通費を効率的に管理するためには、以下のような方法があります。
■領収書の整理
出張先で発生した領収書は、早めに整理しておく方が良いです。帰社後に、提出する領収書を探す手間が省け、経理担当者も円滑に経理処理を行えます。
■キャッシュレス決済の利用
現金払いの場合、支払い時の確認や入出金額の管理などのコストがかかります。キャッシュレス決済の利用時には、これらの問題が発生しないため、不要なコストの低減につながります。
■予算管理の徹底
旅費交通費の予算は、事前に決めておく方が良いです。予算を超えないように管理することで、後からの精算手続きが円滑になります。
■申請・承認プロセスの確立
経費の申請や承認のフローが不明瞭な場合、適切に経費管理ができない場合があります。申請書や承認書などの書類を必ず作成し、上長に承認をもらうことで、支払いに関するトラブルを回避できます。
■経費の意識向上
社員に対して、旅費交通費についての教育やマニュアルの配布を行うことで、経費意識を高めることが可能です。結果として、社員の経費に対する意識が向上し、正確な手順に則った経理精算ができるようになります。
これらの方法を実践することで、旅費交通費を効率的に管理することが可能です。
経費精算には、以下のような業務があり、すべて手作業で行っていると膨大な時間を要します。
これらの業務を効率的に行うには、経費管理アプリやクラウドサービスなどの専用ツールの活用が有効です。ツールの活用により、支出の記録や領収書の管理、経費の自動計算などができるようになります。また、エクセルによる支出管理もできるため、所属企業の予算や方針に合った管理方法を選択することが重要です。
旅費交通費を経理する際には、以下の4つの注意点があります。
これらの注意点を正しく理解し、実践することで、経理業務上の間違いを減らし、トラブルを回避できます。また、経費にかかわる注意点やルールを経理担当者だけでなく、社内全体で共有することが適切な経理処理につながります。
経費として承認されるには、領収書や明細書などの証明書が必要です。そのため、支払い時には領収書の受け取りと保存が重要です。
領収書が紛失した場合には、代替の証拠となる書類を取得できます。例えば、銀行振込の場合は振込明細書、クレジットカードの場合は利用明細書の発行ができます。ただし、代替の証拠となる書類でも必ずしも経費として認められるわけではなく、会社の規定や法律に基づいた範囲内であることが求められます。
企業によっては、旅費交通費の支出について、あらかじめ規程が定められています。このため、支払いに際しては、規程に沿った範囲内での支出を心がけることが必要です。
また、高額な支払いを行う場合には、事前に上司や経理部に相談し、トラブルを避けるようにしましょう。
旅費交通費は、業務で発生した交通費や宿泊費であり、個人的な支払いは、経費として計上できません。仕事中の個人的な買い物の場合や同僚の分の食事代を立て替えた場合などが該当します。
このような場合には、自己負担となる可能性があるため、できる限り個人的な支払いは避ける方が良いでしょう。
支払った費用を経費として申請する場合には、経理担当者へ経費精算書の提出が必要です。記入漏れや金額の計算に誤りがあった場合は、支払いが行われなかったり、申請のやり直したりする必要があるため、十分な注意が必要です。
経理担当者は、申請者に対して事前に経費精算書の記載における注意点を周知することにより、円滑な経理業務ができるでしょう。
旅費交通費とは、業務に伴う移動費や宿泊費を含む経費です。経費の中でも発生の頻度が高いため、経理処理時のミスを防ぐために効率的な管理が求められます。
旅費交通費を効率的に管理するには、以下の方法があります。
これらの管理方法を通して、適切かつ迅速な経理業務の実現が可能です。
経理にかかわる書類は、記入漏れや記載ミスがある場合に計上ができないため、旅費交通費を含む勘定科目について理解を深め、適切な管理が重要です。旅費交通費に含まれる経費や仕訳例を参考に、経理業務にお役立てください。