更新日:2024.07.05
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クライアントや取引先企業に対して、請求書を送付する場合に、宛名をどう書くべきか迷ってしまう方は多いのではないでしょうか。
日本語は多くの敬称があり、時と場合に応じて使い分けが必要です。適切に使い分けができないと、相手に不快感を与えたり、信頼を失ったりする可能性があります。相手と円滑にコミュニケーションを取り、良好な関係をつくるには、正しいマナーと適切な敬称の使い分けが必要です。
そこで本記事では、請求書などを送付する場合の宛名の正しい書き方や使い分けの方法、宛名を書くときの注意点を解説します。
本記事を読むことで、敬称を正しく使い分けられるようになり、迷わずに請求書の宛名を書けるようになるでしょう。クライアントや取引先に請求書などの書類を送付することが多い方は、ぜひ参考にしてください。
請求書の宛名には、マナーや望ましい書き方があります。宛名を正しく書くためには、敬称の使い分け方のポイントを把握しておくことがとても大切です。この章では、正しく書くためのコツを9つに分けてご紹介します。
「御中」は企業や部署などの団体に対して宛名を書く際に使います。たとえば、書類を送付したいものの、会社名だけしか分からないという場合は、会社名のあとに「御中」を付けます。
「御中」を使うときの注意点は下記のとおりです。
「御中」を使いたい場合は、以下のように表記します。
「御中」は、会社や部署などの集団への敬意を表す表現なので、個人に宛てる場合は使いません。
×株式会社 △△商事 販売管理部 田中一郎 御中
「御中」と「様」の併用は、きわめて丁寧な印象を与えますが、適切ではありません。たとえば下記の使い方は誤りです。
×△△株式会社 販売管理部 ご担当者様 御中
「様」は個人に宛てる場合に使用する敬称です。個人名には「様」を用い、企業や団体名には「御中」を使います。相手の地位・年齢・性別などに関係なく使用できますが、会社名のあとに「様」は付けられません。
具体的には、下記のように使用します。
会社名や部署名のあとに様をつけるのは不適切です。
×株式会社 △△商事 様
×株式会社 △△商事 販売管理部 様
目的の部署に所属している人であれば誰でも良いという場合には「御中」を使いましょう。
一度に複数の人に宛てる場合にはそれぞれに「様」を使いましょう。
具体的には、下記のように記載します。
連名の場合は、すべての人に対して「様」をつけるのがマナーです。取引先の複数の担当者を連名にして宛てる場合は、目上や先輩となる人の名前を先に書き、それぞれの名前に敬称を付けます。
会社の中にいる担当者に宛てたい場合や、部署だけは判明しているが名前が分からないという場合は「ご担当者様」を使います。
具体的な使い方は下記の通りです。
個人ではなく、その部署の中の誰かに宛てたい場合は「御中」を使っても問題ありません。より丁寧でフォーマルに宛名を書きたいときは「ご担当者様」の使用も効果的です。
どちらも間違った使用方法ではありませんが、後者のほうがよりフォーマルな印象を与えられます。
部長や課長などの役職者に宛てる場合は「役職名」+「個人名」+「様」の順番で表記します。役職名には、すでに敬意が込められています。したがって、役職名のあとに「様」をつけることは適切ではないため注意しましょう。
役職者に宛てるときは、下記のように記載します。
役職名だけの場合、相手を呼び捨てているようなイメージを持つ人も少なくないでしょう。しかし、文法として不自然なため、下記のような使い方は避けましょう。
×株式会社 △△商事 販売管理部 田中部長様
代表取締役や社長などに宛てる場合は「役職名」のあとに「個人名」と「様」を書きます。相手が経営者などの場合、かしこまったイメージがあるため「御中」を使いたくなってしまいますが、適切ではありません。
具体的には下記のように記載します。
代表者の名前が分からず「代表取締役社長様」のように書くことは失礼にあたるため注意しましょう。
書類を自分に返信してほしい場合には「宛」を使いましょう。相手に差し戻した書類を、再度送り返してほしい場合などが該当します。
たとえば、自分の名前が田中である場合、自分宛に返信してほしいときは、返信用の封筒などに下記のように記載します。
封筒を受け取った側は「宛」を二重線で消します。そのあと「様」に書き換えて送り返すと良いでしょう。
自分の所属している会社などに相手から返信をしてもらいたいときは、最後に「行」を記入します。たとえば、自分が販売管理部に所属していて、相手から返信してほしい場合は、返信用の封筒などに下記のように記載します。
書類を受け取った相手は「行」を二重線で消し「御中」に書き換えて返信します。
相手の名前が明らかな場合は、御中もしくは様も使えます。
「先生」は士業などの特別な知識や技術を保有していたり、人を指導する立場の相手に用います。マナー上は「様」もしくは「先生」でもよいとされているため、相手との関係によって使い分けるとよいでしょう。なお「先生」を使う場合は「先生様」と記載しないように注意しましょう。
この章では、請求書の宛名を書く際に疑問となりがちな7つの注意点について解説します。どれも細かいポイントですが、知らずに取引先に失礼な行いをしてしまわないよう、この機会にチェックしてみましょう。
社内文書などでみられる「各位」は、基本的には自分が所属している部署や関係者に対して使います。「各位」には、すでに相手を敬う意味が込められているため「各位様」とは書かないようにしましょう。目下の人、目上の人どちらにも使用可能です。
「殿」は目上の人が目下の人に対して使う敬称です。丁寧な印象があるので使いたくなってしまいますが、クライアントなどに使うと失礼です。請求書の宛名を書く際に使うのは避けたほうが無難でしょう。
請求書を送る場合は、送付先の確認をしておきましょう。たとえば、どこかの部署に所属している担当者に送付する場合、フルネームまで確認しておくことが大切です。その部署に担当者と同じ名字の人が、複数人在籍している可能性があるためです。相手のフルネームを確認しておくことで、同じ名字を持つ別の担当者に書類が届くことを防げます。
また、送付するときは、会社内のどの部署に送るかも確認が必要です。規模が大きい会社の場合、営業第1部、営業第2部のように、部署が複数に分かれている可能性があります。したがって、請求書や書類を送る場合は、相手が困らないように担当者のフルネームと部署名の確認をしておくと安心です。
株式会社を(株)のように省略しないようにしましょう。そのほかに気を付けるべきポイントには、下記のようなものがあります。
取引先に書類を送付する場合には、宛名の表記が長いと感じても、正式名称での記載がマナーです。
個人に宛てる場合は、フルネームで書くようにしましょう。部署名や役職名が明らかな場合は、一緒に書き添えたほうが安心です。相手の会社によっては、同じ部署名が存在していたり、同姓同名の人がいる可能性もあります。個人を特定できる判断材料をなるべく多く書くことで、相手がスムーズに対応できます。
メールを送る場合、メールの件名に「御中」を使わないようにしましょう。御中を使うのであれば、本文での使用をおすすめします。基本的には、書類を送るときと同様のマナーを意識すれば問題ありません。
請求書は、お金に関わる重要な書類のため、請求書の宛名間違いは大きなトラブルにつながる可能性があります。宛名を間違えてしまった場合は、二本線などで修正するのではなく、再発行しましょう。
万が一、宛名が間違っている請求書を相手先に送ってしまった場合は、返信用封筒を送付して返送してもらうか、破棄してもらうように依頼しましょう。
請求書は金額だけでなく、氏名や年月を記載し、誰がいつ発行したものであるか分かるようにしましょう。記載するべき項目としては、以下のようなものがあります。
また、2023年10月からはインボイス制度がはじまります。インボイス制度がはじまると、課税事業者は適格請求書の発行ができるようになります。適格請求書とは、登録番号など一定の事項が記載された請求書や、納品書などを指します。
取引先の課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、これまでの請求書項目に加え、以下の項目を追加で記載する必要があります。
小売業や飲食業、タクシー業などにかかる取引については、適格請求書に代えて適格簡易請求書を発行できます。その場合も同様に上記の項目を記載しますが、適用税率または消費税額は、どちらか片方を記載すれば良いとされています。
請求書を封筒で送るときは請求書在中などと記入したり、スタンプを押しておくと良いでしょう。そうすることで、重要な書類であることに相手が気付きやすくなり、開封されずに破棄されてしまうことを防げます。
そのほか、請求書を封筒で送るときは下記のポイントにも配慮するとよいでしょう。
これらのポイントは、明確に決まりがあるわけではありませんが、一般的なマナーとして浸透しているため、意識しておくことで相手にスマートな印象を与えられるでしょう。
取引先やビジネスパートナーと良好な関係を築き、円滑なコミュニケーションを取るために、請求書の宛名が正しく書けることは、大切な要素のひとつです。宛名の書き方や敬称の使い方はマナーとして浸透しており、これができていないとマナーのない企業と思われてしまう可能性があります。
場合によっては、相手に不快感を与えたり、信頼を失ったりするだけでなく、ビジネスチャンスを逃すこともあるかもしれません。相手に無用なマイナスイメージを与えないためにも、正しい敬称の使い方を身につけ、適切に使い分けられるようにしましょう。