更新日:2023.10.23
ー 目次 ー
請求書の郵送には印刷代や切手代など、細々としたコストがかかります。それらを省けるのがメールによる請求書の送付です。メールで請求書を送れば、そういったコストの削減やペーパーレスにもつながります。
しかし、請求書をメールで送付することは問題ないのでしょうか。
本記事では請求書をメールで送って問題ないのか、送り方のポイントや郵送との違い、注意点を交えて解説します。
紙媒体を使うことが多い請求書をメールで送ることに問題はないのか、法律上と業務上の観点から見ていきましょう。
請求書を電子データ化してメールで送ることは、法律上は問題ありません。理由として、請求書の発行形式や送付方法の法律は定められていないからです。これは取引先が企業・フリーランスどちらの場合でも変わりません。
近年はペーパーレス化が進み、電子帳簿保存法の改正も行われました。加えて、電子データを活用すればコスト削減や業務の効率化が見込めるため、少しずつメールでの請求書送付は増えています。
しかし、今まで紙媒体で請求書の原本を送っていたのに、急にメールに切り替えるのはおすすめしません。請求書は取引先が保存する必要もあるため、送付方法を変える場合は忘れずに事前に確認や報告を行いましょう。
請求書は取引先にとっても重要な書類です。円滑な取引を続けるためには、送付方法は取引先に合わせるようにしましょう。
個人事業主宛の請求書は、メールで問題ないことがほとんどです。しかし、企業の場合は請求書の原本を求める企業も少なくないため、メールで送付することに難色を示されてしまうケースも考えられます。そのような企業に対してはこれまでと同様に郵送による請求書の送付が必要です。
請求書の原本が必要な企業や、個人事業主でも紙媒体の請求書が求められる場合は、メールで送付した後に原本を郵送することを伝えておくと良いでしょう。
請求書をメールで送付する場合は、郵送との違いを知っておくことが大切です。また、デジタル化に伴う新しい意識が求められます。
ここでは、請求書を郵送で送るときとの4つの違いについて紹介します。
請求書には押印することが一般的だと思われていますが、紙媒体・メールどちらの場合も必須ではありません。メールで送る請求書に押印を入れる場合は、請求書のデータを一度プリントアウトし、印鑑を押してから再びスキャンするという手間がかかります。電子印鑑も普及し始めていますが、準備していない場合は印鑑を省いた方が効率的です。
ただし、印鑑を必須としている企業も多くあります。取引先によっては印鑑のない請求書は無効だとする所もあるため、メールによる請求書送付の確認を取る際に、押印についても確認しておくと良いでしょう。
郵送で請求書を送る場合は、しっかりと封をすれば情報が守られてきました。しかしメールで送る場合は、送る側・受け取る側双方がセキュリティを十分に確保していないと、情報が漏洩する可能性があります。
セキュリティが万全であれば、メールに直接請求書を添付する方法でも問題ありませんが、不安な場合はダウンロード用のURLとパスワードを伝える形式や、クラウドサーバーを使う形式をとりましょう。
請求書を郵送からメールに切り替える場合は、送り先のセキュリティにも配慮する必要があります。
多くのメールが毎日届く場合は、請求書を添付したメールが埋もれてしまう可能性があります。取引先がすぐに気付けるように、件名は「【会社名】〇月分請求書送付」のように分かりやすい内容に設定します。
郵送でも「請求書在中」と記載しますが、メールの場合は郵送よりも見落としが発生しやすいと思っておきましょう。メールの振り分けやソート機能を使うことも多いため、件名は毎回同じ形式にするとより親切です。
メールはワンクリックで送信が完了してしまいます。そのため、送った後に請求書の内容や宛先の間違いに気付いても、修正がしにくいです。手元が狂って途中で送信してしまうこともあるかもしれません。
請求書の誤送信は、場合によっては賠償問題に発展する可能性もあります。信頼関係を崩してしまうきっかけになることもあるでしょう。
郵送の場合は、投函した後でも回収できるチャンスがありますが、メールにはそのような猶予がないことを十分に理解し、チェック体制を整えなくてはいけません。
請求書は令和5年10月にインボイス制度が導入されると、保存の規則が変わります。紙媒体とメールでは違う部分もあるため、注意が必要です。
インボイス制度が導入された後は、請求書を発行した側にも保存義務が発生します。インボイス制度適用前は、発行した側には保存義務がありません。
郵送で送る紙媒体の請求書は写しを保存すれば問題ありませんが、データ化してメールで請求書を送っている場合は、基本的にはデータの状態で保存する必要があります。
データで送られてきた請求書を印刷し、保管するという形式が取れなくなります。これは令和4年1月1日以降に、データで受け取った国税関係の書類全てに該当する規則です。
請求書の保存期間は、事業形態や受け取った側・発行した側の違いによって差があります。インボイス制度導入後は以下のように保存期間が定められるので注意しましょう。
受け取った側の保存期間 | 発行した側の保存期間 | |
企業 | 税法上は7年 欠損金の繰越控除適用は10年 (※1) |
7年(※4) |
個人事業主 | 所得税法では5年(※2) 消費税課税事業者は7年(※3) |
発行した側の請求書保存期間は、請求先が企業・個人事業主のどちらの場合でも7年です。
インボイス制度は令和5年10月1日から導入されますので、そのときまでにインボイス適格請求書を発行する準備を整え、保存場所や保存形式も決めておく必要があります。
インボイス制度のしくみや形式、経理業務への影響などは下記ページでより詳しく解説しております。合わせてお読みください。
【インボイス制度とは?経理業務への影響】
【インボイス制度が与える影響と対策を図解で説明】
(※1)参照:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」(参照:2022-10-21)
(※2)参照:国税庁「No.2070 青色申告制度」(参照2022-10-21)
(※3)参照:国税庁「No.6621 帳簿の記載事項と保存」(参照2022-10-21)
(※4)参照:国税庁「適格請求書等保存方法の概要」(参照2022-10-21)
請求書をメールで送る際には、いくつかの注意点があります。ここで紹介する4つの注意点を確認してミスやトラブルを起こさないように努めましょう。
電子帳簿保存法は令和3年に改正されました。この改正では、さまざまな書類をデータ化して送付したり、保存したりできるようになっています。
しかし、それと同時に取引情報を記録・保存するルールも設けられました。電子帳簿を保存する義務は全ての企業にあるため、メールで請求書を送るなら対応しなくてはいけません。
電子帳簿保存法の基礎知識や対策方法は、下記ページで詳しく解説しているためぜひ参考にしてください。
【中小企業が知っておきたい電子帳簿保存法についての基礎知識と対策】
【電子帳簿保存法の罰則とは?対象と方法、違反要件も解説】
請求書はWordやExcelによる作成が多いですが、取引先にそのまま送付するのはよくありません。できるだけ読み取り専用のPDFに変換しましょう。PDFであれば、どのパソコンにも対応していることが多いです。また、PDFで送付した場合は、ファイルを読み取り専用にしてもレイアウトが崩れにくく、環境に左右されません。WordやExcel形式でも読み取り専用にして送付することで、改ざんや誤操作を防止できます。
しかし、バージョンの違いや内蔵フォントの差によってレイアウトが崩れることが多く、見づらい請求書になる可能性があります。
メールによる請求書は、紙媒体よりも存在感が薄くなりがちです。支払忘れや後回しにされることを防止するために、件名と本文に工夫をしましょう。
券面は以下の3つのことが分かるように作ります。
最低でも請求書であることと会社名は入れておきましょう。【会社名】〇月分請求書送付や【〇〇代金】〇月分請求書送付などのようにすると分かりやすいです。
添付ファイルを開かなければ、請求内容や支払期日が分からない状態だと、後回しにされるリスクが高くなります。簡易的なものでも良いので、請求内容を本文にも記載しておきましょう。
この3つが本文に書いてあれば十分です。
先述の通り、令和5年10月1日からはインボイス制度が適用されます。本制度では、請求書の保存方法や期間の他に請求書の必要項目も変わります。現行のままの請求書では必要な項目を満たせなくなるため、注意しておきましょう。
インボイス制度に対応できていないと、取引先に大きな迷惑をかけてしまう可能性もあります。下記ページではインボイスの書き方や必要事項を解説していますので、参考にしてください。
ペーパーレス化や電子帳簿保存法の改正がされ、さまざまな書類がデータ化しつつあります。請求書もそのようなデータ化が可能な書類の一つに該当するため、メールで送付を行うことは可能です。
しかし、まだまだ紙媒体を使う企業が多いため、事前準備や確認は必要ですが、データ化が進めばコストや業務負担を削減できる可能性が大いにあります。インボイス制度も始まるため、ぜひ積極的に電子化に取り組んでみてください。