更新日:2023.10.23
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電子帳簿保存法に違反した場合、重加算税の10%加重や青色申告の取り消しなどの罰則が科される可能性があります。
改めて電子帳簿保存法の内容を確認し、法改正に対応しましょう。
本記事では、電子帳簿保存法の罰則や違反になるケースを解説します。
2022年1月の法改正により、電子データでの保存が義務化された区分もあります。ここでは電子帳簿保存法の概要や3つの区分、2022年1月の法改正を紹介します。
「電子帳簿保存法は、納税者の国税関係帳簿書類の保存に係る負担の軽減等を図るために、その電磁的記録等による保存等を容認しようとするものですが、納税者における国税関係帳簿書類の保存という行為が申告納税制度の基礎をなすものであることに鑑み、適正公平な課税の確保に必要な一定の要件に従った形で、電磁的記録等の保存等を行うことが条件とされています。」
引用: 国税庁.「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_01.pdf,(参照 2022-05-27)
電子契約の普及により、取引の記録を電子データで作成したり、受け取ったりするケースが増えてきました。
電子帳簿保存法は取引記録の電子データでの保存を容認し、納税者の負担を軽減するための法律です。
一方で、電子契約は取引記録の保存方法が従来の書面契約と大きく異なります。
そこで、電子帳簿保存法は取引記録を電子データで保存するときの条件やルールを定めています。
国税庁の一問一答によると、電子帳簿保存法の場合は次の書類が国税関係帳簿書類に該当します。
区分 | 例 | 関連のある条文 |
---|---|---|
帳簿 |
● 仕訳帳 ● 現金出納帳 ● 売掛金元帳 ● 固定資産台帳 ● 売上帳 ● 仕入帳 など |
電子帳簿保存法4条または5条 |
書類 |
● 棚卸表 ● 賃借対照表 ● 損益計算書 ● 注文書 ● 契約書 ● 領収書 など |
|
電子取引の取引情報 (電子証憑) |
取引に関して受領し、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項 |
電子帳簿保存法7条 |
例えば、PDFファイルなどのオリジナル電子データで保存するケース(電子帳簿保存法4条)や、電子計算機出力マイクロフィルム(COM)で保存するケース(同5条)があります。
電子帳簿等保存の区分に該当する場合、電子データにタイムスタンプを付与する必要はありません。
なお、手書きで作成した国税関係帳簿は電子保存が認められません。
「電磁的記録等による保存等が認められる国税関係帳簿は、自己が最初の記録段階から一貫してコンピュータを使用して作成するものであることから、手書きで作成された国税関係帳簿については、電磁的記録等による保存等は認められません。」
引用:国税庁.「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」.p7
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_01.pdf,(参照 2022-05-27)
なお、2022年1月以降に作成した国税関係帳簿書類は、折れ曲がり等がないかの確認ができれば、スキャンした後すぐに原本を破棄しても構いません。[注1]
● 電子メールにより請求書や領収書等のデータを受領
● インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用
● 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
● クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
● 特定の取引に係るEDIシステムを利用
● ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
● 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領
上記の電子取引を行う場合、相手側からメールやファイルなどで受け取った取引情報(請求書や領収書などに通常記載される日付、取引先、金額などの情報)を保存する必要があります。
スキャナ保存を行う場合と同様に、受け取った電子取引データにはタイムスタンプを付与する必要があります。
例えば、メールで受け取った請求書をプリントアウトし、書面で保存することはできません。
電子データの保存義務は、2024年1月1日まで2年間の猶予期間が設けられているため、それまでに対応する必要があります。
「電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステムにおいて、その電磁的記録を保存することにより、その入力期間内に記録事項を入力したことを確認することができる場合にはその確認をもってタイムスタンプの付与に代えることができることとされたこと。」
引用:国税庁.「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」.p2
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_02.pdf,(参照 2022-05-27)
もし電子帳簿保存法に違反した場合、罰則が科される可能性があります。
例えば、2022年1月の法改正により、国税関係帳簿書類の電子データの改ざんなどが発覚した場合は重加算税が10%加重されます。
そのほか、青色申告の承認が取り消される可能性や違反内容によっては会社法に抵触し、過料が科せられる可能性もあります。
電子帳簿保存法の罰則について知り、最新の法令に対応しましょう。
● 帳簿書類を提示しない場合における青色申告の承認の取消し
● 税務署長の指示に従わない場合における青色申告の承認の取消し
● 隠蔽又は仮装の場合等における青色申告の承認の取消し
● 無申告又は期限後申告の場合における青色申告の承認の取消し
● 電子帳簿保存法の要件に従っていない場合における青色申告の承認の取消し
ただし、国税庁の一問一答によると、取引の事実がきちんと電子データ以外で確認される場合は、直ちに罰則は科されません。
これから会計システムや経費精算システムを導入する場合は、真実性と可視性の2つの要件を満たしたサービスかどうか確認しましょう。
● タイムスタンプが付された後の授受
● 速やかにタイムスタンプを付す
● データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
● 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け
● 電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け
● 見読可能装置の備付け等
● 検索機能の確保
2022年1月の電子帳簿保存法の改正内容を確認し、最新の法令に対応した会計システムや経費精算システムを導入しましょう。
[注1]国税庁.「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」.p5
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_02.pdf,(参照 2022-05-27)
[注2]国税庁.「通則【制度の概要等】」.
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/01.htm,(参照 2022-06-09)
[注3]国税庁.「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」.
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htm,(参照 2022-05-27)
[注4]国税庁.「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」.p7
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf,(参照 2022-05-27)