更新日:2024.07.27
ー 目次 ー
税金には直接税と間接税の2つの徴収方法が存在しますが、それぞれの違いを明確に理解している方は少ないのではないでしょうか。
代表的な直接税は所得税や法人税などが挙げられ、所得の差によって経済格差がでないような仕組みが用いられていることが特徴です。
本記事では、直接税の種類や間接税との違いについても解説します。企業の経理担当者や事業者の方に役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
税目 | 納税義務者 | 課税対象 | 概要 | |
地方税
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住民税 | 個人 | 前年の所得 |
市区町村に居住する個人が、前年の所得に応じて支払う税金。
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事業税 | 法人または個人事業主 | 事業所得 |
事業を行う法人または個人事業主が、その事業所得に対して支払う税金。
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固定資産税 | 土地・家屋・償却資産の所有者 | 土地・家屋・償却資産の価格 |
土地、家屋、償却資産(事業用設備など)を所有している人が、その資産の価格に応じて支払う税金。
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国税
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所得税 | 個人 | 所得金額 |
個人が1年間に得た所得に対して課される税金。
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法人税 | 法人 | 法人の所得 |
法人が1年間に得た所得に対して課される税金。
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相続税 | 相続人 | 相続または遺贈により取得した財産 |
被相続人が残した財産を相続または遺贈により取得した人が納める税金。
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贈与税 | 財産をもらった人 | 贈与により取得した財産 |
個人から財産を贈与された人が納める税金。
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直接税とは、税金を負担する本人が納める税金を指します。具体的には所得税のように、自身もしくは企業が納税額を算出して納めています。
直接税のほとんどは、収入に応じて税額が定められる累進課税制度が用いられています。高収入の方がより多くの税金を納めることで、格差を少なくすることが可能です。
ただし、この累進課税制度にはデメリットもあります。累進課税制度は収入が増えるごとに税率も増加するため、労働意欲が減少してしまう点が課題として挙げられています。
税金の種類には、直接税の他に間接税が存在します。その違いは「税金の負担者と納税者が一致しているか」によって区分されます。
ここでは、間接税とは何かを説明した上で直接税との違いを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
間接税とは、税金の負担者と納付者が異なる税金を指します。具体的には消費税などが該当します。消費税は消費者が税金を負担しますが、納付者は店舗や企業になります。
また、直接税は収入の多さによって税率が変わりますが、間接税は一律で定められています。このように、間接税は税金の負担者と納付者が異なり、税率が一律であることが直接税との違いです。
間接税の主な種類は、以下のとおりです。
間接税の多くは商品やサービスに対して税額分を上乗せすることで、いったん売り手側が徴収します。徴収した税金は、買い手側ではなく商品やサービスの売り手が納税する仕組みです。印紙税の場合は購入した時でなく、書類に貼り付けて消印をした際が納税のタイミングとなります。
直接税は確定申告時などに、自身で税額を算出・納税します。一方で間接税は、定められた税率で税負担者から予め徴収し、店舗や企業がまとめて納税します。
直接税と間接税は、それぞれ異なる「公平性」が存在し、納税者の支払い能力や負担が平等になるように税率が制定されています。ここで直接税と間接税の公平性について、解説していきます。
直接税は、収入が高ければ納税能力も高いとみなし、より大きい税金を負担することが公平だという考え方を用いた「垂直的公平」な制度です。直接税には累進課税制度が適用されており、収入の大きさによって税率が変動します。
一方で控除制度という仕組みがあるため、単に収入の大きさで納税額を決定するわけではありません。納税者の事情を考慮して控除分を差し引くことで、生活に支障をきたさない範囲で税額を算出できる仕組みになっています。
間接税は税率が一律に定められており、経済力が同じ水準の人同士に平等な税負担を求める「水平的公平」が採用されています。税金の支払い能力によって税率をかえることで公平性を保つ垂直的公平とは違い、同じ商品やサービスを購入した際は誰もが同じ税額を支払います。
直接税の垂直的公平では所得に応じて税率が異なるため、経済力が高い人がより大きな税金を負担する仕組みです。一方で間接税の水平的公平は一律で税率が定められ、購入する商品が類似している(経済力が同水準である人)と同等の税金を負担する仕組みです。このように、垂直的公平と水平的公平は国民が平等に税を負担するために、それぞれ別の観点から公平性が定められています。
直接税には、納付先が国である「国税」があり、主に以下の4つの種類があります。
税目 | 納税義務者 | 課税対象 | 概要 |
---|---|---|---|
所得税 | 個人 | 所得金額 | 個人が1年間に得た所得に対して課される税金。 |
法人税 | 法人 | 法人の所得 | 法人が1年間に得た所得に対して課される税金。 |
相続税 | 相続人 | 相続または遺贈により取得した財産 | 被相続人が残した財産を相続または遺贈により取得した人が納める税金。 |
贈与税 | 財産をもらった人 | 贈与により取得した財産 | 個人から財産を贈与された人が納める税金。 |
ここでは国税に該当する4つの直接税の特徴や注意点を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
所得税とは会社員であれば給与や家賃収入、事業主であれば売上などの「収入」に対してかかる税金です。1月1日から12月31日までの1年間で得た収入から控除分を差し引き、課税収入額に対して定められている税率をかけて算出します。
直接税のため、原則は自身で税額を算出し納税します。会社員の場合は収入から給与所得控除を差し引いた所得額から算出し、毎月の給与から天引きされます。従業員で所得税額を知りたい方は、給与明細などで確認しましょう。
個人事業主の場合は、確定申告時に収入から事業に係る経費と各種控除を差し引いて課税所得額を算出します。その後、課税所得額に対して適用税率をかけることで所得税の計算ができます。そのため、控除できるものや経費は漏れなく申請しましょう。
法人税とは、事業活動で得た所得に対してかかる税金です。基本的に、売上がある法人は支払い義務がありますが、赤字である場合は支払い義務が免除されることが特徴です。
法人税は決算後の確定申告時に、1年間の所得(課税売上)に対して税額を算出します。個人が支払う所得税は、累進課税制度が適用されていますが、法人税の税率は事業区分によって定められています。普通法人の場合の税率を下記にまとめていますので、参考にしてください。
区分 |
適用税率 |
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---|---|---|---|
資本金1億円以下の 法人など |
年800万円以下の部分 |
下記以外の法人 |
15% |
適用除外事業者 |
19% |
||
年800万円超の部分 |
23.20% |
||
上記以外の普通法人 |
23.20% |
参考:国税庁「法人税の税率」
普通法人の場合、平成31年4月1日以降は15%〜23.20%となっており、個人が納める所得税よりも税率の幅が狭くなっていることが特徴です。
相続税とは、財産を受け継いだ場合に支払う税金です。相続した財産から借金や葬式費用、基礎控除を差し引いて相続人の数で按分し、それぞれ税額控除を適用して算出します。ただし、基礎控除額よりも、相続額が下回る場合は納税義務はありません。
相続税は財産が大きいほど税額も高くなる仕組みのため、家系ごとの経済格差を縮小する機能があります。
贈与税とは、財産を贈与する人が存命中に受け継いだ場合に支払う税金です。基礎控除額が110万円となっており、超える場合にのみ納税義務が生じます。
相続税と贈与税の違いは、財産を受け継ぐタイミングにあります。相続税は、贈与人の死後に財産を受け継ぐ場合に支払いますが、生前に受け継ぐ場合には贈与税です。税額の算出方法がそれぞれ異なるため、どちらにあたるかを確認した上で、正しく算出できるようにしましょう。
また、法人から資産を受け継いだ場合は、贈与税ではなく所得税が課税されますので、この点も注意が必要です。
直接税には、納付先が地方である「地方税」があり、主に以下の3つの種類があります。
税目 | 納税義務者 | 課税対象 | 概要 |
---|---|---|---|
住民税 | 個人 | 前年の所得 | 市区町村に居住する個人が、前年の所得に応じて支払う税金。 |
事業税 | 法人または個人事業主 | 事業所得 | 事業を行う法人または個人事業主が、その事業所得に対して支払う税金。 |
固定資産税 | 土地・家屋・償却資産の所有者 | 土地・家屋・償却資産の価格 | 土地、家屋、償却資産(事業用設備など)を所有している人が、その資産の価格に応じて支払う税金。 |
ここでは、地方税に該当する4つの直接税の特徴や注意点を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
住民税とは、市区町村に住所がある個人や事業者が支払う税金です。個人の場合は個人住民税、法人の場合は法人住民税と2種類存在します。
基本的には1月1日時点での居住地で支払い先が決定し、個人住民税は年間の所得額が45万円を超えると課税対象になります。
法人の場合は法人税割と均等割があり、属する地域によって税率が異なります。また、均等割は従業員数を基準としているため、赤字の場合でも納税義務が発生します。
事業税とは、法人または個人事業主などが事業を営んでいる場合に支払う税金です。個人の場合は個人事業税となり、職種によって税率が異なります。
法人の場合は法人事業税となり、以下の4種類で構成されています。
法人事業税は上記の4種の税割に加え、業種や各都道府県によって税率が異なるため注意が必要です。
固定資産税とは、土地や家屋を所有する人が支払う税金です。基本的に所有する不動産がある場合は、固定資産税の納税義務があります。
固定資産税は資産価値によって金額が変動するため、自治体が固定資産の評価を行い、その結果によって納税額を算出します。固定資産の価値は変動するため、3年に一度は評価の見直しが行われています。
所有資産の価値が見直されることによって納税額も変わるため、毎年一定の税額ではないことに注意が必要です。
直接税には「申告納税方式」と「賦課課税方式」の2つの納付方式があります。戦前までは、賦課課税方式が一般的でしたが、昭和22年に税制を民主化することを目的として、申告納税方式が加えられています。そのため現在では、税金の種類によって異なる納税方式が採用されている状況です。
ここでは、申告納税方式と賦課課税方式の2つの納税方式について、それぞれ解説していきます。
申告納税方式とは、納税者が自身で税額を算出し納税する制度を指します。具体的には、法人税や所得税などが該当し、ほとんど全ての国税において採用されている納税方式です。
申告納税方式は確定申告で納税者自身が税額を算出しますが、国民一人ひとりが納税意識を高く持つためという理由があります。
そのため、納税者が期日までに自主的に税金を納めるよう、納税期限を記載した通知を出すなどの取り組みが行われています。理由なく滞納した場合には、延滞税が課されたり財産の差し押さえを受けたりする可能性があるので注意しましょう。
賦課課税方式とは、行政が税額を算出して通知する制度です。具体的には、住民税や事業税などが該当し、基本的に地方税は賦課課税方式が採用されています。
納税者は通知書に記載されている税額を確認し、記載された期日までに納付します。ただし、通知書に記載された納税額や内容に誤りがある場合は、行政庁に確認することが可能です。
申告納税方式は納税者自身で税額を算出しているため、その責任は個人が追うことになっていますが、賦課課税方式では税額に誤りがある場合、算出している行政の責任となります。
直接税とは税金を負担する人が直接納税することを指し、該当する税金の多くに累進課税制度が用いられています。
税金は国民が平等に負担する必要がありますが、直接税では高所得者と低所得者の差が開きすぎないようにするため、垂直的公平が採用されています。その反面、収入が増えるごとに税額も増加するため、労働意欲が減少してしまう点も理解しておきましょう。
また、間接税では水平的公平が採用されており、直接税と間接税で異なる公平性を維持することで、貧富の差の拡大を防ぎつつ、納税者の平等性を担保することを目的としています。
国民一人ひとりが税金について理解することが重要です。特に企業の経理担当者の方や事業者の方は、直接税と間接税の違いや納税方法について理解しておきましょう。