更新日:2025.11.28

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請求書を送る際や受け取った際に、「請求書」と「ご請求書」のどちらを使うべきか迷ったことはありませんか。一見ささいな違いに思えますが、相手との信頼関係やビジネスマナーに直結する大切なポイントです。
本記事では、敬語の観点から両者の違いを整理し、送る側・受け取る側それぞれの立場での適切な使い方を具体例とともに解説いたします。読み終えていただければ、「社外向けにはご請求書?」「社内では請求書でいい?」といった疑問もすっきり解決するはずです。
ここでは、「請求書」と「ご請求書」の根本的な違いと、背景にある敬語のルールについて分かりやすく解説します。
「請求書」と「ご請求書」の最も大きな違いは、相手への敬意が込められているかどうかにあります。
「請求書」は単に書類の種類を示す名詞ですが、接頭語の「ご」を付けることで丁寧な表現に変わります。
「ご請求書」で使われる「ご」は、敬語の中でも「丁寧語」に分類されます。
ビジネスで使われる敬語には、丁寧語のほかに「尊敬語」と「謙譲語」があり、それぞれの役割を理解することで、より適切な言葉遣いが可能になります。
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敬語の種類 |
役割 |
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尊敬語 |
相手や第三者の行為・状態などを高めることで、敬意を表します。 |
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謙譲語 |
自分側の行為・状態などをへりくだることで、相手を立てて敬意を表します。 |
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丁寧語 |
言葉遣いを丁寧にすることで、相手への敬意を表します。話す相手を問わず幅広く使えます。 |
このように、「ご請求書」は相手を問わず使える丁寧語であり、ビジネスコミュニケーションにおいて非常に便利な表現です。
次の章からは、実際に請求書を送る側と受け取る側、それぞれの立場でどちらの表現を使うべきかを具体的に見ていきましょう。
ここでは、請求書を送る側の立場から、適切な表記方法や注意点について解説します。
取引先など社外の相手に送付する請求書では、表題を「ご請求書」と記載するのが一般的です。
もちろん「請求書」という表記が間違いというわけではありません。しかし、ビジネス文書においては、より丁寧な印象を与える「ご請求書」が広く使われています。
相手に失礼な印象を与えることなく、スムーズな取引につながります。
請求書をメールで送付する場合、件名や本文の表現にも配慮が必要です。
件名は、受信者が一目で内容を理解できるよう、具体的かつ簡潔に記載します。本文では、請求書を添付した旨を明確に伝え、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。
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項目 |
適切な表現例 |
ポイント |
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件名 |
【株式会社〇〇】ご請求書送付のご案内(2023年11月分) |
会社名と用件を明記し、いつの請求分かを記載すると親切です。「請求書」ではなく「ご請求書」を使いましょう。 |
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本文 |
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 2023年11月分のご請求書をPDFファイルにて添付いたしました。 ご査収くださいますよう、お願い申し上げます。 |
日頃の感謝を述べた後、用件を簡潔に伝えます。「添付いたしました」「ご査収ください」といった丁寧な表現が適切です。 |
「ご請求書」の「ご」を漢字にした「御請求書」という表記を見かけることもあります。
どちらを使ってもマナー違反にはなりませんが、現代の一般的なビジネスシーンでは、やわらかい印象を与えるひらがなの「ご請求書」が主流です。迷った場合は「ご請求書」を使用するのが無難でしょう。
請求書は送る側だけでなく、受け取る側にも適切な対応が求められます。ここでは、請求書を受け取った際の正しい呼称とビジネスマナーについて解説します。
社内の上司や同僚、経理担当者とのやり取りでは、敬語表現である「ご」を付ける必要はありません。
身内に対しては、シンプルに「請求書」と呼ぶのが一般的です。過度に丁寧な言葉遣いは、かえって不自然に聞こえる場合があります。
例えば、以下のような場面では「請求書」を使用します。
一方、請求書を発行してくれた取引先と会話する際には、相手への敬意を示すために「ご請求書」という丁寧な表現を用います。
これは、相手の所有物や行為に対して接頭語「ご」を付ける尊敬表現にあたります。受領の連絡や内容の確認など、さまざまな場面で「ご請求書」を使いましょう。
具体的なシーンごとに適切な表現と避けるべき表現をまとめました。
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シーン |
適切な表現(推奨) |
避けるべき表現(NG例) |
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メールで受領を連絡する |
「ご請求書を拝受いたしました。」 「ご請求書の送付、誠にありがとうございます。」 |
「請求書を受け取りました。」 「請求書、確認しました。」 |
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電話で内容を確認する |
「先日お送りいただいたご請求書の件で、1点確認させてください。」 |
「そちらから来た請求書の件ですが...」 |
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支払完了を通知する |
「〇月〇日付のご請求書につきまして、本日お振込みの手続きをいたしました。」 |
「あの請求書の件、支払っておきました。」 |
取引先との円滑な関係を築くためにも、相手を敬う姿勢を言葉で示すことが大切です。
ここでは、「請求書」と「ご請求書」の使い分けに関して、ビジネスシーンでよくある具体的な疑問についてQ&A形式で解説します。
結論として、ファイル名は「請求書」で問題ありません。
メールの件名や本文では相手への敬意を示すために「ご請求書」と表記しますが、ファイル名はデータとしての管理や検索性を重視するため、敬称を省くのが一般的です。ファイル名に発行日や取引先名、案件名などを入れると、送る側も受け取る側も管理しやすくなります。
(ファイル名例:20231031_請求書_株式会社〇〇.pdf)
「ご請求書をお送りいたします」は、取引先への連絡として一般的かつ適切な表現です。
「ご請求書」は丁寧語、「お送りいたします」は「送る」の謙譲語「お送りする」と「する」の丁寧語「いたします」を組み合わせた丁寧な表現です。ビジネスメールにおいて、相手への敬意を示すために広く使われており、丁寧すぎるということはありません。
むしろ「請求書を送ります」では少し事務的でぶっきらぼうな印象を与えかねないため、この表現を使うのが望ましいでしょう。
受け取る側も、相手から送られてきた書類を指すため「ご請求書」と表現するのが丁寧で正しいマナーです。
相手の所有物や行為に対して敬意を示すため、「ご」を付けたまま返信します。例えば、「ご請求書を拝受いたしました。」や「ご請求書の内容を確認いたしました。」のように使います。
自分で発行した請求書について話す場合は「請求書」ですが、相手が発行したものを指す場合は「ご請求書」と覚えておきましょう。
請求書以外のビジネス書類でも、同様に接頭語の「ご」や「お」を付けて敬意を表すのが一般的です。主な書類の敬語表現は以下の通りです。
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書類名 |
送る側の表記(丁寧語) |
受け取る側が言及する際の表現 |
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請求書 |
ご請求書 / 御請求書 |
ご請求書 |
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見積書 |
お見積書 / 御見積書 |
お見積書 / 御見積書 |
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領収書 |
領収書(※) |
ご領収書 |
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納品書 |
ご納品書 / 御納品書 |
ご納品書 |
※領収書は慣習的に「領収書」とそのまま表記されることが多いですが、「ご領収書」としても間違いではありません。また、「見積書」のように「お」が付くものと、「請求書」のように「ご」が付くものがあるため、書類によって使い分けましょう。
「請求書」と「ご請求書」の違いは、単なる言葉の選び方ではなく、相手への敬意をどう表すかというビジネスマナーの基本です。取引先など社外に送る際は「ご請求書」とし、社内でのやり取りやファイル名ではシンプルに「請求書」とするのが無難でしょう。状況に応じて自然に使い分けることで、取引先に対しては丁寧な印象を与え、社内では効率的なやり取りが可能になります。送る側・受け取る側それぞれの視点を参考に、状況に応じて適切な言葉を選び、円滑なコミュニケーションを心がけましょう。