更新日:2025.11.28

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請求書のフォント、何となく初期設定のまま使っていませんか?実は、フォントの選び方ひとつで「印象」も「信頼感」も大きく変わります。読みやすく整った書体は、取引先への誠実さを伝える小さなマナーでもあるのです。この記事では、請求書のフォントを選ぶうえで知っておきたい3つの基本ポイントと、ビジネスシーンで安心して使える定番フォント5選を紹介します。さらに、文字化けを防ぐ設定や、MacとWindowsの違いによる注意点もあわせて解説します。
ここでは、請求書のフォントを選ぶ際に押さえておくべき3つの重要なポイントを解説します。
請求書で最も重要なのは、情報が誰にとっても正確に読み取れることです。読み間違いは、入金遅延や金額の誤りといった重大なトラブルに直結しかねません。線が細すぎたり、装飾が多かったりする奇抜なフォントは避け、シンプルで明瞭な書体を選びましょう。
特に、数字の判別しやすさは重要です。例えば、「1」と「l(小文字のエル)」、「0(ゼロ)」と「O(大文字のオー)」が見分けにくいフォントは避けるべきです。
ポップ体や手書き風フォントのようなカジュアルすぎる書体は、ビジネスの場にふさわしくなく、相手に軽薄な印象や不信感を与えてしまう可能性があります。取引先に誠実さや信頼性を示すためにも、フォーマルな書体を選びましょう。
請求書をExcelやWordなどのファイル形式で送付する場合、相手のパソコンに同じフォントがインストールされていないと、別のフォントに置き換えられて表示が崩れてしまう「文字化け」や「レイアウト崩れ」の原因になります。
独自に購入・インストールしたデザインフォントは、自社の環境では美しく表示されても、取引先の環境では正しく表示されないリスクが高いことを覚えておきましょう。請求書のような重要な文書では、環境依存の少ない、誰もが利用できるフォントを選ぶことがビジネスマナーです。
ビジネスの現場ではWindowsが主流ですが、デザイン業界などではMacを使う企業も多くあります。ここで注意したいのが、WindowsとMacでは標準搭載のフォントが異なるという点です。このようなフォントを「環境依存フォント」と呼びます。
たとえば、Macに標準で入っているフォントは、Windowsでは使えません。そのため、Macのフォントを使って作成した請求書をWindowsで開くと、自動的に別のフォントに置き換えられ、文字サイズや字間がずれてレイアウトが崩れることがあります。
独自に購入・インストールしたデザインフォントなども自社の環境では美しく表示されても、取引先の環境では正しく表示されないリスクが高いことを覚えておきましょう。請求書のような重要な文書では、環境依存の少ない、誰もが利用できるフォントを選ぶことがビジネスマナーです。
請求書作成でどのフォントを使えば良いか迷う方のために、ビジネスシーンで定番とされるおすすめのフォントを5つご紹介します。それぞれのフォントが持つ特徴や印象を理解し、自社のイメージや取引先に合わせて最適なものを選びましょう。
游明朝は、WindowsとMacの両方に標準搭載されていることが多い、比較的新しい明朝体です。
上品で知的な印象を与え、長文でも読みやすいように設計されています。文字の線の太さが均一に近いため、ディスプレイ上でもすっきりと表示されます。デザイン性を重視しつつ、フォーマルさも保ちたい場合に最適です。
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特徴 |
メリット |
デメリット |
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上品で現代的な明朝体 |
WindowsとMacの両方で利用でき、環境を問わず同じ見た目を再現しやすい。洗練された印象。 |
線が細いため、小さな文字サイズでは視認性がやや落ちることがある。 |
MS明朝は、長年にわたりWindowsに標準搭載されてきた、非常にポピュラーな明朝体フォントです。
横線が細く縦線が太いという明朝体の特徴がはっきりしており、フォーマルで信頼感のある印象を与えます。特に紙に印刷した際の可読性が高く、公的な書類や伝統を重んじる企業向けの請求書に適しています。
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特徴 |
メリット |
デメリット |
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伝統的でフォーマルな明朝体 |
多くのWindows PCに標準搭載されており、環境依存の問題が起きにくい。信頼性が高い。 |
ディスプレイ上では、線が細い部分がかすれて見えることがある。 |
MSゴシックは、MS明朝と並んでWindowsに古くから標準搭載されているゴシック体フォントです。
線の太さが均一で、はっきりとした力強い印象を与えます。特に数字やアルファベットの視認性に優れており、金額や品番といった情報を正確に伝えたい請求書の項目部分に適しています。Excelなどで作成する帳票類と非常に相性が良いフォントです。
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特徴 |
メリット |
デメリット |
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視認性の高い定番のゴシック体 |
画面上でも文字が潰れにくく、数字が見やすい。多くのPCで利用できる。 |
長文になると、やや無機質で機械的な印象を与えることがある。 |
メイリオは、「明瞭」という言葉が語源の通り、ディスプレイ上での読みやすさを徹底的に追求して開発されたフォントです。
Windows Vista以降のOSに標準搭載されています。やや丸みを帯びたデザインで、文字と文字の間隔が広めに設計されているため、クリアで親しみやすい印象を与えます。PDFで請求書を送付する場合など、デジタルでのやり取りが中心の場合におすすめです。
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特徴 |
メリット |
デメリット |
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画面表示に最適化されたゴシック体 |
クリアで視認性が非常に高い。柔らかく、現代的な印象を与える。 |
文字幅が広いため、限られたスペースに多くの情報を詰め込みたい場合には不向き。 |
Noto Sans JPは、GoogleとAdobeが共同開発したオープンソースのフォントです。
シンプルで癖がなく、誰にとっても読みやすいデザインが特徴です。無料でダウンロードでき、商用利用も可能なため、OSや環境を問わず誰でも利用できます。文字化けのリスクが極めて低く、あらゆるデバイスで意図した通りの表示がされやすいため、Webサービス経由での請求書発行などにも安心して使用できます。
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特徴 |
メリット |
デメリット |
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シンプルで汎用性の高いモダンなゴシック体 |
無料で利用可能。文字化けのリスクが低く、クロスプラットフォームで使いやすい。 |
PCに標準搭載されていないため、利用するには事前にインストールが必要。 |
せっかく読みやすいフォントを選んでも、相手の環境で正しく表示されなければ意味がありません。ここでは、そうした失敗を防ぐための具体的な注意点を解説します。
請求書をメールで送ったときに「文字化け」や「レイアウト崩れ」が起きることがあります。これは、作成したときに使ったフォントを、相手のパソコンが持っていないことが主な原因です。
このトラブルを防ぐ一番確実な方法は、請求書をPDF形式で送ることです。
PDFは作成時のフォントやレイアウト情報をファイル内に埋め込めるため、相手のパソコン環境(OSやフォントの違い)に左右されず、自分が作ったとおりの見た目を保てます。
また、WordやExcelからPDFを作るときは、「フォントをファイルに埋め込む」という設定があるかを必ず確認しましょう。この設定をオンにしておけば、特殊なフォントを使っていても、相手の環境で正しく表示される可能性がぐっと高まります。
請求書全体の「見やすさ」は、フォントの種類だけでなく、文字サイズと行間のバランスによって大きく左右されます。小さすぎる文字は読みにくく、大きすぎると間延びした印象を与えてしまいます。読み手にとってストレスのない、適切な設定を心がけましょう。
一般的に、ビジネス文書で推奨されるフォントサイズと役割は以下の通りです。
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項目 |
推奨フォントサイズ(目安) |
ポイント |
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本文・明細 |
10.5pt 〜 12pt |
基本となるサイズ。小さすぎず、読みやすい大きさを維持します。 |
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見出し・タイトル |
14pt 〜 16pt |
本文より一回り大きくし、情報の階層を分かりやすくします。 |
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注釈・補足事項 |
9pt 〜 10pt |
本文より小さくすることで、補足情報であることが明確になります。 |
また、行間が詰まっていると、文章全体が窮屈で読みにくくなります。WordやExcelなどのソフトでは、行間を「1.5」程度に設定すると、適度な余白が生まれて可読性が向上します。全体の余白(マージン)も十分に確保し、情報が整理された美しいレイアウトを目指しましょう。
請求書以外にも、ビジネスシーンではさまざまな文書を作成します。ここでは、契約書や公文書、英文文書など、特定のビジネス文書におけるフォントの疑問についてQ&A形式で解説します。
契約書のフォントに関して、法律上の具体的な決まりはありません。しかし、誰が読んでも内容を正確に理解できること、そして改ざんされにくいことが重要視されます。そのため、一般的には可読性が高く、フォーマルな印象を与える「明朝体」が選ばれる傾向にあります。
請求書と同様に、Windows環境であれば「MS明朝」や「游明朝」が定番です。これらのフォントは多くのPCに標準でインストールされており、文字の判別がしやすいため、契約内容の誤読を防ぐのに適しています。特別な理由がない限り、奇抜なフォントや装飾的なフォントの使用は避け、信頼性を損なわない書体を選びましょう。
近年、中央省庁をはじめとする多くの官公庁では、ユニバーサルデザイン(UD)フォントの利用が推奨されています。これは、年齢や能力にかかわらず、より多くの人にとって読みやすい文書を作成することを目的としています。
具体的には、デジタル庁が推奨するフォントなどが該当します。伝統的に「MS明朝」や「MSゴシック」も広く使われてきましたが、現在はアクセシビリティへの配慮からUDフォントの採用が進んでいます。
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フォントの種類 |
代表的なフォント名 |
主な特徴 |
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UDフォント |
BIZ UDゴシック/明朝、UDデジタル教科書体 など |
文字の形が分かりやすく、誰にでも読みやすいように設計されている。 |
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標準的なフォント |
MS明朝、MSゴシック |
長年にわたり公文書で利用されてきた実績があり、広く普及している。 |
海外企業向けの英文ビジネス文書では、世界的に広く使われている定番のフォントを選ぶのが最も無難です。日本語の「明朝体」「ゴシック体」のように、英文フォントにも「セリフ(Serif)体」と「サンセリフ(Sans-serif)体」という大きな分類があります。
セリフ体は文字の端に「ひげ」のような装飾がある書体で、伝統的・公式な印象を与えます。一方、サンセリフ体は装飾がなくシンプルな書体で、モダンでクリーンな印象を与えます。文書の目的や相手企業に合わせて使い分けるのが良いでしょう。
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書体の種類 |
代表的なフォント名 |
特徴・主な用途 |
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セリフ体 (Serif) |
Times New Roman, Georgia |
伝統的、フォーマルな印象。契約書や公式レターなど、格調高い文書に適している。 |
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サンセリフ体 (Sans-serif) |
Arial, Helvetica, Calibri |
モダン、クリーンな印象。プレゼン資料やメール、Webサイトなど、画面上での可読性も高い。 |
特に「Times New Roman」と「Arial」は、WindowsとMacの両方に標準インストールされていることが多く、環境依存による文字化けのリスクが低いため、安心して使用できます。
フォント選びで大切なのは、「誰にでも読みやすく」「信頼感を損なわない」、そして相手の環境でも崩れずに表示される標準フォントを選ぶことです。請求書は取引の信頼を形にする大切な書類です。見やすさや整い方ひとつで、受け取る印象が変わります。まずはMS明朝やメイリオなどの定番フォントから試して、自社の雰囲気に合う書体を選んでみてください。