更新日:2025.12.01

ー 目次 ー
取引先にメールで請求書を送る際、「ファイル名に『御中』は必要?」「どんな付け方をすれば失礼にならないだろう?」と迷った経験はありませんか?この記事ではビジネスマナーの基本から、受け取った相手が管理しやすく、かつ「仕事が丁寧だ」と好印象を与えるファイル名の付け方までを徹底解説します。この記事を読めば請求書のファイル名に関するあらゆる疑問が解決するはずです。
結論からお伝えすると、請求書をメールで送付する際、ファイル名に「御中」や「様」といった敬称を付ける必要は基本的にありません。
取引先に送る大切な書類だからこそ、敬称を付けた方が丁寧だと感じるかもしれませんが、ファイル名が持つ役割を理解すれば、その必要がないことが分かります。
ファイル名の最も重要な役割は、そのファイルが「いつ、誰が、何の目的で作成した書類か」を識別し、管理しやすくすることにあります。
受信者側は、受け取った請求書ファイルを自社のフォルダに保存し、後から検索したり整理したりします。その際に、ファイル名に「御中」などの敬称が含まれていると、ファイル名の統一性がなくなり、並べ替えや検索の際に不便になる可能性があります。ファイル名はあくまで事務的な識別子であり、敬意を示す場ではないと覚えておきましょう。
では、取引先への敬意はどこで示せばよいのでしょうか。それは、メールの本文と請求書という書類本体です。それぞれの役割を整理すると、以下のようになります。
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項目 |
主な役割 |
敬称(御中・様)の要否 |
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ファイル名 |
書類の識別と管理 |
不要 |
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メール本文 |
挨拶、用件の伝達 |
必要(宛名部分で示します) |
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請求書(書類本体) |
取引内容の正式な証明 |
必要(宛名部分で示します) |
このように、敬称は相手の目に直接触れるメール本文や請求書本体の宛名で正しく使用するのがビジネスマナーです。
請求書のファイル名は、ファイルを開かなくても「いつ」「誰から」「何の」書類であるかが一目でわかるように設定することで、取引先に丁寧で仕事がしやすい印象を与えられます。
ここでは、敬称の正しい使い方と、ファイル名に含めるべき具体的な要素を解説します。
ファイル名に「様」や「御中」といった敬称は不要です。
ただし、ビジネス文書における敬称の使い分けは非常に重要です。参考までに、一般的な宛名での敬称の使い分けルールを以下にまとめます。
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宛先 |
使用する敬称 |
具体例 |
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会社・部署など組織名 |
御中 |
株式会社〇〇 御中 株式会社〇〇 経理部 御中 |
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個人名 |
様 |
株式会社〇〇 経理部 鈴木一郎 様 |
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役職名+個人名 |
様(役職名の後につける) |
株式会社〇〇 代表取締役社長 佐藤花子 様 |
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弁護士・税理士・医師など |
先生 |
山田法律事務所 山田太郎 先生 |
取引先にとって分かりやすく、管理しやすい請求書ファイル名を作成するために、以下の4つの要素を組み合わせるのがおすすめです。これらの要素をアンダースコア(_)やハイフン(-)でつなぐことで、視認性が高まります。
請求書を発行した日付をファイル名に含めることで、「いつの請求か」が明確になります。形式は「20231031」のように8桁の西暦(YYYYMMDD)にすると、ファイルが日付順に並び替えやすく、管理が非常に楽になります。
「請求書」という文言を必ず入れましょう。これにより、受け取った相手が見積書や納品書、領収書など他の書類と間違えるのを防ぎます。シンプルですが、非常に重要な要素です。
請求書に記載している請求番号(例:No.2310-001)や、具体的な案件名(例:Webサイト制作)を入れると、どの取引に関する請求書なのかが一目瞭然になります。双方で書類の特定が容易になり、問い合わせなどもスムーズに進みます。
ファイル名の末尾に自社の会社名や屋号を記載します。これにより、受け取った相手は「誰からの請求書か」をすぐに認識できます。特に複数の企業と取引がある担当者にとっては、非常に親切な配慮となります。
ここでは、実際に請求書を送付する際に、コピー&ペーストして使えるファイル名の具体例を3つのパターンに分けてご紹介します。自社の運用ルールや取引先との関係性に合わせて、最適なものを選んで活用してください。
最も基本的で、多くのビジネスシーンで通用するのが「発行日付」「書類の種類」「発行元」を組み合わせたファイル名です。誰が見ても内容を推測しやすく、受け取った相手がファイルを管理しやすいというメリットがあります。
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項目 |
ファイル名 |
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基本パターン |
[発行日付]_[書類の種類]_[発行元名] |
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具体例1(年月日) |
20231031_請求書_株式会社ABC |
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具体例2(年月) |
2023年10月分_請求書_ABC商事 |
日付をファイル名の先頭に置くことで、パソコンのフォルダ内で自動的に時系列に並び、後から探しやすくなります。
特定のプロジェクトや案件ごとに請求書を発行する場合、ファイル名に案件名を含めると、どの取引に関する請求書なのかが一目瞭然になります。特に、同じ取引先と複数の案件を同時に進めている場合に効果的です。
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項目 |
ファイル名 |
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基本パターン |
[発行日付]_[書類の種類]_[案件名]_[発行元名] |
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具体例1 |
20231031_請求書_Webサイト制作費_株式会社ABC |
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具体例2 |
231031_請求書_10月分コンサルティング料_ABC商事 |
案件名を加えることで、取引先の経理担当者が内容を確認する手間を省くことができ、スムーズな支払処理につながります。
多くの企業では、請求書を番号で管理しています。ファイル名にも請求書番号を入れておくと、自社での管理はもちろん、取引先からの問い合わせ時にも「請求書番号〇〇の件で」と伝えれば、双方で書類の特定が迅速かつ正確に行えます。
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項目 |
ファイル名 |
|
基本パターン |
[発行日付]_[書類の種類]([請求番号])_[発行元名] |
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具体例1 |
20231031_請求書(No2310-001)_株式会社ABC |
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具体例2 |
請求書_INV202310-01_ABC商事_20231031 |
請求書番号の付け方に厳密なルールはありませんが、「発行年月+連番」のように規則性を持たせると管理しやすくなります。
ここでは、取引先にマイナスな印象を与えかねない、避けるべきファイル名の付け方を3つのポイントに絞って解説します。
ファイル名が「請求書.pdf」や「ご請求書.pdf」だけでは、受け取った側は誰から何の請求書なのかをファイルを開くまで判断できません。
毎月多くの請求書を処理する経理担当者にとっては、ファイル名だけで内容を把握できないと管理が煩雑になります。他の取引先から届いた同名のファイルと混同したり、誤って上書きしてしまったりするリスクも高まります。
ファイル名に使う数字やアルファベット、記号の半角と全角が統一されていないと、見た目が整わず、雑な印象を与えてしまう可能性があります。
また、システムによっては半角と全角を別の文字として認識するため、ファイル検索の際にヒットしない原因にもなり得ます。特に日付や請求番号などの数字は、半角に統一するのが一般的です。ファイル名を作成する際は、表記のルールを統一することを心がけましょう。
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NG例(半角と全角が混在) |
OK例(半角に統一) |
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2024年5月請求書(株式会社ABC).pdf |
202405_請求書_株式会社ABC.pdf |
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請求書_No.12345_株式会社サンプル |
請求書_No.12345_株式会社サンプル.pdf |
パソコンのOS(WindowsやMacなど)や環境によって表示できない文字を「機種依存文字」と呼びます。ファイル名にこれらの文字を使用すると、相手の環境では文字化けしてしまい、ファイル名が正しく表示されない可能性があります。
文字化けしたファイルは内容が不明なため、開封をためらわれたり、迷惑メールと誤解されたりする恐れもあります。トラブルを避けるため、誰の環境でも表示できる一般的な文字のみを使いましょう。
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文字の種類 |
具体例 |
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丸付き数字 |
① ② ③ など |
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ローマ数字 |
Ⅰ Ⅱ Ⅲ など |
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単位や記号 |
㈱ ㍻ № など |
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半角カタカナ |
サンプル セイキュウショ など |
請求書のファイル名に関して、特に判断に迷いやすい疑問点や細かいルールについてQ&A形式で解説します。取引先との円滑なコミュニケーションのために、ぜひ参考にしてください。
フリーランスや個人事業主の方も、請求書ファイル名の付け方の基本ルールは法人と変わりません。むしろ、誰からの請求書かを明確にするために、発行元をファイル名に入れることがより重要になります。
ファイル名に屋号や個人名(姓だけでも可)を追記することで、受け取った担当者が「どの取引先からの請求書か」を一目で判断できるようになります。多くの企業は複数のフリーランスと取引しているため、この配慮がスムーズな経理処理につながります。
【フリーランス向けのファイル名例】
このように発行元を明記することで、他の請求書ファイルと混同されるのを防ぎ、丁寧な印象を与えることができます。
取引先の会社名が長い場合、ファイル名の見やすさを考慮して省略したくなることもあるでしょう。基本的には正式名称を記載するのが最も丁寧ですが、分かりやすさを損なわない範囲であれば、一般的な省略は許容されることが多いです。
例えば、「株式会社」を「(株)」と省略するのはビジネスマナーとして広く浸透しており、問題ありません。ただし、独自の略称を使うのは避けましょう。相手が普段から使っている通称などがあればそれに合わせるのも良いですが、判断に迷う場合は、初回取引時などにファイル名の付け方について確認しておくと、その後のやり取りがスムーズになります。
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種類 |
具体例(正式名称:株式会社サンプルシステムソリューションズ) |
評価 |
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正式名称 |
株式会社サンプルシステムソリューションズ |
◎ 最も丁寧 |
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一般的な省略 |
(株)サンプルシステムソリューションズ |
○ 問題ないことが多い |
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独自の略称 |
SSS |
× 相手に伝わらない可能性が高い |
請求書ファイル名に入れる日付は、「西暦」を使用することを強く推奨します。和暦よりも西暦が適している理由は、データの管理性にあります。
パソコンでファイルを管理する際、ファイル名の日付順で並べ替える(ソートする)ことがよくあります。西暦(例:20231115)であれば、古いものから新しいものへと時系列で正しく並びます。しかし、和暦(例:R051115)だと、元号が変わった際に順番が崩れてしまい、管理がしにくくなります。
請求書のファイル名に「御中」や「様」といった敬称は、基本的に不要です。ファイル名はあくまで書類を識別・管理するためのものであり、敬称はメールの本文や請求書本体の宛名で正しく記載するのがビジネスマナーとされています。取引先が管理しやすく、好印象を与えるファイル名を作成するためには、「発行日付」「書類の種類(請求書)」「請求番号や案件名」「発行元(自社名)」の4つの要素を盛り込むことが重要です。本記事で紹介した付け方を参考に、ぜひ実践してみてください。