更新日:2025.11.28

ー 目次 ー
請求書を作成する際、「住所は必ず記載しないといけないのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか。
本記事では、請求書に住所を記載する必要性から、法人・フリーランス(個人事業主)別の正しい書き方までを分かりやすく整理しました。この記事を読めば、安心して請求書を作成できるようになれば幸いです。
結論から言うと、法律上、請求書への住所記載は必須ではありません。しかし、実際のビジネスシーンでは、取引を円滑に進めるために住所を記載するのが一般的です。
ここでは、請求書における住所記載のルールと、実務上の対応について詳しく解説します。
所得税法や法人税法において、請求書に発行者や取引先の住所を記載することは義務付けられていません。これは、2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)においても同様で、適格請求書(インボイス)の必須記載事項に「住所または本店所在地」は含まれていません。
インボイス制度で必須とされているのは、「適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号」です。この登録番号によって事業者が特定できるため、住所の記載は任意とされています。
しかし、法的な義務がないからといって住所を記載しないのは、実務上あまり現実的ではありません。請求書は取引の事実を証明する重要な証憑書類です。住所が記載されていることで、取引相手が「どの会社の誰からの請求か」を明確に把握でき、信頼性の向上につながります。そのため、特別な理由がない限り、住所は記載するのがビジネスマナーであり、基本的なルールと認識しておきましょう。
原則として記載が推奨される住所ですが、省略が許容されるケースも存在します。具体的には、以下のような状況が考えられます。
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ケース |
詳細 |
注意点 |
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取引先との合意がある場合 |
長年の付き合いがあるなど、信頼関係が構築されており、双方の合意のもとで住所記載を省略するケース。 |
口頭での合意だけでなく、メールなどで記録を残しておくとトラブル防止になります。 |
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個人間の軽微な取引 |
オンラインで完結する単発の取引や、相手の了承が得られている副業などのケース。 |
フリーランスの方が自宅住所の公開を避けたい場合は、後述するバーチャルオフィスの利用などを検討しましょう。 |
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小売業などのレシート(簡易インボイス) |
不特定多数の顧客に対して発行するレシートや領収書では、宛先(購入者)の氏名や住所の記載は不要です。 |
この場合でも、発行者側の店名、住所、登録番号などの記載は必要です。 |
上記のように住所を省略できる場合もありますが、あくまで例外的なケースです。基本的には発行者・宛先双方の住所を正確に記載することをおすすめします。
ここでは、請求書に住所を記載すべき具体的な理由を2つの観点から解説します。
請求書は、提供した商品やサービスの対価を請求するための公式な書類です。
住所が明記されていることで、発行元である企業や個人事業主の実在性を証明できます。特に、初めて取引する相手にとっては、身元がはっきりしていることが信頼感につながります。これは、企業のコンプライアンス遵守の観点からも重要視されます。
住所の記載は、実務上のトラブルを防ぎ、双方の事務処理を効率化するためにも不可欠です。
特に、取引先が源泉徴収義務者である場合、報酬を支払った相手の住所を記載した支払調書を税務署に提出する必要があるため、請求書に住所が記載されていると非常にスムーズに処理が進みます。
ここでは、法人の場合とフリーランス・個人事業主の場合に分け、それぞれの正しい住所の書き方を具体的な記載例とともに解説します。
請求書の発行者情報は、誰が発行したかを明確にするための項目です。
住所は郵便番号から建物名、部屋番号まで省略せずに記載するのが基本です。また、適格請求書(インボイス)発行事業者である場合は、登録番号の記載も忘れないようにしましょう。
法人の場合は、登記している本店所在地を正式名称で記載します。会社のロゴや社印があると、より信頼性が高まります。
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項目 |
記載例 |
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会社名 |
株式会社〇〇 |
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住所 |
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-2-3 〇〇ビル4F |
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電話番号 |
03-1234-5678 |
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(登録番号) |
T1234567890123 |
フリーランスや個人事業主の場合、事業所の住所を記載します。自宅を事業所としている場合は、自宅の住所を記載することになります。屋号がある場合は、氏名と併せて記載しましょう。
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項目 |
記載例 |
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屋号・氏名 |
〇〇デザイン 鈴木 一郎 |
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住所 |
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷4-5-6 〇〇マンション708号室 |
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電話番号 |
090-1234-5678 |
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(登録番号) |
T1234567890123 |
請求書の宛先は、取引相手の情報を正確に記載する必要があります。「株式会社」を「(株)」と省略せず、正式名称で書くのがビジネスマナーです。
取引先が法人の場合、会社名に続けて部署名を記載し、敬称には「御中」を使用します。
これは、特定の個人ではなく、その組織・部署に宛てて送ることを意味します。
【記載例】
株式会社△△
経理部 御中
担当者名が分かっている場合は、部署名に続けて役職と氏名を記載し、敬称には「様」をつけます。担当者個人に宛てることで、よりスムーズに処理が進むことが期待できます。
※「御中」と「様」は併用できないため、個人名を記載する場合は「御中」は不要です。
【正しい記載例】
株式会社△△
営業部 部長 佐藤 花子 様
【誤った記載例】
株式会社△△ 営業部 御中 佐藤 花子 様
請求書の住所記載に関して、特に疑問に思われがちな点をQ&A形式で解説します。フリーランスの方から法人の経理担当者まで、実務で役立つ知識をまとめました。
フリーランスや個人事業主にとって、プライバシー保護の観点から自宅住所を請求書に記載することに抵抗を感じる人も少なくありません。その場合は、次のような代替手段を検討できます。
代表的なのが「バーチャルオフィスを利用する」方法です。物理的なオフィスを借りずに住所や電話番号をレンタルでき、郵便物の受け取りや転送サービスにも対応。フリーランスにとって最も一般的な解決策です。
また「コワーキングスペースの住所貸しサービス」を利用する方法もあります。一部では月額料金で住所をレンタルでき、作業場として利用していれば信頼性も高まります。
これらを活用すれば、自宅住所を公開せずに事業用住所として請求書に記載可能です。ただし費用がかかるため、事業規模や予算に合わせて選ぶことが重要です。
請求書の住所は、原則として省略せずに正確に記載するのがビジネスマナーです。郵便番号から都道府県、市区町村、番地、建物名、部屋番号まで、すべてを記載しましょう。
住所を省略すると、郵便物が届かないリスクがあるだけでなく、取引先が支払処理を行う際に正式な書類として扱えない可能性があります。
特に、法人の場合は社内規定で詳細な住所記載が求められることがほとんどです。信頼関係を損なわないためにも、住所は正確に記載してください。
請求書の宛先として記載する住所は、取引の担当者が所属する部署や事業所の住所を記載するのが一般的です。しかし、企業の経理機能が本社に集約されている場合など、請求書の送付先が別途指定されているケースも少なくありません。
どちらの住所を記載すべきか迷った場合は、以下の順番で確認しましょう。
自己判断で本社住所に送付すると、担当者の手元に届くまでに時間がかかり、支払いが遅れる原因にもなりかねません。スムーズな取引のためにも、事前の確認を心がけましょう。
請求書に記載した住所を間違えたとしても、それだけで直ちに請求書が法的に無効になるわけではありません。取引の事実があり、請求内容が明確であれば、請求権そのものは有効です。
しかし、実務上は多くの問題が生じる可能性があります。
住所の間違いに気づいた場合は、速やかに取引先に謝罪の連絡を入れ、訂正した請求書を再発行するのが適切な対応です。その際、どの請求書を訂正したものか分かるように「再発行」と明記すると親切です。
請求書に住所を記載することは法律上の義務ではありませんが、実務においては信頼性や事務処理の効率性を高めるために記載するのが望ましいといえます。特に初めての取引先に対しては、住所の明記が安心感を与える大切な要素となります。
この記事を参考に、ご自身の状況に合った形で請求書を作成し、円滑で信頼される取引につなげていただければ幸いです。