更新日:2025.12.04

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製造業は、製品の製造にかかったトータルの費用を把握するために、製造原価計算を用います。その中でも、原材料費や人件費のような「直接費」とは異なり、工場全体の運営にかかる「間接費」の配賦は手間がかかりがちで、特に通信費は請求書の明細が複雑で、どの費用をどの部門に割り振るべきか判断が難しいケースが多いです。本コラムでは製造原価計算の概要を解説後、通信費の配賦が難しい理由と解決方法を解説します。
製造原価計算では、原材料や賃金など製造工程において特定の製品に直接かかわった費用を「直接費」で、工場全体の運営に必要な費用で、間接的に使われた費用を間接費といい、勘定科目では「製造間接費」で使われています。
直接費・間接費の分類一覧
| 直接費・間接費 | 分類 | 内容(用途) | 勘定科目の例 |
| 直接費 | 直接材料費 | 製品の主な原材料 | 原材料 |
| 直接労務費 | 製品を製造する作業員の賃金・手当 | 直接作業員の賃金 | |
| 直接経費 | 製品に直接かかる費用 | 外注加工費 | |
| 間接費(製造間接費) | 間接材料費 | 製品に直接関係しない補助材料・消耗品 | 工場消耗品費、副資材費 |
| 間接労務費 | 管理者・補助作業員・庶務担当などの人件費 | 間接作業員給料 | |
| 間接経費 | 製造に間接的にかかる共通費用全般 | 減価償却費、水道光熱費 |
上場企業においては、決算書類の提出資料として、事業年度毎に製造原価をまとめた「製造原価報告書」の作成と提出が法律で決まっています。上場していない企業でも、会計管理や税務申告、融資を依頼する金融機関に対して製造原価の報告や売上原価の内訳が必要となるので、製造業において製造原価報告書の作成が必須になっています。
税務調査や監査法人が製造原価報告書を確認する際、製造間接費と見なされるためには、以下例にあるような用途を証明できる証憑や記載が必要です。
| 種類 | 内容・例 | 備考 |
| 請求書・領収書 | 支払内容・支払先・日付・金額が明記されたもの | 用途が読み取れない場合は、別途メモや摘要記入が重要する |
| 社内精算書/支出伝票 | 支払目的・内容を明記し、上長承認を受けた書類 | 手書き・電子申請どちらでも可。摘要欄は具体的に記入する |
| 見積書・発注書・納品書 | 仕入やサービスの発注内容を裏付ける資料 | 間接材料の購入などに活用 |
| 契約書・リース契約書 | リース料・保守料など継続支出の証明書 | 長期にわたる間接費の妥当性確認に必要 |
| 作業日報・工数表 | 間接作業者の作業内容・工数を記録したもの | 間接労務費の配賦根拠として有効 |
| 原価配賦表/配賦基準表 | 製造間接費をどのように製品へ配賦しているかを示す資料 | 配賦基準が合理的であることが重要 |
中には製造間接費へ振り分けるために、1個の費用を配賦するケースがあり、例えば水道光熱費、減価償却費、通信費、修繕費などが挙げられます。特に、通信費は配賦までのプロセスに手間がかかりがちです。
では通信費の配賦がなぜ複雑なのかを、実際にNTTから届く請求書を見ながら解説します。NTTの場合は届く請求書が1拠点につき月1通の請求が届きます。1通の請求書に使用している回線番号の明細がこのように記載されています。

製造間接費の配賦を行うために、この請求書の各回線番号から間接的に製造に関わっているものを抽出します。通信費が製造間接費として配賦される用途の例を挙げてみます。
| 通信回線の種類 | 用途 | 備考 |
| 光回線(FTTH/FLET'Sなど) | インターネット接続・VPN | 工場のネット接続や本社とのVPN通信に使用。拠点ごとに契約されることが多い |
| 専用線・IP-VPN回線 | 本社・他工場との安全な通信 | セキュリティ重視の企業で採用 |
| モバイル回線(LTE/5G) | IoT機器・遠隔監視・現場作業 | 工場設備の遠隔監視や、現場作業員の端末用 |
| M2M通信回線(Machine to Machine) | 製造機器の制御・データ収集 | PLCやセンサーなどの通信に使用。用途が製造に直結する |
| クラウド接続用回線(専用線やインターネットVPN) | 生産管理システム・ERPとの連携 | クラウド型の製造管理システムを使う企業で利用 |
しかし、1通の請求書の明細には製造に関わっていない回線番号もあります。例えば工場内にある総務部の固定電話、人事・労務管理者の携帯電話が該当します。この分は製造間接費にせず、販管費および一般管理費扱いになります。このように回線番号毎で配賦して仕分けするには、回線番号を一つずつ確認する必要があるため、時間を要してしまうのです。では、どうやって通信費の請求を配賦しやすくするか説明します。ポイントは全部の回線番号がどの場所、何の用途なのかの振り分けが請求前に出来上がっている状態にしておくことです。
通信費の配賦に工数を極力かけない具体的な手段として、通信会社のWeb明細やCSVデータをAPI連携で取得し、回線番号や回線IDごとに用途(製造用・管理用)をマスタ管理し、自動で製造間接費と販管費に分類・仕訳案を生成することで、人手による明細確認や仕訳作成の工数を削減できます。明細データのサンプルとしてはこのような感じです。

回線番号ごとで分類する番号を付けて、用途を記載します。(ここでは工場内の総務部・作業室・材料倉庫の名前を付与)予め回線番号毎で仕分けされていることで、通信費の部門別配賦ができている状態になっています。このように、電話番号ごとに用途を明確にしておくことで部門別配賦が可能となりますが、実際の運用では手作業による仕分けや確認に多くの手間がかかるのが現状です。そこで、インボイスでは通信費の部門別配賦を効率化するための明細提供サービスを展開していますので、ご紹介いたします。
インボイスでは、通信費の請求書を一括で受領・立替払いし、毎月1回の電子請求書として提供し、部門別に費用をデータ化して提供するサービスを展開しています。

使用いただくメリットは以下の点です。
以下のような感じで配賦しやすいよう自由に名前を付与できます。
回線番号1:大阪工場ー材料倉庫ー専用線
回線番号2:大阪工場ー総務部ー固定電話
回線番号3:本社ー経営企画部ー携帯電話
ExcelやCSVでデータとしてお届けします。配賦された状態で、ExcelやCSVのデータでお届けするので、ご利用している会計システムへの連動の手間も減らせます。

バラバラと届いていた通信費の請求書を1通づつ支払っていたものがすべてまとまり、月1回の支払いで終わります。
通信費の他に水道光熱費の一括請求サービスも提供しており、製造業は2,500社以上で業務効率化に成功しています。

一括請求サービスについてよくある質問をQ&A形式で、わかりやすく解説します。
はい。国内すべての通信事業者で承れます。
「Gi通信」は各通信会社から仕入れ代行を行っているので、当社の請求書を適格請求書として発行します。
専用ポータルサイトからダウンロードいただくのみなので、お時間は要しません。
原価計算において正確な製造間接費の計上は、製造に直接関わっていないからこそ配賦や按分が難しいですが、コスト把握と製造原価報告書を作成するうえで欠かせないプロセスです。特に通信費は目検で行うとミスが発生しやすく、仕訳や原価計算に不備が生じる可能性も考えられます。正確な部門別配賦の手段ができるよう、業務効率化でぜひ検討されてみてください。
通信費の請求書なら「Gi通信」