更新日:2024.02.28
ー 目次 ー
会社が負担するべき費用を従業員が代わりに支払った場合、後日精算する必要があります。しかし、「立替経費の処理方法が複雑で分からない」「立替経費の精算時にミスが出やすい」とお悩みの方がいらっしゃるのではないでしょうか。立替経費は節税につながる場合もあるため、正しい方法で処理することが大切です。
今回の記事では、立替経費の精算手順について詳しく解説します。注意点やミスを減らす方法も紹介しますので、経理を担当している方はぜひ参考にしてください。
立替経費と混同されることが多い言葉に、立替金や仮払金があります。正しく会計処理するためには、それぞれの違いを理解しておくことが大切です。ここでは、立替経費の定義と立替金や仮払金との違いを解説します。
立替経費とは、従業員が一時的に支払った費用のことです。本来は会社が負担するべき費用なので、従業員に返す必要があります。なお、立替経費が発生する例は以下のとおりです。
経理が経費精算することで、消耗品費や交通費などの勘定科目で処理できるようになります。立替経費を精算するために、申請書の提出が必要な会社もあります。立替経費のルールは会社によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
立替金とは、会社が一時的に立て替えた費用を処理するための勘定科目です。本来は従業員や取引先が支払うべき費用なので、経費として計上することはできません。また、立替金は利息が付かないとされていますが、回収までの期間が長くなると税務調査の際に貸付金として認定されるリスクがあります。貸付金の場合、利息が計算されて追微課税が生じることもあるので注意が必要です。
仮払金とは、会社が事前に概算で従業員へ支払った費用を処理するための勘定科目です。金額や経費としての勘定科目が確定した時点で、再度計上しなければなりません。後で経費として計上することが決まっているものの、勘定科目や金額が不明確なときに使用します。例えば、従業員の出張にかかる費用を会社が事前に支払うケースです。
ホテルや公共機関の金額は事前に把握できますが、現地でいくら使うかは実際に行ってみないと分かりません。このようなときに会社が出張にかかる費用を概算し、従業員に仮払金を渡します。仮払金のメリットは、従業員が大きな金額を立て替えずに済むことです。立替経費は申請することで精算されますが、高額だと従業員の負担が大きくなるため仮払金を上手に活用しましょう。
この章では、立替経費を精算する3つの手順について解説します。
経費申請書のフォーマットは会社によって異なるものの、精算手順は基本的に変わりません。ここでは、立替経費の精算方法を詳しく見ていきましょう。
従業員が作成した経費申請書を上長が承認すると、経理部に回ってきます。経理担当者は、記入漏れや計算ミス、経費の内容など書類に不備がないか再度確認しましょう。経費の中に交通費が含まれている場合は「最短ルートで申請しているか」「定期区分は除いているか」などの細かいチェックも必要です。
経費申請書の内容に問題がなければ、経費の仕訳を行います。従業員側の勘定項目は交通費や消耗品費など、立て替えた費用に該当するものを選択しましょう。会社側は、立替金もしくは未払金の勘定項目を用います。
なお、会社の社長や役員が経費を立て替えた場合は、役員借入金または短期借入金で仕訳するルールです。現金で経費精算した場合、借方は役員借入金(短期借入金)、貸方は現金として処理します。ただし、業務上必要性があるものと判断された費用は経費として計上可能です。
精算金は給料日や毎月の指定日に支払うのが一般的です。中には、同月内の処理として月末に精算する会社も存在します。立替経費の支払い方法は会社によって異なるので、事前に確認しておきましょう。立替経費の精算金は基本的に課税対象外なので、給与明細にも非課税である旨を記載しておくことが重要です。
また、交通費や消耗品費など立替経費が少額のときは、小口現金から支払うこともあります。ただし、人的ミスによって残高が合わなくなってしまうケースもあるため注意が必要です。誤差をなくすために小口現金の管理に担当者を設けている場合は、利用するたびに報告の手間が発生します。
この章では、立替経費の運用に関する3つの注意点を解説します。
立替経費は一時的であるものの従業員のお金で支払うため、後でトラブルに発展する可能性があります。ここでは、注意点について詳しく見ていきましょう。
立替期間に法的な決まりはありませんが、長くなるほど従業員の負担が大きくなります。トラブルを防ぐためにも、立替期間を決めておくことが大切です。会社によって異なりますが、立替期間は1ヶ月が目安となります。
従業員が経費を立て替えてから時間が経ちすぎると、内容や金額が不明瞭になってしまうことがあるため注意が必要です。また、毎月締日を設けることで会計処理がスムーズになるだけでなく、従業員の高額な立替も防げるようになります。
従業員に経費を立て替えてもらうときは、期間だけでなく金額にも注意が必要です。特に出張費など高額な経費立替は、従業員の負担が大きくなる可能性があります。経費を立て替えてから精算するまで期間が空くからです。事前に立替限度額を決めておくことで、従業員の金銭的な負担を軽減できます。
基本的に立替経費は課税対象外ですが、あまりに高額な場合は所得税の対象となる可能性もあります。経費が多くかかりそうなときは、法人カードの使用や仮払いなどを検討しましょう。
就業規則に立替経費のルールを明記し、従業員に順守してもらいましょう。全員が同じ方法で精算申請することで、経理の処理スピードが早くなります。立替経費のルールを策定する際は期間や限度額に加えて、領収書がない場合の対策についても決めておくのがおすすめです。
電車やバスなどの交通費は、一般的に領収書が発行されません。立替経費で起こりうるケースも想定したうえで、ルールを策定することが大切です。あらかじめ細かい部分まで決めておくと、スムーズに精算できるようになります。
この章では、立替経費の精算でミスを減らす3つの方法を解説します。
立替経費は節税につながることもあるため、正しく処理することが大切です。ここでは、自社で取り入れられる方法がないか、確認しながら見ていきましょう。
法人カードを使用することで、立替経費の精算が少なくなります。精算ミスを防ぐためには、立替経費が発生する頻度や経理が対応する業務自体を減らすことが大切です。従業員が出張に行く際に法人クレジットカードを渡しておけば、現地での支出に対応できるようになります。
また、利用明細を確認できるため、万が一不正利用があっても気づきやすいです。経費精算システムを導入すれば、利用明細の取り込み・仕訳が自動化されます。
経費精算システムを導入することで、小口現金の管理や立替経費の精算などの負担が軽減されます。経費の精算業務が自動化されるため、手入力で起こりやすいタイプミスや仕訳ミスなども少なくなるでしょう。ただし、経費精算システムにはオンプレミス型とクラウド型があり、それぞれメリット・デメリットが異なります。
オンプレミス型は、自社のサーバーに経理精算システムをインストールして利用するタイプです。社外のインターネットからはアクセスできないため、クラウド型よりもセキュリティ面で優れています。導入や保守に費用はかかるものの、月額料金が発生しないことも特徴です。しかし、システムが自社のサーバー上にあるため、保守やアップデートを行う専任の管理者が必要になります。
一方で、クラウド型はインストールが不要で、社外からでもアクセスできるタイプです。クラウド上にシステムが存在するため、スマートフォンやノートパソコンなどの端末があれば場所問わず利用できます。また、データのバックアップが自動で行われるので、データが損失する心配もありません。
ただし、月額費用がかかることやオンプレミス型よりもセキュリティが劣ることがデメリットです。経費精算システムを導入するときは、コストや運用方法などを考慮したうえで選択しましょう。
外部に業務を委託することで、経理部による精算ミスが少なくなります。また、経理の負担を軽減するだけでなく、より重要な業務に社内リソースを割り当てることも可能です。委託費はかかりますが、経理部で対応するより業務効率が向上するケースもあります。
ただし、少額の立替経費をその都度精算したい場合は費用対効果が期待できません。社内のリソースや業務フローなどを考慮したうえで、外注サービスを利用するかどうか検討しましょう。
立替経費とは、会社の代わりに従業員が支払った費用のことです。本来は会社が支払うべき経費なので、後日精算する必要があります。従業員がお金を立て替える期限や限度額は、法律で決まっていません。しかし、立替経費の金額が大きくなると、従業員に大きな負担をかけてしまう恐れがあります。
トラブルを防ぐためにも、社内で立替期間や立替限度額などのルールをしっかり定めましょう。ルールを設けることで、従業員の負担を抑えるだけでなく、経理の会計処理がスムーズになります。社内全体に周知するために、立替経費のルールを就業規則に明記しておくことも大切です。
経理の負担を軽減したり、業務効率を上げたりしたい場合は、法人カードや経理精算システムの使用を検討しましょう。精算の業務自体が少なくなるので、ミスが起きる頻度を減らすことができます。