更新日:2021.03.23
ー 目次 ー
みなさんこんにちは。これまでの通信講座では通信業界は複雑で通信料金はわかりにくい事、担当者の思い込みが多く危険である事を書かせてもらいました。この気持ちは今も変わりませんし理解する事は不可能に近いことは残念ながら変わりません。
それだけに通信の担当者の役割は大きく、また経験する人も限られているので、要領をしっかりマスターしてしまえば希少性が高い仕事であるといえます。そこで第三回の通信講座では通信担当者が「武器を使って戦う方法」を学んでいただき、希少性の高い人物を目指して欲しいと思います。
前回では自社の利用状況を把握する事が非常に大事だという話しをしましたが、実際には全ての状況を把握する事なく武器を作る事は可能になります。この武器を所持する事で、電話会社や代理店との交渉は劇的に変わっていきます。
新しい電話サービスを検討するときに、売り手各社に請求書を開示するパターンが一番多いと思います。これは武器を持っているわけではなく、売り手に対して自社の利用情報を与えているに過ぎません。電話サービスの売り手は売りたいサービスや商品が決まっていることが多いので、それを試算さえできる請求情報さえあればOKです。
残念ながら売り手はどういったプランを提供したら最も効果的な削減が出来るのかを熟考しているのではなく、売りたいプランを当てはめたらいくら安くなるのかを確認しているだけなのです。
そこで重要なのは、通信担当者の役割です。自社の通信料金はどの料金が多いのか?どの料金が少ないのか?など、トレンドを把握し、売り手主導のプラン選択を防ぎ、武器をもって交渉できる状況を作る事が必要です。
図Ⅰ 通信費トレンドイメージ
では実際に武器となるトレンド把握はどのようにして作っていけばいいのでしょうか。それは通信会社の請求書から作る事が可能です。
それでは手順の説明に入ります。
① 通信費の請求書を1か月分用意しましょう。
注:電話会社からの請求は毎月複数回に分かれて到着しますので、最新の請求書を集めようとすると漏れてしまう可能性があります。用意の際は1~2ヶ月程度前のもの(利用状況が最新とあまり変わらないもの)請求書を用意する
② 請求書から、以下の分類に分けてみましょう。
A 固定電話の請求書
B 携帯電話の請求書
C インターネットの請求書
③ ABCそれぞれの内訳を確認して料金をさらに分解します。
A固定電話
基本料金 市内通話料金 市外通話料金 携帯向け通話料金 国際通話料金 その他
B携帯電話
基本料金 パケット料金 無料通話料金 その他
Cインターネット
基本料金 電話基本料金 電話通話料金 その他
分解が出来たら以下の図の様に簡単にまとめてみましょう。
図Ⅱ 利用状況の細分化
ここまで出来たら実際に武器を使って売り手との交渉をしてみましょう。
直ぐに使える武器は2つになります。
まず固定電話の比率からギャップを発見し武器を作ります。
以下はインボイスを利用しているユーザーの固定電話の料金から、オプションサービスなどを除いて作成した比率になります。
図Ⅲ インボイス全ユーザー比率
基本料金 | 市内通話料金 | 市外通話料金 | 国際通話料金 | 携帯向通話料金 |
61% | 13% | 9% | 1% | 16% |
図Ⅳ 貴社の利用状況(仮)
基本料金 | 市内通話料金 | 市外通話料金 | 国際通話料金 | 携帯向通話料金 |
76% | 8% | 5% | 1% | 10% |
この比率から大幅に高い比率の項目があれば、これを武器としギャップの大きい所をピンポイントで伝える事が出来るようになります。これだけで売り手との交渉は実に有利になります。図Ⅳのように図Ⅲと比較したときに基本料金の比率差が15%高いとします。そうした場合は基本料金を中心にコスト交渉が可能になります。
もうひとつは単純に金額が大きいところを武器としてキャリアと交渉する場合です。
以下のように金額を並べてみます。
図Ⅴ 貴社の料状況(仮)
基本料金 | 市内通話料金 | 市外通話料金 | 国際通話料金 | 携帯向通話料金 |
150,000円 | 98,000円 | 162,000円 | 25,000円 | 103,000円 |
これは単純に使っている金額が大きいところのほうが、割引適用がしやすく効果も大きいですから当然と言えば当然ですが。特に携帯向通話料金や市外通話料金などは削減交渉がしやすいポイントになりますので覚えておいてください。
※ 参考)インボイスユーザーの平均金額
固定電話の武器についていかがでしょうか。一連の武器作りですが、さほど難しい内容では、ないにもかかわらず、いずれの武器も売り手に直接メッセージを伝える事が出来るようになりますので、売り手側も相当慎重にプランニングする必要が出てくるはずです。
では携帯電話のコスト削減で電話会社と交渉を優位に進める武器の作り方はどういったものになるでしょうか。
それはパケット料金とパケット数です。
パケットの料金はパケットを使う為に必要な基本料金と使用量に応じて支払う通信量があります。最近では殆どが一定のパケット料金が含まれる定額系のタイプになっており、想定されるパケット使用量に応じてプランが決められています。
ここで覚えておきたいのは、詳細な料金プランではなく、利用しているパケット数がもっとも重要である事です。
図Ⅵ パケットの請求書イメージ
パケット数を軸に考えると利用中のプランは1,000パケットが使用の上限だが100パケットしか使っていない、または100パケットもオーバーしている。
こういった視点でパケットの料金を把握する事ができます。
いずれの場合も把握している内容から、プランの適正さに異議を唱えている事を明確に伝える事が出来ます。
よって、売り手はあなたから何をして欲しいかのメッセージを受け取りますので、交渉はスムーズに進みます。
これはパケットをシェアしている企業にとっても同様で、合計のパケット数が利用しているプランの総パケット上限と見比べる事が出来ますので、基本的な交渉の仕方は一緒になります。
ここで注意しておきたい事は、パケット料金の超過を嫌うあまり、パケット上限の大きい安心できるプランで契約している企業が圧倒的に多いという事です。その昔は、社内でも携帯キャリアの電波を使っていた時代がありますが、現在は社内にいるときは当然Wi-Fiで、外出先でもWi-Fiのスポットを探すのも難しくないのが現状です。
その為、思っているよりパケット使用量が少なく、割高なプランになっている事もしばし見受けられます。
少し怖い気もしますが安いプランでパケット上限を超過したほうが安いこともありますので、そういったプランを選択する場合は交渉の段階でリスクを理解し、料金のメンテナンスを契約時の約束に入れておくといいでしょう。
また通話料金も同じような視点で見る事が大事になります。大体の携帯プランには無料通話という考え方があります。無料通話には「○○円分」「○○時間」「○○回」といった金額に換算しての無料通話と、一定上限までの通話時間や通話回数を無料で話せるタイプにわかれます。その為、ひとつの基準として無料通話をどれだけ有効に使えているかを把握しておく事で武器になります。
この状況が作れれば売り手側は基本料金プランを慎重に選んでくれます。
少し上級者向けになりますが、知っておきたい知識として携帯料金プランは選んだプランやオプションによって、無料通話や無料通信の単価が変わってきます。
わかりやすく説明すると、10円で1分通話ができる事もあれば、20秒しか通話できない場合などがその一例です。
なので、単位の変わらないパケット使用量や通話回数・通話時間を軸に考え、どんなプランを当てはめるのが適切なのかと考えられるようになると、より強い武器になるでしょう。
ここまでの話はあくまで電話会社との交渉を有利に運ぶ為の武器の話であって、通信費の本質を理解し削減に挑む話ではありません。
現在の市場では本質的な理解までいたらないとしても、先に記載したテクニックを実行できれば、効果は変わらないでしょう。
いかがでしたでしょうか。ここまで実行できれば、どの会社に行っても希少性の高い通信担当者として存在感のある仕事が出来るはずです。
いいプランに出会った時のあるあるで、なかなか社内が動かせないという声をよく聞きます。次回はそんな悩みを少しでも解決できるよう「敵は社内にいた」をお届けする予定です。
文 田嶌 健