更新日:2025.12.26

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「また税制改正か...」と頭を抱えていませんか?令和8年度税制改正大綱が発表され、経理担当者にとって請求処理や業務フローの見直しが避けて通れない課題となっています。日々の業務で「何から手を付けるべきか」「どの改正が自分の業務に関係あるのか」迷う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、令和8年度税制改正大綱の全体像から、経理業務や請求処理に直接影響する具体的な変更ポイントをわかりやすく解説します。また、インボイス制度見直しの背景や、今後の優先対応事項についても詳しく紹介しながら、なぜ請求業務の効率化が急務なのか、その理由や実践的なアクションも明確にお伝えします。
こんな方にオススメ
この記事を読むと···
令和8年度税制改正は、企業経理の現場にとって「何を優先して対応すべきか」を考えるうえで重要な転換点となる内容です。今回の大綱は、物価高対策や強い経済の実現、公平性の確保、デジタル化推進など、経理業務に直結するテーマを幅広く網羅しています。
特に、請求・経理実務に影響を与える法人課税やインボイス制度の見直しが含まれており、今後の業務負荷や優先順位の見直しが求められるでしょう。まずは、税制大綱の達成目的と8つの主要分野を整理し、企業や経理担当者が押さえるべきポイントを明確にしていきます。
令和8年度税制改正大綱で掲げられた主な達成目標は、経理現場の業務優先順位にも直結します。まず、物価上昇に対応するため、基礎控除や給与所得控除が物価指数に合わせて引き上げられ、これにより実質的な税負担増を抑制する新たな仕組みが導入されます。
次に、投資・生産性向上・賃上げの好循環を税制で促進し「強い経済」の実現をめざします。また、公平性の観点から越境ECや免税制度、インボイス経過措置の濫用防止など厳格な対応が盛り込まれています。
さらに、デジタル化・納税環境の整備として電子帳簿・e-Tax等の推進が明記されており、これらが経理担当者の業務設計や優先対応策に直接関わってきます。こうした税制見直しが、なぜ実務に影響するのかを理解しておくことが重要です。
今回の改正では、税制全体が8つの主要分野に整理されています。各分野で企業や経理に特に関係するポイントを抜粋し、押さえておきたい論点をまとめます。
個人所得課税分野では、基礎控除や給与所得控除の増額、課税最低限額の再設定が行われます。資産課税については、贈与税の特例措置の終了や不動産の評価基準の見直しが盛り込まれています。法人課税は大規模な設備投資優遇や研究開発税制の強化、賃上げ促進税制の再設計が中心です。
消費課税ではインボイス経過措置の縮減や免税仕入れ上限の引き下げ、越境EC課税の強化が含まれます。国際課税のルール整備、防衛力強化に伴う特別所得税の新設も注目点です。
納税環境整備・関税分野でもデジタル化や貿易実務の改定が進みます。特に法人・消費課税分野は経理・請求業務に直接影響するため、今後の優先対応領域として整理が欠かせません。
令和8年度税制改正では、経理担当者に直接影響を及ぼす8つの主要分野で大きな見直しが行われます。個人所得課税や資産課税から始まり、法人課税や消費課税では請求・経理実務に直結する変更が盛り込まれています。
加えて、防衛力強化のための財源確保や納税環境整備など、現場の業務運用にも波及する改正が多岐にわたります。各分野の内容を理解し、経理業務や請求処理の優先順位付けに役立てることが求められます。主な論点を以下に整理しました。
令和8年度税制改正における個人所得課税の主な変更点は、物価上昇を踏まえ、基礎控除および給与所得控除の金額がそれぞれ引き上げられます。たとえば、基礎控除は従来の58万円から62万円へ、給与所得控除の最低額も65万円から69万円へと増額され、消費者物価指数の上昇分が反映されています。
さらに、中低所得者層への配慮として課税最低限を178万円へ先取りし、基礎控除特例等を組み合わせて負担開始水準を引き上げる設計です。実務面では、適用は令和8年分所得税からのため、給与計算・年末調整の設定変更が必要になるため、社内システムの改修と従業員への周知を早めにしたいところです。
資産課税の領域では、事業承継に関する納税猶予制度の適用期間が延長されるほか、貸付不動産の評価基準についても見直しが行われる予定です。特例承継計画の提出期限が延長され、相続や贈与に関する納税猶予の適用期間が拡大される見込みです。
不動産に関しては、市場価格との乖離を利用した評価手法への厳格な対応が強化されます。これにより、資産評価や承継時の税務リスク管理の重要性が増すため、経理・財務部門では評価根拠の見直しや資料整備の必要性が高まるでしょう。
法人課税では、全業種を対象とした新たな設備投資優遇制度が導入されます。建物も対象に含まれ、投資額が大企業で35億円以上、中小企業で5億円以上、さらに投資利益率(ROI)が15%以上という厳しい条件が設定されています。
投資額に応じて即時償却か高率控除が選択でき、場合によっては税額控除の繰越も可能です。加えて、研究開発税制ではAI・量子・半導体・バイオ等の重点分野への優遇、そして賃上げ促進税制の見直しや中小の少額減価償却資産特例の拡充も実施されます。経理部門は、これらの改正を踏まえた固定資産管理・償却方針、税務調整、証憑管理等を早期に見直す必要があります。
消費税分野では、海外からの電子商取引に対する課税ルールの厳格化や、インボイス制度の運用見直しが注目されています。特に、1万円以下の少額輸入貨物の販売を課税対象にしたり、プラットフォーム事業者に納税義務を課す新たな仕組みが導入される予定です。
インボイス制度については、新規インボイス発行の個人事業者向けに納税額を売上税額の3割とできる経過措置(2年限定)が設けられ、免税事業者等からの課税仕入れ控除の経過措置も段階的に縮減されます。経過措置対象の仕入上限が10億円から1億円に引き下げられるため、特に大企業では仕入先の管理や経過措置の適用判定が重要となります。
国際課税分野では、BEPS(税源浸食と利益移転)やグローバル・ミニマム課税(第2の柱)への対応が進められます。国際的な税制議論を踏まえ、外国子会社合算税制などの見直しも継続され、企業グループ全体での税務リスク管理や国際取引の税務対応が一層重要になります。海外展開企業や多国籍取引がある場合は、税制改正の動向をモニタリングし、適時社内ルールを見直す必要があります。
防衛力強化を目的として、令和9年1月から新たに防衛特別所得税(仮称)が導入されます。これは、所得税に対して1%の追加課税を行うもので、同時に復興特別所得税の税率を1%引き下げ、復興財源の確保のため課税期間を10年延長する措置も講じられます。給与計算や源泉徴収システムにも影響が及ぶため、人事・経理部門は新たな税率への対応が求められます。
納税環境の分野では、税務関連手続きのデジタル化が一段と進みます。電子帳簿保存やe-Tax、マイナポータルの活用によって、業務の透明性向上や手続きの効率化が図られます。国税犯則手続のデジタル対応やeLTAX等も含め、バックオフィスの運用が大きく変わるため、システム改修や社内教育の準備が重要となります。
関税分野では、不当廉売関税の迂回防止制度が創設され、不公正貿易への実効性が強化されます。また、暫定税率の適用期限延長や個人使用貨物に関する課税特例の廃止なども実施されます。輸入取引や国際物流に関わる経理部門は、関税計算や仕入管理のルール見直しが必要になるでしょう。
今回の税制改正は、個人所得・法人・消費税・国際課税・関税など多分野に及び、経理現場や企業運営へ幅広く影響します。特に請求処理や証憑管理、税率・控除率の変更対応など、日々の業務に直結する運用変更が相次ぎます。各分野ごとの対応ポイントを整理し、優先順位をつけて運用体制を強化することが、経理部門にとって必須の課題となります。
令和8年度税制改正は、単なる税率や控除額の見直しだけでなく、企業経営や現場の実務に直接インパクトを与える内容が多岐にわたります。特にインボイス制度の経過措置縮減、高付加価値投資への優遇、賃上げ促進税制の規模別見直し、越境ECの消費税管理強化など、意思決定や運用ルールの再設計が求められる改正が並びます。
以下の主な論点ごとに、どのような変化が待っているのか整理していきましょう。
企業全体で見ると、今回の税制改正は経営層の意思決定から現場オペレーションに至るまで広範な影響を及ぼします。経営陣にとっては、設備投資や賃上げ方針の再検討が必須となり、特にグループ会社や複数拠点を持つ大企業では制度適用範囲の見直しや新たな管理手法の導入が求められます。
一方で現場では、インボイスや消費税関連の業務フロー変更が日常的な手間を増やす可能性が高く、属人的なチェック体制をそのまま続けるとミスやリスクが拡大しかねません。こうした状況では、全社的なプロセス標準化やデジタル化対応をいかに早く進められるかが、今後の経理・請求処理の品質を左右する重要ポイントとなります。
インボイス制度に関連する仕入税額控除の経過措置については、今後段階的に控除割合が引き下げられるスケジュールが設定されています。具体的には、令和8年10月から7割、令和10年10月から5割、令和12年10月から3割となり、最終的に令和13年9月末で経過措置が終了します。
これにより、免税事業者との取引コストが年々増大し、仕入れ先の見直しやインボイス登録依頼の推進が実務上避けて通れなくなります。経理現場では、経過措置該当取引の判定・記録が煩雑化し、各期ごとに控除適用割合の再確認や仕訳ルールの変更が求められるため、対応体制の再構築が不可欠です。
従来10億円だった経過措置対象仕入れの年間上限が、令和8年10月以降は1億円へと大幅に引き下げられます。特に大企業やグループ全体で多数の免税事業者取引がある場合、上限超過リスクが急増します。
横断的な取引データ集計やサプライヤーマスタの一元管理が必須となり、属人対応では限界に達しやすい状況です。実際には、各部門・拠点ごとに分散している取引先情報を統合し、全社での仕入総額をリアルタイムで把握できる仕組み作りが求められるでしょう。対応が遅れると、控除超過分について税コストがそのまま損金化するリスクもあります。
設備投資促進を目的に、一定規模以上(大企業35億円以上、中小5億円以上)の高付加価値投資について、即時償却または高率の税額控除を選択できる新制度が設けられます。加えて、投資計画時のROI15%以上など高い基準が設けられているため、投資判断の段階から事前準備や財務シミュレーションの精度向上が求められます。
制度適用を受けるには経済産業大臣の確認や投資利益率の見込み算定も必要となり、税務・会計部門と現場の連携がこれまで以上に重要となります。投資後も償却処理や税効果会計への反映に注意が必要です。
従来の賃上げ促進税制は、今回の改正で企業規模ごとに適用要件や存続方針が大きく見直されます。大企業向け措置は令和8年3月で廃止され、中堅企業向けも要件強化の上で令和9年3月に廃止が予定されています。
一方で中小企業向け措置は当面維持され、防衛的賃上げや人材確保策への配慮が示されました。グループ会社の統合や再編が進む中、どの区分に該当するかの判定や、今後の賃上げ計画の策定方針が変わる可能性が高まります。適用可否の確認や、各社ごとの戦略見直しが急務です。
越境EC(電子商取引)に関しては、少額輸入貨物に対する消費税課税の強化や、プラットフォーム事業者への納税義務転換(いわゆるプラットフォーム課税)が盛り込まれました。これにより、特にB2C取引やプラットフォーム型ビジネスを展開している企業では、取引データの管理・証憑整備・課税区分の判定など実務負荷が大きく増加します。
新たな税務要件への対応だけでなく、システム改修や外部ベンダーとの連携が求められる場合も想定されるため、早期の影響分析と対応準備が重要です。
令和8年度税制改正大綱は、経理現場の業務運用に直接影響する変更点が多数含まれています。控除率や仕訳ルールの見直し、インボイス制度の経過措置縮減、電子帳簿保存法のさらなる定着など、複数分野で業務プロセスの再設計が不可避です。
特に、どの分野から優先して対応すべきか迷う方も多いはずです。ここでは、経理業務に与える主な影響を整理し、支払・請求処理を最優先で整備する重要性、その背景にある法令対応の必須性について解説します。まずは経理業務への影響の全体像を確認しましょう。
各影響ポイントごとに、具体的な業務負荷や対応策を見ていきます。
令和8年度税制改正では、減価償却費の計算方法や仕訳のルール、控除率・税率の見直しなど、経理担当者の実務負荷が増えることが予想されます。設備投資の即時償却や税額控除の繰越管理、研究開発費用の区分集計など、証憑の厳格な管理が不可欠になるため、経理システムや集計手順の改修が求められます。
また、消費税インボイス制度の経過措置縮減に伴い、仕入税額控除の判定や管理の手間も増大します。給与や年末調整にも控除額の変更が及ぶため、例年よりも幅広い分野でシステム改修や運用フローの見直しが必要です。こうした変化に備え、業務全体の棚卸しと優先順位付けが欠かせません。
税制改正による法人税・消費税の影響は多岐に渡ります。まず、特定生産性向上設備への大規模投資には即時償却や高率控除が設けられ、固定資産管理や税務調整、繰延税金資産の計算が煩雑化します。
研究開発税制も重点分野の新設で、証憑収集や対象費用の区分管理、共同研究契約の確認など、税額控除計算の精度と証拠能力が一段と問われます。消費税では、インボイス制度経過措置の縮減と、免税事業者からの仕入れ上限が1億円に引き下げられることから、仕入先ごとの判定や年度モニタリングが必須になります。これらの変更は決算時だけでなく、月次処理や監査対応にも影響し、迅速な体制整備が不可欠です。
今回の税制改正では、物価上昇を反映した基礎控除や給与所得控除の引き上げが実施されます。たとえば所得税の基礎控除が58万円から62万円へ、給与所得控除の最低保障額も65万円から69万円へと見直されるため、源泉徴収や年末調整の計算方法にも変更が生じます。
初年度は月次源泉でなく年末調整時に対応する特例も設けられていますが、給与システムや人事フローの修正は避けられません。加えて、ひとり親控除の増額もあり、従業員情報の管理や手当支給の計算にも影響が及びます。給与計算担当者は、法改正の内容と適用タイミングを正確に把握し、年度更新や従業員への説明を含めて準備を進める必要があります。
税制改正では、電子帳簿保存制度やe-Tax提出の推進が一層強化されます。青色申告特別控除の要件にe-Tax提出や電子帳簿保存が加わったことで、グループ内の帳簿・証憑の電子化統一も進みやすい環境となります。
税務手続きのデジタル化が加速し、トレーサビリティや業務標準化が重要なテーマです。これにより、紙ベースの運用や属人的な確認がリスクとなりやすく、電子ワークフローや証憑保管の仕組みを早期に整備することで、法令対応の実効性と業務効率の両立が期待できます。結果として、電子化への投資効果がより明確に現れるタイミングとも言えるでしょう。
来年度の税制改正に最も優先して対応すべきは、「事業継続のための支払」と「法令順守のための請求処理」です。インフラやサプライヤーへの定期的な支払いが滞ると事業活動そのものが停止リスクに直結するため、家賃・リース料・通信費・電力ガス・SaaS利用料などインフラ関連の請求処理は最優先事項です。
また、インボイス制度や電子帳簿保存法の対応が強化され、請求書の要件確認や証憑の電子管理が不可欠となります。請求処理を後回しにすると、罰則や追徴課税リスクが顕在化しやすく、事業全体への影響も大きくなります。だからこそ、税制改正対応の第一歩は請求処理業務の棚卸しと、法令対応を徹底できる体制整備から始めることが重要です。経理業務全体の負荷を可視化しつつ、まずは「請求と支払」に注力するアプローチを強く推奨します。
令和8年度税制改正大綱によるインボイス制度の見直しや消費税の経過措置縮減は、請求処理の現場に直接的な変化をもたらします。特に免税事業者の取引管理や、仕入れに対する控除上限の大幅な引き下げが目立つ中、サプライヤー情報の正確な管理と例外処理対応の重要性が増しています。
これらの運用難易度が上がることで、経理担当者は従来よりも請求処理の手順やマスタデータの精度向上、証憑不備のリスク対応に力を入れる必要があります。主な論点を整理します。
インボイス制度における仕入税額控除の経過措置は、今後数年で7割・5割・3割と段階的に縮小され、最終的には廃止されるスケジュールが確定しています。これにより、免税や未登録の事業者から仕入れた場合、その分の税コストが毎年増加する形で現れます。
経理現場では、請求書ごとにインボイス登録番号の有無や適格請求書要件の確認、経過措置の対象かどうかを記録しておく必要が生じ、現場判断の属人化は大きなリスクとなりやすい状況です。今後、請求書ごとに細かな判定作業と記録体制の強化が避けられず、経理部門には一層の注意とシステム化が求められます。
仕入税額控除の経過措置について、適用上限が従来の10億円から1億円へと大きく引き下げられます。これは、特に部門数や拠点が多い大企業にとって、経過措置枠の超過リスクを高めます。
複数の部門や関係会社で免税取引先が分散している場合、全社横断で仕入総額の進捗をモニタリングしなければ、知らぬ間に上限を超えてしまう可能性があります。そのため、グループ全体でのデータ集約や、経過措置対象取引を自動的に集計・監視できる仕組みの構築が急務となります。管理体制の見直しが遅れると、結果的に控除額減少や追徴リスクが現実化しかねません。
免税か課税か、経過措置対象かどうか、インボイス登録番号の有無や取引開始日、契約形態(請負・委託・物品購入など)など、サプライヤーごとの正確なマスタ情報が控除精度に直結します。従来のように担当者の記憶や属人的な情報管理に頼る運用では、インボイス制度への的確な対応が難しくなりつつあります。
これからは、サプライヤーマスタの整備と定期的な更新、全社での情報共有が、請求処理品質を左右するKPIとなります。実際の運用では、マスタ不備による控除ミスや判定漏れが発生しないよう、システム連携やチェック体制の強化が求められるでしょう。
経過措置が縮減されることで、証憑不備や差戻しが発生した際のコスト負担はこれまで以上に高まります。書類の不備や誤記載が即座に税コストとして跳ね返るため、請求書の受領から照合、承認、支払、電子保存までを一貫してデータでつなげる仕組みが重要です。
電子請求書やワークフロー、証憑のデジタル管理に投資することで、例外処理の発生頻度を下げるだけでなく、発生時の対応コストも抑制できます。インボイス制度や電子帳簿保存法対応と合わせて、電子化の導入は単なる効率化を超え、リスクとコストコントロールの両立策として合理性が増しています。
令和8年度税制改正大綱によって、経理部門の請求処理は今まで以上に厳格な運用が求められる局面を迎えます。特に免税登録事業者の取り扱い見直しや、証憑不備を防ぐための業務フロー・フォーマットの統一が急務です。
対応が遅れると、控除率の縮減や経過措置の上限設定により税コストが増大し、部門全体の業務負荷が急増する可能性も否定できません。ここでは、今後注力すべき請求処理の具体的な対応策を2つの観点で整理しています。
それぞれの対応策について、実務で何を優先し、どんな点に注意すべきかを詳しく解説します。
仕入税額控除の経過措置が段階的に縮減されていくことを受け、免税登録事業者との取引の精査がこれまで以上に重要になります。
まずは、既存の仕入先リストから免税登録事業者とインボイス登録事業者を洗い出し、現時点で登録していない事業者にはインボイス登録を依頼することが現実的な第一歩です。登録への協力が得られない場合は、取引条件や仕入先の見直しも視野に入れる必要があります。
また、グループ全体や複数拠点での取引が分散している場合、全社横断での仕入管理やマスタ情報の精度向上も欠かせません。これらを怠ると、経過措置の上限超過や控除漏れといったリスクが顕在化しやすくなります。
事前に棚卸しや登録状況の確認を徹底し、仕入税額控除の取りこぼしを防ぐ体制づくりが求められます。
税制改正でインボイス制度への対応がさらに問われる中、請求書や証憑の不備が発生しやすくなっています。
請求書の形式がバラバラであったり、必要な項目が漏れていると、確認作業が煩雑化し、控除漏れや差戻しのリスクが高まります。そのため、受領から支払・保存までのプロセスや請求書のフォーマットを統一し、インボイス制度対応を前提とした運用ルールを明文化しておくことが重要です。
たとえば、インボイス登録番号の有無、適格請求書要件のチェックリスト化、システムによる自動照合など、属人的な判断を減らす仕組みづくりが有効です。
これにより、証憑不備による再作業や差戻しの件数を減らし、経理部門全体の業務効率化と法令対応力の向上につなげていくことができます。
令和8年度税制改正は、控除額や課税最低限の見直し、インボイス制度の経過措置縮減、請求処理フローの変更など、経理・請求実務の現場に多面的な変化をもたらします。
今後は「支払やインフラ維持に直結する請求処理」と「法令遵守」の両立を優先し、仕入先・証憑管理や電子化対応など、一歩先を見据えた体制構築が不可欠です。こうした動きに遅れず、部下や現場の業務負荷を増やさないためにも、今のうちから具体的な準備と情報収集を進めてください。
経理現場が直面する実態や他社動向を把握するには、調査レポートの活用も有効です。まずは最新の調査レポートを確認し、自社の対応方針策定の参考にしてください。
経理・請求処理の現場が令和8年度税制改正でどのような影響を受けるのか、実際の声や対応状況を知るには、信頼できる調査レポートの活用が役立ちます。
たとえば「インボイス制度実態調査統合版」では、経理担当者が直面している課題や、経過措置縮減に伴う業務の変化、電子化やマスタ整備の進捗状況を、定量的データとともに把握できます。
自社だけで判断しきれない部分も、他社事例や実務での工夫からヒントを得られる点が強みです。資料を通じて現場のリアルな課題や今後の動向を俯瞰することで、施行前の余裕を持った対応策立案や現場への周知・準備計画の策定に役立ててみてはいかがでしょうか。